官民連携により、地域の社会課題を解決する
ー「浜通り復興リビングラボ」での2年間の実証と、その先にある可能性ー
DNP大日本印刷(以下DNP)は、令和6~7年度、復興庁が公募した「浜通り復興リビングラボ~サイエンス×官民共創まちづくり~」※1に参画し、福島県浜通り地域において、自治体や民間事業者と連携した実証に取り組みました。 東日本大震災からの復興が進むこの地域では、住民の帰還や定住を支える生活基盤の整備が引き続き重要な課題となっており、医療、生活環境、行政サービスなど、さまざまな領域で新たな解決策が求められています。 DNPは、本取組で得られた知見・経験を生かし、将来的な社会実装を見据え、具体的な官民共創のあり方を研究しています。 ※こちらのページに記載されている内容は、2026年6月時点の情報です。
地域を支える服薬サービス
ードローンによる薬類配送を見据えた遠隔管理の実証ー
|
|---|
| ドローン、テスト飛行の様子 |
南相馬市は、「世界一、実証・チャレンジしやすく、イノベーションが日常にとけこんだまち」を目指しています。DNPは、ドローンによる医薬品配送と遠隔での服薬管理を組み合わせた「服薬サービス」の実証に取り組みました。この取り組みは、交通弱者や高齢者など医療アクセスに課題を抱える地域に対し、新たな医療サービスの提供手段を検証するものです。
実証では、ドローンに第1種医薬品等を封入した断熱BOXを搭載し、テスト配送を実施しました。温度変化や輸送時の衝撃といった品質面の検証を行い、医薬品配送の安全性と実現可能性を確認しました。さらに、最新のドローン航路運航ガイドラインに準拠した航路の設計と運航試験を行い、無人航空機運航管理システム(UTMS)を活用した運航管理を含め、実運用を見据えた検証を進めました。これにより、地域におけるドローン航路の整備と運用に関する実践的なノウハウを獲得しました。
また、対話型ロボットによる服薬動作の確認やIoT機器を活用した服薬履歴の把握を通じ、遠隔での服薬管理の有効性を検証でき、ドローン配送と組み合わせた包括的な医療支援の可能性が示されました。
以上の取り組みを通じて、災害時だけでなく平時にも機能する「フェーズフリー」の医療提供のあり方が見えてきました。
|
|---|
| 管制システム「Trajectory TRJX※2」画面上で、ドローンがどこを飛行しているか確認 |
ドローンを活用した獣害対策支援
― 上流の意思決定を支える新たな役割 ―
|
高周波装置が付いたドローン |
可視光カメラとサーモカメラの画像比較 |
相馬市および浪江町では、近年深刻化する獣害対策に対し、ドローンを活用した新たなアプローチの検証を実施しました。住宅地への野生動物の出没や農作物被害への対応は喫緊の課題である一方、広域にわたる状況把握や人手不足といった制約から、効率的な対策の実施が難しい状況にあります。
実証では、サーモカメラを搭載したドローンによる観測を通じて、野生動物の発見や行動把握の可能性を検討しました。その結果、特に冬季においては個体の検知精度が高まり、従来手法と比較して効率的な状況把握につながることが確認されています。一方で、騒音による影響や装置の効果範囲など、現場運用における制約条件も明らかになりました。
これらの検証から、獣害対策における民間企業の役割として、状況把握や分析といった上流領域での価値発揮の重要性が見えてきました。ドローンとデータ活用を組み合わせることで、行政の意思決定を支える基盤となる情報を提供し、持続的な対策につなげていくことが期待されています。
行政窓口における対話支援
― 情報伝達の確実性を高める仕組みづくり ―
楢葉町、富岡町、浪江町では、行政窓口における「DNP対話支援システム」の実証を行いました。人口構成や居住環境が大きく変化した地域においては、外国人住民や高齢者への対応を含め、行政サービスの質向上が重要なテーマとなっています。
本システムは、多言語翻訳機能と文字・図による表示機能を備えており、窓口における意思疎通を補完します。これにより、来庁者対応の円滑化や職員の業務負担軽減といった効果が確認されました。さらに、災害時などの非常時においても、言語の壁を越えて正確に情報を伝達できる点は、地域の安全・安心を支えるうえで重要な役割を果たします。
このように、本システムは単なるデジタルツールにとどまらず、行政業務の効率化と情報伝達の確実性を両立させる基盤として機能しています。
|
「DNP対話支援システム」を活用した富岡町の窓口 |
【官民共創が生み出す社会実装への道筋】
官民共創においては、地域の声を聞いた課題設定力、実証設計・省庁横断テーマとなる案件対応力、関係者調整・制度適合までを一体的に推進することが重要となります。
DNPは、「浜通り復興リビングラボ」での2年間の取組みを通じて、このようなプロセス全体を推進する実践知を蓄積してきました。
社会課題の解決と持続可能な地域づくりに向けて、官民が連携する新たな枠組みの重要性は、今後ますます高まっていくと考えられます。
DNPは今後、事業構想や仕組み設計の段階から関与することで、官民共創による価値創出をさらに加速させていきます。
参考URL
復興庁「令和6年度 浜通り復興リビングラボ」実証事業にて3件を実施 | ニュース | DNP 大日本印刷
※1
浜通り復興リビングラボ~サイエンス×官民共創まちづくり~ | 復興庁
※2
Trajectory社のTRJXは、3D都市データや地形情報などを統合して飛行ルートの自動設計などを行える空間情報管理システム。天竜川のドローン航路の運用などに採用されています。
このコラムで紹介した製品・サービス
-
ドローンを活用したソリューションサービス
ドローンソリューション
ドローンが農業や点検などで社会のインフラとして注目されつつある今、DNPはその独自技術とドローンを融合したサービスを創造し、お客様と社会に新たなソリューションを提供します。物流やインフラ点検、在庫管理など社会を支える新サービスをはじめ、先進的なドローンソリューションにより、 これからの産業と社会に貢献します。
-
音声字幕・翻訳によるコミュニケーションのユニバーサル対応
DNP対話支援システム
窓口業務等の対話の音声をリアルタイムで文字に変換し、目立たせたい単語をフォントで強調して透明ディスプレイに表示。聴覚障がい者や高齢者など音声を聞き取ることが困難な人や、在住・訪日外国人との円滑なコミュニケーションを支援します。