ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.1

2026年4月、イタリア・ミラノで開催された「ミラノデザインウィーク2026」。DNPでは社員が実際に現地を訪れ、200を超えるブランドの視察・取材を行いました。各ブランドの新作や、ミラノデザインウィークでの展示の様子について、Vol.1~Vol.4まで4回に分けてご紹介します。このVol.1のコラムでは、B&B Italia、Cassina、FLEXFORM、Molteni&C、Natuzzi Italia、Paola Lentiについてご紹介します。

すでにリリースしているミラノデザインウィーク2026に関するコラムは各リンクからご確認ください。
ミラノデザインウィーク2026 速報ハイライト
ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.2(6月以降に公開予定です)
ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.3(6月以降に公開予定です)
ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.4(6月以降に公開予定です)

2026年ミラノデザインウィークの様子、各ブランドの新作紹介

B&B Italia ブランドサイト
ミラノ市内のショールームでは、1966年の創業から60周年を記念し、特別プロジェクト「Before & Beyond」を発表しました。本企画は、ブランドの歴史と未来を軸に、イタリアンデザインを世界的に牽引してきたB&B Italiaの創造性とコミュニケーションの進化を包括的に振り返るものです。展示空間はFormafantasmaがデザインを手がけ、普段のショールーム展示とは大きく異なる大胆な見せ方が印象的でした。家具、実験、プロジェクト、マーケティングといったさまざまな分野にわたるブランドの歴史を多角的な視点で展示しています。

Photos by B&B Italia

続いて、フィエラ会場での出展に関してご紹介します。2019年に行われたFlos B&B Italia Groupのプレゼンテーションへの参加を除くと、B&B Italiaがフィエラ会場に出展するのは25年ぶりとなりました。ブースデザインは、前述した「Before & Beyond」と同様に Formafantasmaが担当し、「デザイナーの仕事そのものを中心に据える」という前提で、建築的な空間として構想されました。

「Abaco」 は、Ronan Bouroullec が B&B Italia のために初めてデザインしたプロジェクトで、構造そのものをデザイン言語としてとらえたテーブルとチェアのコレクションです。画像左は「Abaco」 のチェアで、多くの製品が構造を隠そうとする中で、Abaco はあえて構造を見せ、各パーツの形やバランス、つながり方を明快に表現しています。脚部のデザインや、レザーで覆われた座面・背もたれ・アームレストの連続性によって、快適さと端正さのバランスを生み出しています。シンプルで軽やかな見た目ながら、実際に座ってみると非常に安定感があり、生活のいろいろな場面で寄り添ってくれるプロダクトだと感じられました。

Photos by B&B Italia

画像左はVincent Van Duysenがデザインしたインドアソファです。このコレクションでは構造がどのようにして快適さを形どるのか、構造と快適さの関係に着目し、身体に寄り沿うデザインを追求しています。クッション材は密度の異なる3つのウレタンで構成されており、そういった目に見えない部分まで精密にデザインされています。無垢材のフレームはあえて隠すことなくデザインされ、構造は単なる支えではなく、視覚的にも触覚的にも、くつろぎの体験に欠かせない重要な要素ということを物語っています。このコレクションには、チーク材のフレームを採用したアウトドア仕様も展開されています。

Photos by B&B Italia

Text by Fumika Yoshikura

Cassina ブランドサイト
Cassina Store Milanoは「マテリアル・インテリジェンス」というコンセプトに焦点を当て、建築的ディテールと展示されるプロダクトの仕上げとの間に、調和のとれた対話が生まれていました。ストアの入り口に展示されたのが、パトリシア・ウルキオラによるデザインの新作コレクション「Ardys」。ソファはクッションのやわらかさをひと目で感じ取れるようにする、という明快な発想から生まれ、キルトを想起させるデザインです。このプロダクトのために開発された「London」ファブリックは、スポーツ素材の軽やかさを想起させるサテンのような仕上げとなっています。コーヒーテーブルはグロス仕上げのラッカー塗装セメント製で、ソファの質感とのコントラストを感じられます。建築分野特有の技法や工程を応用し、天板とベースは、「型枠(フォルムワーク)」と呼ばれる伝統的な型に特殊なセメントモルタルを流し込んで成形しています。あえて残された痕跡や揺らぎが、そのまま仕上げとして活かされています。

Photos by Cassina

デンマーク人デザイナーのヴァーナー・パントン生誕 100 周年を記念し、「Peacock Chair」が復刻されました。孔雀が羽を広げる姿を想起させるこのチェアは、1959 年にパントンの初期作品のひとつとして誕生したものです。当時、多くのデンマーク人デザイナーが天然木を好んで用いる中、パントンは金属素材の軽やかさと透過性、さらには周囲の色彩を映し取る特性に魅了され、このデザインを生み出しました。

ストアの象徴的スペースである螺旋階段下に展示されたのはガエタノ・ペッシェによるデザインの「Dalila」です。柔軟性のあるポリウレタンフ ォームによるしなやかなフォルムをベースに、薄く着色されたエラストマー層で覆われています。この螺旋階段の空間は毎年リニューアルされており、今年はオーバージン(ナス)カラーのフェイクファーで構成されました。また随所にオイルカラーやズッカ(かぼちゃ)イエローも用いられ、3色が対比しながらも調和する華やかなコーディネートが、ストア全体の印象を際立たせています。

Photos by Cassina

Text by Chihori Kunito

FLEXFORM ブランドサイト
FLEXFORMの今年のテーマは「THE PRIVATE LIVES OF OBJECTS」。インドアコレクションは、住まいに流れる時間に寄り添い、それぞれのユニークなライフスタイルを形づくるラインナップとなっています。Antonio Citterioデザインの新作ソファ「QUINCY」は、有機的なフォルムが特徴で、柔らかさと構築性のバランスが際立つプロダクトです。その中央に配されているのが、同じくAntonio Citterioが手がけた「MARQUIS」。モスコヴァのショールームでは、新たなマテリアルとして加わったウェンジ材が用いられ、ウェンジならではの美しい杢目が空間に深みとぬくもりをもたらしていました。「QUINCY」で空間をゆったりと包み込み、「MARQUIS」や、サイズや高さの異なる「ARNOLD」のテーブルを組み合わせることで、自然と人が集い、豊かなコミュニケーションが育まれるコーディネートが実現されています。

Photos by FLEXFORM

アウトドアコレクションは、昨年に引き続きChiostro Sant’Angelo(キオストロ・サンタンジェロ)にて展示されました。画像左は、FLEXFORMを象徴する編みの技法を用いた「EVERETT OUTDOOR」。今年は新たにストライプパターンのファブリックが加わりました。歴史ある建物に囲まれた中庭に広がる空の下で、鮮やかなコントラストを描き出し、その軽快な佇まいが、自由でアクティブなアウトドアライフを想起させます。画像右は、今年新たにデザイナーとして起用されたMonica Armaniによる「MARGHERÌ」。19世紀の華やかなパリを象徴するベル・エポックに着想を得たデザインです。花を思わせるラインは、過剰な装飾をそぎ落としながらもエレガントさを兼ね備え、屋外空間に可憐な表情を添えていました。

Photos by FLEXFORM

Text by Chihori Kunito

Molteni&C ブランドサイト
Molteni&Cは、Vincent Van Duysenがキュレーションを手がける2026年アウトドアコレクションを発表しました。会場となったVia Senato 14では、Elisa Ossino Studioによるインスタレーションが展開され、「Responsive Nature」のテーマの下、没入空間が広がっていました。6つの章から構成された、庭園を回遊するウォークスルー型の展示は、幻想的な風景が自然本来の姿を取り戻す流れの中で、人為と自然のバランスが反転していくプロセスを表現しています。空間は物語のように移り変わり、進むにつれて植生の密度や表現、庭園の解像度が変化していきます。それぞれの空間で家具と植生が呼応することで、自然は単なる背景ではなく、知覚と感性に働きかける積極的な要素として再定義されるのです。ミラノの街から突如不思議な世界に迷い込んだような展示は、家具と自然とそこから生まれる空間の新たな関係性を提示していました。

Photos by Molteni&C

一方、昨年オープンしたPalazzo Molteniでも新作家具の展示が行われています。今回初めてMolteni&Cの家具を手がけたCristián Mohadedによるアームチェア「Corsetto」は、伝統と革新のハイブリッドなスタイルを緩急のある形状とマテリアルで体現しています。特徴となるフォルムは、ベースからアームレストへと立ち上がるレザーベルトに、柔らかなファブリックが緩やかに引き締められることで、コルセットを思わせるシルエットを形づくります。端正なフレームと張りを感じるボリュームが組み合わさることで、「Corsetto」は「締め付け」と「解放」の緊張関係を表現しており、クラシカルでありながら個性的な、時を経ても魅力を失わない斬新なアームチェアとなっていました。

Photos by Molteni&C

続いてご紹介するのは、GamFratesiによってデザインされた「Midday」です。農家の建物からインスピレーションを得たこのプロダクトは、太陽が高く昇り、影が最も短くなる正午の光の中で、素材本来の重みと存在感を際立たせます。2本の堅牢な脚が本体を支える構造は、シンプルでありながら確かな安定感と静かな力強さを感じさせるのです。さらにひとつの塊に見える本体は、実は石と木のふたつの素材が違和感なく組み合わさることで完成しており、まるでひとつの素材から削り出された彫刻のようです。静止した時の中に静かに存在しているような魅力で溢れる「Midday」シリーズは、写真のサイドボードのほか、コンソールが展開されています。

Photos by Molteni&C

Text by Taisuke Watanabe

Natuzzi Italia ブランドサイト
Natuzzi Italiaは「Harmony Creators」をテーマに、調和を核としたコンテンポラリーな暮らしのビジョンを発表しました。ブランドの全プロセスに一貫するこの思想のもと、美しさ・快適さ・機能性を融合したウェルビーイング体験を提案しています。

ミラノ市内のショールームでは、国際的デザイナーとの多様な新作プロジェクトを披露しました。Mauro Lippariniがデザインしたコレクション「Caleo」はプーリア地方の地中海沿岸に広がる静かな入り江から着想を得ており、自然、光、時間の移ろいをデザインに落とし込んでいます。ソファは柔らかなフォルムとファブリックのドレープが、穏やかな水面を想起させます。また、このなめらかな造形はコレクション全体に一貫しており、コーヒーテーブルは、より自由で有機的な造形表現へと展開されています。厚みのあるエッジは光をやさしく反射し、表面には風に揺れる水面のような繊細な表情が生まれます。

そして「BAYA」ラウンジアームチェアは、Frank Chouによるデザインで、Natuzzi Italiaとの初のコラボレーションとなります。彫刻的でありながら包み込むようなフォルムと、コンパクトでボリューム感のある造形が特徴で、現代的で洗練された存在感を備えています。円筒形のベースが安定感を生み、曲線的な背もたれが身体を自然に包み込む構造により、住宅空間からホテルやラウンジなどのホスピタリティ空間まで幅広く対応します。さらに、スイング機構を備えた構造により、身体の動きに寄り添う快適な座り心地を実現しています。

Photos by Natuzzi Italia

今年、Natuzzi Italiaはフィエラ会場にも出展しました。約200㎡の空間を3つのエリアで構成し、ミラノの都市的な広がりを想起させる環境の中で、ブランドのデザイン力とクラフツマンシップを体現しています。

会場では、プロフェッショナル向け空間「Natuzzi Studio」を初公開。デザイン、クラフツマンシップ、技術力を結びつける新たなプラットフォームとして、建築家やデザイナーとの協働の強化を図ります。従来の展示空間にとどまらず、アイデアが生まれ、プロジェクトが育まれる“デザインのラボ”として構想されています。

Photos by Natuzzi Italia

Text by Fumika Yoshikura

Paola Lenti ブランドサイト
今年のテーマは「DIALOGHI」。建築とデザインが自然に溶け合う空間の中で、色と素材、感性と形、文化と人々が響き合い、対比と調和が織りなす洗練されたダイアローグの世界を表現していました。また、ブランドの世界観をひと目で伝えると同時に、デザインのための具体的かつ直感的なツールとして機能する「Chromatic Alphabet」が展示されました。素材とカラーのコーディネートをアルファベットの構造のようにとらえたカラーパレットで、自然から着想を得た44のスキームが設定されています。空間をつなぐ連続的な要素として、色やマテリアルをとらえ、その関係性を示す44のパレットの展示は、Paola Lenti独自の色彩の世界観を、視覚的かつわかりやすく示すものとなっていました。

Photos by Paola Lenti

インテリアコレクションのソファ「Légère(画像左)」は、1970年代にAngelo MangiarottiとChiara Pampoが手がけたデザインを、テキスタイルの解釈を通して現代的に再構築したものです。構造の美しさを感じさせるオーク材のフレームに、2層のピケファブリックで構成されたシートを組み合わせています。リサイクル可能かつ生分解性を備えたポリエステル繊維を使用しています。アウトドアコレクションの「Plissé (画像右) 」は、Bertrand Lejolyによるデザインです。マットまたはグロス仕上げの塗装ステンレススチールフレームを採用し、それを覆うファブリックには、屋外使用のために開発された「Chain tubular knit」を使用しています。チューブ状のコシのあるニット素材で、快適性を高める柔らかさと屋外使用に耐える耐久性を兼ね備えています。複数色の糸を編み込むことで、自然な濃淡や色の変化も楽しむことができます。

Photos by Paola Lenti

Text by Chihori Kunito

編集後記

2026年のミラノ・デザインウィークは、連日穏やかな天候に恵まれ、街を歩き回る心地よさを感じながら取材を行うことができました。歴史ある街並みの中を巡る時間そのものが、豊かな体験となりました。
今年も世界各地から多様な来場者が集まり、業界関係者に加え、SNS映えする写真を求める人々や、ノベルティを目当てに列をつくる一般来場者の姿も見られ、街全体は大きな賑わいに包まれていました。一方で、物価高や世界情勢の影響もあり、パンデミック以前と比べると、出展規模やブランドの多様性にはやや縮小傾向も感じられます。
フィエラ会場で開催されたミラノサローネのコミュニケーションキャンペーンは「A Matter of Salone」。石や花びら、木材など6つの素材に焦点を当て、素材そのものの本質的な特徴や内包するエネルギー、そして人の手によってプロダクトへと昇華されていく過程を表現した内容です。「素材とは何か」「素材を通じて表現されるデザインの価値とは何か」という問いを改めて投げかけるものでした。
近年のトレンドであるサステナビリティやウェルビーイングを背景に、プロダクトのフォルムやコーディネートが果たす役割も引き続き重要ですが、今年はとりわけマテリアルへの関心の高まりが際立っていました。市内の展示では「Tactile(触覚)」という言葉が頻繁に使われ、触れた際の心地よさに加え、視覚からも伝わる質感の豊かさが重視されています。
カラーに目を向けると、ベージュやブラウンを基調とした、自然の温もりを感じさせるモダンスタイルが増加していました。空間をとらえるマクロな視点から、素材というミクロな視点に至るまで一貫して、人々の心身を癒やすデザインが志向されていることが強く印象に残っています。

Text by Chihori Kunito

Editor紹介

ミラノサローネなどの海外展示会や北欧のライフスタイルをリサーチし、トレンド情報を発信するセミナーやWebでのレポート記事を執筆している。またDNP 5Stylesの企画やコーディネート提案にも携わる。
関連資格:インテリアコーディネーター、プロモーショナルマーケター

国内住宅内装分野を中心にDNPオリジナルの内装加飾シートWSシリーズの開発に携わる。
ミラノサローネ他、海外の展示会にも足を運びながら、国内インテリアの向かう先を見据え、
日々開発と発信を行っている。

国内外の外装分野を主軸として、自社製品であるアルミ加飾パネル「アートテック・Artellion」の開発に携わる。国内を中心とした商業施設調査では非住宅製品の開発に役立て、アートテック・Artellion分野では海外の販促にも関わる。

  • 2026年5月時点の情報です。

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