【シリーズコラム】DNPのデジタルアーカイブ 第2回 デジタルアーカイブ構築の流れ

本コラムでは「DNPのデジタルアーカイブ」というシリーズで、近年注目されるデジタルアーカイブについてDNPの視点から解説を行ってまいります。第2回は、デジタルアーカイブ構築の流れを紹介します。設計から公開後の利活用まで、デジタルアーカイブを立ち上げるために必要なことや、各段階におけるポイントについてまとめています。DNPでは、文化財や文化資源のデジタルアーカイブに関する多様なソリューションを展開しています。

作成日:2022年9月22日

目次

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デジタルアーカイブができるまで

 さまざまな形態の情報資源をデジタル化し、それらを整理・保存して、インターネットなどを通じて提供するデジタルアーカイブ。デジタルアーカイブを新たに立ち上げようとする時、どのような流れで何をするべきなのでしょうか。ここでは、法人のお客様(自治体・企業などの団体)に向けて、デジタルアーカイブの構築の流れを、調査設計、デジタル化、システム構築、公開・利活用の大きく4つの段階に分けて説明します。

調査設計

 まずは、デジタルアーカイブの対象としたい資料などの情報を集め、保管状況などの現状調査・分析をした上で、必要に応じて資料目録やメタデータ(*1)を作成し、整理を行います。整理された情報をもとに、デジタルデータの公開方法や活用プランなどを検討し、デジタルアーカイブ全体のプランニングをします。

デジタル化

 デジタル化する対象物ごとに最適な手法を選択し、データ形式を決定します。その後、スキャニングや撮影を行います。スキャニングや撮影をしたデータは、ファイル形式変換、OCR処理(*2)、色調補正など、デジタルアーカイブに適した形に加工します。

システム構築

 デジタルアーカイブシステムの要件定義を行い、検索条件に応じたメタデータ設計、公開サイトの画面遷移や機能などを決定します。システムの開発が完了したら、画像データやメタデータを登録していきます。システムを公開したあとは、システム保守を行っていきます。

公開・利活用

 デジタルアーカイブ上のデータをさまざまな用途で活用します。データをインターネット上で公開し、一般の利用者に活用を促すこともデータ利活用の方法の一つです。そのほか、展示鑑賞システムへの活用、高精細複製の制作、ワークショップ・商品開発などの活用方法があります。

デジタルアーカイブ構築のポイント

公開後を見据えてデジタルアーカイブ全体を設計する

 プランニングの段階から、対象資料の価値をふまえたデジタルアーカイブ利用者のターゲット設定やデータ利活用のイメージを明確化し、その狙いに沿ってデジタルアーカイブの全体計画を立てることが重要です。
 プランニングの段階では、初期費用や運営費用の検討も必要です。デジタルアーカイブを提供するサービスの中には、システムをゼロから構築する必要のない、便利で安価なクラウド型プラットフォームサービスもあり、全体計画の中で導入を検討していくことが可能です。

対象物に応じた最適なデジタル化手法を選択する

 デジタル化する対象物によって、最適な方法は異なります。文書や刊行物などのスキャニング、絵画など美術作品の高精細撮影、工芸品や建造物などの3Dデジタル化、自然景観や無形文化財などの映像撮影など、対象物の形態やデジタルデータの活用計画に沿って、デジタル化の方法を選択する必要があります。
 さらに、それぞれの方法の中にも、複数の手法があります。貴重な資料や文化財の劣化を最小限に抑えるためにも、最適な手法を組み合わせたデジタル化の作業が重要となります。

デジタルアーカイブ構築を通じて業務効率化を実現する

 デジタルアーカイブ構築によって、資料などの情報管理業務の効率化を図っていくことは、導入の大きな目的の一つです。業務効率化の視点で、デジタルアーカイブの設計、運用方法を検討することも重要です。
 また、デジタルアーカイブ構築時に膨大な資料のデジタル化を行う場合、資料整理やデジタルデータの確認作業もまた、膨大な作業時間を要します。デジタル化の工程に際しては、BPO(Business Process Outsourcing)や進行管理システムの導入も検討する必要があります。

デジタルアーカイブを公開し、付加価値のある形で利活用する

 デジタルアーカイブ上のデータの活用によって、展示が難しい資料や文化財も、広く一般に公開することが可能になります。鑑賞システム上で高精細データの細部まで鑑賞したり、普段は見られない角度から鑑賞したり、デジタル技術により付加価値のある公開方法が実現します。
 また、デジタルアーカイブを活用してオンライン上で工夫した情報発信を行えば、施設や地域への来訪促進などの付加価値を生むことにもつながります。

デジタルアーカイブを活用して新たな収益を創出する

 デジタルアーカイブ上のデータを活用することで、版権貸出、商品開発、イベントやワークショップの開催、高精細なデジタルデータを活用したVRコンテンツなどの有料公開、さらに近年注目されるNFTでのデジタルデータ販売など、さまざまな事業展開が考えられます。こうした収益性を見据えて、デジタルアーカイブの構築を計画することも重要です。

DNPのデジタルアーカイブソリューション

 DNPでは、膨大な資料のデジタル化やデジタルアーカイブシステム構築に関する多数の実績を有するのはもちろんのこと、貴重な文化財の超高精細撮影や、高精細データを活用した複製の制作、3DCG、VR、ARといった最先端技術によるコンテンツ制作や、独自の鑑賞システム開発に強みがあります。さらに、デジタルデータの利活用については、イベントやワークショップの企画開催、商品開発など幅広いご提案が可能です。デジタルアーカイブの設計から、資料や文化財のデジタル化、システム構築、利活用に至るまで総合的なサポートを行っています。

関連事例

劣化が進んでしまった植物標本、庭園地図等の歴史的に価値ある書籍・文書の一部をデジタルアーカイブ化しました。

平成29年の練馬区独立70周年を記念して、「練馬区史」の一部をフルテキスト化、練馬区の歴史資料をデジタルアーカイブ化し、オンライン上で閲覧・検索を可能としました。

歴史収蔵庫の引越しに伴い、DNPが開発したオンライン原稿管理・業務進行管理システムを導入し、貴重資料のデジタル化を行いました。システム導入により、学芸員業務の負荷軽減・効率化を実現しました。

関連ページ

「そもそもデジタルアーカイブとはどんなものか」といったことをテーマに、デジタルアーカイブの定義、課題点や可能性についてご紹介します。

DNPグループでは印刷事業で培われた高精細デジタル処理の技術とノウハウを生かし、新たな情報基盤であるデジタルアーカイブ構築、そしてその先にある公開・展示を含めた各種ソリューションを取りそろえており、総合的なサービスを提供しています。

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法人のお客様(自治体、企業などの団体)を対象とさせていただいております。

  • *1メタデータとは、資料などの情報を管理し、検索を容易にするためのデータのこと。書籍であれば、タイトルや著者名、出版社、出版年などが該当する。
  • *2OCR(Optical Character Recognition/Reader)とは、画像内の文字を認識して、コンピューターで処理できるテキストデータに変換する技術のこと。
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DNPのメンバーが、「文化財のデジタルアーカイブ」に関するコラムを発信。デジタルアーカイブの今と、未来について考えていきます。

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