街のゲートとして緑とともに建物を縁取る
天然木の表情を感じられる木目調を採用したフォレストゲート代官山-アートテック建物探訪

建築物のさまざまなシーンを、オリジナルで豊かな表情を演出する「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック®」。その高いカスタマイズ性や質感表現などが実際の建物にどのように活かされているのかを、25年の経験を持つ建築ライターが探訪する「アートテック建物探訪」シリーズです。

東京都の代官山駅の目の前に建つ「Forestgate Daikanyama(以下、フォレストゲート代官山)」。日本を代表する建築家の隈研吾氏が設計に携わった、持続可能性を意識した建築です。

本コラムは、壁材・床材など住空間向け製品を扱っているDNP生活空間事業部が編集しています。以下のバナーよりDNP製品・採用事例等をご覧いただけます。

都市と自然の調和をめざした持続可能な建築

フォレストゲート代官山の外観

2023年に代官山に竣工した「フォレストゲート代官山」

ギャラリーやアパレルショップ、レストランなどが多く、情報感度の高い人が集まる街として知られる東京の代官山。一方で、旧朝倉家住宅のような屋敷も残っており、緑が豊かな落ち着いた街でもあります。

「フォレストゲート代官山」は、街への玄関口となる代官山駅を降りてすぐの、駅前の通りと八幡(はちまん)通りに挟まれた敷地に建つ複合施設です。「MAIN棟」と「TENOHA棟」の2つの建物でできており、地下1階から地上2階は店舗、地上3階が会員制シェアオフィス、地上4階から上は賃貸の集合住宅になっています。“循環する建築”をテーマとしており、環境に配慮した持続可能な建築として、都市と自然の調和をめざしています。

八幡通りの交差点側から「MAIN棟」の全体を見ると、段々になったシルエットをしています。分割された個々の部分は、縦横の周縁部を明るい茶色の資材で囲っており、木箱が積み重なったようにも見えるでしょう。地上10階建ての大きな建物ですが、小割にされた外観により通りへの威圧感は軽減されています。

自然素材の温かさとメンテナンス性を両立させるアートテック

MAIN棟を設計した建築家の隈研吾氏は、施設全体の設計意図を次のように説明しています(施設オープン時の発表資料より抜粋)。

「代官山という場所は、渋谷という『大きな街』の脇にある人間的で優しいスケールを持った、静かな中に賑わいのあるストリートである。その特質を木箱という集合体に翻訳して集合住宅という形で、街にお返ししたいと思った。木箱は温かな質感を持ったヒューマンスケールの象徴であり、さまざまな木箱が組み合わさることで街に多様性と賑わいを与えたいと思った。」

これらの「木箱」を実現するために使われているのは、天然木ではなくアルミパネル「アートテック」です。メンテナンス面での問題解決を主な目的として、アルミパネルが選択されました。

隈氏は、先のコメントに続いて次のように言います。

「そのような木箱のイメージを創るために、われわれは木の質感を持ったアルミニウムという新しい素材に挑戦した。実際の木を使うのはメンテナンス上の問題もあり、木の質感を持ったアルミニウムを使うことで自然素材の温かさとメンテナンス性を両立したようなデザインとした。さらにそのアルミパネルを緑と組み合わせることによって、緑も木の質感もお互いが引き立てあえるようなデザインとなった。」

「木の質感を持ったアルミニウム」である「アートテック」は、「自然素材の温かさとメンテナンス性を両立させるデザインとなっている」と隈氏は評価します。

少ないメンテナンスで高い耐久性を保てるアートテックの特性は、環境に配慮した持続可能なデザインにつながるでしょう。また、木のリアルな質感は、緑豊かな街に調和した利用者にとって親しみやすい景観づくりに貢献しています。さらに、共用部には多くの木々を配置し、MAIN棟の各住戸のバルコニーにも植栽が据えられています。これらの緑と木の質感があいまった外観は、大樹を思わせるでしょう。

フォレストゲート代官山の敷地内

「木箱」の演出を実現するためにアートテックを採用

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絶妙な操作で木の額縁のような効果を演出

フォレストゲート代官山の外壁

アートテックを用いて天然木の表情や質感を演出

建物に近づいて「木目」の部分をよく見ても、天然木の表情や質感を感じられ、一見アルミパネルには見えません。色は、濃いグレーの外壁から少し浮き立つような、薄い茶で統一。長手方向に濃い茶色の木目が入っており、隣り合う材料で木目の模様が続いています。通りゆく人も不思議に感じるのか、パネルを直に触っている姿が見受けられました。

上辺の庇(ひさし)部分に来る横方向のアルミパネルは、壁に対して斜めに取り付けられています。縦方向のアルミパネルも、横方向のアルミパネルに合わせた角度で取り付けられているため、塊のように見える効果が生まれています。

また、アルミパネルは幅を少しずつ変えたルーバー状のものを数種類用意し、材同士にあえて隙間を設けています。パネルの端部は、主なコーナー部以外は曲げ加工をせずに切り離しとなっていますが、幅の異なるルーバー材が隙間をもって連続することで、長手方向の材の継ぎ目は目立っていません。そして、少し離れて見ると、隙間自体が木目のようにも感じられます。こうした絶妙な操作によって、彫りの深い木の額縁のように見える効果が現れています。

街を訪れる人にとっての入口となりつつ、閑静な街の景観に馴染むフォレストゲート代官山。活気と平穏の両方を兼ね備えた建築は、リアルな木の表情を活かすアプローチによって生み出されています。

■事例DATA
Forestgate Daikanyama
所在地:東京都渋谷区代官山町20番23号
用途:賃貸住宅、商業店舗、事務所(シェアオフィスを含む)、駐車場
施主:東急不動産株式会社都市事業ユニット渋谷開発本部
竣工年:2023年
基本設計:株式会社隈研吾建築都市設計事務所
実施設計:竹中工務店・東急設計コンサルタント共同企業体
施工:株式会社竹中工務店
建物構造:鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
規模:地下2階 地上10階
敷地面積:約4,084m2
延床面積:約21,096m2
施工期間:2021年3月-2023年8月

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  • *2024年4月現在の情報です。
    *アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。

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