株式会社JR東日本クロスステーション 様

ショールーミングで新しい店舗づくりを実証/4千人以上が試食体験した次世代店舗「&found(アンドファウンド)」

生活における「豊かさ」を起点として駅のあり方を変革し、「交通の拠点」という役割を超えて駅を“つながる”「暮らしのプラットフォーム」へと転換する「Beyond Stations構想」。この構想を推進する株式会社JR東日本クロスステーション(以下、JR-Cross)と大日本印刷株式会社(以下、DNP)がタッグを組んで実現したショールーミング店舗「&found」。
JR上野駅構内「エキュート上野」での実証実験に続き、JR東京駅「グランスタ東京」の実証実験も大盛況のうちに幕を閉じました。

「グランスタ東京」での実証実験を振り返りながら、「&found」が生まれた背景と経緯、実証実験の仕組みや成果、今後の展開などの話をJR-Cross社 デベロップメントカンパニー 新事業戦略部 部長 播田 行博氏、DNP 情報イノベーション事業部 課長 村松 孝弘、岩井 美樹に伺いました。

中央)株式会社JR東日本クロスステーション
  デベロップメントカンパニー 新事業戦略部 部長 播田 行博氏
左)DNP 情報イノベーション事業部 第1CXセンター
  課長 村松 孝弘
右)DNP 同事業部 同センター 岩井 美樹

「&found」とは

“日常のスキマ時間で、「半歩先の日常」を体験できる、持ち帰る”がコンセプト。生活者が駅でのスキマ時間などにこの店舗に立ち寄り、個々のテーマに合わせて多くの企業から集めた「半歩先の日常」を体験できるアイテムを、見る・触れる・試す・持ち帰ることができる。2023年2月10日(金)~3月3日(金)までの期間、JR東京駅「グランスタ東京」で実施した実証実験では、心とからだを満たす“Well-beingな食”をテーマに、東京駅を利用される方々に「気になっていたけれど実際に見たことがない」「買ってみたいけれど、試してみないと分からない」、そんな商品との「新たな出会い」を提供した。

ショールーミング店舗でデータマーケティングを実施したい

Q. DNPと共創し、ショールーミング店舗「&found」の実証実験を行ったきっかけをお聞かせください。

JR-Cross 播田氏:「Beyond Stations構想」を推進するなか、施策の1つとして考えていたのが、エキナカでのショールーミング店舗の実証実験です。大きな柱は2つあり、1つはショールーミング店舗で商品を見せるプロモーション、もう1つはエキナカという立地を活かしたデータマーケティングです。とくに重視していたのはデータマーケティングで、エキナカという立地から得たデータを蓄積・分析し、それらをショールーミング店舗の出店社に還元するビジネスモデルを思案していました。そこで、共創先の1つとしてDNPさんにお声掛けさせていただきました。

最適なソリューションを提供できる提案力に期待

Q. DNPとの共創を決めた理由をお聞かせください。

JR-Cross 播田氏:当時は「&found」の名前もなく、構想も漠然としていました。そもそも、ショールーミング店舗やデータマーケティングに必要な技術について把握できていませんでした。そこでまずはカメラによる分析など、個々の技術やシステムを有するメーカーやベンダーへのヒアリングを実施。こうしたヒアリングで分かったのは、当社が主体となって個々のシステムをひもづけるとなると、我々のキャパシティ以上の技術力やコストが必要になるということです。

そうしたなか、DNPさんともミーティングをさせていただきました。その際、印刷以外にも情報処理技術やマーケティングなど、さまざまな取組みをされている会社ということを知りました。しかも、単一のシステムだけではなく、必要なシステムを組み合わせてソリューションとして提供できるとのこと。DNPさんとなら、我々が求めるショールーミング店舗とデータマーケティングを実現できるのではないかと考え、今回の「&found」の共創に至った次第です。

DNP:当社はDNPショールーミング店舗「boxsta」、来店客の潜在的な購買欲求(インサイト)を分析できる店舗や体験型店舗の開設・運用を支援する「次世代店舗づくり支援パッケージ」、来店客の行動・接客会話データを可視化する「DNP店舗内CX解析サービス」の提供を通じ、リアル店舗の「ストアDX」を推進しています。2019年11月には、国内外のスタートアップ企業が手掛ける“未来のプロダクト”を体験できるショールーミング店舗の実証実験も行いました。

さらに当社は、未来のイノベーションについて、生活者・企業・有識者・クリエイターとともに共創するための方法論として「サービスデザイン」に取り組むデザインチーム「サービスデザインラボ」を有しています。これらにより、JR-Cross様と一緒にアセット分析を行った上で、ショールーミング店舗とデータマーケティングの設計から運営まで提案・実装することが可能です。この点をご評価いただき、今回の「&found」の共創に至ったと考えています。

仕組みづくりや機器の選定、接客スタッフのアサインまでDNPが対応

Q. 東京駅での「&found」が無事に終了しましたが、運営方法や仕組みは前回の上野と一緒ですか。

DNP:今回は東京駅のエキナカ商業施設「グランスタ東京」内61.4平方メートル(18.6坪)のスペースに「&found」の店舗を設け、心とからだを満たす“Well-beingな食”をテーマに6社が出店しました。「&found」の店舗内には、入店者の会話内容を取得するマイク、入店者数・棚前立ち寄り状況・区画内の入店者動線を把握する人流センサー、動画視聴率を把握するカメラ一体型サイネージ、入店者数・入店者属性を把握するビーコンを設置(※)。機材の数は異なりますが、構成は上野と同様です。
※来店者のスマートフォンのWiFi・Bluetoothを検知して入店者数・入店者属性を把握するビーコンを設置。

入店者の行動・会話をカメラとマイクを通じて取得し、会話情報はAIで自動テキスト化されクラウドにアップされます。もちろん、入店者には「マイクによる収録が可能かどうか」お声がけさせていただき、了解が得られた方のみデータ化しています。その後、当社でクレンジングしレポートとしてまとめたデータを出店社にフィードバックします。

「&found」内での接客は、当社が教育したスタッフが対応しました。高度な接客スキルと出店商品の魅力を伝えることができる質の高いスタッフをアサインさせていただきましたので、出店社が求めるマーケティング情報を引き出せたのではないかと考えています。

JR-Cross 播田氏:上野も東京も、基本的には体験してもらうサービスという点は一緒ですが、上野の場合は1社が提供する家電などのレンタルサービス体験、東京は6社が提供する飲食物の試食体験にしました。「NewDays」で利用できる引換クーポンや割引クーポンを配布し、試食した商品をお求めできる仕組みにしたこともあって、「グランスタ東京」での「&found」は終始盛況でした。

表:上野駅と東京駅で実施した「&found」の結果

JR上野駅「エキュート上野」
[ 2022年7月15日(金) ~ 8月14日(日) ]
プレスリリース記事
JR東京駅「グランスタ東京」
[ 2023年2月10日(金) ~ 3月3日(金) ]
プレスリリース記事
来店者数 約8,000人 来店者数 約15,000人
接客数 約1,200人 試食体験数 約4,300人

図:「&found」におけるデータマーケティングの仕組み

入店者の会話内容を取得するマイク

飲食物の試食体験を提供

データマーケティングによって効果検証をフィードバック

Q. 東京駅での「&found」について、どのように評価されてますか。

JR-Cross 播田氏:プロモーションおよびデータマーケティングともに、大変満足しています。プロモーションについては、入店者が楽しい体験を味わえなかった場合、つまらない商品とインプットされてしまう恐れがありますが、今回は試食を通じ、ほぼ入店者全員が楽しんでいただけたと感じています。出店社も「&found」の様子をご覧になっており、同様の意見を頂戴しました。

データマーケティングについては、出店社にプロモーションの効果検証をフィードバックできる点で高い評価が得られると期待しています。そもそも、実店舗でのプロモーションに興味はあっても、効果検証できないことを疑問視されている企業は数多くいらっしゃいます。今回の「&found」でのデータマーケティングで得られる効果検証は、そういった企業の懸念を払拭する答えとして提示できるのではないかと考えています。

DNP:年々ECの比率が高まるなか、新商品との出会いの機会が減少していく現状において、今回の「&found」では入店者からたくさんの貴重なご意見をいただくことができました。例えば、ノンアルコール飲料などは、品質の高い商品が多数登場しているのに、ともすると市場形成段階でネガティブな体験をしてしまい、そのままの印象を持ち続けている方がいます。「&found」で試飲いただいた大半の方からは「ここまでおいしくなっているのか」「甘過ぎなくておいしい」「新しいカテゴリーとして良いね」など、非常にポジティブなご意見を頂戴することができました。

同時に「もっとこうしてほしい」「こうやったら買いやすいよね」といった、今後の参考になるご意見もいただきました。これらは、まさに当社が狙っていたデータマーケティングであり、各出店社に価値ある効果検証をレポートとして提供できると考えています。JR-Cross 様から課せられたデータマーケティングの面では、微力ながら貢献できたのではないかと自負しているところです。

「&found」の取り組みを通じて事業化をめざす

Q. 「&found」の今後の展開をお聞かせください。

JR-Cross 播田氏:DNPさんがおっしゃるように、当社としても出店社にレポートをフィードバックすることで、価値を感じていただけると考えています。そういう意味では、「&found」の取り組みを通じて事業化の道筋が見えてきたと実感しています。ただし、実証実験は上野と東京のエキナカという前提条件が大きな要素でした。

「Beyond Stations構想」は、駅周辺を「暮らしのプラットフォーム」へと転換する構想ですから、エキナカに限定しているわけではありません。つまり、我々としては「&found」をエキナカだけでなく、エキナカ以外の場所でも通用する仕組みにしたいという想いがあります。そこで重要になってくるのは、やはりデータマーケティングです。引き続きDNPさんと共創しながら、データマーケティングの力を磨き、知見やノウハウを蓄積していきたいと考えています。

DNP:我々は、DXを手段として最高のCXを実現するパートナーをめざしています。ひと言で言うなら「DX for CX」。お客様にいかに素晴らしい体験を提供できるか、それがあって初めてマーケティングにおいてお客様のお役に立てると考えています。

播田様がおっしゃるように、東京駅での「&found」を経て、ようやくマネタイズ、事業化という道筋が見えてきた気がします。我々としても、ひとつの場所にとどまることなく、どんな場所においても最適な顧客体験をリードできるように、これからも取り組んでまいります。

Q. 最後に、JR-Cross様からDNPへ今後の期待をお聞かせください。

JR-Cross 播田氏:我々のアイデアをくみ取り、「サービスデザインラボ」や「DNP店舗内CX解析サービス」、店舗運営力など結集し、「&found」を具現化したDNPさんの総合力は本当に素晴らしいものでした。当社にとっての最適なソリューションを考えるという点で、これからもDNPさんの力は欠かせないと実感しています。引き続き、ぜひ力をお貸しください。よろしくお願いいたします。

株式会社JR東日本クロスステーション 様

「NewDays」などのコンビニエンス事業や専門店事業などを展開するリテールカンパニー、
「いろり庵きらくそば」「ベックスコーヒーショップ」や「駅弁屋」などの飲食・食品製造事業を中心に展開するフーズカンパニー、「From AQUA」などの飲料商品開発や自動販売機事業を行うウォータービジネスカンパニー、「エキュート」や 「グランスタ」などのエキナカ商業施設を展開するデベロップメントカンパニーの4つのカンパニーで構成されています。

[Webサイト] https://www.jr-cross.co.jp/

※2023年4月時点の内容です。

未来のあたりまえをつくる。®