SDGsと建築の関係を解説!メリットや先進企業の事例を紹介

世界的に取組みが広がるSDGsは、建築とも関係が深く、無関心ではいられません。とはいえ、何から手をつけたらいいのかわからない場合も多いでしょう。まずは、建築にSDGs達成への貢献が求められる理由や具体的な事例の把握から始めてみることをおすすめします。このコラムでは、その理由や取組みによって得られるメリット、先行する海外事例などを紹介します。これからSDGsに取り組むために役立つ情報なので、ぜひ参考にしてください。

本コラムは、壁材・床材など住空間向け製品を扱っているDNP生活空間事業部が編集しています。以下のバナーよりDNP製品・採用事例等をご覧いただけます。

SDGsとはサステナブルな社会をめざす世界共通の目標

SDGsとは、2030年までに持続可能でよりよい世界をめざす国際目標です。「Sustainable Development Goals」の略で、日本では「持続可能な開発目標」と訳されます。

2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中心となるもので、17のゴールと169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。

建築にSDGs達成への貢献が求められる理由

建築は、経済・社会・環境に大きな影響を与える業界のひとつです。周囲への影響を考慮しなければ、多くのエネルギーと天然資源を消費し、大量の廃棄物を発生させることで、地球環境に大きな負荷をかけるでしょう。また、建物の設計や建築方法によっては、不平等を助長したり健康を害したりする場合もあります。

例えば、ベビーカーや車いす使用者の利用を考慮していない階段や段差、地域の気候に合わない資材や設計を採用した住まい、不十分な防火対策などです。

このような性質を持つ建築業界は、持続可能な社会の実現に対する責任を担うと同時に、果たせる役割も大きいと考えられます。そのため、業界全体で、SDGs達成を意識した取組みが求められています。

SDGsに取り組む4つのメリット

近年広がりを見せるSDGs達成に向けた活動は、利益に直結しないことも多いため、企業活動の負担になると考えるかもしれません。しかし、長期的に見るとSDGsへの取組みは、競争力を強化するとされています。

SDGs達成への取組みで得られる主要なメリットは、次の4つです。

(1)企業イメージの向上
(2)資金・人材の獲得
(3)コストカットの実現
(4)ビジネスチャンスの創出

それぞれ、具体的に解説していきます。

(1)企業イメージの向上

SDGsへの取組みは、企業イメージをアップさせる広報活動になり得ます。SDGsに貢献することで、「世界的な課題に取り組む先進的な企業」という、プラスのイメージを持ってもらいやすく、社会的責任を果たしていることをアピールできるからです。結果的に、企業イメージの向上につながるでしょう。

反対に、自社の利益のみ追求する姿勢は受け入れられなくなりつつあり、SDGsの達成は企業にとって無視できないものになってきています。

(2)資金・人材の獲得

SDGsへの取組みが、資金・人材の獲得につながる可能性もあります。近年、財務情報以外に非財務情報である環境・社会・企業統治を考慮した「ESG投資」が世界的に広がっています。ESGにおける課題とSDGsのゴールには共通点が多くあるため、今後、SDGsへの取組みが投資家からの資金調達の際に有利に働く要素となり得るでしょう。

また、積極的にSDGsに取り組む経営姿勢には、先見性のある優秀な人材が集まりやすくなると考えられます。資金・人材を有利に獲得するためにも、SDGsへの取組みは必須といえます。

(3)コストカットの実現

一見するとコストがかかるSDGsへの取組みを、コストカットにつなげることも可能です。

環境負荷低減のために、資源・エネルギーの使用量削減やリサイクル、廃棄物削減を徹底することが、エネルギー使用料金・原料調達コスト・廃棄コストの削減につながる可能性があるためです。これらのコストカットが実現すれば、SDGsへの取組みは、結果的に競争力強化につながるでしょう。

(4)ビジネスチャンスの創出

SDGsに関する課題を解決する過程で、新市場の発見や創出にたどり着くことも考えられます。これまでと異なる視点を持ってSDGsに取り組むことで、新しい事業への参入や新製品・新技術開発などのビジネスチャンスが訪れる可能性は大いにあるでしょう。

SDGs17のゴール達成のために建築業界ができること

一般社団法人日本建築学会は、SDGsに対応するための行動指針を「SDGs宣言」として公表しています。SDGs宣言では、SDGsの17のゴールのなかでも特に、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」とゴール12「つくる責任・つかう責任」を中心として行動することが示されました。

ここでは、ゴール11と12に加えて、建築業界ならではの貢献ができるゴールをいくつかピックアップして取組み例を紹介します。

【ゴール7】エネルギーをみんなに
・ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及推進

【ゴール9】産業と技術革新の基盤をつくろう
・堅固なインフラ整備への貢献
・持続可能な社会の実現に貢献する技術開発

【ゴール11】住み続けられるまちづくりを
・公共交通機関の整備
・耐震住宅の普及推進や都市計画への貢献による防災・減災対策

【ゴール12】つくる責任 つかう責任
・国産木材を活用した住宅の普及推進
・リサイクル建設資材の積極的な利用
・廃材の再資源化などによる廃棄物の排出抑制
・既存建築ストックの再生・活用

【ゴール13】気候変動に具体的な対策を
・災害時の復旧工事などに貢献

【ゴール14】海の豊かさを守ろう
・生態系保全に配慮した工事の実施

【ゴール15】陸の豊かさを守ろう
・建設発生土リサイクルのための土質改良技術の向上

ここで挙げた取組み以外にも、17のゴールすべてにおいて建築業界が貢献できることがあります。それぞれの立場や強みを生かした取組みを、ぜひ検討してみてください。

参考:持続可能な開発目標(SDGs)に関連した日本建築学会の活動情報(2022年10月20日更新)|一般社団法人日本建築学会
参考:建設産業におけるSDGsの取組例|新潟県

海外の具体的な取組み事例

ここからは、海外の企業や団体の先行するSDGsへの取組みを紹介します。自らの貢献方法を探す参考にしてください。

FSC認証フローリングの展開|Ted todd

Ted toddは、イギリスを拠点とするフローリングメーカーであり、1997年、ヨーロッパで初めて完全なFSC認証を取得した企業のひとつです。

FSC認証とは、適切に管理された森林由来の林産物などを認証し、消費者が認識できる形で提供する仕組みです。FSCは、直接的には、SDGsのゴール15「陸の豊かさも守ろう」の達成を測る指標であり、それ以外にも合計で14のゴールの達成に貢献します。

現在、同社が取り扱う新品の木材の90%はFSC認証などの森林認証を取得しており、その比率を100%に引き上げるべく、さらなる取組みを進めています。

参考:ENVIRONMENT|Ted todd
参考:SDGsの達成に貢献するFSC|FSC Japan

SDGs17目標すべての達成をめざす|UN17 Village

デンマークのコペンハーゲンで進行中のプロジェクト「UN17 Village」は、世界で初めてSDGs17の目標すべての達成をめざすエコビレッジです。

広大な敷地に建設される住宅や共同施設には、リサイクルのコンクリートや木材、ガラスなどの「アップサイクル資材」が活用され、建物の屋上にはソーラーパネルやさまざまな生き物の住処となる庭園が導入されます。

子どもからお年寄りまですべての人が快適に暮らせるように設計された「UN17 Village」は、エコ建築の域にとどまらず、社会・環境・経済すべてにおいて持続可能性を高めることを目標としています。

参考:Movoment|UN17 Village by NREP

難民の子どもたちに100の教室を|コミュニティ・ドーム

シリアから逃れヨルダンの難民キャンプで暮らす人々は、安全・衛生・教育の機会が不足した生活を強いられています。その環境を改善しようとする活動が、EAHR(Emergency Architecture & Human Rights:緊急の建築と、人権)による「難民の子どもたちに100の教室を」です。

この活動の特徴は、難民自身の手で行える持続可能な建設技術を伝授し、現場で一緒になって作り上げていく住民参加型のワークショップであることです。

ヨルダンのザアトリ村では、既存の学校を住民の手で拡張し、共有の空間・遊び場・教室として使える「コミュニティ・ドーム」が誕生しました。

参考:17の国連SDGsに対する建築ガイド:第1版

水質汚染による健康問題改善|ワルカ・タワー

エチオピアのドルゼに建てられた「ワルカ・タワー」は、不衛生な水によって健康被害を受けている地域住民に、清潔な飲み水を提供するシステムとしてデザインされています。雨・霧・露などの大気に含まれる水分を収集して、飲み水を抽出する仕組みです。

可能な限り地産材と伝統技術を活用したタワーは、生分解性100%の材料で作られています。住民によるメンテナンスが可能で、水の供給だけでなく、タワー天蓋の日陰や木陰は地域の人々が集える共有空間としての役割も果たしています。

参考:17の国連SDGsに対する建築ガイド:第1版

エコロジカル・フットプリントを左右する建築デザイン|Paramit:森の中の工場

マレーシアのペナンサイエンスパーク内に位置するパラミット工場は、医療器具の製造などを行う工場です。その特徴は、気候条件に適応した高いエネルギー効率を実現するデザインが、建物の随所に施されている点です。

一日の最も暑い時間帯に優れた遮光効果をもたらすルーバー状の屋根と庇(ひさし)や、日陰と蒸散によって日光からの熱取得を避けて気温低下に貢献する植栽などが、例として挙げられます。人間活動が自然環境に与える負荷のバロメーターとなる「エコロジカル・フットプリント」を左右する事例といえるでしょう。

パラミット工場は、これらのデザインによって、以前の工場と比べて45%のエネルギー消費削減を実現させています。

参考:17の国連SDGsに対する建築ガイド:第1版

都市景観を持続可能にする高耐久建材「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック」

建築物を構成する建材にも、環境負荷を軽減する技術が求められます。

大日本印刷が製造販売する「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック」は、有害な化学物質を使用しない製造過程を採用しているだけでなく、アルミニウムをベースとしているため再利用が可能で、廃棄物削減に貢献できる建材です。

また、建築物にとって重要な役割を担う外装材には、見た目の美しさだけではなく、耐久性・品質安定性・施工性・安全性のすべてを兼ね備えることが求められます。

アートテックは、外装材に求められるいくつもの要件を満たす建材です。アートテックの美しさと耐久性によって、サステナブルな景観の創出が実現できるでしょう。

参考:ARTTEC コンセプト|大日本印刷株式会社

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まとめ|建築業界において避けては通れないSDGs達成への貢献

建築業界は、エネルギー消費量や廃棄物排出量などから、地球環境に最も負荷をかける部門のひとつだと考えられています。だからこそ、SDGsに取り組む意義や影響も大きく、世界がめざすより良い未来へ貢献できる余地は大きいといえます。

資金や人材の確保、競争力強化の面でも、SDGs達成への貢献は、企業にとって決してマイナスになるものではありません。今後は、その姿勢がますます問われるようになるでしょう。

誰にとっても住みよい世界の構築に貢献していくためにも、国内外の取組み事例を参考にしつつ、まずは一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

【参考】出典元
SDGsとは? 外務省
SDGsへの取組み 一般社団法人日本建設業連合会
国連 17の持続可能な開発目標(SDGs)に対する建築ガイド第2巻 英文和訳版 デンマーク王立美術アカデミー、デンマーク建築家協会、国際建築家連合 (UIA) 他
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  • *2024年3月現在の情報です。
    *アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。

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