サステナブルな暮らしとデザイン Vol.4 アメリカ 後編

DNP生活空間事業ではこれまで、イタリアや北欧のライフスタイル、デザイントレンドを発信してきました。今回は、経済大国のアメリカから、ニューヨーク、ロサンゼルス、ハワイを視察した内容を、前編・後編に分けてご紹介いたします。

前編では、DNP生活空間の社員がニューヨークを視察した様子をご紹介しました。後編ではロサンゼルス、ハワイをご紹介します。

Los Angeles Hawaii



西海岸スタイルを体感する

ロサンゼルスでは、ファッション、フード、スポーツなど新たなトレンドが続々と誕生しています。そのトレンドは日本の市場にも影響を与えています。特に、日本でも長年トレンドが続く西海岸風インテリア。このインテリスタイルの火付け役となったRon Hermanは、ロサンゼルスのメルローズアベニューで生まれたブランドです。また近くには、ピンクの外観が話題になったPaul Smithのショップもあります。

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Paul Smithの外観はピンクのラッピングがはがれたようなペイントデザインで、シグネチャーストライプが覗いていました。



西海岸の大きな魅力のひとつといえば、ビーチ。サンモニカビーチからベニスビーチ、ロングビーチ、そして更に南下していくと、海岸線はメキシコに繋がります。サンタモニカは、海沿いのリゾートらしい開放感と、メキシコを想わせる彩り豊かなカラーが融合し、アクティブな印象のデザインが目立ちました。

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サンタモニカ ピアには小さな遊園地があります。とにかくカラフルでポップ! レトロアメリカンなテイストでした。



ロサンゼルスはスポーツジムや新たなフィットネストレーニングが生まれる街としても有名で、トレーニングできる環境が身近に溢れています。サンタモニカビーチからベニスビーチの海沿いには自転車用レーンが設けられ、自転車だけでなくローラースケートやキックボードに乗って、気持ちよく駆け抜けている人が多くいました。砂浜には鉄棒や吊り輪、ヨガができる芝生も設けられ、沢山の人々がトレーニングに勤しんでいました。

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スケートボードやローラスケートで颯爽と走り抜ける人々が沢山いました。これぞアメリカ!という雰囲気ですね。




ロサンゼルスの最新トレンドをキャッチする

Abbot Kinney

ベニスビーチから歩いて15分ほどのところにあるAbbot Kinneyはカリフォルニアならではのオシャレなショップやレストランが数多く並ぶストリートとして注目されています。低層の建物が並ぶこのストリートは、オープンエアーで開放的な店舗が多く、歩いているだけで沢山のデザインにふれることができます。

カジュアルでスタイリッシュなデザインに、メキシコを思わせる華やかなカラーが加わったインテリアや洋服、アクセサリーをよく見かけました。私も素敵なラグを購入しました!




Gorjana Jewelry

Gorjana Jewelryはカリフォルニア発のジュエリーショップです。シンプルで重ね付けできるジュエリーを手軽な価格で展開しており、人気を集めているブランドです。 Abbot Kinneyの店舗は、白を基調に、ライトグレージュのオーク材やラタンのチェア、真鍮、ドライフラワーを組み合わせた明るく洗練された空間です。エフォートレスでありながらラグジュアリーさも感じるジュエリーのデザインがショップのインテリアと調和し、心地よい空間でした。

Gorjana Jewelryはサステナビリティにも力を入れています。ジュエリーを永く使用できるサポート「Happiness Guarantee」が用意されています。売り上げの一部を慈善団体に寄付するプロジェクトが開催されることもあるようです。




世界的に注目されているヴィーガンカフェ

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地元の人々にも愛されているヴィーガンカフェ The Butcher’s Daughter は、自らを「野菜のお肉屋さん」と例え、果物と野菜をまるで肉であるかのように調理し、提供しています。地元の有機農場から農産物を購入し、コミュニティの持続可能性をサポートしています。



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開放的な店内はアンティークな装飾品や家具でコーディネイトされています。壁面から天井にかけては、ホワイトブリックに古木のホワイト塗装で構成。またアイアンレールにはさまざまなデザインのプランターが船用ロープでハンギングされ、海辺の立地を活かしたデザインを見ることができます。ソファの張地に使われているデニムブルーと、カウンターの腰壁に使われている幾何学パターンのタイルが空間のアクセントになっていました。お手洗いもホワイトをベースに植物や小物で素敵なデコレーションがなされていました。



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ボリューム満点のCLASSIC BUTCHER’S BURGERも、もちろん肉は使われていません。パテにはマッシュルームやえんどう豆を使用したakua社のオルタナティブミートが使われています。
また店内では、オーガニックでサステナブルな食品、調味料、ボディーケア用品に加え、生花も販売されていました。

旨味がしっかりと感じられ、通常のハンバーガーと同様の満足感を感じることができました。日本ではあまり見かけない、フィンガーリングポテト(小さなジャガイモ)はイモの香りが強く、ローズマリーとの相性も良かったです。




レトロとモダンが融合するダウンタウン

Downtown Los Angeles

歴史的な古い建物と、スタイリッシュな高層ビルが共存するダウンタウン。映画やドラマでもよく登場する世界最短のケーブルカーや、話題の食が集まったグランドセントラルマーケットなどがあります。

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2021年に開業したApple Tower Theatreは、歴史的な映画館をコンバージョンして開業しました。建築家 S. Charles Leeによって1920年代に設計された、ネオバロック様式の建築です。特徴的な外観デザインは、時計塔が最上部に設置され、遠くからでもシアターを視認できるようになっています。

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パリのオペラ座から着想を得たと言われている美しいロビーを進むと、大きなドーム天井が広がります。白を基調にしたエレガントな空間に、天井や出窓を装飾するレリーフパターンが美しく空間を包み込んでいます。

歴史的な建築物と、最先端のテクノロジーを搭載したアップル製品との対比が非常にユニークな店舗でした。



The Last Bookstoreはカリフォルニア最大級の新書・古本・レコードを扱うショップです。このショップはペーパーレス、デジタル化が進む現代の中で、紙の本やレコードを復活させたいという思いで2005年にスタートしました。現在の店舗は、銀行が入っていた建物をショップにコンバージョンしています。金庫室をそのまま残して本のディスプレーに活かすなど、銀行らしい面影が強く残っています。

The Last Bookstore

店内には本を使ったユニークなインスタレーションが行われていてフォトスポットが沢山あります!




観光客とともにサステナビリティを加速させるハワイ

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コロナ禍で観光客が減ったハワイ、オアフ島では海の透明度が増し、きれいになったことが認められています。これを好機ととらえ、観光客がハワイの歴史や文化を知りながら、それらを一緒に保全していく責任を担う、レスポンシブル・ツーリズムの「マラマ ハワイ」が展開されています。マラマはハワイ語で「思いやりの心」という意味です。

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オアフ島のKailuaにオープンしたprotea zero wasteはプラスチックや有害物質による環境破壊問題に対応した、天然素材のシャンプーや洗濯洗剤を扱うバルクショップです。持参した容器(店内で購入も可能)に、好きな商品を好きな量だけ購入できます。商品は地元ハワイで製造されたものや、ハワイのベンダーをサポートする商品を扱っています。商品カテゴリーは幅広く、日焼け止め、固形のシャンプー、ステンレスクリーナーやペット用のシャンプーも販売されています。

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店内はライトカラーの木質や籐を使ったナチュラルテイストです。お店のロゴや店内インテリアの一部にカッパーを使用し、オレンジピンクのメタル色が空間のアクセントになっていました。

店内で容器を購入し、ハンドソープとボディークリームを購入してみました。植物やハンギングチェアなど空間からもウェルビーイングを促すような雰囲気を感じました。



THE SURFJACK HOTEL AND SWIM CLUB

フォトジェニックなホテルとして日本人にも人気のTHE SURFJACK HOTEL AND SWIM CLUB。ホテルの中にあるプールサイドには、サンゴ礁に優しい日焼け止めクリームを提供するサーバーが設定されています。ハワイでは2021年よりサンゴ礁に有害な成分を含む日焼け止めの販売・流通が禁止されています。また全客室にはオリジナルのエコバッグが置かれ、滞在中のショッピングに活用することができます。



INTERNATIONAL MARKET PLACE

ワイキキの中心地にあった屋外ショッピングモールのインターナショナルマーケットプレイスは2016年にリニューアルオープンしました。かつては大きなバニヤンツリーの下に、たくさんの屋台やショップが並ぶ、賑やかで異国情緒が感じられるようなエリアでした。リニューアル後も、沢山の植物がかつての面影を残し、ハワイの自然と近代的な建物が融合した空間として生まれ変わりました。モール内の天井や壁面には、一部当社のアートテック ®が使われています。

ワイキキビーチにも近く、観光客の人は必ず一度は通るところにあります。ハワイに行かれた際にはぜひチェックしてみください。




身近なところからサステナブルな取り組みを

REUSABLE BAG   My bottle

ニューヨーク、ハワイでは2020年から全てのプラスチック製の袋の配布が禁止になりました。ハワイのABCストアの袋も、ペットボトルのリサイクルによる不織布のリユーザブルバッグに変更されていました。写真は、ニューヨークのスーパーで購入したリユーザブルバッグです。
また、空港でもサステナブルな取り組みを見つけました。給水スポットが沢山あり、ほとんど人がマイボトルを持ち歩いています。ホテルによってはプレゼントとして客室にオリジナルデザインのマイボトルが置かれているケースもあるようです。

リユーザブルバックは丈夫なうえ、デザインも素敵で繰り返し使いやすいなと思いました。

アメリカではごみの分別やリサイクルといった身近な取り組みから、サステナビリティを自分ごととしてとらえてもらえるよう、少しずつ変化が起きているそうです。




アメリカ視察をふりかえって

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アメリカは、おのおのが自由なライフスタイルを送っている印象があったのですが、近年は世界的なサステナブルなトレンドに並走できるよう、企業や建築家がアクティブに働きかけている印象を受けました。積極的に新しいアイデアを取り入れて、アジャイルな姿勢で、みながそのトライ&エラーを楽しんでいるように感じます。

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また「人種のサラダボウル」と言われているように、アメリカではダイバーシティ(Diversity)の概念は一般化し、現在は公平性(Equity)と包括性(Inclusion)の意味を含めたDEIの動きが加速しています。一人ひとりがアイデンティティをしっかり持ち、自己表現することを厭わず、またそれを他者がリスペクトする関係性を大事にしています。どんな人でもとり残されることがないような社会にするために、全方位な取り組みだけでなく、マイノリティに対するサポートも加速しているのがアメリカらしいところなのではないでしょうか。



さまざまな制限に耐えざるを得なかった数年を乗り越え、新しい時代の中で開放感に満ち溢れた人々の幸福感や価値観は、確実に変化しています。今まで土地や文化によって独自性をもっていたその方向性が、この数年で同じ方向を向き始めています。「この世界にいる全ての人、生物にとって優しい社会であること」は、インテリアやデザインにも大きな影響を与えています。その変化に、私たちも楽しみながら追従できるよう、そして時には一歩先を行く先進的な提案ができるよう、取り組んでいきたいと思います。

※アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です



2022年12月時点の情報です。

取材、撮影&テキスト

ミラノサローネなどの海外展示会や北欧のライフスタイルをリサーチし、トレンド情報を発信するセミナーやWebでのレポート記事を執筆している。またDNP 5Stylesの企画やコーディネイト提案にも携わる。
関連資格:インテリアコーディネーター、プロモーショナルマーケター

Chihori Kunito


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アメリカの空港内のトイレの隣に、Pet Relief Areaというスペースがありました。心理的な支えのためにサポートドッグドッグを連れて飛行機を利用する人が増えています。空港の外ではなく、人間用のトイレと並んでPet Relief Areaが設けられるケースが世界的にも増えてくるのかもしれませんね。

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