ケヤキ並木と建物の調和を演出
木目調のルーバーを採用した清瀬市庁舎-アートテック建物探訪

建築物のさまざまなシーンに、オリジナルで豊かな表情を演出する「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック®」。その高いカスタマイズ性や質感表現などが実際の建物にどのように活かされているのかを、25年の経験を持つ建築ライターが探訪する「アートテック建物探訪」シリーズです。
東京都の清瀬駅北口から伸びる大通りを進んでいくと、道路の両サイドに立ち並ぶケヤキのトンネルに迎えられます。清瀬市のシンボルとして市民に親しまれている「けやき通り」の途中には、「清瀬市庁舎」があります。

本コラムは、壁材・床材など住空間向け製品を扱っているDNP生活空間事業部が編集しています。以下のバナーよりDNP製品・採用事例等をご覧いただけます。

清瀬市庁舎の庇部

庇(ひさし)の奥行が広くとられた彫りの深いファサード

ルーバーによるリズム感のあるファサード

地上4階建ての建物は細長く、各階に設けられた帯のような庇によって水平ラインが強調されたモダンな外観が印象的です。白い庇の奥行は深く、シンプルでありながら彫りの深い表情をしています。そして、2〜4階の庇の間で等間隔に並ぶ茶色の縦ルーバーによって、リズムのある特徴的なファサードが生み出されています。

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新庁舎建設基本計画のコンセプト

市のウェブサイトによると、旧庁舎の耐震性能の不足や老朽化などの理由から、新庁舎への建て替えが進められたそうです。「新庁舎建設基本計画」を策定した上で設計者選定の公募型プロポーザルを実施し、関係者と十分に協議を行いながら基本設計が取りまとめられています。

「緑と一体となったサスティナブルな庁舎」をコンセプトとして、敷地内にあるケヤキの大木を活かしながら木々をさらに植樹、西側の歩行者用通路を広げて庁舎の内外に緑の散策路がつくられました。建物における自然エネルギーの積極的な利用や省エネ・省資源化に配慮した環境配慮型庁舎をめざしたとのことです。

清瀬市庁舎の敷地内

「プロムナード」を軸に市民・地域・自然がつながる公園のような庁舎の敷地内

省エネ・メンテナンス・景観保全の役割を持たせた設計

敷地は南北に細長く、建物も敷地に合わせた長い形状をしています。そのため、夏期は正午から夕方にかけて南西からの日射を多く受け、熱負荷が大きくなります。深い庇の主な理由は、ガラス面に当たる直接光を遮るためです。なお、この庇はメンテナンス用のデッキを兼ねているため、日射の多い南西側だけでなく、日射の少ない方角の庇も深くなっています。

庇の間の縦ルーバーも、日射をさらに遮蔽する役割を担っています。このルーバー材として、アートテックが使用されました。縦ルーバーには木目柄があしらわれています。これは隣接するケヤキ並木との調和を考慮して、ケヤキの木目と色調を意識したものです。縦ルーバーを何色にするかについては、市民まつりの会場でアンケートが行われ、黒・白・茶の木目柄のなかで、特に人気が高かったのは茶でした。木目の表情をした縦ルーバーを並べることで、ケヤキの樹木が整然と並ぶ様子を連想させる外観に仕上がっています。

清瀬市庁舎の木目調ルーバー

隣接するケヤキ並木と調和するように設計された木目調ルーバー

天然の木材よりも優れた耐久性と耐候性を実現

関係者の話によると、当初の設計では天然の木材の使用が検討されていたそうです。しかし、長期の耐久性が求められる市庁舎のため、最終的には代わりになる材料が求められました。そのような折、雑誌に掲載されていたアートテックの記事が、市の施設管理担当者の目に触れたそうです。アルミにフッ素で焼付印刷を施しているため耐候性が高く、なおかつ本物の木のようにしか見えない意匠性が評価されて採用されました。市の担当者や設計者への柄の確認や色合わせは、複数回にわたって行われたとのことです。

細部まで考慮された設計と加工

材の一つ一つを見てみると、幅が広くて薄く、棒というよりは板に近い形状をしています。1枚の縦ルーバーに対し、使用されているアートテックは2枚です。アートテックに曲げ加工を施し、1枚のルーバーに見えるようにして納められました。それらの縦ルーバーが、庇のラインに対して一定の角度で斜めに取り付けられています。また、見上げたときにスッキリした印象を持たせるため、庇の下面(軒裏)はルーバーを取り付ける金具を軒裏の仕上げ材で覆い、ルーバー下部の取り合いは、庇の立ち上がりで隠れて見えないようになっています。

細かな配慮によって建物全体の意匠性と機能性が高められ、緑豊かな周辺環境と調和したモダンな庁舎。これから長きにわたり、市民に愛される建築となるでしょう。

■事例DATA
清瀬市庁舎
所在地:東京都清瀬市中里5丁目842番地
用途:市庁舎
施主:清瀬市
竣工年:2022年
設計:株式会社大建設計
構造:K構造研究所
施工:株式会社大林組
ファブリケーター:不二サッシ株式会社
建物構造:鉄筋コンクリート造・免震構造(地下1階柱頭免震)
規模:地下1階 地上4階
敷地面積:10,497.60m2
建築面積:敷地全体:4,003.56m2
上記のうち新庁舎:2,436.23m2
延床面積:延床面積敷地全体:13,601.46m2
上記のうち新庁舎:10,401.51m2
設計期間:2016年-2018年
施工期間:2019年5月-2022年4月

【参考】出典元
清瀬市 新庁舎建設

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  • *2023年10月10日現在の情報です。
    *アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。

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