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プライバシーステートメント
学芸員レポート
<新執筆陣>
札幌/鎌田享青森/立木祥一郎福島/伊藤匡|東京/住友文彦|豊田/能勢陽子大阪/中井康之
山口/阿部一直
<旧執筆陣>
札幌/吉崎元章福島/木戸英行東京/増田玲東京/南雄介神戸/木ノ下智恵子高松/毛利義嗣
福岡/川浪千鶴
「アート・ミーツ・メディア――知覚の冒険」展/
Can you see me now?/横浜トリエンナーレ
東京/NTTインターコミュニケーション・センター(ICC) 住友文彦
2005年担当の企画および抱負
 実は、もうすでに始まっている「アート・ミーツ・メディア――知覚の冒険」展を担当している。この展覧会は、ICCができる前に作られ、かつよく知られた「インタラクティヴ・アート」作品からICCのコレクション、それからもっと最近の作品までを網羅し、1989年以降のメディア・アートを振り返ることと、GPSや電波、レコードなどの異なるメディアや、サウンド・アート、ネット・アートから社会性の強い作品まで、この分野がどれだけ多様な展開を見せているかを紹介する「入門編」的な役割を意識して企画されている。その背景には、ここ数年様々な大学でメディア・アートを教える学科などが設立され、芸術祭やイヴェントなども増えているなかで、あらためてメディア・アートとはどんな分野なのかを考える必要が生じてきているからである。いまや一般の美術館や展覧会でもメディア・アートを扱うようになるなかで、この分野を特殊なものとして自律化させずに、様々な経歴や専門性を持つ人に開かれたオープンな分野としての可能性を試していく時期に来ているのではないだろうか。会場には年表やキーワードによる解説、ネット・コミュニティなどの紹介があり、これまでこの分野にあまりなじみがなかった人もこれを機にメディア・アートに関する情報を一気に受け取れるお得な展覧会だ。足を運べない人にも、2月22日〜27日まで行なわれるイギリスのグループ、ブラスト・セオリーによるオンラインと実空間のあいだで行なわれる追跡ゲーム「Can you see me no w?」は、どこからでもネットに接続さえすれば参加できる。
 その後は、来年の同じ時期に向けて日本の戦後美術とテクノロジーをテーマにした展覧会の準備に没入する予定。今年はほかにも、ソウルのアート・スペースLOOPがリニューアル・オープンする開館展の企画、アルス・エレクトロニカ(リンツ、オーストリア)・インタラクティヴ・アート賞の審査員などに関わっている。
 
2005年の気になる展覧会、動向
 ここ最近は、アジアのアートシーンに関する情報が耳に入りやすくなり、また実際に筆者自身が足を運ぶ機会にも恵まれた。そのため、少しずつだが欧米中心だった美術の見方に変化が生じてきているのを感じる。おおまかに言うと、美術館や美術大学、ジャーナリズム、ギャラリー、コレクターなどの制度が成熟していないこれらの地域においては、現代美術が担う役割を欧米のそれとは違うものとして切実に模索しているように思える。それは日本においても本来は同様なはずだが、ある程度まで諸制度ができあがっているようにみえるので真剣に問われていないのではないだろうか。
 特に気になる日本の動向が二つある。ひとつは、作品のプロダクションへのサポートが少ないことである。アーティストに資金の援助をするだけではなく、一緒に制作に取り組む姿勢で新しい試みを喚起させる条件やリサーチの機会を与えるような団体や企画がもっとあっていいのではないだろうか。作品を持ってきて展示する、ただそれだけの循環が続くだけでなく、リスクを背負いながらより面白い作品が生まれる場をもっと増やさないといけないのではないだろうか。もうひとつは、よく言われることだが批評の欠落である。専門家同士がそれぞれの見解を実直に交わす媒体やシンポジウムなどがまだまだ足りないと思う。またさらに、専門家が一般の人に語りかける機会も増やさないといけないだろう。
 そういう意味で、良くも悪くも準備の舞台裏に注目が集まり、美術界のグローバル化やキュレーターシップなどの問題点が浮き彫りになった横浜トリエンナーレは、やはり気になるし、期待したい。

プロフィール
スパイラル、金沢21世紀美術館を経て、現在はICCのキュレーター、及びNPO法人A.I.T.のメンバー。「アウト・ザ・ウィンドウ」展(国際交流基金アジアセンター)、「リアクティヴィティ」展(ICC)などを企画、主な共著に「身体の贈与」『表象のディスクール6 創造』(東京大学出版会、2000年)、「映像の中へ」『21世紀の出会い―共鳴、ここ・から』(金沢21世紀美術館、淡交社、2004年)など。
[すみとも ふみひこ]
<新執筆陣>
札幌/鎌田享青森/立木祥一郎福島/伊藤匡|東京/住友文彦|豊田/能勢陽子大阪/中井康之
山口/阿部一直
<旧執筆陣>
札幌/吉崎元章福島/木戸英行東京/増田玲東京/南雄介神戸/木ノ下智恵子高松/毛利義嗣
福岡/川浪千鶴
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