司法書士は本人確認に神経を注ぐ ~ID確認システムPRO編~

ネットワーク上における“なりすまし”は、SNSやメール上でその人のフリをして書き込みをしたり、情報発信をするといった行為をいいます。他人のIDとパスワードを入手し、インターネット上で買い物をしたり、ネットバンキングに不正にログインし現金を送金したり、他の口座に紐付けしてチャージしたりするといった詐欺をはたらきます。
不動産取引における“なりすまし”が“地面師”にあたります。
“地面師“は、土地の所有者になりすまして売却しその代金をだまし取ります。
そのため不動産の土地・建物の登記に携わる司法書士は、土地の所有者とする人物が本人であるかを確認し、詐欺に巻き込まれないように細心の注意を払わなければなりません。

厳格な本人確認が身を助ける

不動産売買に関わる司法書士は、登記申請の手続きを正確に執り行うとともに買い主や売り主に対しての厳格な本人確認が義務付けられています。
各種書類の偽装の見逃しや、本人確認を怠るなどの違反行為があり実害が発生した場合には、買い主や不動産業者、金融業者などに損害を与えるだけではなく、司法書士としての信用を失い、さらには罰則や業務停止といった過大なリスクまで負うことになります。

今後、ますます巧妙化する”地面師”の特殊詐欺を回避するためにも「本人確認」に対する十分な対策が必要となります。

不動産売買のシーン

不動産売買のシーン

ではなぜ司法書士は“本人確認”を実施するのでしょうか?

『市民と法No.111「特集 本人確認における身分証明書の真偽を見分ける」』によると、不動産取引に関与する司法書士は、対象者が自然人であれば氏名、生年月日および住所などを確認する必要があり※1、また、登記申請人が登記識別情報を提供することができない場合に、申請人の運転免許証(以下、免許証)、在留カード、特別永住者証明書、旅券(パスポート)、マイナンバーカード(個人番号カード)などを確認して本人確認情報を作成し登記できる制度がある※2ため、本人確認を実施しているといいます。

つまり、取り扱っている業務(不動産取引等)の中で、司法書士として本人確認を実施することが法律(や会則)上取り決められているというだけではなく、他人の依頼を受けて身近な法律問題の業務(登記等)を円滑に遂行するにあたって本人確認を実施する権利が付与されている、ということになります。
※1 犯罪収益の移転防止に関する法律第2条2項44号・第4条1項および各司法書士会会則
※2 不動産登記法第23条、不動産登記規則第72条2項

司法書士が被るリスクとは?

“本人確認”が義務付けられている司法書士がその本人確認を怠った場合、大きく分けて2つのリスクがあります。

1つ目は、戒告や2年以内の業務停止という罰則を科せられるリスクです。司法書士生命を脅かしかねない非常に重いリスクといえます。
2つ目は、犯罪収益の移転を助長して、なりすまし等による不正・不実の登記や不正な法的手続きが起こってしまうかもしれないという社会に対してのリスクです。つまり、“詐欺”などといった犯罪を引き起こすきっかけになったり、法的な手続きに混乱を生じさせかねないのです。

令和2年8月1日から司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律(令和元年法律第29号)が施行され、司法書士及び司法書士法人に対する懲戒処分の権限が「法務局又は地方法務局の長」から「法務大臣」に変更されるのに伴い、多様な事案について、法務大臣の一元的な指揮の下で、より適正・迅速な懲戒を実現するために、「司法書士及び司法書士法人に対する懲戒処分の考え方(処分基準等)」を定めました。*1

不動産登記のイメージ

不動産登記のイメージ

そもそも本人確認とは

司法書士業界における“本人確認”は、「本人の実存性の確認と嘱託内容及び依頼内容の確認のこと」をいいます。つまり、その人が本当にその人であるか?という確認だけではなく、「他人の依頼を受けて身近な法の手続きをする」という司法書士業務の特性上、依頼された内容についての意思の確認も含めたものを「本人確認」と定義しています。*2

後者の依頼された内容についての意思の確認については、まさしく”他人の依頼を受けて”法手続きを行う司法書士にとって要となる部分です。そのため、多くの司法書士にとってはそれほど難しいことではないでしょう。
しかし、前者の”その人が本当にその人であるか”の確認についてはどうでしょうか?
司法書士は身近な法律の専門家ですが、なりすまし等を見抜くプロではありません。
それでも取り扱っている業務上、なりすまし等を見抜かなければならず、その心理的負担は甚大です。

“本人が本人である“とするもう一つの方法

司法書士として独立し事務所を構えても、待っているだけでは依頼人は現れませんので、不動産登記や会社登記といった仕事を得るためには、不動産業者や金融業者への営業、税理士へのアプローチ、住宅相談会等へ積極的に参加するなどして実績と信頼を積み上げ、仕事を獲得していきます。

不動産登記の場合、司法書士は主に不動産業者や住宅ローンなどを貸付けする金融業者から依頼され、登記申請に関わる業務を代行します。多くの場合、決済当日に関係者それぞれが初めて顔を合わせます。買い主、売り主、司法書士そして代金決済のための銀行員の最低4人が立ち会い、銀行の会議室や応接室にて書類の確認等が行われることが多いようです。

上記のシーンで司法書士が一番気を配らなければならないことは、依頼主(不動産業者や金融業者)ではなく、売り主および買い主に対する本人確認です。というのも、現代のデジタル技術やセキュリティ制度下においては本来本人でしか持ちえないはずのものを本物とそっくりに複製できてしまったり、セキュリティの穴を突き、複製ではなく違法に本物を作成し、本人になりすますこともできてしまうためです。

例えば印鑑証明書は、本当の土地の所有者を装って印鑑を作り、実印として不法に登録し、本人になりすまして印鑑証明書を発行してしまえば、これは疑いもなく本物そのものとなります。決済当日、売り主になりすました人物から実印を受け取り、印鑑証明書と照合したとしても、疑いなく本物であるため、実践を積んできた司法書士でも見抜くことはできません。
“地面師”などの不正を働く人物は、ここまで用意周到に準備をしているのです。

では、どうしたら売り主が本人であるかを確認できるでしょうか?

本人であると決定づける方法として、免許証や在留カードといった顔写真付本人確認書類(以下本人確認書類)について注目します。

司法書士は提示された本人確認書類をまず目視で確認します。本人確認書類ごとに偽造を見分けるチェックポイントがあるので、そこを重点的に確認します。

たとえば、とりわけ多く使用される免許証については、記載された免許証番号や、生年月日、有効期限に不審な点がないか確認します。特に、免許証番号や有効期限には特有のルールがあるため、そのルールから逸脱していないか、不審な点はないかを注意深くチェックしていきます。
また、司法書士によっては、いままでの経験を活かし不審な点がないか世間話をしながら確認している場合もあるようです。

記載されている住所情報から話を広げたり、生まれた年の干支を聞きながら、売り主の答えに間違いがないかを神経を集中させて確認しているといいます。
しかし、決済現場では依頼主(不動産業者や金融業者)の手前、あからさまに売り主や買い主を疑うこともできず、また短い時間で判断を迫られることもあり、精神的にも大きなプレッシャーが司法書士にのしかかってきます。

さらに、本人確認書類に関しても、印鑑証明証と同様コピーやスキャンの精度が上がっていて簡単に見破ることが難しくなっていたり、特有のルールを熟知した人物による犯行も横行していることから、上記のような司法書士独自の経験や知識を用いた本人確認では太刀打ちできなくなっている背景があります。

不動産登記の決済までに司法書士が行うおおまかな業務

1)登記事項証明書の取得
2)登記申請書の用意(当日必要事項を記入し完成させる)
3)決済当日に必要な書類の売り主、買い主への手配
 a) 売り主:
 ・登記識別情報の12桁のPW告知依頼
 ・実印の印鑑証明の取得依頼と当日に印鑑証明書と実印の持参依頼
 ・顔写真付き身分証明書の持参依頼
 b) 買い主:
 ・住民票の取得依頼
 ・預り金の用意依頼
4)収入印紙の用意(買い主に事前に用意してもらい登記税の申請に充てる)
5)登記原因証明情報の用意(当日必要事項を記入し完成させる)
6)登記識別情報の保管

地面師のイメージ

地面師のイメージ

大事な業務こそ信頼のおける判定が必要

先述の通り、近年、本人確認書類の偽造が巧妙かつ高精度化しています。さらには、司法書士業務に詳しい弁護士などが犯罪に加担したり、不動産業者と売り主が共謀している犯罪もあり、司法書士が詐欺被害に遭遇する機会も多くなっているようです。本人確認書類が本物か否かの判断を従来通りの質問や目視だけで判断することができず、リスクを避けることが難しくなっています。

本人確認を十分に行っていなかったり、怠っていることが発覚してしまうと、結果的に罰則を受けることがあります。さらに、場合によっては詐欺の被害額も負担しなければなりません。一時の見逃しや判断が司法書士生命を脅かすことになるのです。

司法書士にとって、本人確認は重要な業務の一環であり、取引の大小に関わらず全神経を注いで取り組むべき作業といえます。

本人確認書類の厳格なチェックを実現「ID確認システムPRO」で司法書士の皆様をサポートします

本人確認書類の写し(コピー)と本人確認記録を簡単に作成

ID確認システムPROの見た目は、スキャナー(コピー機)であることから「免許証のコピーを取らせてください。」と説明すれば、顧客に免許証の偽変造判定をしていることは悟られません。さらに免許証の場合はPIN(暗証番号)が不明な場合でも券面情報だけで真贋判定が可能です。
そのため、ID確認システムなら、顧客に不快な思いをさせず、かつ、司法書士が自分の身を守ることを両立させることができます。見た目のメリットを最大限に活用し、スマートに本人確認書類のチェックを行えます。
また、アプリケーション内にある本人確認記録の簡単作成機能により、本人確認の決済シーンでのスピーディーな真贋判定後、スキャンデータから本人確認記録をそのまま作成できます。その場ですぐに本人確認記録が作れることから、万が一事件に巻き込まれた際にも、確実に厳格な本人確認を実施したという潔白証明になります。

コンビニ交付書類の原本確認もその場で簡単に判定(オプション)

司法書士は、本人確認書類の他、印鑑登録証明書をはじめ、自治体が発行する書類が原本であるかの確認を行います。昨今、マイナンバーカード(個人番号カード)の登場により、役所ではなくコンビニの複合機(MFP)で各種証明書の取得ができるようになっています。

コンビニ交付の証明書は、市区町村(地方自治体)の窓口で発行される住民票や戸籍謄本などとは異なり、通常のA4コピー用紙ベースの紙に印刷されるため、用紙の紙質などによる原本確認ができません。

そのため、コンビニ交付の証明書には、原本であることの証明として、赤外線を照射することで浮かびあがる特殊な潜像画像が施されています。

DNPアイディーシステムでは、コンビニ交付の証明書の原本確認用ツールとして、アタッチメント付きの赤外線カメラをご用意し、コンビニ交付の証明書の偽造判定もサポートしています。
※赤外線カメラとアタッチメントは別途購入が必要です。

参考文献:
*1 法務省 司法書士及び司法書士法人に対する懲戒処分の考え方(処分基準等)
*2 「日本司法書士会連合会 2019 11月号(No.573)」特集~不動産登記における本人確認
 *公証人と司法書士による本人確認 司法書士出身者の公証人から見た司法書士の本人確認等の注意点
  熊谷公証役場 公証人 田中 進 著

ID確認システムPROの導入事例(司法書士業界)

横浜リーガルオフィス 代表 大池雅実 司法書士/司法書士・行政書士吉田智個人事務所 代表 吉田智 司法書士

司法書士が地面師などの事件に巻き込まれるリスクを低減するためには、本人確認業務時に、本人確認書類の目視確認や会話によるなりすまし確認にくわえ、「ID確認システム」を使った”デジタルな手法”でより厳格に本人確認を行うことが有効。

司法書士法人 赤羽法務事務所様

不動産売買に潜む“劇場型犯罪”をID確認システムPROでリスクヘッジ。本人確認書類の高精度な真偽判定は司法書士を守る。

ID確認システムPROのデモンストレーション動画(運転免許証編:1分23秒)

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