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学芸員レポート
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「サイト・グラフィックス」/「風景表現の近代2―印象派から1940年代まで―」/「ニューヨーク近代美術館展
川崎/川崎市市民ミュージアム 深川雅文
2004年担当の企画および抱負
 現代の写真表現に顕著に現れてきているひとつの重要な傾向に着目した写真展「サイト・グラフィックス」を計画している。日本の現代写真の歴史において、柴田敏雄や畠山直哉など風景の概念をうちやぶる作家たちが登場したのが90年代前後。日本の新たな風景写真として国際的にも注目された。その後、90年代末に、野口里佳、横澤典など、風景に対する異質なアプローチが登場し、新世紀に入ってからも進行中である。本展は、その動向を取り上げ、その意味を社会的・美術的なコンテクストも含めて議論する場としたい。
 「サイト・グラフィックス」という聞き慣れない言葉について説明しておこう。これは、風景における「場」の新たな側面を指し示そうという僕の造語である。ベルリンの壁崩壊以降の社会状況、そしてデジタルネットワークの進展は、現実において黙示録的な歴史性の概念を解消した。それにより、歴史性に結びついた「場所」の概念も大きく揺さぶられ、そこに歴史性から脱却した「場所」の概念が生まれてきた。ボードリヤールの言葉をなぞれば、歴史的な意味をはぎ取られた「中性的で無差別的な」場とさしあたって仮定できるかもしれない。
 日本の現代写真、とりわけ風景表現において静かに、しかし確実に進行しつつある現象は、ここに生まれつつある新たな「場所」概念と密接に結びついている。僕は、この新たな場所概念を提起している写真に対して、手垢の付いた「風景写真」ではなく「サイト・グラフィックス」という言葉を適用してみたい。それによって、風景表現の新たな質をより明確にできるかもしれないという希望をこめて。
 展覧会の会期は、今年の秋(10月から12月にかけて)、参加作家についてはこれから最終的に絞っていく(展示作家は最大で10人くらいになるだろう)。
2004年の気になる展覧会、動向
 ふたつ挙げたい。ひとつは、横浜美術館で計画されている「風景表現の近代II」展(仮称)。会期は、10月9日から12月12日まで。これは、去年の潤i(2―3月)に同館で開催された「明るい窓:風景表現の近代」展の流れを継いだ第二弾の展覧会として構想されている。時期的には印象派の1870年代から第二次世界大戦とその終了後の1940年代頃まで。全体としては、科学技術と産業の急速な発展とともに世界を席巻していく都市文明を背景にして生まれた風景表現を日本と欧米の美術動向を踏まえて辿る。第一回目の展覧会は、風景画の成立と変容を美術史的にたどるというポーズをとりつつも、たんなる風景表現の歴史展ではなく、その実、風景画の成立と変容をもたらしたさまざまな要因―社会的、政治的、国家的、技術的―をも同時に浮かび上がらせようという目論見を内包した展覧会であった。第二弾では、力点は20世紀の「モダン」に移り、この狂乱の世紀の前半の状況を背景にして、その目論見がより明確に示されるのではないかと期待している。もうひとつは、森美術館で4月から8月まで開催される「ニューヨーク近代美術館展」。文字通り、MoMAのコレクション展なのであるが、それが、森美術館で展示されることでどのように見えるのかというところに興味がある。「HAPPINESS」展で、美術のヒエラルヒーと地域的・歴史的差異をものの見事に(あるいは暴力的に)、等価化し(あるいは、フラット化し)、美術の相対空間を作り上げてしまったあの特殊な(ポスト・モダンというよりスーパー・モダンな)磁場で、モダンの精華たる作品たちの見え方がいかに変貌するのか、僕はそれを見てみたい。この両展をとおして、「モダン」は遠くなりにけりという事態がより明確になるのではないだろうか。「モダン」は不良債権ではけしてないが、その処理作業を迅速に行うことが、来るべき世界のビジョン形成のために重要だと僕は思う。それゆえの、この二つの展覧会だ。


■深川雅文
1988年の開館時より川崎市市民ミュージアム学芸員。「現代写真の動向」、「バウハウス」展など写真・デザインの展覧会を手がける。共著『現代写真のリアリティ』(角川書店)、訳書『写真の哲学のために』(フルッサー著)。web上ページphoto-eyesでの書き込み多数。
[ふかがわ まさふみ]
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