意思決定のスピードと質に差が生じるBIとは?
~ニューノーマルを生き抜くデータ活用の極意~

コロナ禍の意思決定をスピーディーに実現するビジネスインテリジェンスツールとは?
昨今、ビジネスの現場においてデータ活用を積極的に行う企業が増えています。 しかし、データ分析・活用のスキルが平準化されておらず、意思決定において最適な活用方法を見いだせている企業はまだ多くありません。また、データ分析を行うためにビジネスインテリジェンスツール(以下、BIツール)を活用する企業も多いですが、BIツールにもさまざまなツールがあります。現場のビジネスユーザーが日々の業務においてBIツールを使いこなせるレベルで定着化できていないことも多く、そのために意思決定のスピードが上がらない、単一的な分析しかできず施策効果が得られない等の課題が生じているのが現状です。
特に現在、コロナ禍というビジネスの方向性が予測しにくい状況が続くなかで、いかに早く、正確なデータを収集・分析し、意思決定のスピードを高めていくかが、企業経営において生き残りを左右するカギとなってきています。
今回は、ニューノーマルを生き抜くために必要なBIツールと、その活用事例をご紹介します。

目次

1.コロナ禍において、なぜBIツールを見直す必要があるのか
2.活用が進むセルフサービスBIの特徴と選定のポイント
3.意思決定のスピードと質を高める探索型BI
4.事例(探索型BIを活用したコロナ禍の消費者行動分析)
5.まとめ

1. コロナ禍において、なぜBIツールを見直す必要があるのか

コロナ禍においては、新しい生活様式や価値観の変化により短期間で市場環境が大きく変化しました。これによって消費行動も大きく変化しており、企業は通常時と異なる対応が必要となり、経営的判断を求められる機会が増えてきています。

さて、このような環境下でスピーディーかつ正確な意思決定を行うには「データから正確に状況を分析・把握すること」が重要になります。そのためには、BIツールを活用したデータの可視化が必要不可欠です。

しかし、BIツールにもさまざまな種類があり、導入したものの、現場のビジネスユーザーがツールを使いこなせず、意思決定のスピードが上がらない、単一的な分析しかできず状況を正確に把握できない等の課題が生じています。このような状態では、意思決定は進みません。

今こそ、従来のBIツールを見直し、正確でスピーディーな意思決定を行い、ニューノーマルのビジネス変革を実現する必要があるのではないでしょうか。

2. 活用が進むセルフサービスBIの特徴と選定のポイント

セルフサービスBIの特徴

近年、多くの企業でセルフサービスBIの活用が進んでいます。セルフサービスBIとは、データの加工や集計、分析のダッシュボード作成など、データ分析の一連の業務を実際にデータを活用するビジネス部門自ら行うことを実現したBIツールです。

従来は情報システム部門がデータ分析の一連の業務を担う傾向にありましたが、その場合、システム部門がビジネス部門の活用用途やニーズを理解できておらず十分な分析ができない、システム部門のリソース不足でデータ分析が進まずスピーディーな意思決定・施策ができない等システム部門とビジネス部門の間でさまざまな課題が生じていました。

そこで、このような課題を解決するために開発されたのがセルフサービスBIです。
セルフサービスBIは分かりやすいGUIが特徴的で、プログラミング等の専門的なスキルがなくともクリック操作等で直感的に操作でき、ビジネス部門のユーザーでもすぐに利用することが可能です。

セルフサービスBIの種類

セルフサービスBIはさまざまなベンダーから提供されており、代表的なツールとしてクリックテック・ジャパン株式会社の「Qlik Sense」、Tableau Japan株式会社の「Tableau Desktop」、日本マイクロソフト株式会社の「Power BI」等があります。

いずれのツールもビジネス部門自らデータを分析、可視化する機能を備えていますが、見栄えの良いグラフィック機能を備えているツールや、高度な統計解析機能を備えているツールなど、利用用途に応じて製品の選定ポイントは異なります。

セルフサービスBIの選定のポイント

(1) 多面的な情報把握がしやすいツールを選ぶ

一般的なデータ分析では、購買データ等のトランザクションデータと、それに紐付く複数のマスターデータを用いて分析を行います。

しかし、一般的なセルフサービスBIでは分析内容を事前に定義するため、固定された分析しかできず、新たな視点での分析や突発的な分析要求にすぐに対応できません。

例えば、販売する商品の年代ごとの購買傾向を分析する場合、一般的なセルフサービスBIでは、対象商品の年代ごとの売上は把握できますが、それ以外の「対象商品を購入していない年代はどこか?」「対象商品を購入していない年代が、購入している商品は何か?」といった事前に定義されていない傾向を即座に把握することができません。
また、分析の視点が変わるたびにデータの加工や集計からやり直す必要があります。

そのため、より柔軟な意思決定を実行するためには、分析したい項目を深堀り(ドリルダウン)しながらデータを多面的に把握・分析ができるツールを選択することが良いとされています。

(2) すべてのデータを関連付け、欠落を防げるツールを選ぶ

一般的なセルフサービスBIは、複数のデータを結合する際に「主のデータ」(マスターデータ等)に紐づく購買データ等の「従のデータ」(トランザクションデータ等)のみを結合させる場合があります。

しかし、この方式では基本的に結合できないデータも多く、すべて主のデータに紐づいていないと活用できないことが前提となっています。

そのため、すべてのデータを結合できるセルフサービスBIを選定することで、一般的なセルフサービスBIでは盲点となっていた要素を洗い出すことが可能となります。

3. 意思決定のスピードと質を高める探索型BI

2章で述べた選定基準を満たすセルフサービスBIとして「探索型BI」があります。探索型BIの代表的なツールが「Qlik Sense」です。

探索型BIを活用するメリット

(1) 独自の連想技術で多面的な状況把握を可能にし、意思決定のスピードを高める

一般的なセルフサービスBIは、分析内容を事前に定義するため、固定された分析しかできず、新たな視点での分析や突発的な分析要求にすぐに対応できません。

一方、探索型BIは独自の連想技術により、データ分析に活用するすべてのデータを網羅的に関連付けるため、分析の視点や要求が変わってもスピーディーに分析軸を変更し、思考を途切れさせることなく多面的にデータの探索や分析が可能となります。

探索型BIの特長説明図

(2)すべてのデータを関連付け、意思決定の質を高める

一般的なセルフサービスBIは、「主のデータ」(マスターデータ等)と紐づく「従のデータ」(トランザクションデータ等)のみ可視化するため、データ中で欠落している項目(例:トランザクションデータには存在するが、マスターデータには存在しない項目、等)については可視化することが困難です。

一方、探索型BIの場合はすべてのデータを「主のデータ」として網羅的に関連付けるため、例えばマスターデータに紐付かないデータも「欠落したデータ」として可視化されます。

そのため、すべてのデータに対して探索を行うことができ、正確な状況把握が可能となります。

探索型BIと一般的なBIの特徴の違いの説明図

4. 事例(探索型BIを活用したコロナ禍の消費者行動分析)

ニューノーマルにおいて企業は変革を求められており、データから生活者行動を正確に捉え、スピーディーな意思決定を行う必要があります。そのためには、3章で述べた探索型BIの活用が効果的です。

今回は、探索型BIを活用してコロナ禍における市場環境や生活者の消費行動の変化を分析し、今後の商品の需要予測や販促に役立てるための事例をご紹介します。

目的

探索型BI(Qlik Sense)を活用し、新型コロナ罹患者が多い期間における商品の購買傾向を把握することで、コロナ禍における生活者の消費行動の変化を捉え、今後の商品の需要変化を予測する。

活用するデータ

行動データ:東京都 新型コロナ罹患者数データ、企業のリモートワーク利用状況データ
購買データ:家計簿アプリデータ、食品流通ネットワークID-POSデータ

分析方法

(1) 新型コロナ罹患者数とリモートワークの利用状況を照らし合わせ、生活者のワーキングスタイルの変化を把握

ある企業のテレワークOC接続数推移のグラフ

緊急事態宣言が発令された4月2週目から一気にリモートワークを活用した在宅就業が増え、そのまま6月まで同水準でリモートワーク利用者数を維持しています。

このことから、新型コロナの罹患者数が落ち着きはじめた状況においても、企業は、すぐにコロナ以前のようなワーキングスタイルには戻らず、むしろ今後もリモートワークを積極的に活用した動きに変化しつつあることが分かります。

また、リモートワークが主流となると、在宅時間が増えるため、家庭内の消費動向にも大きな変化がみられると推測できます。

(2)コロナ罹患者数×家計簿データを照らし合わせ、支出が減った項目を把握

新型コロナの新規罹患者数に対する家庭内の支出額のグラフ

上のグラフは、新型コロナの新規罹患者数(赤色の折れ線グラフ)に対する家庭内の支出額(青色の折れ線グラフ)(※)を表しており、このグラフから、感染者数が増えた4月上旬以降、家庭内の支出が減少していることが分かります。

では、特に減少したのはどのような項目でしょうか。
探索型BIでは見たい項目をリストから選択することで、対象項目のデータの変化を確認することが可能です。

「費目別推移」のグラフを「外食」「ファッション」「レジャー」に絞ってみると、これらの項目はいずれも支出が減少していることが確認できます。

緊急事態宣言期間は自宅で過ごす時間が多かったことが原因と考えられます。反対に緊急事態宣言が解除された5月末~6月にかけては支出が大幅に増加していることが分かります。

(※)家庭内の支出額:19項目に分類された家計簿データから、支出額を計算

(3) 新型コロナ罹患者数×家計簿データを照らし合わせ、支出が増えた項目を把握

家計簿の各費目における前年同期間と比較した場合の支出の伸び

一方で、コロナ禍において支出が伸びている項目もあります。

上のグラフは家計簿の各費目における前年同期間と比較した場合の支出の伸びを表しています。
前年と比較すると「保険」「食材」「ペット関連」「水道光熱費」などの支出が増えていることが分かります。
コロナ禍で、医療保険の見直しや外出自粛による光熱費や食費の増加、生活に変化を求めてのペット購入といった動きが増加したことが原因と考えられます。

反対に、(2)でも述べたように「ファッション」「レジャー」等は前年よりも支出が減少していることが分かります。

探索型BIでは「支出が増えている項目」と「支出が減少している項目」の両方を同時に把握することができるため、データ全体の傾向を捉え、意思決定につなげることが可能です。

5. まとめ

本稿では、意思決定のスピードと質に差が生じるBIをテーマに、一般的なセルフサービスBIの特徴や選定のポイント、探索型BIの活用メリットなどを解説してきました。

セルフサービスBIは、従来のBIツールに比べてビジネス部門のユーザーでも利用しやすいというメリットがありますが、一方で、意思決定のための多面的な状況把握やデータの欠落による正確な状況把握が難しい、といったケースもあります。

探索型BIはセルフサービスBIのメリットはそのままに、独自の技術等により、正確でスピーディーな意思決定を実現可能とするソリューションです。

ニューノーマルにおいては、未曽有の事態が発生し、予測がつかない状況も多々あります。
そのような中で、探索型BIを活用して市場の状況を多面的に分析し、スピーディーかつ正確な意思決定により、いち早くその変化を把握・対応していくことが重要と考えられます。

また、今後は予測AIと組み合わせることで、商品の需要予測やECと店舗の購買動向予測、顧客のLTVやペルソナ予測等が可能になるため、より精緻かつスピーディーな意思決定が実現できます。

ニューノーマルを生き抜く戦略として、探索型BIサービスを検討してみてはいかがでしょうか。

※2020年12月時点の内容です。

未来のあたりまえをつくる。®