カーボンニュートラルな未来への第一歩、LCAを活用しよう!

脱炭素、循環経済、自然共生…。 環境配慮は、サステナブルな世界のために必要不可欠となっています。
そうした環境テーマに挑戦する企業や活動と伴走するのが、DNPの環境配慮デザインチーム 「DNP GREEN PARTNER™」です。

DNP GREEN PARTNERは社会全体で環境配慮を進めていくために必要な情報を積極的に発信していきます。
第1弾は、LCAについて全3回にわたり解説し、皆さまと共に更なる環境負荷低減を図っていきます。

※2023年3月時点の情報です

DNP GREEN PARTNER

最近注目されている「LCA(ライフサイクルアセスメント)」(以下、LCA)をご存知でしょうか?
LCAとは、自社の製品やサービスによる環境への影響を、定量的に算出する手法です。近年、環境リスクへの危機感が高まりつつあり、生活者や投資家から環境に配慮した製品やサービスが求められています。その一方で、どのように環境配慮の取組みを行えばよいかわからないという企業は少なくありません。
企業が環境への配慮に取組む際に重要なLCAについて、また、LCAがどのような目的で使用されるのかを、全3回のシリーズでお伝えしていきます。
今回は、自社の環境負荷の度合いを算出する方法として注目されている「LCA」の概要や注目されている理由、社会的意義、重要性、事例を交えた国内外の動向を紹介します。ぜひ最後までご覧ください。

目次

1. いまなぜLCA?

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まずLCAの概要と、なぜいま注目されているのかについて解説していきます。

LCAとは?

LCAとは、製品やサービスにおける、原料の調達から製造、流通、使用に加えて、廃棄、リサイクルに至る、ライフサイクル全体の環境への負荷を定量的に算出する手法です。
LCAは「なんのためにその算定を行うのか」という目的の設定が最も重要になります。 これまで製造業を中心に、環境へ配慮した製品・サービスの開発が進められてきました。
現在LCAの規格は、ISO(国際標準化機構)により、環境マネジメントの国際機構(ISO 14040、ISO 14044など)として規定されています。

なぜ、今LCAが 注目されているのか

現在、地球全体で気候変動が喫緊の課題となっています。気候変動は、単に気温を上昇させるだけではなく、さまざまな異常気象の原因とされています。日本においても、大型台風や豪雨による、甚大な被害が各地で発生し、深刻化しています。
国際機関の調査では、これら気候変動をはじめとするさまざまな環境リスクは、人間の生産活動による二酸化炭素などの温室効果ガスの増加が原因であると断定されており、地球規模での対応が求められています。

日本では政府が 、地球温暖化対策として、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」をめざすと宣言しました。

地球温暖化対策として、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す

  • *カーボンニュートラルとは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林や森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味します。

カーボンニュートラルを達成するためには、排出量と排出の内訳(どこでどれだけ排出しているか)を把握することが重要です。そこで用いられる方法の一つがLCAです。
LCAは、資源やエネルギー、排出物の量を測る評価指標であり、環境負荷の原因や改善につなげる判断材料となるため、多くの企業で導入が進められています。

2. なぜ企業はLCAに取組むの?

今後LCAを活用し、自社の環境負荷低減にどのように取組んでいくかは、企業にとって重要なポイントです。ここでは、企業がLCAに取組む社会的意義や経営戦略としての重要性について、実際の流れとともに解説します。

企業の取組み

自社の排出量を知る

まずは現状、どれぐらいの温室効果ガスを排出しているのかを知ることが重要です 。
製品やサービスの原料調達から製造・流通など製品ライフサイクルの各段階において、投入される資源、エネルギーのインプットデータと生産される製品や排出物などのアウトプットデータの収集を行います。
収集データをもとに、CO2やメタンなどの温室効果ガスの排出量を明らかにします。

製品やサービスの原料調達から製造・流通など製品ライフサイクルの各段階

削減目標を立てる

どの段階での排出量を削減すれば良いか目標を立てます。
削減目標は、例えば「23年のCO2排出量を前年比で3%減らす」など、具体的な数値で表すと行動に移しやすくなります。

削減を実施する

削減目標に向かって、ライフサイクルの各工程でCO2削減に取組んでいきます。

ステークホルダーへの情報開示

環境への配慮を行うことは、お金や労力がかかるため、手が回らないという企業も少なくありません。しかし、自社の取組みとして環境に配慮した製品やサービス、システム、ビジネスモデルを確立して、生活者や投資家に情報開示することはCSRなどの社会貢献となり、また、国内外の投資獲得にも有効です。
そのため昨今では、会社の財務状況だけではなく、非財務状況もオープンにする動きが加速しています。多くの企業では、CSR報告書や気候関連情報を示すTCFDなど国際認定への加盟を行い、積極的に情報開示を進めています。

カーボンニュートラルな社会の実現

世界規模でカーボンニュートラルをめざすためには、LCAをはじめとするさまざまな手法を用いて温室効果ガスの排出量を把握し、削減を図ることが重要です。その結果として、カーボンニュートラルが実現し、サステナブルな社会につながっていくと考えられています。

LCAをはじめとするさまざまな手法を用いて温室効果ガスの排出量を把握し、削減を図ることが重要

3. 世の中はどう動いている?

国内外におけるLCAの具体的な動向について紹介します。

「カーボンフットプリントによる見える化が進む」

政府は、自社製品のすべてのカーボンフットプリント*を算出し、公表することを推奨しています。

  • *カーボンフットプリントとは、商品やサービスの製品ライフサイクルが環境に与える負荷をわかりやすく表示する取組みです。カーボンフットプリントの算出には、LCAが活用されています。

以下、国内外の事例について紹介しましょう。

化粧品業界

・全製品のカーボンフットプリントを算定し、すべての関係者に向けた公表
・CO2排出量やプラスチック使用量の大幅な削減に貢献する製品展開

トイレタリー業界

・バイオマスプラスチックの導入や、容器包装における環境配慮設計

欧州

・バイオマス化やリサイクルなど、素材の切り替え

「温室効果ガス排出削減のためのカーボンプライシング」

イギリスの気候変動税(CCL)

イギリスではエネルギー使用に対して課税を行っています。その一環として、炭素に価格づけを行う「カーボンプライシング」を導入しており、温室効果ガスの排出抑制をめざしています。他にも燃料税や炭素税なども導入し、規制を強めています。

国内の「地球温暖化対策税」と炭素税の導入

国内でも、2012年から炭素税の一種である「地球温暖化対策税」が導入され、今後も新たな炭素税の導入が検討されています。
そう遠くない未来に炭素税が導入されることを見越して、LCAの導入を検討するべきでしょう。

4. DNP GREEN PARTNERはこうみる!

カーボンニュートラル実現に向け、企業は環境に配慮した経営が求められています。
そこで活躍するのがLCA!
LCAは、製品やサービスの一生にかかるCO2排出量の可視化のほか、削減努力による効果の把握、自社の統合報告書などの情報開示に活用できます。
LCAを実施するにあたり、とても重要なのは目的の設定です。組織活動の評価をしたいのか、環境配慮設計を推進するための製品評価なのか・・・何のためにLCAを実施するか、目的に沿った評価を行うことが重要です。

#2ではサプライチェーン排出量(スコープ123)とパッケージLCAについてご紹介します。こうご期待!

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