オムニチャネル時代のライトタイムマーケティングを実現するツール選定のポイント

- 一斉送信の時代は終わり、一人ひとりに合わせたマーケティングに -

顧客の情報収集手段はマスメディアが主体でしたが、検索エンジンの発達やSNSの台頭により、顧客自身が能動的に情報収集をしたり、発信したりできるようになりました。一方、世の中に流通している情報量は急増しているにもかかわらず、情報の消費量はそれに相関するレベルでは変化していません。つまりは、顧客は自分にとって必要な情報だけを、自らの意思で高度に取捨選択するような時代となったと言えるでしょう。

視点を変えると、企業は情報を配信してもなかなか受け取ってもらえないため、顧客の意思決定への関与が難しくなっていて、企業は顧客一人ひとりにとって的を射た情報をより適切に提供することが必須となりました。

こうした背景から、適切なタイミングとチャネルを意識した「ライトタイムマーケティング(Right-time Marketing)」が改めて注目されはじめています。しかし、その実現には、データの管理方法の見直しや、導入しているシステムの連携など、さまざまなハードルを越えていかなければならないことも事実です。

本コラムではこの「ライトタイムマーケティング」と、それを実現するためのポイントについて整理します。

目次

1.「ライトタイムマーケティング」とは
 1-1.「ライトタイムマーケティング」とはなにか
 1-2.ポイント1 最適なタイミング
 1-3.ポイント2 最適なチャネル
 1-4.実現には素早く顧客データを統合する仕組みが必要
2.「ライトタイムマーケティング」を実現するデジタルマーケティング基盤とは
 2-1.ポイントは“データの統合から活用までの流れるようなスピード感”
 2-2.リアルタイムに顧客データを統合し、リードタイムをなくす
3.まとめ

1.「ライトタイムマーケティング」とは

1-1.「ライトタイムマーケティング」とはなにか?

「ライトタイムマーケティング」は、最適なメッセージを最適なターゲットに届けるという従来のマーケティング手法に、最適なチャネルと最適なタイミングをプラスしたマーケティング手法です。

最適なメッセージを最適なターゲットに送ったとしても、ターゲットが欲しいと思っていないタイミングだと効果は薄くなります。つまり、タイミングによって施策の成果が大きく変わるということです。「ライトタイムマーケティング」はこのタイミングやチャネルにも注目してマーケティング施策を実施する手法です。

1-2.ポイント1 最適なタイミング

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タイミングという言葉だけを取ると、「出勤前の朝の時間に配信するのが良い」といった単純な時間帯を指すこともあれば、「商品をカートに入れたあと」のようになんらかのアクションをトリガーとしたタイミングも考えられます。「ライトタイムマーケティング」は主に後者の視点に立ちます。仮に、ある商品をカートに入れたまま、購入せずにECサイトを離脱した顧客に対して、カートに入っている商品の割引クーポンを最適なチャネルから届けられたらどうでしょう。その顧客の購入を後押しすることにつながるのは、容易に想像できます。

最近では、より新しいテクノロジーを活用して“アクション”をとらえる取組みが活発になってきています。特に増えているのは位置情報をアクションのトリガーとして活用されるケースです。

例えば、BeaconやGPSで捕捉した情報にもとづき、実際にその場に来たタイミングで、顧客へのオファーやリマインドを行うということが考えられます。旅行を予約したタイミングではなく、旅先で実際にレンタカーを借りたタイミングで、ドライブ道中にあるレストランのクーポンを配布する・・・などといったシナリオが考えられるでしょう。「ライトタイムマーケティング」では、このように任意のアクションを条件とすることが基本となります。

1-3.ポイント2 最適なチャネル

アプローチするチャネルも重要です。アプローチしたタイミングでターゲットが利用しているチャネルからメッセージを届けなければ、情報を配信したとしても、ライトタイミングで読まれることはありません。

例えば、顧客が外出しているのに、PCでしか見ることができないチャネル(PC用メールなど)に情報を配信しても、外出から帰ってきた頃には他の大量のメールに埋もれてしまい、見られないといった結果も考えられます。

ターゲットのその時の状況に合わせて、メール、SNS、アプリ、チャット、音声アシスタントといったデジタルのチャネルや、ダイレクトメール、チラシ、スタッフの接客、デジタルサイネージといったリアルのチャネルを活用し、情報をライトタイミングで届ける仕組みを整えておくことが重要です。

1-4.実現には素早く顧客データを統合する仕組みが必要

上述のポイント1、2を意識し、「ライトタイムマーケティング」を成功させるためには、まず、顧客のさまざまなデータをリアルタイムに一元管理していくことが重要です。可能な限り速いスピードでデータを統合できるようになると、本当に顧客が喜ぶ瞬間を狙ったオファーの実行ができるようになるでしょう。

次章では、「ライトタイムマーケティング」実現に有用なツールの選定について、ポイントをご紹介します。

2.「ライトタイムマーケティング」を実現するデジタルマーケティング基盤とは

さまざまな顧客データの統合を素早く行っていくツールとしては「Marketo」や「Salesforce Marketing Cloud」などのMAはもちろん、タグマネジメントから生まれた「Tealium」や、ウェブ接客を軸とした「KARTE」などさまざまな製品やサービスが市場に出はじめています。

これらのツールを用いると、さまざまな顧客データをリアルタイムに統合でき、顧客をより早く正しく理解できるようになります。

2-1.ポイントは“データの統合から活用までの流れるようなスピード感”

「ライトタイムマーケティング」では、顧客のなんらかのアクションを検知し、最適なチャネルからオファーを実行していく必要があります。これを実現するためには、まず検知したアクションが“誰の”アクションなのかが素早く判定されることが重要です。そのためには、“顧客ID”と、“検知したアクション”が、リアルタイムにマッチングするような仕組みが求められます。

次に、そのアクションがネクストオファーのトリガーとなる場合、最適なチャネルからオファーを実行していく必要があります。そのオファーを顧客が受け取るであろうシチュエーションを見極めた上で、最適なチャネルへ素早くオファーを発信できる流れを構築しておくことが必要です。

また、顧客データを管理するツールには、オファーを実行する機能をあえて持たないことも多く、既に導入されているオファー実行系のツール群との連携性を高めるというコンセプトが主流になっています。すなわち、顧客のアクションを検知した瞬間に、オファー実行系ツール(メール配信、広告配信、Webサイト最適化、アプリプッシュ通知などのツール)に素早く顧客データを連携できるかどうかも、ツール選定上のポイントです。

2-2.リアルタイムに顧客データを統合し、リードタイムをなくす

流れるようなコミュニケーションを実現するために意識しておくべき大きなポイントは、狙う瞬間(理想)とシステム的にオファー実行可能となる時点(現実)とのリードタイムをなくすことです。

狙う瞬間が連続的に続く場合、オファー実行も連続的にリアルタイムに行うことが求められます。

例えば、Webサイトでの遷移アクションのたびにコミュニケーションを最適化する必要がある場合などです。遷移のたびにリアルタイムなコミュニケーションの切り替えが求められますが、この切り替えリードタイムがゼロになることが大きなポイントとなってきます。

狙う瞬間が今ではなく、未来の瞬間であるケースも存在します。

先述したような旅行者へのクーポン配布の場合、旅行予約時点ではオファー実行はひとまず寝かせておき、“ドライブをしはじめた”というアクションを検知した瞬間にオファーを実行することが最適でしょう。“ドライブをしはじめた”瞬間を的確にとらえ、リードタイムなく確実に情報を届けることが大きなポイントとなってきます。

リアルタイムに“誰が” “なにを”したかというデータが顧客ID単位で統合されていることが重要です。デジタルチャネルとリアルチャネルの垣根を越えてリードタイムゼロを目指すことにより、顧客の期待値をより大きく超えるコミュニケーションを実現していくことができるでしょう。

3.まとめ

本コラムでは「ライトタイムマーケティング」と、それを実現するためのツールの選定ポイントについてご紹介しました。顧客データをリアルタイムに統合する基盤と、リアルタイムに各チャネルのツールに顧客データを連携できる仕組みを整え、コミュニケーションをしはじめるまでのリードタイムを極力なくすことが顧客の期待値をさらに超えるポイントです。

“お客さまが喜び、感動するアプローチとはなにか”について、セクションの垣根を越えて、カスタマージャーニーをもとに今一度見つめ直すきっかけとしていただければ幸いです。

※2018年3月時点の情報です。

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