反射防止フィルムとは|反射防止の原理や用途について

反射防止フィルムの代表例であるARフィルム、AGフィルム、位相差フィルムの原理を解説

反射防止フィルムとは、反射光を低減させることにより、画面の表面反射や映り込みを抑えるフィルムです。反射防止フィルムを使用することで、液晶画面に外光が当たっても、その影響が低減され、画面がきれいに見えるようになります。同様に反射防止の目的で、有機ELディスプレイには位相差フィルムが使われています。
反射防止フィルムは、パソコンやタブレット端末などにも使用されており、実はとてもなじみの深い製品です。

※こちらのページに記載されている内容は、2023年12月時点の情報です。

反射防止フィルムの用途

反射防止フィルム

反射防止フィルムは液晶テレビやPCのディスプレイ、タブレット、スマートフォンのタッチパネルディスプレイの最表面に使用されています。映り込みを防止(低減)できることから、ディスプレイには欠かせない部材となっております。また、最近の4Kテレビなどで使われることの多い有機ELディスプレイにおいては、外光の反射防止のために、位相差フィルムと直線偏光板を組み合わせたものが使われています。

その他にも、産業用ディスプレイやカーナビのディスプレイなどでも使用されています。産業用ディスプレイとしては、カメラ機能を搭載した測量機などに使用されており、室外において太陽光が直接入射する環境でも、光の反射を抑えることで、ディスプレイの表示を読みやすくしています。
他のディスプレイに用いられる光学フィルム同様、透過率やヘイズなどはもちろんのこと、最表面で用いられるために耐擦傷性や耐薬品性、防汚性といった性能も求められます。

反射防止フィルムの原理

一般的に反射防止フィルムと呼ばれるものには、以下のようなものがあります。

ARフィルム/LRフィルム

ARフィルムまたはLRフィルム(AR:Anti-Reflection、LR:Low-Reflection)は、反射防止層の付いた光学積層体フィルムです。ARフィルムでは反射防止層の表面で反射する光と、反射防止層は透過して反射防止層とベースとなるフィルム基材との界面で反射する光が、同振幅かつ逆位相になるように材料を設計します。このように設計することによって、2つの光が干渉して打ち消しあい、反射光が弱まり目に届かないようになります。

ARフィルムの原理1

ARフィルムの原理2

AGフィルム

AGフィルム(AG:Anti-Glare=防眩フィルム)は、ベースとなるフィルム基材の表面に、粒子を配置したハードコート層を塗布することで表面凹凸を形成した光学積層体です。入射光が凹凸面で乱反射することで、外光の映り込みを抑えることができます。

AGフィルムの原理

位相差フィルム

有機ELディスプレイでは、入射光が電極に反射してコントラストが低下するのを防ぐために、位相差フィルムと直線偏光板を組み合わせたものが使われています。有機ELパネルの上に位相差フィルムと直線偏光板を加えることで、入射する外光(ランダム偏光)は、まず直線偏光板で直線偏光に変換され、さらに位相差フィルムで円偏光に変換されます。電極(有機EL発光セル)で反射された外光は逆円偏光となり、位相差フィルムを通って再び直線偏光に変換されます。このときの直線偏光は、入射時とは90°回転したものになっているために直線偏光板を透過できません。直線偏光板と位相差フィルムの組み合わせによって、外光の反射を抑えて白浮きを抑え、コントラスト低下を防ぎます。

位相差フィルムの原理

DNPの反射防止フィルム

ARフィルム

ARフィルム

ARフィルム(Anti-Reflection Film)は、光干渉を利用して反射光を低減させ表面反射や映り込みを抑えます。

DNPではこれまで培った光学設計技術を生かして、反射率のコントロール、および反射時に発生する反射色のコントロールを可能にしました。
ARフィルムの製造方法には、「真空蒸着法」や「スパッタ・CVD法」、「ウェットコーティング法」などがあります。DNPでは、比較的生産性の高いウェットコーティング法を採用しておりますが、硬度も兼ね備えた反射率0.1%の高機能な製品の生産を可能にしています。

また、さまざまな特性を持った材料をバランスよく配合し、性能を最大限にまで高めるインキの自社設計技術や、最大幅2500mmの広幅対応生産ライン、最大3層の多層コーティング技術を保有しています。
DNPでは帯電防止や傷つき防止、防汚性など、さまざまな機能を付与したARフィルムを生産しています。

AGフィルム

AGフィルム

AGフィルム(Anti-Glare Film)は、ベースフィルム表面に粒子を配置して凹凸を形成した光学積層体フィルムです。AGフィルムをディスプレイの表面に用いることで、入射光を乱反射させて外光の映り込みを軽減させ、ディスプレイの視認性を向上することができます。

DNPでは、これまで培った技術の蓄積から、乱反射によるコントラスト低下を抑えながら映り込みを防止するフィルムの設計技術を磨いてきました。その他、硬さや傷つき防止機能、密着性や耐久性の付与など、お客様の使用用途に応じた製品の開発・製造が可能です。

また、ディスプレイの表示品質は年々高まり、画素は微細化しています。そのため、AGフィルムの凹凸が画素に対して相対的に大きくなり、ギラツキの問題がより顕著に生じます。こうした背景からAGフィルムの高輝度、高防眩、高いギラツキ防止性能といった要求は年々高まっています。DNPではAGフィルムの継続的な技術向上に努め、高精細ディスプレイ対応AGフィルムを提供しています。

位相差フィルム

位相差フィルム

液晶ディスプレイや有機ELディスプレイには、斜め方向から見ると色が変化する、太陽光などの外光の反射によりコントラストが低下するという課題があります。
液晶ディスプレイの色の変化は、バックライトからの光が液晶層を通過する際に光学的ずれ(位相差)が生じることが主な原因であり、この光学的ずれを補償するために開発されたのが「位相差フィルム」です。
また有機ELディスプレイでは、太陽光など外部からの入射光が電極に反射してしまうことが原因でコントラストが低下します。この外光反射を低減させるために、直線偏光板と位相差フィルムを組み合わせた円偏光板が用いられます。

DNPは、印刷や薄膜コーティングで培った技術を応用し、液晶材料を用いた位相差フィルムを「塗布法」で生産しています。塗布法で生産することで、フィルムを一定方向に延伸する位相差フィルムよりも薄くできることがメリットです。薄くすることで屈曲性を保つことができるため、フォルダブルスマートフォン(折りたたみスマートフォン)などのフレキシブルな有機ELディスプレイにも対応可能です。

反射防止フィルムの開発・製造ならDNPへ

DNPでは反射防止フィルムの設計・製造に関するノウハウを多数保有しています。反射防止フィルムの開発・製造はDNPにお任せください。

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