初めての海外進出を成功に導く|相性のよい進出先を選ぶための判断軸と選定ステップ

本記事では、今後海外進出先を検討している企業の方に向けて、業界別に見た海外進出先の一覧と、進出先選定の考え方を整理して解説します。 初めて海外進出する方でも、進出先の選び方や調査の進め方を把握し、「どの国・地域が自社ビジネスと相性がよいのか」を判断できるようになります。(2026年5月公開)

目次

1. 【業界別】相性のいい進出先の特徴とおすすめの国 一覧

はじめに。
本カテゴリーでは、各業界のおすすめ国と、その理由・注目分野をまとめております。
下記は、IMD、WIPO、UNCTAD、JETRO、World Bank、帝国データバンクの6機関の8調査資料を参照して作成しています。

1-1. 製造業

製造業界と相性がよいおすすめの国は以下のとおりです。

国名 おすすめの理由 注目分野
インド 自動車・部品や一般機械で日本企業の事業拡大先1位。
新規投資件数も世界4位と海外企業からの注目度が高く、中国に代わる製造拠点の有力候補です。
自動車部品、一般機械、電子機器製造、高付加価値品生産
ベトナム 日本企業が今後の生産拠点として最も注目する国(帝国データバンク調査で1位)。
若くて豊富な労働力に加え「優秀な人材を確保しやすい」との評価も高く、ビジネス環境の改善スピードも世界トップクラスと評価されています。
電子部品・半導体後工程、縫製・繊維、軽工業組立、食品加工
メキシコ 北米市場に近接し、日本企業の市場シェアが過去5年間で向上。新規投資案件も増加傾向にあります。
関税動向を注視しながらの進出判断が必要です。
自動車組立・部品、航空宇宙、電子機器、医療機器

製造業界では地政学リスクの回避とコスト最適化を目的に「チャイナ・プラスワン」への移行が加速しています。
2025年以降の米通商政策を背景に、メキシコインドへの拠点分散、労働力が豊富なベトナムへの投資が急増。現在は、優遇税制や市場近接性が高い国が注目されています。

1-2. IT・テクノロジー

IT・テクノロジー業界と相性がよいおすすめの国は以下のとおりです。

国名 おすすめの理由 注目分野
シンガポール 世界競争力2位、イノベーション力5位と、政府効率性・ビジネス環境が世界トップクラス
FDI受入額も世界2位です。
AI・データ分析、フィンテック、サイバーセキュリティ、クラウドサービス
インド 専門サービス業で日本企業の事業拡大先1位に選ばれており、豊富なIT人材を「確保しやすい」との評価が高い国です。 ITサービス・BPO、ソフトウェア開発、デジタルインフラ
アメリカ R&D企業投資・ユニコーン評価額・ソフトウェア支出で世界1位。22のイノベーション拠点を持つ、世界最大のテクノロジー市場です。
日本企業全体の事業拡大先でも1位。関税影響への懸念は要注意です。
AI・機械学習、半導体設計、SaaS/クラウド、量子コンピューティング

デジタル経済への海外投資が世界全体で14%成長するなか、IT拠点の選定は「人材の質」と「ビジネス環境の整備度」が決め手になっています。
政府主導でデジタル基盤を整えたシンガポール、世界最大のIT人材プールを持つインド、そして先端技術の発信地であるアメリカが、それぞれ異なる強みで日本企業の進出先として選ばれています。

1-3. 飲食・食品

飲食・食品業界と相性がよいおすすめの国は以下のとおりです。

国名 おすすめの理由 注目分野
アメリカ 飲食料品業の日本企業で6割超が事業拡大先として選択しており、他の業種と比べて突出して高い比率です。
世界最大の消費市場としての魅力がありますが、半数以上の企業が関税交渉の影響を懸念しており、コスト管理が重要になります。
日本食レストラン、健康食品、飲料、食品EC
ベトナム 今後の生産拠点として1位、販売拠点としても3位と、生産・販売の両面で高い将来性があります。
旺盛な内需に支えられ進出企業の黒字率は67.5%。食品加工分野で日系企業の進出が活発で、ビジネス環境の改善も進んでいます。
食品加工、コンビニエンスストア向け食品、飲料製造
ブラジル 旺盛な内需に支えられ、高付加価値品の生産拡大意向が前年比で大幅に伸びています。
南米最大の市場であり、サンパウロは世界のイノベーション拠点トップ100にも選出されるなど、食品加工・農産物加工の分野で新規投資が増加しています。
食品加工、農産物加工、飲料(ビール・清涼飲料水)

日本食の海外人気が追い風となり、食品業界の海外展開が活発化しています。
飲食料品業では6割超の企業がアメリカを事業拡大先に挙げるなど、巨大消費市場への関心が突出。
一方、生産コストの最適化と成長市場の開拓を兼ねて、ベトナムブラジルなど新興国への進出も加速しています。

1-4. 小売・EC

小売・EC業界と相性がよいおすすめの国は以下のとおりです。

国名 おすすめの理由 注目分野
アメリカ 日本企業全体の事業拡大先1位で、中小企業では約4割が選択する圧倒的な人気市場です。
デジタル経済への投資が14%成長しており、越境ECやD2Cブランドの展開先として最も有望。ただし関税動向は引き続き注視が必要です。
EC(越境EC含む)、D2Cブランド、サブスクリプションサービス
シンガポール 世界競争力2位・イノベーション力5位で、政府のデジタル化推進が進んだ先進的な市場環境が魅力です。
東南アジア全体のEC市場へのゲートウェイとして機能しており、物流ハブ・地域統括拠点として日本企業の関心が高まっています。
EC拠点(東南アジア統括)、物流ハブ、デジタルマーケティング
インド 日本の大企業の事業拡大意欲が最も高い国で、進出企業の81.5%が拡大を見込んでいます。
世界最大の人口を抱え、モバイルコマースが急成長中。
販売拠点としての注目度も年々上昇しており、中長期的な市場ポテンシャルは非常に大きいです。
Eコマース、フランチャイズ小売、モバイルコマース

EC市場のグローバル化が進むなか、越境ECやD2Cブランドの海外展開が加速しています。
日本企業にとっては、世界最大のEC市場であるアメリカ、東南アジアの玄関口であるシンガポール、そしてモバイルコマースが急成長するインドが、それぞれ異なる市場特性で注目されています。

1-5. 金融・サービス業

金融・サービス業界と相性がよいおすすめの国は以下のとおりです。

国名 おすすめの理由 注目分野
シンガポール 世界競争力2位・イノベーション力5位で、政府効率性・ビジネス環境が世界最高水準です。
フィンテック・ウェルスマネジメントの国際ハブとして確立しており、日本企業の事業拡大先としても注目度が上昇しています。
フィンテック、ウェルスマネジメント、保険テック、決済サービス
アメリカ 日本企業の事業拡大先1位。
銀行業の黒字割合は85.9%と業種別で最高であり、金融分野の収益性が際立っています。
R&D企業投資でも世界1位と、フィンテック・インシュアテック分野のイノベーション環境が最も充実した市場です。
投資銀行、資産運用、インシュアテック、暗号資産関連サービス
UAE(アラブ首長国連邦) 世界競争力が5位へ急上昇(前年11位)。
進出日系企業の黒字率83.3%は主要国で最高で、改善理由の90%が現地需要の増加です。
中東・アフリカ市場への金融ハブとしての存在感が急速に高まっています。
イスラム金融、デジタルバンキング、中東・アフリカ向け金融ハブ

フィンテックやデジタルバンキングの進展により、金融サービスのグローバル展開が新たな段階に入っています。
規制の安定性と市場の成熟度で選ばれるシンガポールアメリカに加え、中東・アフリカ市場の金融ハブとして急浮上するUAEが注目を集めています。

1-6. 自動車・機械

自動車・機械業界と相性がよいおすすめの国は以下のとおりです。

国名 おすすめの理由 注目分野
インド 自動車・部品、一般機械ともに日本企業の事業拡大先1位。
進出企業の81.5%が拡大意向で、約8割が現地需要の伸びを実感しています。
国内市場規模は世界3位で、EV関連を含む自動車産業の成長が期待されています。
自動車組立・部品、建設機械、産業用ロボット、EV関連
アメリカ 日本企業全体の事業拡大先1位。
海外からの投資受入額が世界1位で、半導体メガプロジェクトが投資を牽引しています。
R&D企業投資で世界1位、22のイノベーション拠点を持ち、EV・自動運転など先端分野のインフラが充実しています。
EV・自動運転、半導体製造装置、航空宇宙、ロボティクス
メキシコ 北米市場への輸出拠点として日本企業の市場シェアが過去5年で向上しています。
メキシコシティが世界のイノベーション拠点トップ100に初選出されるなど産業基盤も向上中。
ただし米国関税の影響が大きく、動向注視が必要です。
自動車組立・部品(北米向け輸出拠点)、航空宇宙部品、電装品

EV化の加速とサプライチェーンの再編が、自動車・機械業界の海外拠点戦略を大きく変えています。
巨大な内需と成長余地を持つインド、先端技術と研究開発環境が充実するアメリカ、北米向け輸出拠点としてのメキシコが、それぞれの強みで日本企業に選ばれています。
米国関税の影響がサプライチェーン全体に波及しており、拠点分散の動きが加速中です。

出典

IMD(国際経営開発研究所・スイス):IMD World Competitiveness Ranking 2025
WIPO(世界知的所有権機関・国連機関):WIPO Global Innovation Index(GII)2025
UNCTAD(国連貿易開発会議):UNCTAD World Investment Report 2025(FDI 2024年データ)
UNCTAD(国連貿易開発会議):UNCTAD FDI Explorer(2024年データ)
JETRO(日本貿易振興機構):JETRO 2025年度 海外進出日系企業実態調査(全世界編)
JETRO(日本貿易振興機構):JETRO 2024年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査
World Bank(世界銀行):World Bank B-READY(Business Ready)2024
帝国データバンク(TDB):帝国データバンク「海外進出に関する企業の意識調査(2025年)」

2. 進出先選びの判断軸と主な確認ポイント 5つ

海外では、日本のビジネス習慣と大きく違うため、勘や経験則ではなく事実で確認できる判断軸が必要です。
特に、規制や商習慣、現地ニーズ等の違いに対応できず事業継続が難しくなるケースが少なくありません。

正しい進出先を選ぶのに必要な「自社と進出先の相性を多角的に評価するための5つの判断軸」と、それぞれの確認ポイントを解説します。

海外進出先選びの判断軸と主な確認ポイント5つ

判断軸 核心となる問い 主な確認ポイント
①市場の空白があるか その国で満たされていない需要があるか? 品質・技術水準の低さ/選択肢の少なさ/インフラの未整備状況/外資の少ない分野の有無
②自社が勝てる領域はあるか 参入後に自社が優位性を発揮できる領域があるか? 現地企業の価格競争力/グローバル大手の有無/参入障壁の高さ/自社が勝てるセグメントの有無
③制度・文化のリスクは許容できるか 売上を利益として手元に残せる環境か? 外資規制・出資比率制限/法制度の安定性/代金回収リスク/契約文化/撤退の難しさ
④自社が現実的に運営できる環境か 自社のリソースで継続的に運営できるか? 言語・通訳コスト/ビジネス慣行の近さ/時差・移動・物流コスト/日系企業の進出実績
⑤自社の強みがその国で活きるか 自社の強みがその国で「価値」として認識されるか? 価格帯と現地所得水準の一致/品質・技術レベルへのニーズ/競合との差別化ポイントの明確さ

2-1. 判断軸①:市場の空白があるか

まず確認すべきは、「その国に満たされていない需要があるか」という市場の空白の有無です。

どれだけ優れた商品でも、すでに競合が満たしている市場では売れません。
逆に、需要があるのに十分な供給がない市場では、自社が参入することで「選ばれる理由」が生まれます。

海外では、日本の常識で判断できないことが多くあります。
「既に満たされているだろう」と安易な判断をしてしまうと足元の大きな空白を見落とすことになってしまいます。

主な確認ポイント

■品質・技術水準が低く、改善需要があるか
■製品・サービスの選択肢が少ないか
■物流・インフラが整備途上で参入の余地があるか
■特定の業種・分野に外資が少ないか

判断のヒント

現地の不満を探す:「その国の消費者・企業は今何に不満を持っているか」を調べる
使えるリソース:JETROレポート・現地業界団体の調査・SNSの現地口コミが有力な手がかかり

2-2. 判断軸②:自社が勝てる領域はあるか

次に確認すべきは、「参入後に自社が勝てる領域はあるか」どうかです。
市場が魅力的でも、強力な競合がすでに市場を押さえていれば、後から入っても価格競争に巻き込まれてしまいます。

海外では、現地企業が圧倒的な価格競争力を持っていたり、他国が先行して市場を押さえていることも多く、日本と全く異なる環境で勝負をしなくてはなりません。
日本で売れている商品、日本で強い企業でも通用しないケースも多いため、自社が勝てる領域の見極めが重要になります。

主な確認ポイント

■強力な現地企業が価格競争で圧倒していないか
■グローバル大手がすでに市場を押さえていないか
■参入障壁(規制・資本・ブランド)は乗り越えられるか
■自社が優位性を発揮できる細かいセグメントがあるか

判断のヒント

現地の売場・ECサイトで競合製品の価格・仕様・レビューを調べると、自社が勝てるセグメントが見えてきます。
「全体で勝てなくても、ここなら勝てる」という絞り込みが重要です。

2-3. 判断軸③:制度・文化のリスクは許容できるか

制度・文化のリスクは許容できるか、つまり「売上を利益として手元に残せる環境か」も重要な判断軸です。
許認可が下りなければ事業を始められず、代金が回収できなければ売上は利益になりません。

また、海外では急な法改正や外資規制によって出資比率に制限がかかり、資本を日本に戻すことができなくなることもあるので、進出前にしっかりと確認しておくことが必要です。

主な確認ポイント

項目 内容 確認方法
外資規制・出資比率制限 外資規制・出資比率制限の有無と内容を確認できているか World Bank, 現地法律事務所 等
法制度の安定性 法改正の頻度や規制の恣意的な運用リスクはないか 外務省・JETROカントリーレポート 等
代金回収リスク 代金未払い・為替リスク・資本移動制限の可能性はないか 日本貿易保険(NEXI)情報 等
契約文化・口頭優先の慣行 口頭優先・契約軽視など、書面が機能しない文化ではないか 現地進出経験者へのヒアリング 等
撤退の難しさ 従業員解雇規制や資産凍結など、撤退時のコストを把握できているか 現地弁護士・会計士への相談 等

判断のヒント

・代金が回収できなくなった
・急に規制が変わった
・撤退することになった

上記のような最悪のシナリオを進出前に一度シミュレーションしておきましょう。
シナリオが組めない場合は、もう一度調査が必要です。

2-4. 判断軸④:自社が現実的に運営できる環境か

言語・時差・ビジネス慣行の違いは、想像以上に現場の負荷を高めます。
海外拠点では、何かトラブルがあっても距離の問題や時差、言葉の壁等でトラブル対応に時間、労力、費用の多くを費やし、多くの負担を強いられます。
自社のリソース(人員・予算・体制)で無理なく運営できる環境かどうかを、必ず確認しましょう。

主な確認ポイント

■言語・通訳コストは現実的か
■ビジネス慣行(決裁・信頼構築の仕方)が似ているか
■時差・移動・物流コストは許容範囲か
■日系企業の進出実績があり、参考にできる事例があるか

判断のヒント

「現地に月1回行ける距離か」「現地語が話せる人材を確保できるか」というシンプルな基準で、現実的な運営可能性を測ります。

2-5. 判断軸⑤:自社の強みがその国で活きるか

最後に確認すべきは、「自社の強みがその国で活きるか・価値として認められるか」です。
日本では当たり前の品質が、ある国では圧倒的な差別化要素になることもあれば、価格が高すぎて誰にも届かないこともあります。
海外では、所得水準や文化が大きく異なり、商品本来の強みも強みとして伝わらない場合があります。

自社の強みと現地のニーズ・所得水準・競合環境が噛み合う国を選ぶことが、相性を見極める最終判断です。

主な確認ポイント

■自社の価格帯と現地の所得水準は合っているか
■自社の品質・技術レベルは現地で「価値」として認識されるか
■競合と比べたとき、自社の優位性は明確に説明できるか

判断のヒント

自社の強みを先に言語化しておくことが、進出先選定における判断軸の安定につながります。

3. 進出先選びの具体的なステップ5つと、調査の仕方

進出先選びの具体的なステップ5つと、調査の仕方

3-1. ステップ① :自社の強みを言語化する

まずは自社の強みを整理し、一言で説明できるようにします。
例えば「中価格帯の高耐久機械を、中規模製造業に販売している」というレベルまで強みを具体化することで初めて「この強みが活きる国はどこか」という問いを立てることができます。

具体的な行動

自社の強みを整理する
■何を売るか(製品・サービスの特徴)
■誰に売るか(BtoB / BtoC、ターゲット層)
■いくらで売るか(価格帯・利益構造)

3-2. ステップ② :データで候補国を10〜20カ国に絞る

公的データをもとに基本指標を一覧表にして、候補国を10~20ヶ国程度洗い出します。
「良い国を探す」より、「問題のある国を除外する」という順番で進めると絞りこみやすくなります。

具体的な行動

① 「参入できない国」を除外する
・JETROカントリーレポートで、自社の業種に外資規制がかかっている国を除外する
・外務省「海外安全情報」で、危険情報レベルが高い国を除外する

② 「経済的に魅力がない国」を除外する
・IMF World Economic Outlook DatabaseでGDP成長率が年率3%未満の国を除外する
・World Bank Global Consumption Databaseで中間層人口が縮小傾向にある国を除外する
・IMFデータでインフレ率が慢性的に高い・通貨が不安定な国を除外する

③ 残った国を「参入しやすさ」で並べ替える
・World Bank Doing Businessで国別ビジネス環境指標を確認し、スコアを一覧表にまとめる
・JETROカントリーレポートで許認可・商習慣・日系企業の進出実績を確認する
・スコアと実績をもとに上位国をリストアップする

使える情報源

情報源 取得できる情報 用途・参照タイミング
JETROカントリーレポート 各国のビジネス環境・規制・市場概況 自社業種への外資規制の有無を確認する。
日系企業の進出実績・参入しやすさを確認する。
外務省 海外安全情報 危険情報レベル・政情リスク・治安情報 危険情報レベルが高い国を除外する。
IMF World Economic Outlook GDP成長率・インフレ率・通貨安定性の国際比較 GDP成長率が年率3%未満の国を除外する。
インフレ・通貨不安が深刻な国を除外する。
World Bank Global Consumption Database 中間層人口の規模・拡大・縮小トレンド 中間層人口が縮小傾向にある国を除外する。
World Bank Doing Business 許認可・契約執行・倒産処理など国別ビジネス環境指標 ビジネス環境指標をスコア化し、残った候補国を参入しやすさで並べ替える。

3-3. ステップ③ :「自社の強み × 市場の空白」で3〜5カ国に絞る

ステップ2で出した候補国を、「自社の強みがその国の満たされていないニーズと一致するか」という視点で評価し、絞り込みます。
自社の強み・価格帯・ターゲット層を各国の市場環境と照合することで、自社と相性が悪い国を除外することができます。

具体的な行動

候補の進出先の評価を行う
■自社の強みが、その国の不足を埋められるか
■競合が少なく、自社が勝てる領域があるか
■制度・文化のリスクは許容できるか

評価の実施例

自社の強み 進出先の状況 相性 理由
高品質な製品 品質不足に悩む市場(A国) 自社の強みがそのまま差別化要素になるため
高価格帯の製品 平均所得が低い市場(B国) そもそも買える顧客層が少ないため
ITサービス データ規制が厳格な市場(C国) 規制対応のコストが膨らみ、参入障壁が高くなるため

3-4. ステップ④ :現地で一次情報を取りに行く

候補国を絞り込むことができたら、実際に現地へ行き、一次情報を取得します。
現地調査を通じて、想定していた顧客層の規模や競合の動向など、データや文献だけでは見えない致命的な事実を把握することができます。

具体的な行動

■現地の潜在顧客・バイヤー・代理店候補にヒアリングする
■競合製品の価格・流通経路・販売方法を現地で確認する
■現地の日本商工会議所・JETROの現地事務所に相談する

使える情報源

情報源 取得できる情報 特徴
JETRO現地事務所 現地市場のリアルな情報・商談機会の紹介 無償で相談可能。現地ネットワークの入口として活用しやすい。
現地日本商工会議所 進出済み日系企業からのリアルな声・法務税務情報 業種別部会での情報交換が特に有益。生の失敗談も聞ける。
日本貿易保険(NEXI) 代金回収リスク・国別与信リスクの確認 回収トラブルを事前に防ぐための保険活用にも使える。
外務省 海外安全情報 政情リスク・治安・感染症など参入前提の確認 進出検討の前提として必ず確認すべき情報源。

3-5. ステップ⑤ :スモールテストで検証する

最後に、スモールテストで検証して「本当に売れるか・利益が出るか」を確認します。
本格参入の前に試すことで、想定と異なる結果が出ても方向転換がしやすく、取り返しのつかない損失を防げます。

具体的な行動

■展示会出展・代理店経由の試験販売で反応を確認する
■越境ECで需要と価格受容性を検証する
■POC(小規模な実証実験)でビジネスモデルの成立可否を確認する

4. 「進出先選び」でよくある失敗と、失敗を避けるために重要なこと

海外進出の失敗の多くは、商品やサービスの問題ではありません。
根本原因は「進出先の選択ミス」です。どんなに優れた製品でも、自社と相性の悪い国に進出すれば成果は出ません。

この章では、進出先選びでよくある失敗パターンと、それを避けるために重要な考え方を解説します。

4-1. 進出先選びでよくある失敗パターン 4つ

進出先選びの失敗は、主に以下4つのパターンに集約されます。
いずれも共通しているのは、市場の魅力だけに目が向き、自社との相性や運営上のリスクを十分に検証しないまま進出を決めてしまうことです。

海外進出するときに進出先選びでよくある失敗パターン4つ

よくある失敗パターン 具体的に起きること 結果
①市場規模だけで選ぶ 競合が飽和しており、価格競争に巻き込まれる 利益が出ない
②トレンドで選ぶ 「今熱い」国は参入コストが高くつく 投資回収できない
③自社の強みを無視する 現地ニーズと自社の強みがズレる 売れない
④運営リスクを見落とす 許認可・回収問題・規制変更が発生 継続できない

4-2. 進出先選びは、市場規模より「自社との相性」を考えると失敗しにくい

進出先選びで重要なのは市場の大きさではなく、自社との相性です。
そのためにも、「その国に何が足りていないか」と「自社はその不足を埋められるか」の一致度を確認することがポイントです。

進出先を正しく選ぶための問い

■その国で、何が不足しているのか?(市場の不足)
■自社は、その不足を補えるのか?(自社の強み)

4-3. 進出先選びは、「売れるか」と「運営できるか」の2軸で考えると失敗しにくい

海外進出を検討するとき、多くの企業は「この国で売れるか」だけに目が向きがちです。
しかし、許認可が下りなければ事業を始められず、代金が回収できなければ売上は利益になりません。
そのため、以下の2つの軸の組み合わせで評価してください。

進出先選びの評価軸と、確認すべき主なポイント

評価軸 確認すべき主なポイント
売れるか(需要の有無) 市場規模・成長率・競合状況・消費者ニーズとの一致
運営できるか(実行可能性) 外資規制・許認可・代金回収・法制度の安定性・撤退の容易さ

この2軸をセットで確認することで、「需要はあるのに事業として成立しない国」を事前に除外することができます。

5. 進出先選びで「成功する」ためのコツ

進出先選びを「成功する」ためのコツ

5-1. コツ① :撤退基準を進出前に決めておく

基準がないまま進出すると「もう少し待てば回収できるはず」という感情的な判断に陥りやすく、損失が膨らんでから撤退するという最悪の結果を招きます。
以下のように基準を決めておくことが必要です。

決めておくべき基準の例

■進出後○年以内に売上が○百万円に達しない場合は撤退を検討する
■粗利率が○%を下回った状態が○か月以上続く場合は事業を縮小する
■現地パートナーとのトラブルが○か月以内に解決しない場合の対処手順を決めておく
■撤退にかかるコスト・期間・手続きを事前に把握しておく

5-2. コツ② :人気国に飛びつかない

人気国は参入コストが高く競合も飽和しており、後発で入るほど条件が不利になります。
競合がまだ少ない段階で市場に入ることで、顧客との関係やブランド認知を先に築けるようになります。

人気国には、以下のようなリスクが伴います。

人気国のリスク

■競合がすでに飽和しており、差別化が難しい
■地価・人件費・広告費などの参入コストが高騰している
■「熱い」と言われた頃には、すでに成熟期に入っている場合がある

こうしたリスクを避けるために有効なのが、「まだ誰も本格参入していない市場を先に押さえる」という発想です。
具体的には、以下のような特徴を持つ国・地域が狙い目です。

狙い目の市場の特徴

■中規模だが競合が少なく、市場がまだ整理されていない
■日系企業の進出実績が少なく、先行者優位を取りやすい
■政府が特定産業の育成に力を入れており、外資参入を歓迎している

5-3. コツ③ :パートナー選びに妥協しない

海外進出の成否はパートナーの質に大きく左右されます。
必ず複数のパートナー候補を比較検討して選ぶようにしましょう。

ただし、良いパートナーを選んだとしても、すべてを任せきりにするのは禁物です。
「丸投げ」することは避け、以下を徹底するようにしましょう。

パートナーに任せず、自社側が握っておくべきこと

・現地での実行はパートナーに委ねても、戦略・意思決定・モニタリングは必ず本社が主導する
・販売目標・活動量・報告頻度をあらかじめ契約に明記する
・定期的に進捗を確認する仕組みを、進出前の段階から設計しておく

5-4. コツ④ :「日本で売れた」を過信しない

「日本で売れた」という過信を持ったまま進出すると現地調査が甘くなり、参入後に想定外の壁にぶつかるリスクが高まります。
いったん思い込みをすべてリセットして、「この国では何が求められているか」を白紙の状態から確認するようにしましょう。

よくある思い込み 現実
「品質が高いから売れる」 品質より価格を優先する市場では評価されないことがある
「日本で人気だから需要がある」 文化・習慣・ニーズが異なれば、同じ商品でも刺さらない
「代理店に任せれば動いてくれる」 動機づけと管理の仕組みがなければ、代理店は動かない
「現地法人を作れば本格参入できる」 箱を作っても、売れる仕組みがなければ意味がない

5-5. コツ⑤ :参入タイミングを意識する

同じ国でも、参入タイミングによって戦い方がまったく変わります。
市場が拡大している時期に入れば追い風を受けられますが、すでに成熟・飽和している時期に入ると価格競争に巻き込まれるリスクが高まるので注意が必要です。

参入タイミング 特徴 向いている企業
黎明期(市場形成前) リスク高・コスト高・競合少・先行者優位大 リソースがあり長期投資できる企業
成長期(拡大中)    バランス良・競合増加・参入しやすい 多くの企業にとって最適タイミング
成熟期(飽和気味) 競争激化・差別化が必須・コスト競争に 強いブランドか圧倒的コスト優位がある企業

参入タイミングを見極めるには、JETROレポートや現地進出企業へのヒアリングが有効です。
その国が今どの成長段階にあるかは、データだけでなく実際に現地で情報を集めることで、より精度の高い判断ができます。

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