地域性と調和する建築デザインとは?景観条例の基本と対応策
近年、建築の分野では「地域性」というキーワードがよく聞かれます。地域の文化や環境、風土をふまえた魅力ある建物や街づくりに注目が集まっていることの現れといえるでしょう。一方で、日本では画一的ともいえる建物が主流となり、地域の個性が失われつつあるのも事実です。
今回は、地域性と調和する建築を実現するための取組みについて、建物と地域を調和させるためのルールである「景観条例」と合わせて解説します。また、高いデザイン性で地域の個性に寄り添える「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック®」についても事例を交えて紹介します。
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INDEX:
現代の建築デザインに欠かせない「地域性」と「景観条例」
建築コンセプトの鍵:「地域性」で街とつながる
人を引き込む景観:自治体主導の保全で地域の活性化につなげる
サステナブル建築の視点:歴史・文化・風土との調和で未来へつなぐ
景観条例の基本ルール
(1)建物の高さ:スカイラインを保つ規制
(2)外壁の色:地域との調和を重視した色彩制限
(3)屋根の形状:伝統的様式と勾配の指定
(4)広告看板の大きさ:景観を損なう広告物の制限
景観条例にも対応可能なアートテック
自然素材が抱える「耐久性・メンテナンス性」の課題を克服
景観を損なわないリアルな自然素材の再現性
アルミならではの軽量性・加工性と高い耐候性
景観に配慮してアートテックが用いられた事例
JA上川ビル
清瀬市庁舎
佐賀県水産会館
まとめ
現代の建築デザインに欠かせない「地域性」と「景観条例」
各自治体が定める景観条例は、現代の建築デザインにおいて欠かせない視点です。ここでは、建築が地域と調和し、未来に受け継いでいくために必要な「地域性」の考え方と、条例が果たす役割について解説します。
建築コンセプトの鍵:「地域性」で街とつながる
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地域性を有する街並みのイメージ |
「地域性」とは、その土地固有の風土、文化、歴史といったアイデンティティを意味します。「リージョナリズム(地域主義)」とも呼ばれ、建築の分野ではデザインに地域性を取り入れることを意味します。
しかし、現代の日本では、工期の短縮や経済性が優先され、地域性は軽視されてきました。日本中、どこへ行っても同じような街並みが広がり、地域の個性が失われる傾向にあります。
こうした事態への反省から、近年では、さまざまな自治体で景観条例が定められ、地域性を守り育てることをめざしています。そのため、建築コンセプトにも、街並みに溶け込むことや、「街とつながる」地域性が求められるようになりました。
人を引き込む景観:自治体主導の保全で地域の活性化につなげる
景観条例は、地域の歴史や自然と調和した「良好な景観」の保全・創出を目的とした具体的なルールです。景観法にもとづいて各自治体で定められています。自治体が主導して建物の意匠や色彩、高さを規制することで、街全体に統一感や独自性を持たせることをめざすものです。
個性ある街並みは、観光客を呼び込んだり地域経済を活性化させたりするなど、地域に人を引き込む魅力となります。景観への配慮は、単なる法令準拠という視点だけでなく、地域の価値を高め地域社会に貢献する意味合いを持ちます。
サステナブル建築の視点:歴史・文化・風土との調和で未来へつなぐ
景観条例への対応には、建築をサステナブル(持続可能)な視点から考えることが重要です。例えば、その地域で取れる材料の活用や、地域の気候に適した工法や設計の選択などが検討します。
地域の歴史や文化、気候などの風土が持つ制約を理解して建築デザインに落とし込むことが、長く地域に愛される景観の創出へとつながります。
景観条例の基本ルール
景観条例の内容は自治体によって異なりますが、建物の意匠や形態に制限を設ける点は共通しています。ここでは、景観への影響が大きい4つの基本的な規制を見ていきましょう。
(1)建物の高さ:スカイラインを保つ規制
景観地区では、周囲の山並みや歴史的な建造物との調和を保つために、多くの場合、建物の高さの最高限度が定められます。都市のスカイライン(空の線)を統一し、建物が空を遮ることによる圧迫感を軽減する目的があります。
(2)外壁の色:地域との調和を重視した色彩制限
外壁の色彩は、その建物だけでなく街全体の印象を決定づける要素です。そのため、多くの自治体では、派手な原色を避け、地域の自然環境や伝統的な街並みに合わせた彩度(色の鮮やかさ)や明度(色の明るさ)の基準が設けられています。
(3)屋根の形状:伝統的様式と勾配の指定
屋根の形状や模様、色彩なども、周囲に影響を与える重要な要素です。他の建物と調和し、伝統的な街並みを継承するために、屋根の形式(切妻屋根や入母屋屋根など)や適切な勾配(傾斜)、軒の出の深さなどを指定することがあります。
(4)広告看板の大きさ:景観を損なう広告物の制限
景観地区内では、建物本体だけでなく広告看板といった工作物に対しても規制が設けられます。具体的には、看板の設置場所、大きさ、色彩、夜間の照度(明るさ)などが規制の対象です。過度な視覚的ノイズを抑制し、地域性を保護することを目的としています。
景観条例にも対応可能なアートテック
景観条例に対応し、地域性を担保する建物の実現には、自然素材の採用が理想的です。しかし、自然素材には耐久性やメンテナンス性などの課題が伴います。これらの課題を解決し、意匠性と機能性を両立できる素材が、DNPの内・外装焼付印刷アルミパネル「アートテック」です。
自然素材が抱える「耐久性・メンテナンス性」の課題を克服
木材や石材などの自然素材は、素材の持つ温かみや重厚感などが魅力です。一方で、屋外で使用すれば腐食や劣化は避けられません。特に、寒冷地や塩害の影響を受ける地域では傷みが早くなります。また、素材の美観を維持するためには定期的な補修が必要となり、維持管理に手間とコストが掛かります。
アルミ基材にフッ素塗料で焼付印刷を施したアートテックは、自然素材が抱える屋外での腐食・劣化の課題を克服しました。メンテナンス頻度を大幅に削減できるため、建物のライフサイクルコスト(LCC)の低減にも大きく貢献するでしょう。
景観を損なわないリアルな自然素材の再現性
アートテックは、DNPが培ってきた高精細な印刷技術と独自の多層構造を組み合わせることで、木目や石目といった自然素材の色・柄・質感をリアルに再現できます。その表現力は、本物の素材と見分けがつかないほどのクオリティです。建物自体の意匠を損なうことなく、景観条例で求められる「自然素材に近い落ち着いた意匠」を実現できるでしょう。
また、豊富なデザインにより、建物のコンセプトに合わせた表現ができる点も大きな強みです。色柄を実物大で印刷してモックアップを作ることも可能で、より精緻な検証が可能という特徴ももちます。
アルミならではの軽量性・加工性と高い耐候性
アルミの基材にフッ素塗料で焼付印刷を施したアートテックは、高い耐候性を発揮します。屋外でも長期間にわたって色あせや変形を起こさず、竣工時の美しさを保てます。
アルミは、鉄やコンクリートの建材に比べて軽量であることも利点です。外壁や軒天に使用すれば建物全体の重量が軽くなるため、基礎や構造体への負荷が大幅に軽減されます。
さらに、アルミならではの高い加工性により、複雑な形状への対応も容易です。外壁、軒天、ルーバーなど、建物のさまざまな部位に柔軟に取り入れられ、施工の効率化にも貢献します。
景観に配慮してアートテックが用いられた事例
アートテックは、全国の公共施設や商業施設などで採用され、地域の景観との調和に貢献しています。ここからは、地域のアイデンティティを守りながら、機能性と意匠性を高めた具体的な事例を3つご紹介します。
JA上川ビル
北海道旭川市に建てられた「JA川上ビル
」では、地元の素材である道南杉の採用を検討していました。しかし、寒冷地の厳しい環境下での耐久性やメンテナンス性を考慮して、採用を断念せざるを得ませんでした。
そこで、道南杉風の意匠を再現したアートテックを採用し、天然木の温かみのある雰囲気をそのままに、アルミパネルの高い耐久性を確保しています。庇(ひさし)部分などに施された曲げ加工にも木目柄が途切れることなく追従し、外観の美しさを保っているのが特長です。
清瀬市庁舎
東京都の「清瀬市庁舎
」の改築では、建物の前に広がる市のシンボル「けやき並木」との調和が建築コンセプトの核となりました。
コンセプトを実現するため、ケヤキの木目と色調を意識してデザインされた木目調のルーバーにアートテックが採用されています。なお、この外装は、かつて清瀬市域で使用された「うちおり」と呼ばれる自家用の衣類もモチーフとしています。
完成した建物は、本物の木と見分けがつかないほどの高い意匠性と、アルミならではの耐候性が評価されました。地域の景観を守りながら、庁舎としての公共性を表現しています。
佐賀県水産会館
「佐賀県水産会館
」は、建物に佐賀県産の木材を多用している点が特長です。また、軒天やルーバーといった、特に高い耐久性が求められる部位には、本物の木材に合わせた意匠のアートテックが採用されています。
天然木材との意匠的な調和を保ちながら、風雨にさらされる部分の長寿命化を図り、建物のメンテナンス負荷を軽減しています。
まとめ
景観条例は、地域の歴史、文化、自然との調和を保ち、街の個性を高めるために不可欠なルールです。地域に愛され、人を呼び込む建築の実現には、景観条例の遵守とその土地の風土に寄り添った意匠が求められます。
しかし、意匠性に優れる自然素材は、耐久性やメンテナンスの面で課題が残ることが設計者の悩みの種でした。また、地域性を表現しようにも、高機能性と意匠性の両立は容易ではありません。
こうした課題を解決し、景観規制と機能性の両立を実現する建材が「アートテック」です。コストや手間を抑えながら、地域の個性を未来へつなぐ建築を実現するために、ぜひアートテックを有力な選択肢としてご検討ください。
【参考】出典元
景観法の概要 国土交通省
景観まちづくりの制度について 国土交通省(
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「場所性からなる建築」 とやま建設ラボ
建築と地域性 福島建築設計事務所
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2025年10月現在の情報です。
*アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。
