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学芸員レポート
―1/15号掲載ー
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―2/1号掲載―
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「青森県立美術館・開館」/「奈良美智+graf『A to Z』」/アーティスト・イン・レジデンス・プログラム(AIR)
青森/国際芸術センター青森 日沼禎子
2006年の気になる展覧会、動向
 何といっても「青森県立美術館・開館」と、「奈良美智+graf『A to Z』」。青森在住者以上に、県外からの期待も大きいのではないかと思います。
 前者は、平成10年(1998年)「美術館建設基本計画」策定。その後の2000年に行なわれた美術館の設計コンペティションにて、史上稀にみる393案にもおよぶ多数の参加者の中から青木淳氏が最優秀を受賞。「三内丸山遺跡」の発掘現場から着想され、トレンチのような凹凸をもった空間の中に、ホワイトキューブと土壁の展示室とが交互に存在するという非常にユニークな美術館建築が出現しました。昨年9月の竣工の後、作品が設置される前の展示室において、6時間にもおよぶ県民参加型演劇「津軽」の上演をはじめとし、韓国映画祭、矢野顕子コンサートなどのプレイベントが次々と開催され話題を呼んでいます。
 一方後者は、弘前市内にある吉井酒造煉瓦倉庫において、運営のすべてがボランティアの手により開催された「奈良美智展 I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME,」(2002)、「From the Depth of My Drawer」(2005)に引き続き、同会場では3度目の展覧会となります。さまざまなテーマを持つAからZまでの26個もの小屋が倉庫内に建てられ、作品の展示のほか、奈良およびgrafとかかわりの深いアーティストたちも参加したコラボレーションが行なわれるなど、前代未聞の「夢」のようなプロジェクトが展開されるとのこと。昨年の横浜トリエンナーレ、ロダンギャラリー(ソウル)他でその一端がすでにプレゼンテーションされ、奈良ファンのみならず、開催前からすでに熱い盛り上がりを見せています。
 誰もがイメージする、青森の特異な風土性。その中に現われるこの二つの場は、新しい驚きと感動をもって人々に迎え入れられるのではないかと思います。
しかし、こうした華やかな祝祭的イメージを持つ反面、続く財政難の状況下にあり、指定管理者制度など美術館運営をはじめとする地方の文化行政の行方はどうなるのか、民間の活動はどのように展開していくのか? 経営力強化を掲げる県立美術館の今後の動向、自らの手でアートの可能性を切り開くためにアーティストと非営利のボランティア組織とが協働で行なう「奈良美智展」のあり方は、そうした視点においても非常に注目されるところであります。 

会期と内容
●青森県立美術館開館記念展『シャガール:「アレコ」とアメリカ亡命時代』
会場:青森県立美術館 青森市大字安田字近野185
会期:2006年7月13日(木)〜9月24日(日) 
問い合わせ:青森県県立美術館開館準備局
Tel. 017-734-9237 Fax 017-734-8063
●「奈良美智+graf『A to Z』」
会場:吉井酒造煉瓦倉庫 青森県弘前市吉野町2-1
会期:2006年7月29日〜10月22日
開館時間:10:00〜19:00 (最終入場は閉館30分前)以上予定
休館日:月曜日(月曜が祝日の場合は火曜休館)以上予定
入場料:一般1,000円 大学生・高校生700円 中学生・小学生300円 以上予定
主催:A to Z 実行委員会
〒036-8182 青森県弘前市土手町78ルネス街2F NPO harappa内
Tel.0172-31-0195 fax.0172-31-0196
公式サイト:http://harappa-h.org/AtoZ/

2006年担当の企画および抱負
 国際芸術センター青森(ACAC)は、アーティスト・イン・レジデンス・プログラム(AIR)を中心とし、アーティストの創作支援のみならず、市民の創作活動の支援、新しい芸術鑑賞・体験の場を提供し、さらにはアートボランティアの育成、事業への積極的な参加を促進するなど、地域のアートセンターとして活動を続けています。
 世界中には現在約500ものAIR活動があるといわれ、そのほとんどがヨーロッパに存在しており、日本における先進地である茨城県・守谷市の「ARCUS」においては、95年にパイロット事業として開始されてから10年という節目をようやく経過したところです。
 アーティストが一定の場所にテンポラリーに滞在して創作活動を行なうという行為自体は、古くも新しくも必然的に存在し、また、多くの国際展や美術館などの企画展でも、アーティストが現地制作をすることが当たり前になっている現在において、AIRの定義や位置づけをすることは難しくなっています。さらには、多くの文化事業同様に、各地のAIR事業も、成果や評価制度などの課題に直面しています。しかし、アーティストが新たな創作意欲を持って実験的な取り組みをするための環境と時間を確保し、新しい創造への一歩を踏み出す場を設けること。また、そうしたアーティストの創作に直接的・間接的に人々が触れる機会を持つこと。アーティスト、観客を問わず、直接的なコミュニケーションを持ちながら思想と技術とを分かち合い、芸術について、また社会について考え、ともに自分たちが生きる場をつくろうとするAIRという活動は、コミュニティの場として、またインキュベーションの場として、今後ますます重要になると考えています。今後このサイトを通して、ACACの活動のみならず、内外のAIRについても積極的に紹介できる機会を持ちたいと思っております。

プロフィール
国際芸術センター青森学芸員。市民アートサポート組織「ARTizan」代表。
女子美術大学芸術学部卒業後、ギャラリー運営企画会社勤務、美術雑誌『アトリエ』編集者、兵庫県淡路島における木版画AIR事業事務局等を経て現職。
ACACにおいては、レジデンス事業全般のコーディネート、機関誌編集、普及業務などを担当。
[ひぬま ていこ]
―1/15号掲載ー
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