教育CSRにおける出張授業の基礎知識
意義・メリットから実施方法・事例を紹介

教育CSRでよく取り組まれる施策に出張授業があります。 企業の社員が講師として学校へ赴き、自社の専門的なノウハウ、技術、商品・サービスを教材とし、授業を行うタイプの施策です。 本記事では出張授業を検討されている方や出張授業とは何かを知りたい方に、取り組む意義とメリットや実施のプロセス、小学校・中学校・高校別に出張授業の事例と特徴などを解説します。
2024年2月公開

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1.出張授業に取り組む意義とメリット

現在、学校教育の場ではキャリア教育が重視されています。キャリア教育は以下のように定義され、その推進には教育現場と企業の連携が不可欠です。

〈キャリア教育の定義〉
『一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育』
参考: 経済産業省 キャリア教育について

1-1.出張授業が求められる背景

平成23年中央教育審議会がキャリア教育を定義したこと、また近年、下記の様な社会課題の顕在化があり、小学校、中学校という早い段階から将来働くことについて考えていくキャリア教育の必要性が高まっています。

・国内での労働市場の急速な変化(自分で「働き方」を選択する時代の到来)
・少子高齢化による労働人口の変動
・経済活動のグローバル化や国際社会での協力の強化

また、「質の高い教育をみんなに」がSDGsの目標として掲げられており、企業もSDGs貢献の一環として積極的に取り組む必要があります。

SDGs「質の高い教育をみんなに」

1-2.企業にとっての出張授業に取り組む3つのメリット

企業が取り組む「出張授業」は、未来ある子どもたちにとって、普段の授業とは異なり、好奇心をかきたて生活の中に気づきを与えます。「出張授業」に企業が取り組むメリットは大きく3つに整理できます。

メリット整理

1.教育の場で社会貢献を果たせる
出張授業は、教育現場で重視されているキャリア教育の実施要望に応えることへとつながっています。子どもたちに自社が提供しているサービスや商品への興味や親近感を持ってもらいながら、同時に子どもたちに対して企業活動を通じて「将来を考えるきっかけ」を提供することができます。
社会と企業活動とのつながりを子どもたちが肌で感じることで、出張授業で学んだ内容が、社会にどのように役立っているかに気づくことへとつながります。

2.企業や商品・サービスへの理解が深まる
出張授業を通じて、企業理念やブランド、商品・サービスについてわかりやすくPRできます。
企業が出張授業を実践することは、将来の顧客となる子どもたちやその家庭へのマーケティングであるとともに、企業として社会貢献につながる教育CSR活動に取り組んでいる姿勢を示すことにより、ブランディングへもつながり得ます。

 
3.持続的に選ばれる企業へブランディング
幼少期・成長期の子どもたちへ、企業の社会・経済における役割や存在意義を伝え、理解を醸成しておくことでブランド認知を高め、次世代の消費者育成につながる活動となります。
さまざまな職業や仕事、企業の社会貢献活動について知ることにより、どのような仕事に就くか、どのように社会と関わっていくかといった子どもたちの未来の選択肢を広げることにつながります。
特に、生活者との接点を持ちにくいBtoB企業にとっては貴重な機会ともいえます。

2.出張授業を実施するには

出張授業を施策をして実施する場合、出張授業を実施する学校を探す、交渉する、学習指導要領に即したカリキュラムを作成するなど、自社だけで遂行するにはハードルが高く、教育CSR施策が得意な外部企業に依頼することは有効かつ効率的な選択肢となります。

2-1.出張授業が実施されるまでのプロセス

以下に一般的なプロセスをご紹介します。訴求したい内容と効果に合わせ、ターゲット年齢、地域などから、どんな学校で出張授業を実施するかを検討します。啓発する内容をカリキュラムとしてまとめ、概要がまとまったところで、各学校への交渉を開始します。

プロセス解説

2-2.出張授業の費用感

出張授業の費用は内容や実施校の規模、制作物へのこだわりなどによって大きく変動しますが、300万~800万円の幅で実施している事例が多くみられます。

2-3.注目される出張授業の運営手法

出張授業の運営において、文部科学省が注力している「アクティブラーニング」の手法を授業に取り入れることが教育現場で注目されています。
アクティブラーニングとは先生から一方的に情報が伝達される講義形式の授業ではなく、生徒が自ら能動的に考え、学びに向かうよう設計された教育手法です。グループワークやディベートがその一例となります。

アクティブラーニングの手法の1つに「プロジェクト ベースド ラーニング(以下、PBL)」と呼ばれる課題解決型学習法があります。生徒が課題に対して、それを解決するための方策を考える過程でさまざまな知識を得ていくという学習方法です。出張授業の手法として、PBLを採り入れてもよいでしょう。
以下にPBLによる出張授業の流れを紹介します。

PBL解説

3.小学校・中学校・高校別 出張授業の事例と特徴

出張授業の考え方は、基本的には小学校も、中学校も、高校も同じですが、年齢にあわせて、「気づく」「理解を深める」「意識を高める」といった、子どもたちに生じる意識変容レベルに違いがあります。

・小学生=「気づきがある学び」がメイン
・中学生=「深める学び」がメイン
・高校生=「高める学び」がメイン

出張授業の事例を3つ紹介します。
※以下はDNPの事例ではありません。

3-1.小学校の出張授業事例

小学校の出張授業の特徴:体験を通じた「気づきがある学び」

(小学校の出張授業の事例)

企業 回転寿司チェーン
テーマ お寿司で学ぶSDGs
実施内容 回転寿司という身近な題材から水産業や食をめぐる課題への気づきを提供し、その解決方法を一緒に考えます。

海のおさかなと漁業の今を学ぼう。
今、海で起こっていること、食の現場で起こっていることを映像や模型を利用して学びます。

食品ロスに気づこう。
実際にお店で使っている機械式の回転レーンと同じものを使い、回転お寿司屋さん体験を実施。
大量生産と大量消費、そして食品ロスの課題を体感します。

解決策を発表しよう。
何が問題か気づいた上で、解決方法をみんなで考え、発表します。
教育CSRのポイント 小学校の新学習指導要領に提示されている「持続可能な開発のための教育(ESD)」に即したカリキュラムとなっており、回転寿司という事業活動を通じて、社会課題について考え、SDGsの目標、12「つくる責任つかう責任」、14「海の豊かさを守ろう」、17「パートナーシップで目標を達成しよう」を啓発する内容になっています。

3-2.中学校の出張授業事例

中学校の出張授業の特徴:理解を「深める学び」

(中学校の出張授業の事例)

企業 生命保険会社
テーマ ライフプランニング授業
実施
内容
ライフプランニングを通じてこれからの長い人生における自分の夢やありたい姿を描いてもらうことで、子どもたちに、人生を計画的に生きることの大切さや、夢に向かって努力することの大切さを感じてもらいます。

ライフプランの作成
ライフプランナーが講師となり、生徒による仮想の家族のイベントプランニングをサポートします。
「子どもの進学」「住宅購入」「月々の生活費」「家族の夢」等のライフイベントを整理。将来、実現したい夢や計画を具体化していきます。

ライフプランの検証
「年度別収支グラフ」や「金融資産残高グラフ」を、デジタルツールを用いて可視化。描いた人生で必要となる資金をシミュレーションします。その内容に、ライフプランナーがアドバイスします。
実現したい夢や計画を現実のものとするために何が必要であるかを、よりリアルに感じてもらいます。
教育CSRのポイント 子どもたちに事業活動を通じてライフプランについて考える機会を提供することで、自社ブランディング、キャリア教育支援の実践につながります。

3-3.高校の出張授業事例

高校の出張授業の特徴:自身の将来を考えるきっかけや社会への視座を「高める学び」

(高校の出張授業の事例)

企業 新聞社
テーマ SDGsの達成に向けた取り組みの“今”を新聞で学ぶ
実施
内容
独自の教材(SDGsの切り口が記された付箋)を用いて、新聞を読み込み、SDGs17の目標に合致する記事に付箋を貼るワークショップを実施。

新聞記事から自ら考え、討論へ
実際のニュースをSDGs視点でとらえる導入とします。さらに、そのなかから一つ記事を選び、「自分だったらどうするか」「この課題を解決できる技術は何か」などをグループで討論し、発表し合います。

「考える」「ディスカッションする」「発表しあう」といったアクションを伴う授業を通じ、思考力、判断力、表現力の向上を図ります。
教育CSRのポイント 文部科学省は、新学習指導要領で「様々な情報や出来事を受け止め、主体的に判断しながら、自分を社会の中でどのように位置付けて社会をどう描くかを考え、他者と一緒に生き、課題を解決していくための力」が必要と提言しています。
環境、経済、社会の課題はお互いに深く関わっています。子どもたちが、新聞を素材に世の中を俯瞰し統合的に解決策を考える力を養うことで、メディアとしての新聞への接し方や価値訴求、ひいては子どもたちの「持続可能な社会」達成への行動に向けた啓発につながります。

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