
世界で磨いた技術と日本品質の掛け合わせ! SIG×DNPが実現した新充填方式
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いま、日本の紙パック飲料売り場に静かな変化が起きています。従来の紙パックでは難しかった野菜入りドリンクや甘酒などの商品が、次々とお店の棚に並び始めているのです。その実現のカギは、スイスで生まれ、世界100以上の国・地域で採用されてきたSIG Combibloc Group(SIG社)のスリーブ※1供給方式。この方式に大日本印刷(DNP)が培ってきた無菌充填システムを掛け合わせることで、常温での長期保存・流通を可能にしました。ロール状の紙を供給し、箱の形に成型しながら充填する他方式の約3〜4倍の充填速度に加え、1台の機械で容量を自在に変えられること、高粘度や固形物の充填に対応できる点も強みです。SIG社とDNPの協業は、日本の飲料市場に新たな可能性を広げていきます。
目次
- ※1 スリーブ:両端が接着されていない筒状の部材。たたまれている状態から起こして箱の形状にする。製造する容器の形に合わせたサイズが用意されている。
固形物や高粘度飲料に向くスリーブ供給方式が生み出す3つの強み
液体紙容器(紙パック)の充填システムは長年にわたり、少品種を大量生産することに対応してきました。一方で近年は、飲料の中身や価値の多様化が進み、多品種に対応しながら大量生産することが求められています。
スイスのパッケージングメーカー、SIG社が手がけるスリーブ供給方式は、変化する市場環境と親和性の高い充填方式として、グローバルで採用が広がってきました。この方式では、あらかじめ紙容器を箱の形に成型し、内容物の液体を1本ずつ充填してから上部を閉じます。充填前に容器の形をつくっておくことが大きな特長です。
スリーブ供給方式の強みの1つが、「固形物を含む飲料を充填できる点」です。内容物を1本ずつ充填し、液面より上の位置でシールする(封をする)ため、果肉や粒状素材があっても挟み込まれる心配がありません。また、容器内にある程度の空間を確保することで従来の紙パックにはなかった、振ると中身が自由に動く固形入り飲料を実現します。果肉やナタデココ、オーツ麦、チアシード※2など、6mm角以内の多様な素材への応用が可能です。
- ※2 チアシード:シソ科の植物の種子で、スーパーフードとしても知られる栄養価の高い食品
2つ目の強みとして挙げられるのが「容量選択の柔軟性」です。容器の成型工程と充填工程が分かれているため、製造する容器の形に合わせた筒型の部材であるスリーブのサイズや充填量の設定を変えるだけで、多様な容量に対応できます。機種によっては、1台の充填機で10種類前後の容量に対応でき、切り替えに要する時間は2分程度。商品設計や原価調整の自由度を高める仕組みとして、飲料メーカーにとって製品・品種の多様性における選択肢の幅を広げています。
さらに、3つ目の強みとして「充填速度の速さ」も見逃せません。スリーブ供給方式は高速充填に適した設計となっており、SIG社の充填機1台で最大2万4千本/時の充填能力※3を実現しています。
こうした3つの強みを活かして、SIG社の充填システムは世界100以上の国・地域で約1万種類の製品に採用され、グローバルで年間約500億パックという実績を積み重ねてきました。しかし、この技術は長らく、日本市場には進出していませんでした。
その状況に転機が訪れたのは、2015年のこと。幾度となく日本への展開を検討していたSIG社がDNPと出会います。DNPは、飲料のPETボトル用無菌充填システムで、国内のトップシェアと豊富な技術・ノウハウを持っています。また、紙容器の無菌充填システムでも実績があるDNPの技術基盤は、SIG社のシステムと高い親和性があり、互いの強みが噛み合うパートナーシップが見込まれました。協議を重ねた両社は2018年4月、合弁会社「DNP・SIG Combibloc」を設立。ただ、日本市場での本格展開には、大きな壁が存在していました。
- ※3 最大2万4千本/時の充填能力:キャップ付き紙容器の無菌充填システムでは世界最高速レベル(SIG社調べ)
世界最高水準の衛生基準をクリアするために開発した日本市場専用の滅菌工程
飲料の無菌充填における日本の業界指標は、100万本に1本以下の腐敗率※4で、これは、厳格さで世界的に知られるアメリカのFDA基準を上回る世界最高の水準です。また、日本の飲料業界では、技術的な裏付けがあるだけでは採用に至りません。実際に国内で商業生産を行い、問題がなかったという事実が積み重なって初めて、新しい技術への信頼が生まれて採用につながっていきます。世界で年間500億パックというSIG社の販売実績も、日本市場では「海外での基準の実績」とみなされ、十分とはいえなかったのです。
- ※4 腐敗率:製造品のうち微生物の増殖等で変質・膨張・異臭が生じた製品の割合
課題はそれだけではありませんでした。この挑戦をさらに難しくしたのが、紙という素材の特性です。紙は繊維の間に菌が残りやすく、表面の減菌処理だけでは内部の菌まで除去できません。プラスチックを原料とするペットボトルは、素材の内部に菌が潜まないため、過酸化水素水による表面の滅菌処理で対応できますが、紙製品にはこのプロセスが適用できませんでした。
この課題を解決したのが、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌です。ガスが素材の内部まで浸透し、繊維の奥に潜む菌まで除去する手法で、一般的には医療器具などの滅菌に用いられています。DNPはSIG社との協業以前から、独自開発した紙容器の無菌システムでこの手法を採用しており、飲料向け包材への応用ノウハウを蓄積していました。この技術をSIG社のシステムに適用し、充填前のスリーブをまとめてEOG滅菌することで、初発菌※5数をゼロにリセットするフローを構築しました。SIG社が世界のどの市場でも実施していない、日本市場の厳しい衛生基準に対応するために両者で生み出した工程です。
- ※5 初発菌:製造ラインや容器内で最初に検出・増殖し、微生物汚染の起点となる菌
こうして減菌方法を確立した後、次に乗り越えるべき壁は「実績主義」でした。そこでDNP・SIG Combiblocは数十万本規模の試験充填を実施し、腐敗の有無を徹底的に検証。充填機にも日本仕様のカスタマイズを施しながら、1年以上をかけて無菌性能の安定性を実証しました。
紙パック市場への浸透とペットボトル市場への挑戦
この実証結果は“実績”として無事に認められ、2020年に、DNP・SIG Combiblocの充填システムを採用した商品が発売されました。それ以降、腐敗事故は0件(2026年2月現在)です。その衛生性能の高さは業界でも注目され、導入件数も増えています。
一方、飲料市場全体を見ると、依然としてペットボトルが圧倒的シェア※6を占めています。そうした市場環境のなかで、DNP・SIG Combiblocの取組みは、紙パックを単なる既存容器の代替ではなく、ペットボトル中心の飲料棚に新しい選択肢を提示する挑戦でもありました。
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※6 容器別生産量におけるペットボトルのシェアは増加傾向にあり、2024年は79.7%に到達。
出典:全国清涼飲料連合会 https://www.j-sda.or.jp/statistically-information/index.php#data05
その象徴的な事例が、飲料メーカーの伊藤園との取組みです。DNP・SIG Combiblocのスリーブ供給方式を活用し、2024年に「1日分の野菜」ブランドの固形物入り新シリーズ「1日分の野菜 meal up」を発売。固形の野菜の食感が楽しめる商品を常温流通が可能な紙パックで展開したことは、紙パックならではの市場価値を示す大きな一歩となりました。以降も、果汁や抹茶を用いた飲料、プロテイン飲料、甘酒、動物由来ではなく植物由来の原料を基盤とするプラントベース飲料など、健康志向や機能性訴求の分野へと採用が広がっています。これらはいずれも、単に容器を置き換えるのではなく、中身の多様化や高付加価値化と結びつくことで、紙パックの活用領域を広げている点に特徴があります。
また、容器のデザイン性の高さも、ペットボトルとの差別化を支える要素のひとつです。従来の紙パックは底面も上部(天面)も四角い直方体が基本でしたが、スリーブ供給方式では天面に飲みやすい傾斜をつけた形状や、側面の角をなめらかに持ちやすくした形状も選択できて、売り場での視覚的な差別化にもつながります。こうした“デザインによる付加価値”もあって、比較的高い販売価格でも受け入れられるようになり、中身の品質向上にも再投資できるという好循環が生まれ、飲料メーカーへの浸透を後押ししています。
例えば、食品メーカーの明治の「辻利」シリーズでは、SIG社容器への切り替えにより、中身の設計に相応しい「高級感」や「存在感」を付与。パッケージの質感を高め、中身の品質を外観からも丁寧に表現できるようになった点が、受注の決め手となりました。
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「1日分の野菜 meal up」アサイーボウル Smoothie |
辻利 お濃い抹茶ラテ |
2020年の市場投入から約6年。DNP・SIG Combiblocの充填システムを採用した飲料の出荷量は毎年増え続けており、2024年度は前年比約2倍、2025年度は前年比約1.5倍に伸びています。現在の紙パック飲料における同製品の国内シェアはまだ限られているものの、だからこそ、ペットボトルが主流を占める飲料市場において今後の成長の余地は大きいといえます。
固形物が入った飲料を常温で流通・保管できる紙パックに詰める――。これまで難しかったその組合せが両社の協業によって可能になりました。SIG社の充填技術と、DNPの素材や無菌充填のノウハウを掛け合せて、食の多様化や環境配慮への関心がますます高まるなか、食卓に届く飲料の姿をより多様にし、環境配慮面※7を含めた価値向上をさらに推進していきます。
- ※7 環境配慮面:アルミ箔不使用や、植物由来原料の使用、プラスチック使用量削減により、包装材料製造時における温室効果ガスの削減や、森林認証紙を用いた仕様、容器使用後のリサイクル性向上について、SIG社、DNPとも業界を率先して推進している。
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