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EXPO2025 × DNP GOLD PARTNER

共に未来をつくる
EXPOストーリー

【第1話】コンテンツIP活用ソリューション

万博という共創の場でマンガの魅力を世界に届ける

DNPは、IP(知的財産)※1を活用したビジネスを展開し、これまで多数の実績を積み上げています。その知見を活かして、「万博という特別な舞台で日本が誇る“マンガ”文化を多くの人々に届けたい」という想いから、人気作品とコラボレーションした商品を開発するプロジェクトを立ち上げました。
このプロジェクトでは、世界的な認知度とファン層を持つIP=「マンガ」を活かしたコラボレーションを推進。その世界観を活かし、万博を訪れる世界中の人々に日本文化に親しんでもらえる商品を開発しました。Tシャツやキーホルダー、ポスターなどのグッズとして販売するほか、DNPデジタル高精細複製「伝匠美®」※2による屏風絵にして店舗に特別展示するなど、すでに話題を呼んでいます。世界中のマンガファンを魅了するこの企画の狙いなど、3名のプロジェクトメンバーに聞きました。

アート・マンガ・キャラクター・ブランド・デザインなど、創造的活動で生み出される知識や情報などの財産的な価値を持つもの。

文化財の“保存と公開”の両立を目的にDNPが開発した高精細な複製の技術でありその制作物のこと。DNPの登録商標。

プロフィール

大日本印刷 出版イノベーション事業部 岩浅 好徳(いわあさ よしのり)

ビジネスオーナーとして企画・実行・収支管理のすべてを担う。自らの商品を開発して販売することに、製造~納品だけで終わらない苦労とおもしろさを感じている。

DNP出版プロダクツ 佐藤 亮一(さとう りょういち)

営業として版権元の出版社への提案・権利許諾交渉・調整などを行う。厳しい目を持った担当者を相手に、IPへの理解やこの取り組みの意義などを真摯に説明し、信頼関係を構築。

大日本印刷 情報イノベーション事業部 黒井 智之(くろい としゆき)

クリエイティブディレクター。マンガという文化を広く発信し、その価値をアップデートすることを目指して、デザインコンセプトを構築。PR(Public Relations)計画も担当。

日本が世界に誇る原作マンガの魅力を発信

――最初に、このプロジェクトを始めた経緯を聞かせてください。

岩浅

私たちの長年のパートナーである出版社は、アニメやゲームなどの原作としても使われる“コンテンツの原点”となる原作マンガをIPとして有しています。それは日本が世界に誇る文化的で普遍的な価値のある財産です。ただ、その魅力はまだ世界に広く届いているとは言えません。DNPとして今回、大阪・関西万博のオフィシャルストアの目玉となる商品の開発を考えた時、万博という”ワクワク“の場で、公式ライセンス商品として、世界に、そして未来に、マンガの価値を届けたい。そこには、これまでDNPが培ったコンテンツIPの活用ソリューションの知見を活かせると考えました。

――コラボ作品は、『DRAGON BALL』や『らんま1/2』など1980年代から人気の作品もあれば、比較的新しい『七つの大罪』もあり、幅広い世代に刺さるラインナップです。作品はどのように選定したのですか。

岩浅

万博が“ワクワク”を提供する場であるように、読んだ人に“ワクワクする瞬間”を提供してくれる作品がいいと考えて、各版権元に声を掛けていきました。

黒井

また、万博はターゲットの裾野が広く、海外からの来場者も多いので、世代を超えて、そして、国や地域を超えて評価される作品をと考えました。狙い通り、幅広く多くの皆さんにアプローチできていると感じています。

原作マンガを楽しんだ記憶を呼び起こすデザイン表現に

――「屏風絵×原作マンガ×万博のデザインシステム※3」という発想がユニークで、唯一無二のコラボレーションという印象を受けました。原作マンガのシーン(コマ)を入れた商品というのも珍しいですね。

黒井

メインとなるビジュアルは、「マンガの世界」をコンセプトに、日本古来の屏風絵から着想を得て、万博のデザインシステムと融合したデザインにしました。これを考えるにあたってはまず、ファンの体験として何を提供できるかを模索し、商品を通じて「マンガの世界」に没入する体験をしてもらいたいと考えました。ファンの心を動かすのは、「あのシーン良かったな」とか「あのセリフにグッと来た」といった原作マンガをそのまま楽しんだ記憶だと思うんです。そんな記憶を呼び起こすデザイン表現を目指しました。
コマ割りや書き文字は原作マンガの表現の独自性であり、作家さんが綿密に計算して、作品として完成させているものです。それを活かすことで、万博にあふれているさまざまなコラボレーションの中でも、異彩を放つ商品になると考えました。今回は作品の中から数百コマというシーンを選定していて、主役以外のキャラクターもたくさん登場しています。好きなキャラクターやシーンを探して楽しんでもらいたいなと思います。

佐藤

私は今回、原作マンガの絵のパワーをあらためて感じました。アニメの絵もいいのですが、作家の先生方が心血を注いで描いている原作マンガの絵はさらに力強く、どんなデザインシステムと組み合わせてもしっかり際立つんですよね。コマの使用については、出版社のアドバイスも取り入れています。境界線としてコマの枠線をしっかり入れるとか、吹き出しや書き文字を効果的に使うなど。その結果、マンガの魅力をより効果的に表現できたと思います。

万博全体を統一感のある世界として体験してもらうためのデザインのルールや基準など。

マンガと高精細複製「伝匠美」のコラボはDNPだからできること

――DNPの高精細複製「伝匠美」とマンガのコラボは初めての試みです。これはDNPだからこそ提供できる価値と言えるのではないでしょうか。

岩浅

海外からの来場者も意識したビジュアルを取り入れたいと考え、「DNPだからこそできること」を模索する中で、「伝匠美」のコンセプトがマンガにつながり、金屏風の世界観とも合うと考えました。

佐藤

DNPの技術力を活かしたコラボレーションができるということは、出版社にとってはDNPを選ぶ理由の一つになります。それに加えて、今回は企画コンセプトやデザイン表現も携えて丁寧に説明したことによって、実現できたプロジェクトだと思います。

黒井

マンガの価値をアップデートするという観点からも、良い意味で“違和感”がある表現が必要だと感じていました。今回の万博で示した「マンガの世界」のデザインコンセプトはもともと屏風絵から着想を得ていますし、このコンセプトと合致した表現方法だからこそファンに届き、価値を高めることができるんです。商業的な思惑はファンに看破されますからね。

高橋留美子先生の作品は、写真の『うる星やつら』、他にも『らんま1/2』、『犬夜叉』の3作品がコラボグッズに
鈴木央先生の『七つの大罪』ともコラボレーションが実現

IPを世界に届けるノウハウと実績で、今後の出版IPビジネスをリード

――このプロジェクトは皆さんにとってどんな挑戦でしたか。苦労したことや成長を感じたことなども教えてください。

佐藤

複数の大手出版社との交渉に臨んだことで、出版業界におけるIPビジネスを俯瞰して捉える力が身に付きました。「出版IPビジネス」は出版社との信頼関係が重要になりますが、今回パートナーとして良い関係を構築できたので、今後新たな取り組みを行う際もスムーズに進めることができると思います。

黒井

原作の可能性を追求し、マンガというカルチャーをDNPの提案力で世界に発信していく。それを大命題として、使命感を持って取り組んだ今回のプロジェクトは、確実にDNPの“レガシー”として活用していきたいと思います。いまやIPビジネスは競合が多い“レッドオーシャン”ですが、今回の取り組みも「出版IPビジネス」の市場でDNPが一歩リードする強みにしていきたいと考えています。

岩浅

今回、マンガの魅力を世界に届けることをミッションの一つに掲げていますが、果たして実際に届けられているのかどうか……。「結果を出す」というフェーズが現在進行中で、そこに最も苦労しています。ただ、黒井さんが言うように、この取り組みをDNPの“レガシー”として残し、DNPがさまざまなIPを世界に届けるノウハウを持っていることを知っていただく機会にしていきたいと思っています。

――今後、どんなことに挑戦したいですか。

岩浅

今回は、万博という国際的なイベントと、出版社からお預かりする原作マンガというIPの大きなコラボレーションであり、それならではの苦労はありました。ですが、万博とマンガ双方の魅力を掛け合わせることができたのは、多様な役割を果たせるDNPだからこそだと思います。多くの社内の部署、そして社外のパートナーのそれぞれの強みをDNPが主導して一つにまとめることで、他にはないコラボレーションが実現しました。今後は、万博という場以外にも広げ、またマンガに限らず“出版”の持つあらゆる魅力や可能性を対象として、「DNPならこんな価値の変換ができるんだ」と思ってもらえる活動に、この経験を活かしていきます。

伝統工芸と現代文化の融合を叶える「伝匠美」の技術

DNPデジタル高精細複製「伝匠美」は、DNPが1999年から取り組んでいる文化財やアート作品の複製の技術です。これまで困難とされていた「金箔上への直接印刷」も可能にし、金箔上の絵画の部分や古色※4を忠実に再現します。この技術が高く評価され、大乗寺(兵庫県)の円山応挙作品や知恩院(京都府)の金碧障壁画をはじめ、多くの実績を重ねてきました。
この「伝匠美」の技術を多様な分野に応用できないかと考えていたところ、今回のマンガとのコラボレーションが実現しました。「2025大阪・関西万博 会場内 オフィシャルストア 東ゲート店 MARUZEN JUNKUDO」に展示している屏風は、金箔の上に実際に印刷しています。金箔という日本の伝統工芸と、マンガという現代の日本文化の融合という、他に類を見ない表現を叶えました。本物の金だけが放つ光沢や風合いと、マンガのキャラクターたちが躍動する姿を万博会場でぜひ体験してください!

時間の経過とともに自然に生まれる風合いや色合い。

DNPグラフィカ
「伝匠美」 金箔印刷 マイスター
江口 浩二(えぐち こうじ)