ミラノデザインウィーク2025レポート Vol.4

イタリアで4月中旬に開催された今年のミラノデザインウィーク。DNPでは社員が実際に現地にて、150件を超えるブランドの視察・取材を行いました。各ブランドの新作や、ミラノデザインウィークでの展示の様子について、Vol.1~Vol.4まで4回に分けてご紹介します。Vol.4では多様なインスタレーションについてご紹介するほか、DNPの視点で分析したライフスタイル、インテリアコーディネート、Color Material Finish(以下、CMF)のトレンドについても言及します。

2025年ミラノデザインウィークの様子、各ブランドの新作紹介

Aesop ブランドサイト
スキンケア、ヘアケア、ボディケア製品を扱うAesopは、Chiesa del Carmine(サンタ・マリア・デル・カルミネ教会 )にてThe Second Skinと題される神秘的で多感覚を刺激する空間を生み出しました。
皮膚は身体最大の器官であり、境界であり、インターフェイスです。会場になった教会のエントランスは内と外の境界であり、皮膚のメタファーであると感じさせます。そのエントランスを通り回廊にでると、来場者がエレオス クリーム ボディクレンザーで手を洗うための洗面台が並んでいました。ハンドケアを受け、薄暗い聖具室に入ると、エレオス・アロマティック・ハンドバームが使用されたパネルで覆われた構造体が現れます。

パネルからは、エレオスのウッディ、ハーブ、スパイシーな香りが発散され、来場者はその香りを感じながらわずかな明かりを頼りに聖具室の中を探索します。構造体の中では入浴をテーマにしたコンテンポラリー・ダンスの映像や、手を使ったパフォーマンスを鑑賞することができます。不思議な体験の後にたどり着く明るい中庭には、香りをまとった彫刻がSebastian Coxによってデザインされた大きなテーブルに並び、来場者は座ってそれを眺めながら一時の休息の時間を得ることができました。

視覚、聴覚、嗅覚、触覚などの感覚に焦点を当てたこのインスタレーションは、人々をミラノデザインウィークの喧騒から一時的に切り離し、リフレッシュさせ、感覚を再び研ぎ澄まさせる不思議なチャージスポットのようでした。

Text by Yuki Arai

ALCOVA ブランドサイト
2025年で9回目の開催となるコンテンポラリーデザインの展示会であるAlcovaは、使われなくなり放置された場所をクリエイティブの拠点に生まれ変わらせることを得意とするデザインプラットフォームです。2024年のミラノデザインウィークの出展会場であった歴史ある邸宅のVilla BorsaniとVilla Bagatti Valsecchiに加え、2025年は合成繊維を生産していた旧SNIA工場とかつてヨーロッパ最大級の白ランを生産していたPasino Glasshousesの4カ所を会場としました。

Photos by Piergiorgio Sorgetti

古典主義とモダニズム主義の要素が融合したVilla Borsaniでは、建物の元々の機能や設備を生かしたデザインピースの展示が特徴的でした。
19世紀に建てられた貴族の別荘であるVilla Bagatti Valsecchiは、大広間から小部屋までさまざまな空間があることを生かし、部屋ごとに異なる世界観のデザインやアートで来場者を楽しませていました。また、展示会巡りに疲れを感じた人々が、広大な庭園で思い思いの時間を過ごす様子も印象に残っています。

Photos by Piergiorgio Sorgetti

3つ目の展示会場は、今では廃墟同然となった旧SNIA工場。歴史ある合理主義建築と周辺の自然が融合した独特の空間と、スケールやテクスチャーに特色のあるインスタレーションの展示のコントラストが際立っていました。
Pasino Glasshousesは、Villa Bagatti Valsecchiに隣接する温室です。現在は廃墟となっているこの温室ですが、その場所の歴史に敬意を示すように自然や植物をテーマにしたデザインやインスタレーションが多く見られました。

Photos by Piergiorgio Sorgetti

Alcovaは、デザインやアートそのものだけではなく、建築や自然まで楽しめる展示会として、ミラノデザインウィークの数あるイベントのなかでもひときわ個性を放っていました。

Text by Yuki Arai

Artemest ブランドサイト
Artemestは19世紀に建てられた歴史的建築の邸宅Palazzo DonizettiにてL‘Appartamentoの第3章を発表しました。2023年のミラノデザインウィークで発表した第1章、2024年における第2章に続き、今年も注目を集めていたArtemestはイタリアのデザイン、職人技によってつくられた家具などを販売するオンラインプラットフォームです。 L‘Appartamentoの第3章では1508 London、Champalimaud Design、Meyer Davis、Nebras Aljoaib、Romanek Design Studio、Simone Haagの6つのインテリアデザインスタジオが、Artemestの取り扱っている製品をコーディネートし、各空間を作り上げました。今回はその中から2つの空間をご紹介します。
Meyer Davis によるThe Grand Salonは、ギリシャ神話に登場するセイレーンの神話から得たインスピレーションと、 Palazzo Donizettiの歴史的建築物に敬意を示し、過去と現在、ファンタジーと現実の間を漂う空間を作り上げました。中央に設えられた大きなソファを中心に、空間の中に4つのシーンをつくり、ユニークなチェアが置かれています。ひとつの同じ空間に居ながら、回遊しながら、それぞれのシーンの表情を楽しむことができました。

Photos by Artemest

ChampalimaudによるThe Bedroom。1960年代のイタリア映画からインスパイアされ、夜の外出の前後に友人が集まる官能的で遊び心のある隠れ家として構想されました。バニティールームには雲のような白いソファに、オーストリッチをモチーフにしたバーが設えられています。ユニークで高揚感を感じる空間はまるで映画のワンシーンを見ているかのようでした。寝室は、柑橘の木を描いた手描きの壁紙が、直線的でモダンなベッド、ゆるやかな曲線を描くゆったりとしたオレンジのソファを包み込み、装飾的なインテリアをまとめています。そして窓際に設えられた書斎スペースが非常に印象的で、沢山の植物に外光がやさしく降り注ぎ、ドラマチックな空間を表現していました。独創的なデザインやマテリアルの組み合わせでつくられた6つの空間を通し、来場者にエモーショナルな体験を提供していました。

Photos by Artemest

Text by Chihori Kunito

Elle Decor Italia
Elle Decor ItaliaはPatricia Urquiolaのキュレーションで「Elle Decor Alchemica」を開催しました。テーマは錬金術。錬金術を実験の場ととらえ、科学と魔法、自然と人工の間の分野として、絶えず進化する社会のリズムをインスタレーションとして表現しました。展示は、錬金術の基本的な3つのプロセスである「ニグレド(黒化)」、「アルベド(白化)」、「ルベド(赤化)」を中心に展開。画像左からIntroductory Gallery、Corridoio Alchemico。画像右は錬金術の初期のプロセスである黒化を象徴し、バスルームを表現したNIGREDO SOLVET / Ambiente Bagnoです。

Photos by DNP

画像下は浄化と透明化の段階を示したALBEDO / Relaxing Environment。錬金術のプロセスの中で「浄化」や「再生」を示す、白化を表現しています。明るい色調の中で、個性的な形状であるPatricia UrquiolaデザインのソファGruuvelotが存在感を放っていました。画像右はRUBEDO / Living-Indoor Garden。錬金術における最終プロセスである赤化の「統合と完成」を象徴させる、屋外と室内の対話、現実とデジタルの世界といった2つの側面の対話をテーマにしています。溶岩と古代の植物でできた風景を構成し、多様性の共存を表現していました。

Photos by DNP

画像下はHERBARIUM RESTAURANT。吸音機能を持つ壁面は、天然繊維や木材などバイオベースで作られた100%リサイクル可能なSlalomの素材が使われています。ソファや椅子の張地に使用されたパープルとイエローの張地が壁面材のカラーとリンクし、どことなくパンジーやビオラの花を想起させ、空間のテーマである植物の標本の中に紛れ込んだような感覚を得ました。Patricia UrquiolaがデザインしたOR.Namiのパーケットフローリングも、可愛らしいデザインでこの空間にぴったりでした。

Photos by DNP

Text by Chihori Kunito

Google ブランドサイト
今年のテーマはMaking the Invisible Visible(​見えない​ものを​見えるように)。創造性、形、儚いものといった無形とされるものを視覚的に表現することで、無形と有形の関係を探求するというものです。
GoogleのデザイナーであるIvy RossとウォーターアーティストのLachlan Turczanとコラボレーションで実現したインスタレーション「Lucida (I–IV)」は、暗闇の中で、光と霧で構成されたベールが美しく広がり、有形と無形の境界を曖昧にします。また来場者の動きによってその形状が変化し、光のベールを触りながら動きや色の変化を感覚的に楽しめる没入型のインスタレーションでした。

Photos by Google

そのほか、Googleハードウエアデバイスの背景にある、デザインストーリーを表現した展示もありました。空調管理デバイスGoogle Nest Learning Thermostatは、センサーが人間の存在に反応し、ユーザーに合わせて室内の温度をシームレスに調整します。外部の状況を読みとり、美しいアニメーションとともに情報を提示することも可能です。操作ディスプレイはカメラレンズからヒントを得たデザインだそうです。
最後の展示スペースには、彼らが製品をデザインする上でインスピレーションを得た現象やモノと実際のプロダクトを対比して、展示していました。実際にGoogleのデザイナーと会話をしながら、Googleのエモーショナルデザインが生み出される背景に触れることができました。このインスタレーションはFuorisalone Award 2025 テクノロジー部門を受賞しています。

Photos by Google

Text by Chihori Kunito

Loro Piana ブランドサイト
Loro PianaはDimoremilanoとのコラボレーションで、現実と映画のフィクションの境界を探求する没入型インスタレーション「La Prima Notte di Quiete(静寂の初夜)」を発表しました。美しいセットアップは1970年~1980年代の映画や演劇からインスパイアされた邸宅で、メゾンの代表的なインテリアコレクションやヴィンテージ品に加え、卓越した新作家具、テーブルウェア、素材を組み合わせて装飾された、家具が完備された邸宅を再現しています。インスタレーションがスタートすると、嵐のような物音、カップルの電話での話し声、食器が割れた音など、どことなく不吉なことが起きそうな緊張感を感じさせます。このインスタレーションは、住まいやインテリアが快適さをもたらす落ち着いた隠れ家であり、外界の騒音や混乱から私たちを守る存在であることを表現しています。また、会場近くには映画のチケット売り場を思わせるキオスクもオープンし、来場者には無料で映画のチケットとポップコーンが振る舞われました。インスタレーションとキオスクを通じて一貫したストーリーを展開したLoro Pianaの出展は、連日多くの来場者で列を成し、その注目度の高さがうかがえました。

Photos by Loro Piana

Dimoremilanoによる新作家具を3点ご紹介します。画像左は、新作のプフ「クアローナ」。ファブリックを包み込むような木製パネルの曲線美が特徴です。使用されているファブリックには、カシミヤやインカ産のアルパカとウールが用いられており、画像中央の「クアローナ」コーヒーテーブルの洗練されたデザインと美しく調和しています。画像右は、漆によるラッカー仕上げが施された木製テーブル「ヴァルセージア」。中央にはLoro Pianaのファブリックがあしらわれ、脚部のスチールチューブが印象的なアクセントになっています。いずれの製品も、Loro Pianaの上質なファブリックがもたらす柔らかな心地よさと、木材や金属といった硬質な素材でありながらも有機的なフォルムを描くエレガンスを兼ね備えたデザインになっています。

Photos by Loro Piana

Text by Chihori Kunito

RICOH ブランドサイト
2025年、ミラノデザインウィーク初出展となったRICOHは「SOUL/SOIL-見えないものデザインする」のコンセプトのもと、世界初となる導電性インクの大判プリント技術とAIを掛け合わせることにより、あらゆるファブリックに特別なセンシング機能を付与した革新的なソリューションを提案していました。ファブリックのパターンデザインのモチーフには、微生物の「チューリングパターン」を取り入れることで、私たちの体内や身の回りに無数に存在し私たちの健康や行動に大きな影響を与える微生物とのつながりを表現しています。SOUL(人の心)とSOIL(土壌・微生物)という目には見えない存在をRICOHの持つテクノロジーとデザイン力を駆使し視覚的にとらえることで、未来の生活を体験できる展示となっていました。
複数人掛けソファの「SOUL AURA」ではセンサーが内蔵されたソファに複数人が同時に座ることで、それぞれの着座状態が和紙に映る美しい光のキネティックアートとして可視化されます。精密なセンシング技術によって、コミュニケーションの質を視覚的に感じることができる展示体験となっていました。

Photos by RICOH

一人掛けソファは「SOUL BUBBLE」です。モニターに囲まれた部屋には、さまざまなセンサーが内蔵された「SOUL BUBBLE」が一脚あり、腰かけることで今の心身の状態がデータとして集められます。独自のセンサーにより集まった膨大なデータはAmbient AIにより高いセキュリティを維持しつつモニターに可視化されるのです。リラックス状態や疲労状態などの心身の情報が、かわいらしいソファを通じてリアルタイムにフィードバックとして返ってくる体験は、まさに新技術による近未来の体験でした。今回体験できた展示の数々は近未来のプロトタイプであり、まだまだ未知の可能性を秘めています。これから先に待ち受ける未来の日常生活が楽しみになる、ワクワクする展示となっていました。

Photos by RICOH

Text by Taisuke Watanabe

2025年ミラノデザインウィークから見るトレンドの方向性

DNPでは取材したブランドが提示していたコンセプト、それを表現していたインテリアコーディネート、そしてそのコーディネートを構成するCMFという順序でトレンドの分析をしています。それぞれのブランドが自信を持って発信していた新たなトレンドの“点”を、DNPの視点で“線”として解釈し、今後の方向性を予測しています。

コンセプトトレンド

DNPでは、今年も3つのメガトレンド(数年間は続く社会的傾向)をベースに、各ブランドの出展コンセプトを分析しました。これらの方向性は、世界的なライフスタイルのトレンドを把握する上で重要な背景になると考えています。

Mega Trend 1 - Respectful

1920年〜1980年代のイタリアのレガシーを受け継ぎつつ、現代の要素を融合させたコンセプトです。過去のデザインや製品を、現代の技術でサステナブルな形に再構築した復刻版家具の提案も多く見られました。特に、デザイナーのCharlotte Perriandの名前をよく耳にします。Cassinaのほか、Louis VuittonやSaint Laurentのインスタレーションでも、彼女のデザインにフォーカスしていました。モダニズムデザインのなかでも、自然の要素を取り入れ、人間に寄り添った彼女のデザインが、現代のニーズと合致しているのでしょう。

Mega Trend 2 - Well-being & Sustainability

自然からインスピレーションを得たデザインは毎年多く見られますが、2025年は特に、自然のエネルギーをダイナミックに表現したGrand Seikoや、都市と自然の関係性に言及したVertical Connectionが印象に残りました。また、今年の特徴として、デザインと人間の根源的な存在の関係性に立ち返るようなコンセプトが見受けられました。Salone del Mobileのコミュニケーション・キャンペーンのテーマは「Thought for Humans.(人間のための思考)」で、光や木、金属といった素材が人間の皮膚とどのように融合するのかをテーマに、持続可能性や調和のメッセージを表現したアメリカ人写真家Bill Durginによる作品が、フィエラ会場を彩りました。
さらに、デザインや家具がすべての人にとって幸福をもたらすものであり、開かれたものであるという提案も多く見られました。Superdesign Showの今年のテーマは「Happiness」、IKEAのテーマは「Democratic Design」でした。ミラノデザインウィーク全体を通じて、ポジティブな感情を積極的に引き出し、楽しい暮らしを提案するブランドが多かったように感じます。また、環境に配慮したサステナブルな製品提案も引き続き多く見られました。Arperはペーパーシェルを使用した「Catifa Carta」や、100%リサイクルプラスチックを用いた「CATIFA (RE) 46」を発表。RIVA1920は製造時に発生する端材を活用した「REWOOD Collection」を発表していました。

Mega Trend 3 - Boundless

「あらゆる境界を超える」という視点から、今年もテクノロジーとデザインの関係性に注目しました。モビリティブランドであるLEXUSやAUDIは、それぞれのアプローチで、テクノロジーが進化する現代および未来において、モビリティと人間、そして自然との関係性を表現していました。また、今年は「食とデザイン」というテーマでも複数の事例が見られました。ライフスタイルにおける「食」というカテゴリーは、生活者にとって親しみやすく、ポジティブな感情を引き出しやすいアクションであると同時に、五感に訴える体験を提供します。LAVAZZAによるサステナブルなコーヒータブレット「Tabli」にフォーカスしたインスタレーションや、LOEWEがティーポットのデザインをテーマに、さまざまな国の「お茶」や「ティーポット」文化を表現しながら、実際にお茶を楽しめるワークショップを実施していたのが印象的でした。

Text by Chihori Kunito

コーディネートトレンド

上記でご紹介したコンセプトを具体的に表現していたインテリアコーディネートのトレンドについて紹介していきます。今年も、ブラウン、ベージュやグレーといった中間色のニュアンスをもつコーディネートが主流となり、2023年からDNPが提唱しているエクレイジュコーディネート(ファブリック、木質を含むさまざまな素材に見られたホワイト、ベージュなどのライト系、またグレイッシュ、中間色のニュアンスが含まれるコーディネート)が今年もさまざまなブランドで見られました。そのなかでも、今回は4つの方向性に分類しました。

Soft Natural

明るい木目と豊かなマテリアルの質感が生み出すソフトナチュラル。ペールカラーの木質を中心に、思わずさわってみたくなるような質感豊かなマテリアルを組み合わせ、丸みを帯びた家具によりエレガントな印象も放っています。

Muted Mocha Urban

ローコントラストなモカブラウンの空間。Pantone トレンドカラー2025のモカムースのような、明度の高いミルキーなブラウンを使った、モダンで都会的な空間です。

Neutral Depth

ニュートラルなグレーをベースに、多様なマテリアルを大胆に組み合わせた、複雑さと深みを感じる空間。木質の存在感は控えめで、金属系の硬質な素材や鏡面仕上げと、ファブリックの柔らかい質感のコントラストがポイントです。

Harvest Modern

オレンジ味のブラウンとホワイトカラーの組み合わせで、どこか懐かしさやミッドセンチュリーの気配を感じるモダンスタイル。上質なウォールナット、大理石やレザーに対し、アクセントとしてブラックカラーで空間を引き締めています。

Photos by DNP

Text by Chihori Kunito

CMF(Color Material Finish)トレンド

2025年のミラノデザインウィークで登場した家具の特徴はどこか懐かしさを感じさせる安定した構造と美しい曲線からなる「柔らかなデザイン」、そして最大限に引き出された素材の魅力による「マテリアルの美」にあったように思います。

Color
モカブラウン、オレンジブラウン、ホワイトベージュ、アクセントレッド

2024年に引き続き2025年はホワイトからベージュのカラーレンジが更に洗練された印象になっています。昨年多く見られたドライで落ち着いたブラウンが今年は少し甘めのモカブラウンに変わり、さらにそこに彩度の高いオレンジブラウンやアクセントとしてレッドが加わることで華やかさや高級感が表現されていました。

Material
ウォールナット、サステナブル加工、オープンポア塗装、ホワイトカララ

2025年のキーマテリアルはウォールナット。さまざまなブランドの新作として登場していました。メイン展示に大きなイタリアンウォールナットの天板が使われていたり、椅子から棚、キャビネットまで全てウォールナットの家具で統一された空間があったりと、今までのオークやアッシュを用いた空間とは一味違ったラグジュアリーな提案が多く見られました。またサステナブルの観点から、木材の仕上げを工夫し、端材を最小限に留め材料を無駄にせず使う動きは変わらず見られています。石質は例年通りホワイトカララ等の明るい大理石が至る所で見られました。近年の傾向としてはダイナミックな縞が所々に入る、動きのある石が増えてきています。

Photos by DNP

Finish
グロッシー仕上げ、波紋表現

ユーロルーチェの年は体感として照明の効果を引き立てるグロス仕上げの展示が増える印象があります。2025年のミラノデザインウィークもハイグロス、鏡面仕上げによる高級感を感じさせる家具が多数見られました。また水面のように波打ったテーブル天板や光を透過することにより美しい影が落ちるガラス天板なども多く登場しています。

Photos by DNP

Text by Taisuke Watanabe

ミラノサローネなどの海外展示会や北欧のライフスタイルをリサーチし、トレンド情報を発信するセミナーやWebでのレポート記事を執筆している。またDNP 5Stylesの企画やコーディネート提案にも携わる。
関連資格:インテリアコーディネーター、プロモーショナルマーケター

国内住宅内装分野を中心にDNPオリジナルの内装加飾シートWSシリーズの開発に携わる。
ミラノサローネ他、海外の展示会にも足を運びながら、国内インテリアの向かう先を見据え、日々開発と発信を行っている。

自動車内装加飾を中心に種々のサーフェスデザインを手掛ける。所属組織が発信する未来のきざし=FUTURE-SPECT®(デザインコンセプト)の編纂を編集長として牽引。

  • 2025年7月時点の情報です。

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