ヤンマーホールディングス株式会社 様

YANMAR FESTIVALで実現した、
幅広いステークホルダーとの「共創」のインナーブランディング
満足度99%を達成した体験型コミュニケーションの裏側

グローバルに事業を展開するヤンマーホールディングス株式会社(以下、ヤンマー)様は、従業員エンゲージメントの向上をめざし、2021年から社内イベントYANMAR FESTIVALを開催してきました。コロナ禍で失われた従業員同士のつながりを取り戻すため、オンラインイベントとしてスタートしたこの取組みは、年を重ねるごとに進化を遂げ、2024年には参加者1万人超、来場者アンケートでは満足度99%を達成。

その背景にあったのは、DNPとの協働による戦略的なインナーブランディング施策です。イベントを通して、どのように体験型コミュニケーションを設計していったのか、ヤンマーホールディングス株式会社 マーケティング部の岩本絵里奈様と、プロジェクトを担当した大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部の小椋久彰に、プロジェクトの裏側を伺いました。

※所属・肩書などは、2026年2月(本記事制作時)のものです。

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根底にあるのは「HANASAKA」の価値観。共感を軸に、従業員エンゲージメント向上に注力。

——まずは、お二人の担当業務についてお聞かせください。

岩本様: 2015年に新卒で入社して以来、社内広報を担当しています。社内報の編集やイントラネットでの記事配信を中心に、全国で行われているイベントの撮影や記事の執筆を行ってきました。最近では、四半期に1回発信する業績メルマガの配信や従業員専用アプリ(HANASAKAアプリ)の立ち上げ・運用、YANMAR FESTIVALの企画・運営などを担当しています。

小椋: 企業のコーポレートコミュニケーションや周年関連のブランディング案件で、プロジェクトマネージャーを務めています。DNPでは、サービスデザイン手法を用いたインナーブランディングや組織活性化のプランニング、ファシリテーションにも取り組んでおり、2023年からはYANMAR FESTIVALのプロジェクトマネージャーとして、ヤンマー様に関わっています。

――ヤンマー様で大切にしている価値観を教えてください。

岩本様: 当社は現在、グローバル化が加速し、多様なバックグラウンドをもつ人材が活躍しています。その根底にあるのが、「人の可能性を信じて挑戦を後押しする」「一人ではなく支え合って花を咲かせる」という思いを表した価値観「HANASAKA」です。

創業114年を迎えた当社は、売上の約6割を海外が占め、農業だけでなくエネルギーやインフラなど、地球や暮らしに貢献する領域まで事業を広げています。こうした幅広い事業展開の方向性を示しているのが、ブランドステートメント「A SUSTAINABLE FUTURE―テクノロジーで新しい豊かさへ。―」です。

そのなかで重要視しているのが、社内外・国内外のあらゆる人々をひとつのステークホルダーと捉え、周りを巻き込みながらブランドを育てていく 「インクルーシブブランディング」 という考え方です。「共感」を軸に、従業員のエンゲージメント向上などの取組みに注力しています。

インタビューカット_ヤンマー様

ヤンマーホールディングス株式会社 マーケティング部 岩本絵里奈様

全社向けイベントを 3年間続けるなかで見えた成果と課題。

―― YANMAR FESTIVALは、いつごろから始まったのでしょうか?

岩本様: コロナ禍で在宅勤務が浸透したことにより、従業員同士が顔を合わせる機会が減ってしまいました。その問題を解消し、従業員が一体感を感じられるような場をつくりたいとの思いから、ヤンマーグループ初のオンラインイベントYANMAR SUMMER FESTIVALを2021年に開催しました。

翌年の2022年も実施しましたが、この2年間は従業員個人が参加して楽しむ内容でした。ただ、当初の目的であった「従業員同士がつながりを感じられる場にしたい」という思いから、2023年は内容を大きく見直すことに。DNP様のご提案を受け、オンラインに加えてリアルイベント・メタバース空間を組み合わせた形で実施することになりました。

小椋: DNPとしては2023年から伴走しています。私たちがお伝えしたのは、過去2年間の取組みや、ヤンマー様が大切にしている「共感」を土台にしつつ、次のステージとして「共創」をテーマに据えたいということ。そのうえで、従業員だけでなくご家族の参加も促すこと、さらに物理的な距離を越え、国内外の従業員や経営層がひとつの場所で対話できる場をつくるために、オンライン・リアル・メタバース空間でのハイブリッド開催をご提案しました。また、その体験価値をより高めるためのツールとして、インナー向けYANMAR FESTIVAL公式LINEアカウントの開設も行いました。

インタビューカット_DNP

大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 小椋久彰

岩本様: 社用端末を持っていない生産現場の従業員に情報が届きにくいといった問題があったのですが、LINEを活用することによって解消できました。また、毎月のキャンペーンやクイズによって双方向のコミュニケーションを意識したことで、最終的にYANMAR FESTIVAL公式LINEアカウントの友だち数は約1,000人に。また、ご家族も閲覧できるオンライン特設サイトで、自分の好きなことをプレゼンするコーナーや各事業所PRなどのコンテンツを用意し、従業員一人ひとりが主役になれる設計を意識しました。

その結果、2023年のYANMAR FESTIVALには、約1万1,000人が参加。前年の3,000人から大きく増加し、手応えを感じました。

小椋: メタバースで経営層の方が従業員の皆様と交流している姿も印象的でした。経営層の方がカエルなどのキャラクターになって、世界中の従業員と積極的に会話を楽しんでくださり、メタバース上だとリアルよりもコミュニケーションがとりやすくなる面もあるのだなと改めて実感しました。

メタバース空間

YANMAR FESTIVAL 2023のメタバース空間

2024年、参加ハードルを下げるべく「体験型」のコンテンツを拡充。

――2023年の YANMAR FESTIVALで成果を実感した一方、まだまだ課題も感じていたのでしょうか?

岩本様: 2023年は参加者数が増えたものの、多くのコンテンツを用意したことで参加者が分散してしまうといった反省もありました。そこで、コロナも落ち着いてきた2024年には、メタバースとリアルイベントに絞り、対面での交流機会を増やす方向にシフト。国内だけでなく海外も含め、複数箇所で実施していこうと計画しました。

小椋: 2023年の特設サイトではログイン情報から、参加者数を把握できる設計にしていたのですが、事業会社や事業所ごとに参加率に大きな差があることがわかりました。周知や参加の呼びかけが拠点の担当者頼みになっていたこと、それほどイベントに積極的ではない方にとっては参加ハードルが高い内容になっていたことなどが要因ではないかと分析。この偏りの解消が、2024年の大きな課題でした。

――その解決のために、どのような施策を行ったのですか?

岩本様: 2024年のテーマは「YANMAR FESTIVAL -CONNECT-」。小さな気づきが一人ひとりの将来の行動となって、より良い社会につながっていく。そんなコンセプトのもと、3つの柱として、「人とつながる」「将来の行動につながる」「未来へつながる」を掲げました。

また2024年は、当社で製作・プロデュースを手がけたオリジナルTVアニメ「未ル わたしのみらい(以下、未ル)」やヤン坊マー坊のリニューアルなど、当社がめざすブランドの方向性を理解してもらうこともイベント実施の目的として追加しました。それを受けて小椋さんからいただいたのが、「ヤンマー未来予報」というガチャガチャのご提案です。

小椋: 2024年は、ヤンマー様のブランディング活動が大きな転換点を迎えていたこともあり、エンゲージメント向上とブランド理解を同時に実現する必要があると考えました。特に興味が薄い人にも振り向いてもらうべく、参加ハードルを下げることが大切だと考え、「体験型コミュニケーション」のコンテンツを提案しました。

例えば、世界各国の事業会社が開催しているイベントに「ヤンフェスブース」を出店し、「ヤンマー未来予報」のガチャガチャコンテンツを用意しました。カプセルのなかには「HANASAKA」の価値観や環境への貢献など、従業員のありたい行動を後押しするようなミッション型のおみくじ「未来くじ」が入っています。

このおみくじの作成には、DNPオリジナルの行動デザインメソッドを活用しています。人間が「したいけどなかなかできない」アクションに対し、行動を後押しするような仕掛けを施しました。「最初に宣言させることでその宣言に従おうとする」「自分の手を加えさせることでより一層の愛着や価値を感じる」など、行動経済学の要素を活用することで、自発的にアクションしたくなるよう設計しました。

ガチャガチャを回すと、「感謝したい人、理由を教えて!」「人の心を動かす自分が、チャレンジしたいビジョンは?」といったミッションが書かれている未来くじが入っており、それをクリアすると景品がもらえる。こうした取組みを各地のイベントで実施し、その様子を特設サイトにアップしていきました。

未来くじ

ミッション型おみくじ「未来くじ」

Webイメージ画像

日本のお祭りをテーマにした特設サイト(10言語対応)

プロジェクトを成功に導いた「細部」へのこだわり。

――プロジェクトを進めるにあたって、心がけたことや工夫したことはありますか?

岩本様: 各事業所が開催するイベントには地域の方々やお子さまの参加も多かったため、ブランドの方向性を訴求するだけでなく、ミッションなどを通して当社について知ってもらうことを意識しました。結果として、ヨーロッパ・アメリカ・岡山・滋賀・福岡・大阪(ヤンマースタジアム長居)・大阪(本社)と国内外で計7カ所を回りましたが大盛況でした。フィナーレを飾った大阪での本社イベントでは、小椋さんのご提案で巨大なガチャガチャを用意。統一感を出しつつインパクトも与えられたと思います。

各拠点(YCE)でのイベントの様子

国内外のイベントで、参加者がガチャガチャを楽しむ様子

各拠点(YA)でのイベントの様子

小椋: コンテンツの随所にヤンマー様らしさを込めることも意識しました。例えば射的ゲームでは、妨害役の的をヤンマー様の建機のデザインにしたり、セレッソ大阪へのスポンサー活動に親しみを持ってもらえるよう、野菜を的にしたサッカーゲームを行ったり。こうした“細部への遊び心”によって、楽しみながらヤンマー様の事業や取組みに触れてもらえるよう心がけました。

岩本様: 以前、家族を巻き込んだ社内イベントを行ったことがあったのですが、そのときはお子さま向けのコンテンツがメインで大人があまり楽しめないという声がありました。それもあり、今回は子供から大人までみんなが楽しめる企画にしたいと考えていました。

小椋: そんなお話も伺っていたので私たちもドキドキしていたのですが、結果は大成功。帰り際に「本当にありがとう」「すごく面白かった」と言っていただいたり、アトラクションを担当していた従業員の方が「私も当社について、はじめて知ることがありました。」と声をかけてくださったり、従業員同士の相互交流や会話のきっかけになっていたことを実感できました。

【動画】YANMAR FESTIVAL 2024_大阪本社イベント(04:49)

アンケートでは99%が「満足」と回答。お二人が語る、インナーブランディング成功の鍵。

――実施してみて、2024年の YANMAR FESTIVALの反響はいかがでしたか?

岩本様: すべてのコンテンツに当社らしさを出したことで、ご家族にも当社のことを知ってもらう機会をつくることができました。

終了後のアンケートでは「とても満足」「満足」と回答した人の割合が、全体の99%という結果に。お子さまからの「楽しかった」といった声だけでなく、「将来こんな会社で働きたい」という声も寄せられました。社内の一体感づくりだけでなく、企業ブランドへの好感度向上や当社への共感といったアウターブランディングにも貢献できたと感じています。また、大阪で行った本社イベントのフィナーレでは、ヤン坊マー坊のフィギュアを含めた豪華景品が当たる大抽選会も実施。参加意欲を高める仕掛けとしてとても効果的でした。

プレゼントのイメージ画像

プレゼント企画のためDNPが作成した、丸型マグネットとヤン坊マー坊のフィギュア
(キャラクターリニューアル後また量産型として、初めて作成したフィギュア)

――今回のプロジェクトが成功に終わった要因は、どういった点にあったとお考えでしょうか?

小椋: ヤンマー様の「HANASAKA」のように企業が持つ本質的な価値観を、従業員が気づきやすく、自然に自分ごととして捉えられるようにすること。そのハードルを下げる工夫がとても重要だと考えています。

多くの企業では、グローバル化やM&Aによって事業が拡大する一方、自社の歴史や文化に根差した本質的な精神が浸透しきらず、結果的に部門間の壁が生まれているという問題が多くあります。そんななかでDNPが大切にしているのは、創業者の思いや企業理念といった「Core Spirit(コアスピリット)」を発掘・可視化し、現代語訳することです。

コアスピリットイメージ画像

DNPが推進するインナーブランディングの考え方「Core Spirit(コアスピリット)」について

そしてそれを押し付けるのではなく、従業員を起点とした体験型のコミュニケーションにすること。会社の本質的精神やスピリットに従業員が共感したうえで行動を促すことが「共創」であり、エンゲージメント向上には不可欠です。

また、人的資本経営やウェルビーイングに資するような体験も重要です。インナーブランディングでは、従業員一人ひとりが情報発信の主体者になります。そのため、従業員の行動が変わることが、社内外に向けたブランディング活動でも効果的だと考えています。

ヤンマー様は、イベントをはじめ、ヤン坊マー坊のリニューアル、「未ル」のアニメ公開など、さまざまな活動をされており、Japan Branding Awardsでシルバーも受賞されています。着々と施策を積み重ねてこられたからこそ、こうした結果に結びついたのだと思います。

岩本様: YANMAR FESTIVALのフィナーレである本社イベントでは、ほかの事業にも協力してもらいました。ヤンマーエネルギーシステムという発電機を展開する事業や、ヤンマーeスターという食品廃棄物を肥料にする事業などからも出展してもらい、事業を理解するコンテンツも企画。事業の垣根を越えて、さまざまなチームの力を借りたことも、成功の一因だと感じています。

今後は、小さくても継続的なコミュニケーション施策を。

――最後に、これからの展望をお聞かせください。

岩本様:  今まではイベントでつながるきっかけを作ってきましたが、今後はそのつながりが日常の行動につながっていく仕組みづくりに挑戦したいと思っています。YANMAR FESTIVALのような非日常のコンテンツで終わらせず、日々の仕事やコミュニケーションのなかで、「HANASAKA」の価値観を自然に感じられるようにしていきたいですね。

また、職種や世代、国を超えて従業員同士がもっと気軽に関われるような、小さくても継続的なコミュニケーション施策にも取り組みたいと思っています。一人ひとりの小さな一歩を後押しし、それが従業員の一体感につながっていく。そんなインナーブランディングをめざしていきたいです。

小椋:  最近、ウェルビーイングを向上させたいというご相談をいただくことが増えているのですが、そのために大切なのは「従業員一人ひとりの主体的な行動」です。それを促すために欠かせないのが、「従業員の目線を合わせる羅針盤」です。

ヤンマー様には「HANASAKA」という価値観がありましたが、企業理念や概念があっても、今の実態に即した表現でなかったり、言葉だけが独り歩きしていて本質的精神を感じにくかったりするケースも少なくありません。DNPでは、その「Core Spirit(コアスピリット)」を発掘するワークショップやファシリテーションをさせていただいていますが、意識しているのは、従業員の皆様が同じ方向を向けるような「体験型のコミュニケーション」にすること。今後も、ヤンマー様のような高い効果を生み出す戦略的なブランディングを提供していきたいと思っています。

インタビュー中のお二人

ヤンマーホールディングス株式会社 様

農業機械・農業施設、建設機械、エネルギーシステム、小形エンジン、大形エンジン、マリン、コンポーネントなどの研究・開発、製造、販売を行い、進化し続ける技術を核に、幅広い事業を通じてより良い未来につながる新しい豊かさの実現に貢献しています。

社名: ヤンマーホールディングス株式会社
設立: 2013年4月1日(創業1912年3月)
本社: 〒530-8311 大阪府大阪市北区茶屋町1-32 YANMAR FLYING-Y BUILDING
資本金: 9,000万円
従業員数: 連結26,671名(2025年3月末時点)

本ページは、2026年2月時点の情報です。

コーポレートブランディングのイメージ画像

DNPでは、企業価値向上につながるコーポレートブランディングの全体構築から、さまざまなステークホルダーに合わせたコミュニケーション活動全般をご支援します。

SDLのロゴ画像

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