インテリアに新しい質感表現を。機能美を追求した超低艶 内装用化粧シート「MATTISSIMO®」のポイントを紹介
プロダクト製品における表面仕上げは非常に重要です。見た目の第一印象を左右する意匠性だけでなく、実際に手に取った時の触感、さらには清掃性、摩擦や防滑性といった機能面にも大きな影響を与えます。仕上げのバリエーションは豊富で、例えば光沢感があり光を反射する鏡面仕上げや、あえて凹凸感を感じられるように削り加工を施すサンド仕上げ、金属製品であれば連続した直線状の凹凸をつけるヘアライン仕上げなどがあります。
そのなかでも近年、光の反射を抑えた低艶仕上げが増えています。表面に微細な凹凸が施されており、これにより光が拡散反射するため、余計な光の映り込みがなく、目に優しい仕上がりになります。
ライフスタイルの多様化に伴い、サーフェスデザインの仕上げもバリエーションが拡大し、私たちの身の回りにも低艶(マット)仕上げのプロダクトを目にすることが多くなりました。このコラムでは、マットな質感のプロダクト製品の特徴、そしてDNPが新商品として販売する超低艶 内装用化粧シート「MATTISSIMO」についてご説明します。
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マットな質感が映えるプロダクトデザイン
まず、私たちの生活を豊かにするプロダクトの中から、低艶仕上げの歴史や特徴をご紹介します。
私たちの日常に欠かせないスマートフォンの表面テクスチャーは、仕上げの変化を最も身近に感じられる代表的な例と言えるでしょう。2007年にApple社が発表した初代iPhoneは、その後ほぼ毎年新モデルが登場し、機能はもちろんのことプロダクトデザインの意匠にも大きな注目を集めています。特に、2016年に発表されたiPhone 7では、背面にマットな質感のブラックが初めて採用され、その滑らかな手触りが話題となりました。さらに2019年に発表されたiPhone 11は、マットガラス仕上げが導入され、高級感とともに指紋が付きにくいという意匠性と機能性を両立した「機能美」が注目を浴びました。このような質感は、その後パソコンやゲーム機などデジタルデバイスへの展開が拡大していきます。
またコスメ業界でも、近年低艶表現のトレンドが注目されています。2000年代後半までは光沢のあるポリッシュネイル(マニキュア)が主流でしたが、マットな仕上げを可能にするマットコートの登場が話題となりました。現在では、ジェルネイルの普及とともにマットコートが広く使われ、カラーやパターンだけでなく多様な質感のバリエーションの提供に寄与しています。さらに、パンデミックを経てマットタイプの口紅も人気を集めました。マスクをつける日常が続く中で、マスクへの付着が少なく、美しい色と質感が長時間キープできるマットリップが支持されました。
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機能美を際立たせるインテリアにおける低艶仕上げ
次に、インテリア空間を彩る家電や家具、建材における低艶表現についてご紹介します。
まず家電についてです。戦後から高度経済成長期にかけて、家電の需要は急増しました。その多くは清潔感や視認性の観点から表面のカラーはホワイトを主流としていました。家電だけでなく、壁紙などの内装材や水回りのタイルもホワイトが一般的な時代でした。その後、ライフスタイルの変化に伴い、住宅のインテリアに調和する多様なカラーが求められるようになり、さまざまな色の家電が登場します。2010年代に入ると、先述したスマートフォンのマットブラックのトレンドが影響し、家電でも低艶のブラックが台頭し始めます。スマートフォンと同様に、ミニマルなフォルムに滑らかな質感、指紋が付きにくく汚れが落としやすいという「機能美」を実現した仕上げとして、大きなトレンドとなりました。現在ではブラックだけでなく、グレーやベージュなどの中間色でマットな仕上げを施した家電も多く見られ、インテリア空間との調和が図られています。低艶仕上げにより、工業製品であっても温もりや落ち着きを感じさせ、空間によく馴染むため、どんなインテリアにも合わせやすい特徴があります。
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家具に関しては、まず木製品について述べます。木材の表面は、削り加工や塗料、オイル、ワックスなどの塗布によりさまざまな質感表現が可能です。この工程は見た目の違いだけでなく、木材の耐久性を保持する上でも重要な役割を果たしています。1990年代までは光沢仕上げが人気を集め、高級感のある表現として広く支持されていました。しかし2000年代に入ると、高度経済成長期の大量消費社会への疲れもあり、生活者の価値観が変化し、より自然な風合いを求めるようになりました。都市化やデジタル化の進展に伴い、心地よさや癒しを感じられる製品が求められ、家具の仕上げにも低艶が登場し始めます。そして木材だけでなく、大理石やタイルや陶器、単色表現でも低艶表現が増加し始めました。
2010年代には、国際家具見本市「ミラノサローネ」における高級家具の世界でも低艶仕上げの家具が増加しました。その後、低艶仕上げが主流となり、さまざまなマテリアルを組み合わせるマテリアルミックススタイルを後押しする形で、仕上げのバリエーションが拡大。さらに、パンデミックを経て、キッチン扉やカフェテーブルの天板など、人の手が触れることが多い部位に高機能なマット素材を採用するブランドが増え、意匠性だけでなく衛生面でも注目されるようになりました。またここ数年、欧州のインテリアでトレンドワードになっている、目に見えた華やかさや高級感ではなく、控えめな上質さを感じさせる「クワイエットラグジュアリー」のスタイルにも、まさに適した素材の質感とも言えるでしょう。
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このように、インテリアにおける低艶表現の家具や内装材は、ライフスタイルや生活者の価値観の変化に合わせて台頭し、高い機能性と意匠性を兼ね備えた仕上げとして欠かせない存在となっています。
新製品MATTISSIMOの特徴
このような世の中の潮流を反映し、DNPでは、これまで培ってきた印刷技術を活かして超低艶の内装化粧シート「DNP高質感化粧シート サフマーレ マッティシモ(MATTISSIMO)」を2025年10月に発売致しました。室内建具(ドア・引き戸)・収納・内装部材(造作材等)にお使いいただけるシート製品です。基材に色柄を印刷した上で、新たに開発した特殊コーティングを施すことにより、従来のサフマーレが持つ耐傷性、耐汚染性等化粧シートに求められる基本性能は損なわずにマット(低艶)な質感と滑らかな触感を実現しました。
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特徴1 光の反射を、徹底的にカット
艶消し剤を使わずに、グロス値(光沢度)5%以下*という“超低艶”と実使用における“耐久性”を両立しています。それにより、強い光を受けた時に生じるグレア(反射)や
白濁感が気になりません。目にもやさしく、心地良い空間を作ることができます。
*グロス値(光沢度) → 表面に当てた光が反射する量をパーセンテージで表したもので、値が高いほど艶があることを示す。一般的には、グロス値70%以上が艶あり、5%以下が艶なしとされる。
特徴2 微細な凹凸が生み出す、新触感
表面の微細な凹凸の効果により、天然のシルクや木地のような滑らかな触感を実現しました。また、指紋の付着を防止する機能によって、特に濃色の扉など指紋が目立ちやすい箇所にも、安心して使用することができます。
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MATTISSIMOのカラーラインナップと使用空間イメージ
今回発売する「MATTISSIMO」では、全10色のラインナップを展開します。多様なインテリアテイストで使用できるベーシックカラー6色と、自然界から着想を得て末永く愛着が持てるカラー4色(受注生産品)をご用意しました。
Neutral Colors
ベーシックカラーは、ナチュラルな色味で構成しており、さまざまなインテリアテイストに取り入れやすく、木素材とのコーディネートもしやすいラインナップです。なかでも、MT-01オフホワイト、MT-02 ライトグレージュ、MT-03 ウォームグレー、MT-04 クールグレーは、マットな質感との相性が良く、インテリア空間にやさしく調和します。MT-05 ダークグレー、MT-06 ジェットブラックは、汚れや指紋が目立ちにくいため、衛生面でもメリットを感じられるカラーです。
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Nature-Inspired Colors
有彩色の4つのカラーは、インテリアのアクセントにもなりつつ、時を経ても親しまれるカラーになるよう、自然界に存在する色からインスピレーションを得て設定しました。MT-51セージグリーンは森林や植物を想起させるグリーンで、グレイッシュな色味にすることで、インテリアになじみやすい色味に仕上げています。MT-52テラコッタブラウンは、土やレンガを想起させる温かみのあるカラー。このグリーンやテラコッタは自然を想起させるカラーとして、世界的にもトレンドとなっており、特に明るい木目との相性が良好です。MT-53のスレートブルーは、グレイッシュな明るい水色で、モダンな空間に調和しやすいカラーです。イタリア家具のコーディネートにもよく見られるアクセントカラーであり、グレーやブラウン系の木材はもちろん、石やメタルといった素材とも相性が良い点が特徴です。最後にMT-54コズミックブルーは深みのある色味で、宇宙、夜の闇、深海といった神秘的なイメージを想起させるカラーです。カジュアルからモダン、スタイリッシュなインテリアまで、幅広いテイストにマッチします。
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最後に、これらを使用した空間イメージについて説明していきます。
リビングダイニング
外界の自然の要素を積極的に取り入れた、北欧スタイルの空間です。框デザインの建具はガラス素材と組み合わせることで、質感のコントラストを生み、空間をより魅力的に感じさせます。パントリーにも同様にガラス入りのデザインを採用し、セージグリーンのカラーがアクセントとして空間に彩りを加えています。MATTISSIMOのさらっとした質感は、光を散乱させて反射を抑えるため、ミニマルなデザインで素材のぬくもりを感じる北欧デザインの家具や照明とも調和し、空間に落ち着きと統一感を与えます。【使用品番 収納: MT-51セージグリーン、建具: MT-01オフホワイト】
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キッチンダイニング
料理好きのファミリーをイメージしました。カウンターを囲んで、家族や友人と集う時間が想像できます。グレージュ色のMATTISSIMOと明るい木目のカラーが調和し、空間を広く開放的に感じさせます。清潔なキッチンを保ちながら、安心して実用的に使えるこのキッチンは、サステナブルな暮らしを自然に促してくれるでしょう。【使用品番 キッチン収納:MT-02ライトグレージュ】
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ワードローブ・書斎
好きな物に囲まれて、自分だけの優雅なプライベートタイムを過ごすスペースです。シンプルな壁面収納も面材のカラーを変えることで、空間を彩るアクセントになります。マットな質感は華やかな家具も、優しく空間に溶け込み、落ち着いた時を演出します。異素材を組みわせるマテリアルミックスを楽しめるスタイリッシュな空間をめざしました。
【使用品番 収納: MT-05ダークグレー、MT-54コズミックネイビー】
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まとめ
低艶仕上げの魅力は、見た目の美しさやインテリア空間との調和だけでなく、触れるたびに感じる心地よさと高い機能性にあります。DNPの「MATTISSIMO」は、そんな価値を形にした新しいマテリアルです。上質でやさしい質感が、空間に穏やかな表情を添え、時を経ても長く愛されるインテリアを生み出します。
【参考】
手にして実感、さわって納得――iPhone 7/7 Plusは紛れもない「フルモデルチェンジ」だ(1/2 ページ) - ITmedia Mobile
ASCII.jp:「iPhone 15」ちょうど良くて持ちやすい 多くの人は十分に満足(西田宗千佳) (1/3)
Welcome Matte | Happi
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新製品MATTISSIMOに関するお問い合わせ
MATTISSIMOの製品に関して、下記Webサイトでご紹介しています。
https://livingspace.dnp.co.jp/product/brand/brand14/
また製品カタログも下記URLからアクセス可能ですので、是非ご覧ください。
livingspace.dnp.co.jp/product/brand/pdf/2025mattissimo.pdf
*2025年11月現在の情報です。
*サフマーレ、MATTISSIMOはDNP大日本印刷の登録商標です。

