3daysofdesign 2026レポート Vol.1
2026年6月、デンマーク・コペンハーゲンで開催された「3daysofdesign2026」。近年、ミラノデザインウィーク(ミラノサローネ)に次ぐ、家具・インテリアデザインのイベントとして世界的にも注目されています。日本とも親和性の高い北欧ブランドのトレンドやライフスタイルを探るため、DNPでは今年初めて3daysofdesign2026 、視察・取材を行いました。各ブランドの新作や、展示の様子について、Vol.1、2でご紹介します。
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Photos by DNP
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3daysofdesignは2013年にコペンハーゲンでスタートしたデザインフェスティバルです。当初はわずか4社の出展から始まりましたが、パンデミック以降、その注目度は急速に高まり、現在では世界を代表するデザインイベントの一つへと成長しています。近年は北欧ブランドだけでなく、海外ブランドの出展も増加しており、そのなかでも日本企業の存在感は年々高まっています。
2026年は6月10日から12日まで開催され、「Make This Moment Matter(この瞬間に意味を持たせる)」をテーマに掲げていました。このテーマには、「なぜ(Why)」という目的を明確にし、意味のあるデザインや行動を通じて、人・社会・環境に働きかけ、新たな価値を創出していこうというメッセージが込められています。イベントの規模も年々拡大しており、2026年は140以上の国・地域から約125,000人が来場。会場では500を超える展示と、約900件のイベントが開催され、37か国からブランドやデザイナーが参加しました。コペンハーゲンの街全体を舞台に、家具、照明、インテリア、テキスタイル、アートなど幅広い分野のデザインが紹介され、世界中のデザイン関係者が集う国際的なプラットフォームとして、その存在感をさらに高めています。
3daysofdesign 2026 ブランド展示・新作紹介
Audo Copenhagen
Audo Copenhagenは、2023年にMENU・The Audo・by Lassenの3ブランドを統合して誕生した、デンマーク発の家具・照明・インテリアアクセサリーを展開するライフスタイルブランドで、複合施設「Audo House」で展示を行いました。会場があるノーハウン地区は港に近く、かつて貿易で栄えたエリアで、Audo Houseは1910年代に建てられた商館をリノベーションして活用した施設です。今年のテーマは「Quiet Grandeur(静かなる荘厳)」。空間の雰囲気や素材の魅力、時代を超えて受け継がれるデンマークデザインの価値観を体感できる展示が展開されました。会場では、チェア、テーブル、照明を含む7点の新作を、Audoの定番コレクションとともに紹介。柔らかなシルエットや彫刻的な曲線、無垢材や天然素材の織り、アースカラーを基調とした素材使いによって、落ち着きと品格を備えた空間を創出し、北欧ならではのクラシシズムを現代的に解釈したインテリアを提案していました。
フレミング・ラッセンの名作ラウンジチェア「The Tired Man」の誕生90周年を記念した特別展示も行われました。1935年に発表されたこの椅子は、まるでホッキョクグマに包み込まれるような安心感をコンセプトにデザインされており、視覚的にも触覚的にも“暖かさ”を感じさせる存在です。彫刻的な美しさと優雅な佇まいを備えながらも、何よりも極上の座り心地を追求したラウンジチェアとして知られています。2015年に復刻されて以降も高い人気を誇り、現代のインテリアにも自然に調和する名作として愛され続けています。今年の3daysofdesignでは、新たにクラシカルな印象の花柄ファブリックを張った仕様が展示され、90年を経た現在でも新たな表情を見せる普遍的なデザインの魅力を印象づけていました。
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Photos by Audo Copenhagen
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2026年の新作をいくつかご紹介します。
Pernille Arlien-Søborgがデザインした「Admiral Portable Lamp」は、コペンハーゲンの歴史あるAdmiral Hotelのために考案されたポータブルランプで、「空間の雰囲気を照らす」ことをコンセプトにデザインされています。クローム仕上げのベースにリネンシェードを組み合わせ、2700Kの温かみのあるLED光を柔らかく拡散。充電式バッテリーを採用し、各パーツを分解できるサステナブルな構造も特徴です。
次にご紹介するのは、Krøyer-Sætter-Lassenによるデザインの「Mauro Dining Chair 」とAtelier Axoによるデザインの「Puffin Dining Table」です。「Mauro Dining Chair」は、イタリアの社交的な空気感をデンマークデザインの哲学を通して再解釈した一脚です。スタッキングが可能な構造を備え、デザイン性と実用性を兼ね備えています。オーク材とペーパーコードによる手仕事ならではの温もりが感じられるのも魅力です。一方、「Puffin Dining Table」は、伝統的なカントリーキッチンのテーブルに着想を得ながら、シェーカースタイルに見られる簡潔さと機能美を融合させたデザインです。
そして、筆者が最も印象的だったのはLaura Lange(ローラ・ランゲ)による新作「Conrad Lounge Table」。日本建築、とりわけ寺院の屋根に見られる緩やかな反りのある曲線から着想を得たデザインで、視覚的な軽やかさと構造的な安定感を両立しています。天板にはナチュラルオークまたはダークステイン仕上げの成形オーク突板を採用し、なめらかな曲面と明快な輪郭を一体的に成形することで、繊細さと力強さを兼ね備えたフォルムを実現しています。日本建築の美意識を北欧デザインへと昇華させた、Audoらしい一作といえるでしょう。
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Photos by Audo Copenhagen |
Audo Copenhagen ブランドサイトはこちら をご覧ください。
GUBI
GUBIは、1967年にデンマークで創業した、名作家具の復刻と現代デザインを融合するラグジュアリーファニチャーブランドです。ノーハウンのウォーターフロントにあるGUBI Houseを舞台に、「GUBI Scenes」を展開しました。2026年のテーマは「Home Scenes in Four Acts(4つのシーンで描く住まい)」。好奇心やコレクション、人をもてなすこと、そして旅によって育まれる暮らしをテーマに、リビングルーム、ダイニングルーム、ベッドルーム、アトリエの4つの空間を通して、「キュレーションされた住まい」を提案していました。スタイリングはNadia Olive Schnackが手がけ、集う、こもる、創る、暮らすといった生活の異なるリズムを、それぞれのシーンで表現しています。
リビングルームでは、本や陶器、アート作品、旅先で集めたオブジェを重ね合わせ、人との会話や文化に囲まれた心地良い暮らしを表現。ダイニングルームでは、現行コレクションと名作家具、厳選されたテーブルウェアを組み合わせ、食事や語らいの時間を豊かに演出していました。さらにアトリエでは、スケッチや書籍、ムードボードなどを配し、観察や好奇心からアイデアが生まれるクリエイティブな環境を表現。4つのシーンを通して、住まいを単なる生活の場ではなく、自分らしい価値観を映し出す空間として提案していたのが印象的でした。
会場で印象的だったのは、北欧らしい間接照明を効果的に取り入れた空間演出です。クラシックなデザインと意外性のある素材やフォルムがバランスよく調和し、個性的な家具に複数の照明やオブジェを組み合わせることで、GUBIならではの世界観がつくり上げられていました。
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Photos by GUBI
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会場では、「GUBI's ALFRESCO ― 水辺で楽しむ、開放的なアウトドアライフ」と題したアウトドア空間も展開されていました。GUBIとイタリアの老舗ラタンメーカーBonacina 1889とのコラボレーションによる「P3 Collection」を中心に、熟練した職人による手編みの技術が生み出す温もりや豊かな質感を体感できる展示となっていました。
コレクションの中心となるP3 Lounge Chairは、1964年に建築家・デザイナーのティト・アニョーリがBonacina 1889のためにデザインした名作です。彫刻のように優雅なフォルムと遊び心のあるデザイン、人間工学に基づいた快適な座り心地を兼ね備え、ラタン家具を代表する一脚として知られています。今回の復刻では、インテリア仕様に加え、アウトドア仕様も発表されました。屋外モデルはオリジナルの意匠を忠実に継承しながら、天然ラタンに代えて耐候性の高い合成ラタンを採用することで、屋外でも長く使用できる仕様へとアップデートされています。一方、インテリア仕様は、細く裂いた天然ラタンを一本一本チューブラースチールフレームに手編みで固定する伝統的な工法を受け継ぎ、ラタンならではの自然な温もりと豊かな素材感を美しく表現しています。どちらのモデルも、地面からふわりと浮かんでいるような軽やかな彫刻的フォルムが印象的で、屋内外を問わず空間に上質な存在感をもたらしていました。
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Photos by GUBI |
GUBI ブランドサイトはこちら をご覧ください。
Carl Hansen & Søn
2026年のCarl Hansen & Sønは、「Balanced Principles(バランスのとれた原理)」をテーマに展示を展開しました。素材・フォルム・機能が、職人技と丁寧なモノづくりによって調和するプロセスを表現し、会場ではクラシックな名作と新作が対話する展示が行われました。特に、ブランドを代表するデザイナー、Hans J. Wegnerの作品に焦点が当てられています。
新作として発表されたのは、Preben FabriciusとJørgen KastholmによるFK64 Scimitar Chair。床に近いリラックスした座り方から着想を得たゆったりとした座面と、中東の反り刀「シミター」に由来する三日月形のステンレスベースが特徴で、彫刻的な美しさと建築的な存在感を兼ね備えています。また、Hans J. Wegnerの代表作CH24(Yチェア)には、新たにレザーシート仕様が登場。軽やかなフォルムはそのままに、ソフトレザーを採用することで、快適な座り心地と上質な存在感を実現しています。
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Photos by Carl Hansen & Søn
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Fritz Hansen
Fritz Hansenは、「Sound Club」をテーマに、リスニングラウンジ、中庭、コペンハーゲンの旗艦店を舞台としたマルチスペースインスタレーションを展開しました。音が家具や照明、素材とどのように響き合い、空間体験を豊かにするのかを探求する内容で、リスニングラウンジでは初公開のポッドキャストや本イベント限定のレコードを通して、音に没入する体験を提供しました。
新作では、nendoがデザインしたN02™ RECYCLEシリーズに、シート張り仕様とフルアップホルスタリー(全面張り)仕様が追加され、多彩なファブリックやレザーから選べるようになりました。机の上の一枚の紙の折り目から着想を得たシェル形状はそのままに、快適性と用途の幅を広げています。100%再生家庭用プラスチックを使用した循環型設計も継承し、サステナビリティと機能性を両立しています。
また、ポール・ケアホルムのPK3には、前面に張地を施した新仕様が加わりました。左右対称の成形合板2枚を金属製の接続パーツで組み合わせたミニマルなデザインはそのままに、身体が触れる部分の快適性を向上。名作の造形を損なうことなく、現代のオフィスやホスピタリティ空間のニーズに応えるアップデートとなっています。
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Photos by Fritz Hansen |
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House of Finn Juhl
House of Finn Juhlは、「The Deviation is in the Detail(逸脱は細部に宿る)」をテーマにインスタレーションを開催しました。Finn Juhlの代表的な言葉をタイトルに掲げ、家具を芸術へと昇華させるディテールの力に着目。建築ユニットMentze Ottensteinが手がけた空間には、代表作の家具に加え、彼に影響を与えた芸術家Sonja Ferlov Mancoba、Vilhelm Lundstrøm、Sigurjón Ólafssonの作品を展示し、デザインとアートの関係性を表現しました。また、ニューヨークのファッションブランドSea New Yorkとのコラボレーションでは、Japan Seriesのための刺繍入りテキスタイルを発表。家具、ファッション、クラフトを横断する新たな表現を提案しました。
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Photos by House of Finn Juhl |
さらに、版画工房Edition Copenhagenのアトリエでは、伝統的な職人技や専門技術の継承をテーマとした特別展示を開催。家具づくりと版画制作という異なる分野を結び付けながら、クラフトマンシップの価値を伝える企画となっていました。
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Photos by House of Finn Juhl
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DAGMAR
Dagmarは、「Nordic Masters」をテーマに、1930~70年代のスカンジナビアン・モダンを現代に継承する展示を行いました。美しさ、クラフツマンシップ、機能性という北欧デザインの理念を軸に、復刻コレクションを紹介。
2026年の新作として、スウェーデンのデザイナーCarl Malmstenによる「Samspel Sofa」と「Samsas Chair」を中心としたカプセルコレクションを発表。さらに、4代続く張り家具工房O.H. Sjögrenとの協働により、1970年代以来となる「Cirkus Chair」の復刻も披露しました。また、Dagmarを象徴するアイコンピースの一つである「Clam Chair」も印象的でした。20世紀スカンジナビアンデザインを代表するデザイナー、Arnold Madsenが手がけた名作で、シープスキンの張地は見た目にも触り心地にも温もりを感じさせます。さらに、伝統的な木工技術と現代の加工技術を融合させた脚部やアームには、木の豊かな質感が生かされており、北欧インテリアの魅力を象徴する一脚だと感じました。
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Photos by DNP |
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編集後記
初めて訪れた6月のコペンハーゲンは、とても過ごしやすい気候でした。朝晩は少し肌寒さを感じるものの、日中は半袖で快適に過ごせる日が多く、公園や水辺では日光浴を楽しむ人々の姿が印象的でした。一方で、海に近い街ならではの変わりやすい天気も特徴的で、連日のように数時間ほど雨が降ることも。しかし、空を見上げると雲の流れがとても速く、しばらく待つと青空が戻ってくる──そんな自然の移ろいも、この街ならではの魅力でした。
3daysofdesignは約500件が出展するデザインイベントで、規模としてはミラノデザインウィークの市内展示(Fuorisalone)のおよそ3分の1程度です。街の規模もコンパクトなため、徒歩で無理なく巡ることができ、気になった展示にふらりと立ち寄れる気軽さがありました。多くの会場で事前予約が不要な点も魅力で、公式アプリを片手に街歩きを楽しみながら展示を巡るスタイルは、3daysofdesignならではの楽しみ方だと感じました。
また、各ブランドは家具を展示するだけでなく、コーヒーやパン、お菓子、お酒を振る舞ったり、ヨガやサウナなどのワークショップを開催したりと、ブランドの世界観を「暮らしの体験」として提案していました。プロダクトを見せるだけではなく、その先にあるライフスタイルまで体験してもらうという展示手法は、ウェルビーイングや心地良い暮らしを大切にする北欧らしい価値観を象徴しているように感じました。
次回のVol.2では、ワークショップの様子や、今回ご紹介しきれなかった家具ブランドの展示についてレポートします。
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Photos by DNP |
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Editor
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- Chihori Kunito(大日本印刷株式会社 モビリティ&リビング事業部)
ミラノサローネなどの海外展示会や北欧のライフスタイルをリサーチし、トレンド情報を発信するセミナーやWebでのレポート記事を執筆している。またDNP 5Stylesの企画やコーディネイト提案にも携わる。
関連資格:インテリアコーディネーター、プロモーショナルマーケター
2026年7月時点の情報です。

