株式会社ビューカード デジタル戦略部様

めざすのは、顧客一人ひとりとのつながり強化 DNPパーソナライズド動画を使ったエンゲージメント向上施策の実施

顧客とのつながりを特に大切に考える株式会社ビューカード様(以下、ビューカード)は、メールマーケティングをはじめとするデジタル施策において、無機質にならない温かみのある施策を模索するなかで、新たな可能性として、パーソナライズド動画施策のABテスト*1をDNPと共同で実施しました。

株式会社ビューカード デジタル戦略部
部長 水村 紀彦様(左) 佐藤 藍様(中央) 副課長 清水 優生様(右)

ビューカードのサービスを永く楽しんでいただくための土台作り

マーケティングコミュニケーションの観点から、顧客データを最大限に活用している企業は依然として少ないのが実情です。各企業がさまざまな方法を模索するなか、ビューカードは新たなコミュニケーション手法としてパーソナライズド動画に着目し「お客さま目線での情報提供」にチャレンジしました。今回はその取組みについて伺いました。

1.まず、メールマーケティングにおいてデジタル戦略部が果たす役割について教えてください。

株式会社ビューカード デジタル戦略部
部長 水村 紀彦様

私たちの部署は、お客さま一人ひとりの趣味や嗜好を深く理解し、お客さまごとに最適なサービスや特別な体験をご提供することを使命としています。JR東日本グループならではのメリットを活かした、便利でお得なサービスを通じて、会員の皆様の利用促進とロイヤリティ向上をめざし、最終的にはビューカードを末永くご愛用いただけるように努めています。

静的コンテンツでは伝えきれない情報を、新たなアプローチで打破

2.DNPパーソナライズド動画サービスを使ったABテストの実施を決めた背景をお聞かせください。

これまでメール、アプリ、会員専用サイトのWebポップアップなどを通じて情報発信を行ってきましたが、静的なコンテンツだけではお伝えできる情報量に限界があり、サービス内容をお客さまに十分にご理解いただけていないという課題を感じていました。そこで、静的コンテンツでは伝えきれない情報をパーソナライズド動画で提供することで、お客さまの理解を深めることができるのではないかと考えました。
具体的には、クレジットカードの利用状況やJRE POINTの利用傾向などにもとづき、お客さまごとに最適なパーソナル動画を配信することで、ロイヤリティ向上、ひいてはビューカードの末永いご利用につながればと思っています。

◆ABテスト概要

動画の訴求効果を検証するため、誕生月を迎えられるお客さまに対して、静的コンテンツとパーソナライズド動画リンク付きコンテンツによる2種類のメールでABテストを実施しました。パーソナライズド動画リンク付きのコンテンツでは、お客さまの入会年数や利用状況に応じた分岐を設定し80種類以上の動画パターンを用意しました。これにより動画生成に時間がかかるのではないかと懸念がありましたが、DNPパーソナライズド動画サービス(next generation video platform)*2の高い処理能力により、パーソナライズド動画は10分以内で生成できました。

<ABテストの結果>
〇2種類のメールコンテンツのクリック率(CTR:Click Through Rate)*3を比較し、それぞれのコンテンツへの関心度を検証しました。パーソナライズド動画リンク付きコンテンツは、静的コンテンツと比較してクリック率が約2.7倍向上しました。
〇パーソナライズド動画を最後まで視聴した会員の比率は89.5%でした。これは一般的な動画視聴率(約40%)の2倍以上であり、ビューカードが伝えたい情報を最後まで視聴されました。

<その他、動画への反応>
○パーソナライズド動画の最後に表示される視聴アンケートの回答率は50%を超え、会員がより深くコンテンツを閲覧したことで、ビューカードのサービスへの理解を深め、ロイヤリティを高めることに成功しました。

<DNPの支援範囲>
施策のターゲット・タイミングの選定、ストーリーの検討、動画制作~テスト、効果検証まで共創プロジェクトとして、伴走型でDNPがご支援いたしました。

導入プロセス

動画パターン

動画のパターン

ウソみたいな好結果に計算ミスを疑った

3.パーソナライズド動画のABテストを終えて、効果や可能性について感想をお聞かせください。

■導入の効果
今回の実施結果で驚いたことは3点あります。
1つ目はCTRの高さ、2つ目はメールの許諾解除が1件もなかったこと、3つ目はABテストの結果の良さでした。まず、CTRについては通常のメールCTRと比べて1,329%増加したため、顧客の反応が明らかに向上したと考えています。これは今までにない驚くべき数値であり、最初は計算ミスだと思ったほどでした。
次に、2つ目のメールの許諾解除数ですが、メールマーケティングを実施する上で最も重要なのは配信可能な母数です。その母数が減少しないことが一番の理想ですが、一定程度減少することは吞み込んで実施するしかありません。ただ、今回の動画施策では0件という驚くべき結果でした。この数字は他の案件では見たことがなく、正直驚きました。
最後に、3つ目は、施策結果を確実に得るためにパーソナライズド動画付きコンテンツと静的コンテンツでABテストを実施したところ、動画コンテンツの効果が圧倒的に高い結果となりました。通常は僅差になることが多いため、統計学的に優位性を判断してABテストの結果を評価することが一般的ですが、今回はその必要がないほどの差が出たため、結果は明白でした。

■パーソナライズド動画に対してのお客さまの評価
メールの下部に満足度調査用のアンケートを設置しており、評価スコアも高いため、当社としては高い評価を得られたと認識しています。一方で、評価をつけられた方のなかには低評価をつけられている顧客もいるため、その要因分析を実施し、次につなげたいと考えています。

■会員へカード利用を促す行動への期待
パーソナライズド動画という新しいタッチポイントとメール満足度の向上により、一定程度お客さまが当社に関心を示していただけたと判断しています。そのため、お客さまが能動的に当社サービスをご利用いただけるきっかけになったのではと考えています。ただし、もちろん、単一の施策では短期的な効果しか見込めず、効果を持続させることは難しいため、さまざまな施策と組み合わせてパーソナライズド動画を活用する必要があると思っています。

株式会社ビューカード デジタル戦略部
副課長 清水 優生様

株式会社ビューカード デジタル戦略部
佐藤 藍様

性能の良さと丁寧な伴走支援

4.成功のポイントについて、教えてください。

株式会社ビューカード デジタル戦略部
副課長 清水 優生様

今回の成功は、大きく分けて「動画の質」という表面的な要因と、それを支える「関係者の協力」という裏面の要因の2つから成り立っていると考えています。
まず、動画の質について。パーソナライズド動画の制作にあたっては、私たちとお客さまの期待値の間に大きな隔たりがあることをマーケターとして認識していました。そのため、一部の表示要素がパーソナライズされるだけでは、お客さまの満足度や関心は必ずしも高まらないと考えていました。しかし、議論を重ねるなかで、お客さまの行動に動画内で反応を返すインタラクティブな仕掛けが可能だと知り、その革新性に感銘を受けました。この機能によって、動画は単なる情報伝達手段を超えた、お客さまとの双方向コミュニケーションツールへと進化したと感じています。今後、更なるアイデアを盛り込むことで、より魅力的なコンテンツ制作が可能になると思います。
次に、関係者の協力についてですが、DNP様の親身なサポートなしには、今回の成功はあり得ませんでした。当初、パーソナライズド動画の提案を受けた際は、具体的なイメージが湧かず、本当に効果があるのか、1本の動画を制作・配信する方が効率的ではないかなど、疑問ばかりでした。しかし、DNP様は私たちの立場に立って、動画のイメージを丁寧に具体化し、形にしてくださったことで成功できたと思っています。その献身的なサポートに我々は深く感謝しています。

株式会社ビューカード デジタル戦略部
部長 水村 紀彦様(左) 佐藤 藍様(中央) 副課長 清水 優生様(右)

運用フローの構築も、プロジェクト成功のポイント

5.苦労した点について、教えてください。

パーソナライズド動画を使った施策は初めての試みだったため、社内調整や導入手続きに想定以上の時間と労力を要しました。特に、初めて実施したパーソナライズド動画システムとのデータ連携については、リリース直前まで不安が尽きず、苦労しました。しかし、こうした運用フローの構築は、新たな取組みを成功させる上で不可欠な経験だったと考えています。

パーソナライズド動画が多くの企業に浸透することを期待

6.今後、パーソナライズド動画を活用して取組みたいことをお聞かせください。

動画自体は、メールなどのコンテンツよりも多くの情報をお客さまに伝えることができる媒体だと認識しています。そのアドバンテージを持つパーソナライズド動画は、より一層効果が高まると考えています。そのため、今後はお客さまに当社への理解を深めていただくために、パーソナライズド動画を活用していきたいと考えています。具体的には、当社に蓄積されている疑問や不満を解決できるような動画をパーソナライズすることで、ロイヤリティの向上を図れると思っております。

7.今後、DNPパーソナライズド動画サービスに期待すること・ご要望についてお聞かせください。

汎用性の高いテンプレートの拡充を期待しています。それにより具体的なイメージの共有や施策検討の迅速化につながると考えています。
また、このパーソナライズド動画がさまざまな企業で活用されることで、当社の先進的な取組みが広く認知され、対内・対外的なブランディング強化につながると期待しています。多くの企業への普及を願っています。

8.今後、DNPに期待することをお聞かせください。

今後、施策の高度化をめざし、伴走に関する支援をお願いしたいと考えています。効果や結果も重要ですが、まだ当社内でパーソナライズド動画の理解や活用方法が浸透しているわけではないため、まずはパーソナライズド動画の特異性と必要性を改めて整理していただき、全社的な知識向上にご協力いただければ幸いです。

プロジェクトメンバー
(株式会社ビューカード様/Idomoo社/DNP)

*1  ABテスト → Webサイトのページ等を2パターン用意し、どちらがより効果が高くなるかを検証する方法
*2  next generation video platform → 提供Idomoo社
*3  クリック率(CTR) → 広告や検索結果の表示回数に対し、実際にクリックされた回数の割合

  • ※2025年4月時点の情報です。
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