東日本旅客鉄道株式会社様

ICTビジネスアイデア創出プロセスの体系化とツール開発

東日本旅客鉄道株式会社様(以下、JR東日本様)は、生活者視点でICTの新たな価値創出・事業化を推進するため、DNPサービスデザイン・ラボⓇとともに生活者参加型の共創ワークショップを実施し、生活者の行動と感情を網羅的かつ深く収集し、アイデア発想とアイデア評価が可能となるツールを開発しました。生活者視点で価値創出・事業化するためのプロセスの体系化につながりました。(2018年1月時点の情報です)

背景

JR東日本IT・Suica事業本部様は、JR東日本グループに潜在する素材(リソース)をICTの切り口で見直すことで、新しい価値の創造と事業化を推進しています。しかしながら、社内外パートナーやその先の生活者のことを考えたサービスを発想するプロセスやツールが明確でなく、個々人のスキルやノウハウに依存した属人的な開発体制で進行している状況が続いていました。
このような状況を打破し、価値創造・事業化チャレンジの量と質のどちらも飛躍的に高めるために、サービスデザインアプローチで「ICTビジネスアイデア創出プロセスの体系化」と「ツールづくり」に取り組みました。

取組み

今回の取組みでは、「現状アイデア創出プロセスにおいて、その大半が暗黙知として行われている」「創出したアイデアの対象となるサービス利用ユーザーが非常に幅広い」「ステークホルダーが複雑で多岐にわたる」といった課題がありました。このままではプロジェクトが曖昧模糊(もこ)としたまま進んでしまう可能性も高いため、サービスデザイン・ラボは、現状分析をベースとした要求開発を含む下記3ステップで取組みを支援しました。

STEP1 要求の開発

業務全体を俯瞰(ふかん)的にとらえた上で対象となる領域・プロセスを特定するために、マクロ視点(JR東日本様中心)とミクロ視点(IT・Suica事業本部様中心)でのステークホルダーを洗い出し、過去に実施したサービス開発プロセスの可視化をワークショップ形式で実施。プロジェクトメンバーの意識を揃えながらプロジェクト自体のデザインを行いました。

ステークホルダーマップ・業務プロセスの分解

STEP2 生活者起点の発想ツールを開発

次に、鉄道を日常的に利用するユーザーのインサイトを幅広くとらえるために、生活者参加型のジャーニーマップを作成するワークショップを実施。鉄道利用時にイヤなことがあったある1日をジャーニーマップ化し、最も痛みが発生した瞬間の感情を起点に深堀りすることで、鉄道利用ユーザーのインサイトを多数抽出しました。

その後、アイデア発想と評価ができるツールを開発するために、サービスデザイナーの視点で抽出したインサイトを構造化。インサイトマップとしてまとめました。

生活者起点の発想ツールを開発

STEP3 アイデア創出プロセスの検証

さらに、開発したツールやプロセスが実際に使えるのかを検証するために、プロジェクトに関わっていないメンバーも交えて簡易型のアイデア発想ワークショップも実施。作り手以外の視点を加えることで、より実践的なツール・プロセスへとブラッシュアップすることができました。

アイデア創出プロセスの検証

プロジェクトで重視したポイント


生活者の行動と感情をいかに網羅的かつ深く収集することができるか?

生活者起点でのアイデア創出を行う際には、気づきを発見するステップにおいて良質なインサイトやアウトカムを得られるかどうかが重要となります。ただ、JR東日本様が対象とする多様なユーザーを網羅的にとらえるには通常の行動観察ベースのデザインリサーチでは非常に時間がかかり現実的ではなく、一方でアンケートベースのリサーチでは本質的なインサイトを導くことが難しくなります。

トレードオフとなりがちなこの二つを同時に解決するために、量と質どちらも一定以上担保することができる「生活者参加型の共創ワークショップ」を用いることで、限られたリソースの中で効率的に行動・感情・インサイトを抽出することができました。

成果

一連のステップを通じて、生活者起点でのアイデア発想および、発想アイデアを生活者視点で評価できるツールを開発。あわせてサービスデザインプロセスをベースとした「共創型ICTビジネスアイデア創出プロセス」を体系化することができました。

DNPではサービスデザイン・ラボという組織を編成し、人起点で商品やサービスの新たな体験価値を創造し、
それを継続的に提供するための組織や仕組みも含めてデザインする方法論「サービスデザイン」を推進しています。

※サービスデザイン・ラボは、DNP大日本印刷の登録商標です。

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