スパンドレルは天井や外壁に適した建材。サイディングボードとの違いや特徴を解説
近年の建物には、高いデザイン性によって資産価値を向上させたいというニーズとともに、施工やメンテナンスにおける効率化も求められます。これらの要望を叶えるには、それぞれを実現し得る建材選びが重要です。
天井や外壁において、上記の要望に応えられる建材として注目を集めているのが「スパンドレル」です。今回は、建物の資産価値向上と施工・管理時の負荷軽減を両立し得るスパンドレルについて解説していきます。
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スパンドレルとは「金属製の建築化粧板」
スパンドレルのイメージ |
スパンドレルとは、建築資材として使用される金属の化粧板です。目透かし張り用(施工後、パネル材の連結部分に隙間が開く納まり)に加工された、凹凸のある形状をしています。同じ素材のフラットな金属板と比較して強度が高いため、外壁や軒天などの外装に適しています。
また、取付金具が仕上げの質感を損なわないように、凹凸の中に隠れる構造になっている点も特徴です。そのため、塗装や質感の違いによる多様なバリエーションが可能となり、デザイン性を求められる天井や内装にも使われています。
スパンドレルは金属系サイディングボードのひとつ
スパンドレルと同じような素材を指す言葉に、「金属系サイディングボード」があります。サイディングボードとは、外壁用に使われるボードすべてを示す大きなくくりで、スパンドレルはその一種です。
スパンドレルとそのほかの金属系サイディングボードには、施工場所と施工方法の点で違いがあります。
一般的な金属系サイディングボードは壁面のみに使われるのに対し、スパンドレルは天井や軒天にも施工されます。また、金属系サイディングボードは、一般的に防水性や気密性を高めるために、ボードのつなぎ目をシーリングで埋めて接着する工程が必要です。一方、スパンドレルは、凹凸に加工された連結部分を組み合わせ、ねじ止めします。凹凸部分が組み合わさって水漏れを防ぐのでシーリングは必要ありません。
スパンドレルの4つの特徴
スパンドレルには4つの特徴があります。各特徴について解説します。
(1)デザイン性の高い建築が実現できる
スパンドレルは、凹凸の形状のなかに取付金具が隠れる構造になっており、統一感を持ったデザイン性の高い建築が実現できます。また、目透かし張り用に加工されているため、デザインに規則的なラインが生まれ、シャープで高級感のある印象に仕上げられます。
スパンドレルに使用される主な素材は、アルミ、ガルバリウム鋼板、ステンレスなどです。それぞれの素材の質感を活かせるだけでなく、選ぶ素材によっては塗装やシートの貼り付けによる多彩な色や質感も表現可能です。仕上がりのバリエーションが豊富である点も、スパンドレルの大きな特徴といえるでしょう。
(2)メンテナンス頻度が少ない
スパンドレルに使われる素材は、さびや腐食に強く、耐候性が高いため、メンテナンス頻度を減らせます。また、施工時にシーリングを使用しないことも、メンテナンスの頻度を減らせる理由です。
金属系サイディングボード施工時に使用されるシーリングは、5年から10年ほどで経年劣化します。劣化を放置すると、雨水の侵入や気密性低下の原因となり、建物の耐久性に影響することもあります。それに対して、スパンドレルはシーリングの劣化に対する定期的なメンテナンスを必要としないため、コストの面でもメリットがあるといえます。
(3)防火区画に使用できる
建築基準法では、面積の広い建物や高層の建物、病院や共同住宅、マンションなどには、火災発生時に延焼拡大を防止するための防災区画の設置が義務付けられています。防火区画には、外壁に開口部からの炎の回り込みを防ぐため、耐火構造の壁を作らなければなりません。
アルミ、ガルバリウム鋼板、ステンレスなど、スパンドレルに主に使用される素材はいずれも耐火性が高く、不燃材料として認められています。防火区画に採用可能な点も、スパンドレルの大きな特徴です。
(4)軽量で施工がしやすい
スパンドレルに使われる素材のなかでも、アルミ製のスパンドレルは軽量のため、搬入や施工しやすい点が特徴です。特に、狭い場所や坂道など、移動が困難な場所でも搬入しやすく、現場での取り回しにも優れています。また、アルミ製のスパンドレルは現場での切断や穴あけなどの加工が比較的容易なため、複雑な形状の建物にも柔軟に対応可能です。
軽量で施工しやすいという特徴は、設置作業者の負担軽減や、設置作業のコスト削減につながります。建物への負荷も軽減できるため、複数のメリットを持っているといえるでしょう。
スパンドレルに用いられる主な素材
ガルバリウム鋼板のイメージ |
すでに紹介しているように、スパンドレルは主に次の3つの素材で作られます。
・アルミ
・ガルバリウム鋼板
・ステンレス
ここからは、各素材の特徴について解説します。
アルミ
スパンドレルに用いられる素材として、最も主流なものがアルミです。アルミには次のような特徴があります。
・高い耐候性
・軽量で高い施工性
・表面仕上げが多彩
・比較的高価
アルミは空気や水にさらされることで表面に酸化皮膜ができるため、内部まで腐食されることがほとんどありません。美観を長く保つことができ、商業施設やビルの外壁などにも用いられます。
また、軽量で施工性と加工性が高く、切削による穴あけや曲線のある曲げ加工が容易である点もアルミの特徴といえるでしょう。
さらに、アクリルやウレタン、フッ素樹脂などを用いた焼付塗装が可能です。木目や石などの自然素材の質感だけでなく、アルミの素材感を活かした独創的な表現が作れます。
一方で、ほかの素材のスパンドレルと比較して、価格が高くなる傾向があります。
ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は、アルミと亜鉛の合金でメッキされた鋼板のことです。素材の特徴は以下の通りです。
・高い耐候性
・比較的安価
ガルバリウム鋼板はさびや腐食に強く、熱による劣化やひび割れも起こしにくいので、外壁に利用すると美観を長く保てるという利点があります。
アルミやステンレスと比較すると安価であることもメリットです。商業施設やビルだけでなく、一般家庭で用いられるケースもあります。
ガルバリウム鋼板と似た素材には、カラー鋼板があります。カラー鋼板は、一般的に、亜鉛メッキ鋼板を塗装して耐久性を高めた素材を指します。選べる色が豊富で、デザインの幅を広げるためには効果的です。ただし、耐候性の面では、ガルバリウム鋼板よりも劣るため、雨風にさらされる外壁よりも、室内内装や天井などに適しています。
ステンレス
ステンレスも、スパンドレルに用いられることの多い素材です。ステンレスには次のような特徴があります。
・高い耐候性
・塗装が定着しにくい
・加工が難しい
ほかの素材同様、ステンレスも高い耐候性があります。酸化しにくく温度変化にも強いため、塩害のリスクがある海の近くの建物や、水分や湿気にさらされることの多い場所でも使用されています。
塗装が定着しにくいため、主にステンレスのシルバーで光沢のある素材感を活かしたデザインで用いられるのも特徴といえるでしょう。住居よりも、商業施設や公共施設の外壁や天井に採用されることが多い素材です。
スパンドレルの設置に適した場所
庇に使われるスパンドレルのイメージ |
ここからは、スパンドレルの設置に適した場所について、期待される効果や実際のケースを含めて解説します。
天井
さまざまな質感や色合いの表現が可能なことに加え、軽量で施工しやすい特徴を持つスパンドレルは、室内の印象を左右する天井への設置が適しています。天井に設置することで、スパンドレルのメリットを活かすだけでなく、デメリットを最小限に抑えられるためです。
スパンドレルは高い耐候性がある一方で、深い傷になるような局所的な衝撃に弱いという強度面での弱点があります。傷がついたり衝撃を受けたりするリスクが低い天井へ施工することで、強度面の弱点を感じづらくなるでしょう。
実際に、スパンドレルは、駅舎や庁舎、ホテルやマンションのエントランスの天井などに多く用いられています。
外壁
スパンドレルに用いられる素材は、高い耐候性と防火性を有します。さびや腐食への対策が求められ、雨風や紫外線などの影響が大きい外壁に設置することで、この特長を大いに活せるでしょう。
また、デザイン性の高いスパンドレルを使うことは、外観デザインの向上につながり、建物の価値を高めたいというニーズにも応えられます。そのため、商業施設や教育施設、オフィスビルや体育館など、大規模な建物の外壁として多く用いられています。
軒天
スパンドレルは、庇(ひさし)やバルコニーの軒天として利用されることも多い建材です。軽量で施工が容易という点に加えて、高層の建物のバルコニーの軒天に利用すれば、火災が発生した際に上下階への延焼拡大防止も期待できます。軒天は手の届きにくいため、こまめなメンテナンスを必要としない特長も活きるでしょう。
内装
スパンドレルは豊富な仕上げのバリエーションがあり、さまざまなデザインに対応できるため、内装としても数多く採用されています。例えば、近年人気が高まっている、木目や石のような自然素材の質感を活かしたデザインも表現しやすいでしょう。
また、スパンドレルに使用される素材は不燃材料として認められているため、建築基準法における内装制限がある建物でも内装材として利用可能です。
主に、劇場や映画館、病院や商業施設などで多く採用されています。
建築物の内・外装用アルミパネル「アートテック」のスパンドレル
アートテックのスパンドレルのイメージ |
建物に求められるデザイン性と、施工やメンテナンスの負荷軽減を両立できる建材として注目されているのが、「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック」です。
アートテックは、印刷だからこそ表現できる高いデザインカスタマイズ性と、豊富な表面仕上げ、質感表現で建物の内外装を彩る建材です。アルミならではの軽量性と加工性によって多様な形状の加工を施すことができ、外壁だけでなく、天井や軒天、ルーバーなどさまざまな用途で採用されています。こうした特徴とスパンドレルの高い耐候性を掛け合わせ、より薄く、より軽量で扱いやすい建材として開発されたのが、アートテックのスパンドレルです。
アートテック独自のパターンやカラーバリエーションを取り入れることで、建物全体のデザインに統一感を与え、より魅力的な雰囲気を演出できます。また、アートテックのスパンドレルは、従来製品と比較して約50%の軽量化を実現しており、デザインによって建物の資産価値を高めながら、職人による施工や管理、メンテナンスの負荷を軽減したいというニーズに応えます。
木や石などの自然素材のリアルな質感や、アルミの素材感を活かした独創的な表現を可能としながら、施工やメンテナンスの省力化が期待できることから、商業施設や公共施設、住宅など、さまざまな建築物での採用に適しているといえるでしょう。
さらに、アートテックのスパンドレルは、持続可能な建築にも貢献ができます。主材料のアルミはリサイクルが可能であるため、環境負荷の低減が可能です。従来のアートテックと同様、製造過程において、有害な大気汚染物質に指定される六価クロム酸を含んでいないなど、有害な化学物質の排出軽減・廃棄物削減にも貢献しています。
これらの取組みは、持続可能な社会の実現だけでなく、環境認証取得をめざす建築プロジェクト貢献にもつながるでしょう。
関連ページ:焼付印刷アルミパネルアートテック®✕ロールフォーミング8型アルミスパンドレル(PDFが開きます)
まとめ
スパンドレルは、デザイン性や耐候性に優れた特徴を持ち、軽量で施工しやすいことから施工時の負荷軽減も期待できる建材です。デザインによって建物の資産価値を高めたい、施工やメンテナンスの負荷を軽減したいといったニーズに対応できます。
スパンドレルの特徴と、高いデザインカスタマイズ性や軽量さを持つアートテックを掛け合わせたアートテックのスパンドレルは、建築事業者や施工主の要望を叶え、課題を解決することが期待できるでしょう。スパンドレルの採用をお考えの方は、ぜひチェックしてみてください。
【参考】出典元
スパンドレルとは? 理研軽金属工業株式会社
ガルバリウムスパンドレルとは?特徴やメリット・デメリットを解説 Wall the best
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*2025年1月現在の情報です。
*アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。