パビリオンを短命で終わらせない! 未来の建築を担うアルミ外壁

世界の国々による独創的なパビリオンが多くの人を魅了した、2025年大阪・関西万博。建築に携わる人にとっては、パビリオン建築に関する工法や建材での工夫についても気になったことでしょう。
そこで今回は、パビリオン建築が持つ役割について実例をふまえて詳しく解説します。また、パビリオン建築が抱える課題を意匠・コスト・環境の側面から解決する可能性を秘めた建築素材「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック®」についてもご紹介します。

本コラムは、壁材・床材など住空間向け製品を扱っているDNPモビリティ&リビング事業部が編集しています。以下のバナーよりDNP製品・採用事例等をご覧いただけます。

パビリオンとは「博覧会や展示会などの仮設建築」

まずは、パビリオンの役割について解説します。パビリオンは単なる一時的な展示スペースではなく、出展者のコンセプトを明確に打ち出す「メッセージの器」という側面があります。

仮設建築物としての定義と役割

主に博覧会や展示会などで、特定のテーマや出展者の意図を表現するために建てられる独立した展示施設を、パビリオンと呼びます。

パビリオン(Pavilion)は、「蝶(ちょう)」を意味するラテン語「papilio」に由来する言葉です。蝶が羽を広げた形に似ていることから、やがて「大きなテント」を意味する言葉として使われるようになり、さらにその後、英語で「仮設の建物」を意味する言葉として用いられるようになりました。

パビリオンの最大の特徴は、「恒久的な使用を前提としない」点です。つまり、イベント期間に合わせて建設され、イベント終了後は一般的に解体・撤去されます。したがって、パビリオン建築には、安全性と機能を確保しつつ、短期間での建設と撤去を効率的に行うための計画が不可欠となります。

「メッセージを体現するアート作品」としての側面

パビリオンは、展示物を格納する箱としての機能だけではなく、国や企業などの出展者にとっての核となるメッセージやコンセプトを、建築物自体で表現する「巨大なアート作品」としての側面も持ちます。多くのパビリオンが立ち並ぶ中で、来場者の注目を集め、強い印象を残すのも重要な役割です。

「短命性」と「サステナビリティ」のジレンマ

パビリオンの建築的課題は、短期間で解体される「短命性」と環境負荷を抑える「サステナビリティ」という、相対するテーマの両立です。

大阪・関西万博では、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、多様な生き方を支える持続可能な社会の共創をめざすことが提示されました。パビリオンの建築も例外ではなく、今後求められるのは、資源を浪費する「モノ」としての役割ではありません。人々の幸福な生き方を支える「持続可能なシステムや場」としてのあり方やデザインが問われることになるでしょう。

パビリオン建築に求められるもの

短期間で解体される宿命を持つパビリオン建築には、通常の建築プロジェクトとは異なる要件が求められます。

(1)コンセプトを明確に伝える表現力

パビリオンは、出展者やイベントの核となるメッセージを来場者に伝えるための重要なコミュニケーションツールです。建築全体を通して「何を伝えたいのか」「どのような体験を提供したいのか」を明確に表現できなければなりません。

(2)見た目のインパクトと独創的なデザイン性

博覧会や展示会には、他の国や企業のパビリオンも建設されます。そのため、来場者の目を引き、「見てみたい」と思わせる魅力的な外観が不可欠です。

また、内観に関しては、展示物の価値を最大化すると同時に、来場者の体験を損なわせないデザイン性や快適性が求められます。国際的な博覧会のように大勢の人が訪れるイベントの場合は、多人数を受け入れる収容性や、安全・快適に移動させる動線設計の重要度も高まるでしょう。

独創的なデザイン性や見た目のインパクトを実現するには、従来の建材では再現しづらい複雑な形状や自由な曲面など、意匠設計の限界を広げる素材の選択が重要です。

(3)建設維持解体コストに優れた経済性

期間限定の仮設建築物であるパビリオンは、建設費用だけでなく、会期終了後の解体や廃棄にかかる費用まで含めたコスト計画が必要になります。また、建設期間が限られているため、工期を短縮して現場での労務工数を削減できる工法や建材が求められます。

(4)解体再利用を前提とした持続可能性

近年、大規模なイベントでは、環境意識の高まりが顕著です。建設に使用する資材は、環境負荷が低くリサイクル性の高い、持続可能性を持ったものが選択される傾向にあります。解体・撤去時に出る廃棄物を極力削減し、資材を移築・再利用できる「使い捨てにしない建築」の実現が強く求められるでしょう。

大阪・関西万博で話題となったパビリオンの紹介

大阪・関西万博では「短命性」と「サステナビリティ」のジレンマを乗り越えるため、各パビリオンでさまざまな工夫が凝らされました。また、今回の万博では、大屋根リングの上から会場を一望することができ、高層から見える箇所も意匠性の高いパビリオンが多くありました。ここでは、外壁材の選定や工法に特徴が見られた事例を紹介します。

生命の多様性を表現|日本館

「いのちと、いのちの、あいだに」がテーマの日本館では、「いのちのリレー」を通じた持続可能な社会への行動変容を促す取組みを展開していました。万博会場から集めた生ごみをバイオガス発電に利用のも、取組みのひとつです。

デザインの鍵となったのは、木の命の循環を象徴するCLT(直交集成板)という木材パネルを、円環状に雁行(がんこう)配置させた温かみのある外観でした。このCLTの一部は、会期後に解体・返却され、別の建築物としてリユースされる予定で、サステナビリティに強く配慮している点が注目されます。

木材とロープで揺らぎを表現|いのちのあそび場 クラゲ館

建築家・小堀哲夫氏が「建物ではなく、常に変化できる『場』を創る」という理念にもとづいて設計したのが「いのちのあそび場 クラゲ館」です。

パビリオン中央の「創造の木」の周囲には、木材の網状のパーツが配されました。玉結びにしたロープでつるすという簡易な固定方法を採用したこのパーツは、「クラゲらしい浮遊感」を表現しています。同時に、「ロープをほどけば簡単に解体できて再利用しやすい」という、リユース・移築を前提とした工法を実現しています。解体時の労務工数を抑える工夫といえるでしょう。

膜材とモジュールで軽量化|カナダ館

万博会場となった夢洲(ゆめしま)は、本来長い杭(くい)打ちが必要な軟弱地盤でした。そこで、カナダ館では膜材の使用によって建築物の重量を軽くし、鉄骨を井桁に組む工法を採用することで、長い杭を打たない工夫が凝らされました。また、バックオフィスには再利用可能なモジュールシステムを採用し、鉄骨部はピン接合によって解体時の労務工数を抑えています。

パビリオン設計において重要な要素となる、コストとサステナビリティに注目したアプローチだったといえるでしょう。

軽量な石材を使用した外壁で世界観を演出|サウジアラビア館

イギリスの建築設計事務所であるフォスター・アンド・パートナーズが手掛けたサウジアラビア館は、迷路の路地や、サウジアラビア産の軽量な石材が使用された石造り風の建物など、同国の伝統的な町並みをイメージしたデザインとなっています。

また、夜になると、音響設備が埋め込まれた外壁がプロジェクションマッピングのスクリーンの役割も担うよう設計されていました。これにより、幻想的な世界観を演出し、多くの訪問者やメディア等から高い評価を受けました。

パビリオン設計に最適なアートテック

パビリオン建築が抱えるデザイン性、コスト性、サステナビリティという相反する課題の解決には、素材の選択も重要な要素です。このテーマに貢献し得るのが、DNPの内・外装焼付印刷アルミパネル「アートテック」です。

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デザイン性課題の解決:カスタマイズと再現性

アルミの素材感を生かしたアートアルミシリーズ

アートテックは、高度な印刷技術とフッ素塗料による焼付印刷により、天然木や石材のリアルな質感や色合いを忠実に再現できます。また、印刷ならではの多層構造により、コンセプトに合わせた自由な表面仕上げと質感の表現が可能です。

木質を表現したい有機的なコンセプトであっても、金属的な質感を求められる未来的なコンセプトであっても、本物と見紛うほどのクオリティでありながら、素材の制約を受けることなく設計者の理想の意匠を実現できます。

コスト課題の解決:軽量性で工期短縮と施工効率

アートテックの基材はアルミです。アルミは鉄や石材と比べて非常に軽量で、外壁や天井などに使用すれば建築物全体の重量を大きく軽減できます。また、重量のある建材と比較して、大がかりな重機を使用せずに施工可能です。結果的に工期短縮につながり、人件費を含めた建設コストの削減に貢献するでしょう。

また、アルミは、軽量性に加えて高い加工性も有しています。外壁や軒天井、庇(ひさし)、幕板など、あらゆる場所に適した形状への加工が容易で、曲げ加工やルーバー、R加工など、複雑な形状にも対応可能です。パビリオンのように多様な形状やデザインが求められる建築物に向いた建材といえるでしょう。

サステナビリティ課題の解決:高耐久性とリサイクル

アートテックに施されているフッ素塗料による焼付印刷は、色あせや変形に強く、屋外でも長期間にわたって竣工時の美しさを保ちます。メンテナンスの頻度を大幅に減らせるため、建築後の維持管理コスト低減につながります。

また、アートテックは、リサイクル性の高いアルミ材を使用しています。パビリオンのように期間限定の建築物に使用される素材は、会期終了後のリサイクルしやすさも重要な要素であるため、リサイクル性の高い建材は有利といえるでしょう。

まとめ

パビリオン建築は、デザイン性、経済性、持続可能性という、時に相反する要件の両立が求められるプロジェクトです。これからのパビリオン建設は、軽量化、独創的な工法、リユースしやすい建材の使用といったさまざまな工夫に挑戦していくことになるでしょう。

DNPの「アートテック」は、意匠の自由度、軽量性、高耐久性などの特性を兼ね備え、パビリオン建築が直面する課題を同時に解決できる可能性を秘めています。天然素材や未来的な質感を忠実に再現しつつ、アルミという素材の特性によって、パビリオンの「短命性」を乗り越え「未来の建築」を支える建材となるでしょう。

【参考】出典元
【万博60秒解説】万博の3つの「柱」とは? METI Journal
2025年開催|大阪・関西万博の会期後のパビリオンは?CLTパネルを含む建材の再利用の仕組みを解説 SumaiRing(すまいりんぐ)
【日本館・前編】「はじまり」も「おわり」もないパビリオン「日本館」の魅力とは? EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト
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  • 2025年10月現在の情報です。
    *アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。

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