【対談 SuMPO×DNP】
脱炭素の切り札LCA!両社が語る熱い思い

「LCAが社会を変える!」カーボンニュートラルな未来に向けたイノベーションが、持続可能な未来を築く道筋となるー。企業の環境負荷低減へと踏み出す一歩を、ともに力強くサポートしてきた2社。一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO ※以下SuMPO)の澤村翔太氏(写真:左)と、DNPの原田 範夫(写真:右)が、LCAの大切さや持続可能な未来への情熱を語り合いました。 
(本記事は2023年6月に取材した内容をもとに構成しています。記事内のデータは取材時のものです。)

「SuMPO」について

企業名 一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)
URL https://sumpo.or.jp/

過去30年にわたり、ライフサイクルアセスメント(LCA)の分野で専門的な知見を深め、中立かつ公平・公正な立場で、製品やサービスにおけるライフサイクルCO2指標の開発と普及を行う。持続可能な未来社会の創造をめざして、さまざまなステークホルダーをつなぐ役割を担う。量的な側面から質的な側面へのサステナブルな変革を推進し、経済や社会など、さまざまな領域で新たな価値創造をめざす取組みをされています。

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提携したきっかけや理由

未来をつくるための第一歩!ともに歩む、企業の環境負荷低減へのトライ

原田
現在、持続可能な未来を築くために、世界中でさまざまな取組みが進められています。
LCAを用いた算定は、環境配慮に取り組む企業において意思決定の判断材料となり、価値が高まっていると感じています。

澤村氏
SuMPOは、LCAの代行や評価・見える化など、商品やサービスの環境への影響を顧客と共有し、具体的な方針を立てる支援を行っています。ただ、需要が増えてきて、膨大な量だと費用も時間もかかるので、SuMPOだけで個々の算定をカバーすることは困難です。そこで、CO2排出量の情報をもっと普及させたいと、包括算定制度を検討しました。

原田
DNPでは、パッケージ分野で1997年から、企業の環境負荷低減を後押しするLCAの取組みを進めてきました。一方で、膨大な製品群からひとつずつ算定するのは負荷が高く、算定数値の信頼性を担保しながら自動算定ができるシステムを構築・検討しましたが、どのようにルール策定を行うかには課題がありました。SuMPOさんはLCAを通じて多くの企業を支援された実績があり、その姿勢に共感し、連携を打診しました。

澤村氏
ありがとうございます。SuMPOでも、情報の普及を進めるためには何が大切かを考えていたので、相談いただき「企業の環境配慮への第一歩になる!」と感じました。構想の段階でしたが、良い機会だと前向きにとらえ、一緒に持続可能な社会に向けて新しいイノベーションを創り上げたいと思いました。

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SuMPO(一般社団法人サステナブル経営推進機構)澤村 翔太氏

「DNPライフサイクルCO2認証システム」とは?

公平性・信頼性の高い算定を実現するシステム

原田
当社システムの特徴は、第三者認証により、公平で高い信頼性を持つCO2排出量算定結果を得られることです。CO2排出量の算定は、自社開発の自動算定ツールを使用するため、算定者が変わっても同様の結果を得ることができます。
SuMPOさんから見た感想はいかがですか。

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Lifeデザイン事業部イノベーティブ・パッケージングセンタービジネスデザイン本部環境ビジネス推進部 原田 範夫

澤村氏
私が考える御社システムの強みは、ルールを明確に定めて品質を担保している点です。
専門知識を持った内部検証員が結果を評価することは、客観的な視点での検証において重要です。それにより、信頼性の高い算定結果を提供できます。
DNPのシステムは、算定者と内部検証員を配置し、マネジメント体制を整えられました。素晴らしいです。

原田
ありがとうございます。体制構築のために、何度も御社とはやり取りさせていただきました。

澤村氏
そうでしたね(笑)DNPさんとの共同プロジェクトにより、包括的な算定結果を導き出すための体系が整備されたことは、LCA推進における大きな成果です。

システムを活用したサービス提供について

CO2算定サービスのイメージ図

原田
当社では、認証システムを使用し、顧客製品のCO2排出量などの正確な算定結果をお渡しするビジネスを展開しています。製品のCO2排出量の把握や、環境配慮素材の導入検討に活用いただいており、お客様からの反応も非常に良いんですよ。

澤村氏
ビジネスモデルが新たなステージに入りましたね。企業はScope3の削減目標を設定しても、結果が伴わないと停滞しやすい。目標達成には、どのような道標を示していくかが重要だと感じています。
例えば、新製品設計、開発、リニューアルの際には、算定結果を意思決定の材料として活用していただければいいのかな。

※Scope3:自社事業の活動に関連する他社のGHG排出量(Scope1:直接排出、Scope2:関節排出、を除く)

原田
私もそう思います。情報を受け取る側は、それらをどう活用するかを考え、理解が膨らむきっかけを得る。CO2算定サービスは、特に環境に配慮した製品を開発するためのエコデザインにおいて役立つと思います。

澤村氏
エコデザインの視点は、これからは大事ですよね。

原田
例えば、今までScope3を金額ベースで算出していた企業は、削減の目標と効果が見えにくくなりますよね。
当サービスを活用すると、カテゴリー1などCO2削減効果の見える化が可能となり、目標達成に向けた進展を示すことができます。
また、公平性・信頼性の高い算定結果をご提供できるので、ユーザーは環境負荷を減らす取組みの効果として、数値を公表いただけます。

※カテゴリー1:Scope3を15分類したうちの「購入した製品・サービス」で原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達などが該当

今後の展開

CO2の見える化がエコな行動につながる。LCAが面白いものになればいいな。

原田
澤村さんはLCAの今後の展開をどのように考えていますか。

澤村氏
LCAが身近なものになり、「どんどん使って欲しい」「もっと使いやすくなればいい」という気持ちです。2020年のカーボンニュートラル宣言以降、需要が急速に広がっていますが、まだ浸透には至っていません。現状は、信頼性を確保するため複雑な工程が必要とされているので、品質を確保しつつ適切なバランスを模索していければいいなと思っています。
原田さんはいかがですか。

原田
LCAによるCO2の見える化が、今後一層進んで欲しいです。例えば、カロリーと同じ感覚で、おにぎり1つでどのくらいのCO2が排出されるのかを示せると、消費者も感覚として掴みやすくなり、「環境に良いことをする」という動機づけにつながります。一方で、あくまでCO2排出量は相対的な数値なので、正しく理解できないと誤って受け取る可能性もあると思っています。

澤村氏
そうですね。
今、食品に環境配慮のマークを付ける取組みが進んでいます。さらに、その取組みが消費者の行動にどのような影響を与えるかの研究も行われています。
消費者行動の変化や理解には時間がかかるかもしれませんが、企業がサプライチェーン全体でつながることで、世の中が変わっていくことを期待しています。
LCAは絶対的な値ではないので、数値が大きいからと言って必ずしも環境に悪いとは限らず、削減の取組みや効果を理解すれば、豊かな生活を維持したままエコな行動を選択できると思うんですよ。それが企業にとっても消費者にとっても環境への取組みを継続していくことに繋がっていくと思います。

原田
確かに。数値の大小ではなく、正しい理解ですよね。そこにLCAの面白さと、だいご味があるのですから。
それを伝えるために今後も、DNPでは自社の算定基準の取組みに尽力し、環境に配慮された製品やサービスの開発を進めていく予定です。

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プロフィール

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一般社団法人サステナブル経営推進機構 EPD事業部 カーボンニュートラル事業室室長 主任研究員。塗料メーカーに入社、品質保証やISO(9001、14001)のマネジメントシステム運用に携わる。その後SuMPOに転籍。カーボンニュートラル社会の実現に向けた企業支援を推進する。環境への負荷軽減に取り組む企業とのパートナーシップを通じ、LCA推進や持続可能なビジネスモデルの策定を支援。環境や社会へポジティブな影響をもたらすLCAに熱意と情熱を持つ。

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Lifeデザイン事業部イノベーティブ・パッケージングセンタービジネスデザイン本部環境ビジネス推進部。フィルムパッケージ分野の技術職として製造工場でのモノづくりを支える業務に従事。培った製造、素材の知見を活かし、パッケージのLCAや環境配慮素材の活用など技術的な側面から環境課題解決に挑む。

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