佐古のポートレート

【役員インタビュー】DXのその先へ。DNPが取り組むデータドリブン経営

「持続可能なより良い社会、より心豊かな暮らし」の実現に向けて、新しい価値の創出を目指すDNP。その一環としてDXを推進するのに必要不可欠である情報システム基盤を担う部門のミッション、そして次に目指すものは何か。執行役員であり、情報システム本部長の佐古都江に話を聞きました。

目次

佐古の顔写真


佐古都江(さこ・みつえ)

大日本印刷 執行役員
情報システム本部長

DX推進を担う情報システム本部のミッション

Q. 独自の印刷(Printing)と情報(Information)の強みを掛け合わせた「P&Iイノベーション」による価値創造を目指すDNPのDX(デジタルトランスフォーメーション)」において、情報システム部門が担う役割・ミッションをお聞かせください。

DNPが「第三の創業」の実現に向けて全社で取り組む中、私たち情報システム部門のミッションは、財務、非財務基盤強化へIT支援をするとともに、安全・安心にDXを進められるITガバナンスとその環境を提供することです。

進展するデジタル経済の中で、DNPがグローバルにDXを進め、新たな価値を社会に向けて提供していくためには、データドリブン経営で競争優位性を獲得し、そのためのIT基盤を構築することが必要です。それが、現在進めているデータマネジメント基盤です。グローバルな社会を前提として捉え、事業を安全・安心に進めるためのセキュリティの仕組み、企業を取り巻く環境や社会課題の変化、そしてテクノロジートレンドを採り入れながら、柔軟にIT基盤をアップデートしていくことが重要であると考えています。

データドリブン経営のイメージ図

従来の価値観をアンラーニングし、クラウド移行を達成

Q. 情報システム部門ではDX推進の一環として、2022年から基幹システムのクラウド移行に取り組んできました。これまでの成果について教えてください。

創業以来、幅広い領域で多様な事業を創出してきたDNPの歩みに合わせ、これまで情報システム部門は、各事業部門に最適化したオンプレミスの基幹システムを内製し、そのノウハウを蓄積することで競争力を強化してきました。しかし、外部環境の変化やテクノロジーの進展が加速している現在、これまでの“常識”にとらわれず、より迅速な対応が求められています。

そこで、ITを担ってきた私たち自身、積み上げてきた価値観やシステムを一度アンラーニング(※)し、スピード感をもって外部環境の変化に対応できる強いIT基盤を構築することが不可避となりました。

最初に取り組んだのが、クラウドリフトです。事業の進展に合わせて構築してきた大規模な基幹システムは700余り。そのすべてをクラウド化する作業は非常に難易度の高いプロジェクトでしたが、約8カ月で完了しました。2023年9月時点では、システム、ネットワークともに東西で冗長化も終えています。ここまで大規模な基幹システムのクラウド化を短期間で実現できたことは、情報システム部門として大きな実績となったと考えています。

※アンラーニング: これまでの価値観や知識を取捨選択し、新たな価値基準や学びを取り入れること

SaaS活用イメージ図

データの民主化を実現し、「オールDNP」の総合力を社員一人ひとりに還元

Q. クラウド移行を完了したことで、今後社内にどのような変化が生まれていくのでしょうか? 情報システム部門の今後の展望とあわせて、お聞かせください。

クラウドとは、高い可用性、保守性、セキュリティから運用業務までをカバーし、ITスペシャリストが日進月歩で変化していく外部環境に対応してくれるものです。これをサービスとして利用することで、システムを「つくる」から「使う」にシフトできます。

非競争領域については、グローバル標準を効果的に獲得する統合ERP(Enterprise Resource Planning)やSaaS(Software as a Service)を積極的に取り入れ、変革するとともに貴重なIT人財を積極的に競争域にシフトできる環境を整えていきます。また、競争領域であるITは、各事業部門と連携しながらシステムのモダナイズを進めています。そして、各IT基盤戦略の中心に常にデータマネジメント基盤を据え、データ集約と利活用に取り組んでいます。

経営層のインサイトは、全社統制の視点、業務変革の視点、事業や市場創造の視点、社会課題、企業の文化やケイパビリティと多岐にわたります。多様な事業とそれらのポートフォリオをもつDNPらしいデータドリブン経営の一助を担うため、全社組織と一体となり、データマネジメント基盤のレベルアップを推進し、データドリブン経営の基盤づくりを目指しています。

そしてもう1つの目標として、「データの民主化」の実現があります。DNPでは、印刷技術を核として数多くのコアテクノロジーが創出され、トップシェアとなる製品やサービスに成長しています。「データの民主化」とは、これらを支えている多様な知的財産やノウハウ、そしてなにより暗黙知や多様な価値観等のデータが分析・可視化され、社員一人ひとりが情報の格差なく活用できる環境です。これを実現することで、オペレーションの弾力性が向上し、「P&Iイノベーション」による価値創造を目指すDNPならではのDXが加速するはずです。

私たちが取り組んでいるデータマネジメント基盤の仕組みは、そうした大きなポテンシャルを引き出せる可能性を高めていくものにしたいと考えています。

シンプルに本質を追究した先で、新しい価値を生み出せる

Q. ご自身のキャリアを踏まえ、現在の心情や成し遂げたいことをお聞かせください。

事業として大きな成長を遂げ、セキュリティや決済事業へと拡大したICカード関連事業。私がDNPグループで最も長く従事したのは、このICカード用のOS(Operating System)の開発です。

小さなICチップの限られた容量の中にプログラムを収めるには、無駄なものを徹底的に排除し、シンプルに本質のみにそぎ落としていく。現在の私のミッションにおいても、複雑で変化の激しい環境下で本質やコアを捉えるという点で考え方は同じです。

外部環境の変化や社会の課題、そしてIT部門として欠かせないテクノロジーの進展を捉え、未来志向で“DNPのDX”と伴走する。それにより、担当分野やIT・非ITといった垣根を超えて社員一人ひとりが幸せになる全社サービスの構築と最適化を継続していきます。

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