レノボ・ジャパン合同会社様
GIGAスクール端末予備機数万台の安定運用を実現。「やらないことを決める」のが成功の鍵
同社が全国の小中学校に提供するGIGAスクール端末を対象に、運用・保守をトータルで支援。保守事務局の運営から20万台規模の予備機保管、キッティング、配送までを一貫対応し、教育現場の負担軽減と安定したIT環境の実現に貢献します。
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文部科学省が進める「GIGAスクール構想」。児童・生徒1人1台の学習用端末と通信ネットワークを整備し、公正に個別最適化された学びを実現する取組みです。その第1期では、全国の小中学校に1人1台の端末を提供したものの、端末の故障が想定以上に発生した際に使う「予備機」の予算や体制がなく、教育現場の学習が一時的に中断するという課題が浮き彫りになりました。
これを受けて始まった第2期では、国の方針として予備機の整備(全児童・生徒数の15%以内)が補助対象となっています。しかし、自治体の各現場において、予備機の保管場所の確保、適切な在庫管理、定期的な充電といった品質維持をすることは難しい状況でした。
この教育現場の課題に対し、PCメーカーのレノボ・ジャパン合同会社様(以下、レノボ・ジャパン様)は、自社製品を用いた予備機の保管・運用サービスを提供することになりました。この施策においてDNPは、全国規模で端末を保管し、品質保持のための運用を行い、必要に応じて各学校へスピーディーに配送する体制の構築に協力しています。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野において豊富な実績を持ち、IT機器の導入から運用までを一貫して代行するノウハウを評価いただき、今回の支援につながりました。東日本・西日本の2カ所に予備機を保管・運用するLCM(ライフサイクルマネジメント)センターを構え、複雑な要件定義からシステム連携、配送のオペレーション構築までを支援するプロジェクトを実施しました。
目次
プロジェクトの流れ
全国一律の品質を実現するための要件定義
数万台の予備機を支える東西2拠点の構築
予備機の納入ルールの構築
故障機の受け取り・在庫管理体制の構築
配送パートナー2社とのシステム連携
GIGAスクール構想に関わる大規模な国家プロジェクト運用のポイント
数万台の管理と少人数運用を両立
今後の展望
プロジェクトの流れ
・サービス開始 2025年3月(現在も運用中)
・全国一律の品質を実現するための要件定義
・数万台の予備機を支える東西2拠点の構築
・配送パートナー2社とのシステム連携
全国一律の品質を実現するための要件定義
本プロジェクトで最初に直面した難関は、要件定義でした。GIGAスクール構想は国策のもとで動くプロジェクトであるものの、各自治体の教育委員会が都道府県単位などで共同調達をかけており、それぞれがレノボ・ジャパン様と契約を結んでいます。資産管理のルールや対応時間といった「要求される仕様」は、契約ごとに少しずつ異なっていました。
また、公教育の現場で円滑に利用できるよう、IT機器への習熟度を問わず運用しやすい仕組みを前提とした要件定義が求められます。あらゆるユースケースを想定し、限られた予算内で全国各地に同じ品質のサービスを届けることが、国策プロジェクトの難しさの一つです。
そこでDNPは、国や自治体向けの大規模プロジェクトで得た知見を用いて、「教育現場ではどのような使われ方がされるか」「現場の先生方や、LCMセンターのスタッフにとって無理のない運用ルールは何か」といった観点を加味しながら要件定義案を作成し、レノボ・ジャパン様に提案。プロジェクト初期から運用設計を支援し、実現に向けた準備を進めました。
数万台の予備機を支える東西2拠点の構築
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DNPの三芳LCMセンター |
本プロジェクトの受注後、次に着手したのが、予備機を保管する拠点の構築と、運用体制の設計です。予備機が必要なタイミングや台数は学校によってさまざまであり、正確に予測することが難しいため、東日本・西日本にそれぞれ保管拠点となるLCMセンターを設け、そこから必要に応じて配送する体制を組みました。
これらの設計において、DNPが最も意識したのは「工程をいかにシンプルにできるか」という点です。大規模なプロジェクトや、複数の組織が関係する運用において、最も陥りやすい罠は、堅実で完璧なルールを求めすぎるあまり、現場が実行できないほど複雑なオペレーションを組んでしまうことだと考えました。
予備機の納入ルールの構築
オペレーションをシンプルにした一例が、予備機をLCMセンターに納入する際のルールです。予備機は、一度に数千台規模で届きます。それらを開封し、シリアルナンバーを1台ずつスキャンして照合するルールを組むことも技術的には可能です。
しかし、それをすべてのロットで行うと、膨大な作業時間がかかるだけでなく、一度開封した端末を箱に戻す際の入れ間違いや、端末破損といった新たな現場リスクが発生しかねません。
そこでDNPが提案したのは、入庫時はメーカーから提供されたシリアルナンバーリストを正しい情報として扱い、そこでの全台スキャン照合は行わないというシンプルな設計でした。その代わり、端末を出荷する段階で必ず1台ずつスキャンして照合し、もしリストと異なる端末があれば、その時点で不一致を検知できる仕組みを構築しました。
管理台数やオペレーションコストを冷静に見極め、在庫管理の不一致をどこで検知するのが最適かを考えたオペレーションを設計しました。「やらないことを決める」という意思決定によって、現場の安定稼働につながっています。
故障機の受け取り・在庫管理体制の構築
予備機の在庫を正確に管理するためには、学校から返却される故障機の情報も適切に管理する必要があります。常に正確に在庫を把握するため、データ管理にも慎重を期しました。故障した端末のシリアルナンバーを手書きで記録・送付する運用では、現場の負担が増えるほか、転記ミスが生じる可能性があります。
そこでDNPは、学校から返却された故障端末をLCMセンターで受け取ったスタッフがバーコードスキャンを行う仕組みを構築しました。実機を確認しながらデータを取得することで、端末の現物とデータを一致させ、システムに登録することにしたのです。ヒューマンエラーが起こるリスクを低減し、数万台規模の在庫データを正確に管理する基盤を整えました。
配送パートナー2社とのシステム連携
このプロジェクトの大きな挑戦の一つが、DNPのシステムと、輸送を担う配送会社2社のシステムを連携することでした。両社はそれぞれ社内の倉庫管理システムや運用プロトコルを持っているため、システムを完全に結合させることは、コスト面でも柔軟性の面でも現実的ではありません。
そこで今回は、各社の既存システムを活かしながら必要な情報だけを連携する仕組みを採用しました。スムーズにデータを結合して、必要な情報をお互い伝達し、認識を揃えるためのデータ連携のルールを精緻に規定しました。こうして、異なるシステムを持つ複数社を束ねながら、サービスの安定稼働を守るための仕組みを整えました。
GIGAスクール構想に関わる大規模な国家プロジェクト運用のポイント
国策プロジェクトであり、かつ複数の配送パートナーやクライアントが絡む大規模な体制でプロジェクトを円滑に動かすためには、コミュニケーションの設計が重要になります。
コミュニケーションにおいて意識したのは、関係者間で認識を統一しながら、信頼を得ることです。そのために、プロジェクト責任者から決定事項をクリアに伝えること(トップダウン)と、現場に入り込み、寄り添いながら意見や課題を把握すること(ボトムアップ)の双方を徹底しました。
さらにプロジェクト立ち上げ時から1,000項目以上にも及ぶ課題管理を行い、それらを一つひとつ解決していきました。そのために必要となる全体定例会や分科会といった情報共有の場も早期に立ち上げ、情報が流れるルートを整備したこともプロジェクト成功の一因です。
数万台の管理と少人数運用を両立
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LCMセンターでの作業イメージ |
2025年3月にサービスインした本プロジェクトは、現在も安定稼働しています。東西2カ所のLCMセンターで数万台の予備機を管理し、全国の小中学校からの配送依頼や故障機の回収に日々対応しています。
シンプルでありながらエラーが起きるリスクを最小限にしたオペレーション構築、そしてDNPが配送パートナーとの連携も含めて運用を一手に引き受けているため、レノボ・ジャパン様側は1名〜2名という少人数体制で滞りなく運用できています。メーカーとしてのコア業務に支障を来さず、本サービスを維持できているのです。
そして、GIGAスクールのような大規模プロジェクトでは、運用がスタートした後も、日々想定外のイレギュラーや仕様変更が発生します。本プロジェクトのオペレーション構築のみならず、こうした当初想定していなかった相談や要望に対しても、可能な限り実現方法を一緒に考えるのがDNPのスタンスです。
DNPは、長年にわたりクライアントの個別課題を解決し、お客様ごとの課題に合わせて運用の仕組みを設計してきた実績があります。仕様が決まっていない状況からスタートしても、対話を通じて形にしていく柔軟性によって、レノボ・ジャパン様からも長年にわたって信頼いただいていると考えています。
今後の展望
2028年頃には、GIGAスクール構想の第3期がスタートすると予測されています。国によるガイドラインはまだ確定していないものの、DNPは本プロジェクトで得た一連のナレッジを活かし、今後もレノボ・ジャパン様とともにGIGAスクール構想に関わっていくことをめざす考えです。
また、国や自治体のみならず、民間企業のクライアントに対しても、IT機器の調達・キッティング、セキュリティ設計、ヘルプデスク、配送や運用までをワンストップで提供するDNPマルチデバイスマネジメントサービスを展開していきます。企業のノンコア業務を最適化し、コア業務に集中できる環境を、これからも提供し続けてまいります。
レノボ・ジャパン合同会社 様
設立: 2005年4月28日
本社: 〒101-0021 東京都千代田区外神田四丁目14番1号 秋葉原UDX
資本金: 1億円
従業員数: 960名(2025年7月時点)
(本記事の内容は2026年8月時点の情報です。)
