顔認証とは?「認証」の基礎知識からメリット・活用シーンまで解説!

高セキュアかつ利便性の高い生体認証システムとして、顔認証に注目が集まっています。生体認証システムの導入を検討しており、顔認証の理解を深めたい方もいるのではないでしょうか。 「顔認証とは何か」という基礎知識から有用性・利用イメージまでを知ることで、具体的な導入・運用計画を検討できます。DNPが実現をめざす顔認証マルチチャネルプラットフォーム®も含め 、快適かつ安全・安心な認証システムを導入しましょう。 そこでこのコラムは、顔認証の仕組みやメリット・懸念点、主な活用シーンやDNPの顔認証 サービスについてご紹介します。

2022年10月3日公開

1.顔認証とは

顔認証をしている人のイメージ

顔認証とは、カメラで撮影した動画や画像から目・鼻・口の位置や顔領域の大きさなどの情報を取得し、人の顔を認証して本人確認をする生体認証の一種です。顔認証の他にも、指紋・掌紋・虹彩・静脈・声紋などの生体情報を活用したものも生体認証に含まれます。

顔認証は、建物入口や施設内のセキュリティエリアへの入退管理、チケット購入時の転売防止施策などでも普及してきている認証技術です。また高度な認証用のデバイスを必要とせず、顔をかざすだけという利便性もあって、空港の出入国時の本人確認やスマートフォンのロック解除、Webサービスのログイン認証などにも利用が拡大しています。

2.基礎知識:3つの認証とそれぞれの特徴

顔認証をしているイメージ

認証の要素は知識要素・所有物要素・生体要素の3種類に大別できます。顔情報は生体要素の一種です。ここでは、それぞれの要素を使った認証方式の特徴を解説します。

2-1.知識認証

知識認証とは、暗証番号やパスワードなど、本人しか知り得ない情報(知識・記憶)をもとに本人認証をする認証方式です。キャッシュカードの認証やWebサービスへのログインなど、さまざまな場面で利用されています。

非常に一般的な認証技術ですが、暗証番号やパスワードを知る第三者のなりすましによる認証も容易です。ハッキングやウイルス感染などによる認証情報漏えいのリスクもあり、セキュリティレベルの低さが問題になるケースも珍しくありません。

2-2.所有物認証

所有物認証とは、ICカードやスマートフォン、トークンなど、「本人しか持ち得ない所有物」をもとに本人認証をする認証方式です。入退室管理や行政サービスの利用時など、さまざまな場面で利用されています。

メールや携帯電話番号も個人の所有物であるため、これらとひも付けたワンタイムパスワードやSMS認証なども所有物認証の一種です。

注意点として、物理的な所有物は、偽造や盗難の被害に遭う恐れがあります。こういったセキュリティリスクを排除するために、知識認証と所有物認証を組み合わせた多要素認証を採用する例も増えている状況です。

2-3.生体認証

生体認証とは、指紋・虹彩・静脈・顔など、「本人しか持ち得ない生体情報」をもとに本人認証をする認証方式です。近年さまざまなシーンで盛んに利用されています。

生体認証は例えばスマートフォンなどのデバイスに備わるタッチセンサーやカメラなどを通じ、生体情報で認証する仕組みです。知識認証や所有物認証とは異なり、なりすましが困難といえます。生体情報は盗まれたり紛失したりすることがないので、なりすましは他の要素認証と比べると困難といえます。

3.顔認証の仕組みとは?

顔画像とネットワークのイメージ

顔認証は主に2つの技術の組み合わせによって活用されています。撮影された顔情報の照合と、高度なAIによる判定です。ここでは、顔認証における本人認証の仕組みを解説します。

2つの顔情報を照らし合わせている

顔認証はサーバのデータベース内に事前登録された顔情報と、認証端末で撮影した顔情報を照らし合わせ、一致率が高い顔情報を探します。具体的な認証のプロセスは以下の通りです。

1.カメラで撮影した動画や画像から顔を検出
2.特徴量(目・鼻・口の位置や顔領域の大きさなどを数値化)を抽出
3.登録した顔情報の特徴量とマッチング(照合)

このように顔認証では、顔検出・特徴量の抽出・照合という3つのプロセスを経て本人認証しています。

認証システムの構築にAIが使用されている

顔認証は、普段から人間が相手を判別している方法を、機械で実現したものです。こういったあいまいな計算は機械が苦手とするもので、通常は高精度の本人認証が困難であるため、ディープラーニング(深層学習)を行える高度なAIを用いています。

ディープラーニングとは、大量のデータ(顔情報)を分析して判断基準の精度を上げていく仕組みのことです。これにより、人間が日常的に行っているような顔認証の方法に近付け、システムが瞬時に演算して本人認証します。

4.顔認証を利用する4つのメリット

顔認証をしているシステムのイメージ

顔認証は非接触が好まれる環境でも利便性が高く、高セキュアである上、関連機能を付加できるというメリットを有します。ここでは、顔認証の主なメリットを4つの観点から見ていきましょう。

4-1.非接触シーンでも利用しやすい

衛生面での配慮が必要な環境での本人認証の場合、極力モノに触らないことが求められます。顔認証であればカメラに顔を向ければ済み、認証端末に触れる必要がなく、衛生面に配慮できるのがメリットです。

またマスクで顔が部分的に隠れていても、残りの領域で照合に必要な特徴量を検出し、高精度での認証を可能にします。

4-2.認証に時間がかからない

顔認証ならカメラに顔を向けるだけで瞬時に本人確認を完了できるため、認証に手間や時間がかからない点もメリットです。航空機の搭乗手続きでは、チケットを提示する必要がありますが、顔認証であればチケットを表示する手間もなくものの数秒で認証が完了します。

ウォークスルー顔認証では、認証用のカードなどの取り出しや機器を操作する必要はなく、カメラの前を通過するだけです。

4-3.セキュリティが高い

顔認証は生体情報を用いて本人認証をするため、暗証番号やICカードのように盗まれたり無くしたりする恐れがありません。また顔情報の偽造は非常に困難です。システムによっては2D画像や人形とリアルな人間の違いを判別するため、本人でなければ認証をほぼ突破できません。

このように顔認証は高セキュアな認証技術として信頼性が高く、入国手続きや金融機関のオンライン本人確認(eKYC)でも採用されています。

4-4.機能をプラスできる

顔認証は関連機能を付加できるのもメリットです。コロナ禍で広まった例として、検温機能と組み合わせた顔認証による、検温チェックも同時にできる入館システムが挙げられます。

また虹彩認証と組み合わせ、両目の虹彩情報による高度な個人識別も同時に行い、より強固なセキュリティレベルを実現する認証システムも実現されつつある状況です。このように顔認証は、関連機能を付加することで利便性や認証精度を高められます。

5.顔認証の懸念点

鍵のイメージ

顔認証には多くのメリットがある一方、いくつかの懸念点もあります。例えば条件によっては認証精度が落ち、閾値(しきいち)の調整が必要であることや、顔情報は個人情報として適切に管理する必要があることです。

システムの性能や環境により精度がばらつくことも

顔認証は高精度で人を認証しますが、精度のばらつきもあることは懸念点です。顔認証アルゴリズムや光源などの環境、顔の経年変化や向きなど、さまざまな条件で認証精度に影響が出ることもあります。

虹彩認証と顔認証のマルチモーダル生体認証を採用したシステムには、100億分の1以下の精度で人を判別できるものもあります。

認証において閾値の調整が必要

顔認証は本人拒否や他人受入が起こる場合もあります。本人拒否率と他人受入率は、生体認証の精度として一般的に用いられる評価指標です。

・本人拒否率:本人の生体情報と照合したときに本人が拒否される率。値が低いほど認証精度は高い
・他人受入率:他人の生体情報と照合したときに受け入れられてしまう率。値が小さいほど認証精度は高い

これらの数値は相関関係にあり、100%の認証精度を求めていくことは困難な場合があります。したがって、導入する場所に合わせて閾値を調整することが重要です。例えば、マンションへの入館において、本人拒否率が高いと住人が入館できない事態になりかねません。利便性が落ちてしまうため、認証時の環境を調整したり、閾値を変更したりすることが必要となります。

顔情報は個人情報のため慎重に取り扱う必要がある

認証に用いる顔に関するデータは、個人情報として適切に取り扱う必要があります。顔認証では「顔」という個人情報を扱うことから、利用目的を本人に通知・公表し、同意を得た上で運用することが必要です。本人認証という本来の目的を外れた利用や、顔情報の流用や漏えいが起こった場合、法的に罰せられる恐れもあります。

事前にガイドラインを作成・周知し、顔情報の取り扱いには細心の注意を払い、高セキュアな管理・運用をすることも重要です。

6.顔認証の活用場面シーンとは

顔認識ゲートを通る人のイメージ

顔認証は多種多様なシーンで活用されています。例えば入退室管理や決済サービス、手続き・契約や民間企業のサービスにおける本人確認です。ここでは、顔認証の主な活用シーンを4つの観点から解説します。

施設の入退室管理

顔認証は会社・商業施設・マンションやイベント会場など、施設の入退室管理が必要な場面で活用されています。従来のICカードなど物理的な認証デバイスを用いる方式では、紛失・盗難によるなりすましが起こってしまうため、セキュリティ上のリスクがあります。

入退室管理において認証の手間を軽減するために、利便性の高い生体認証である顔認証の採用例が増えています。

決済サービス

顔認証は実店舗・オンラインショップの決済サービスにも利用されています。一般的な例は、スマートフォンで事前に顔情報と決済のためのクレジットカード情報を登録し、実際の店舗で顔認証決済をするケースです。顔認証なら認証端末の操作やバーコード読み取りなど、ユーザー・店員双方の手間がかかりません。

またクレジットカードの受け渡しや暗証番号を入力する必要がないため、決済情報の不正利用を防ぐ効果もあります。

手続き・契約

顔認証が特に重宝されている領域に、空港での搭乗手続きや入国審査が挙げられます。理由は明快で、知識認証や所有物認証よりもなりすましが難しく、また認証手続きを効率化できるからです。

重要な手続き・契約であるほど高いセキュリティレベルが求められるため、本人確認書類の偽造のような不正利用がされにくい顔認証の活用が拡大しています。

民間企業のサービス

顔認証は民間企業へのサービスでも利用が拡大している状況です。顔データに紐付けて顧客管理をすると、来店・購入などのアクションも一元管理しやすくなります。

サービスへの入会だけでなく、サービス向上やマーケティング分析などに活用できるのもポイントです。

7.DNPが実現をめざす顔認証マルチチャネルプラットフォームとは?

顔認識システムを使っている人のイメージ

DNPは「顔認証マルチチャネルプラットフォーム」の実現をめざしており、安心・安全かつ利便性の高い社会をめざす中で、各サービスのハブ的な役割を担っています。またDNPはこれまで培ってきた徹底したセキュリティ対策を講じている点が強みです。

安心・安全かつ利便性の高い社会をめざしている

DNPが実現をめざす「顔認証マルチチャネルプラットフォーム」は、本人の同意を得て登録した顔画像を共通のサーバに蓄積し、業界横断的にオープンに活用する新しい枠組みです。

これにより、小売店での決済や不動産での契約など日常生活のさまざまな場面で、「手ぶらで」「スピーディに」サービスを利用できる環境の構築をめざします。

顔認証により快適な本人認証を提供し、シームレスなサービスの利用と高いセキュリティ性を実現するものです。

DNPはハブ的な役割を担う

顔認証マルチチャネルプラットフォームにおいて、DNPは各サービスのハブ的な役割を担います。具体的には、サービスを提供する各事業者に合わせた調整や、業務横断的に利用できるプラットフォームの構築・運用・保守などです。

これにより利用企業は、自社のセキュリティを強化しながら、スピーディに認証サービスを立ち上げることが可能となり、当プラットフォームを利用する業務効率化を図れます。また蓄積された情報の相互利用により、新規サービスの実現をめざすことも可能です。

個人情報の取り扱い実績が豊富

DNPには、さまざまプラットフォーム事業で積み上げた豊富な知見があります。金融分野では多くの個人情報を扱ってきました。特に、銀行のオンライン口座開設で利用するeKYC(オンライン本人確認)や、クレジットカード関連での実績が豊富です。

DNPは、ハード・ソフトの両面から、セキュリティ対策を講じています。重要拠点においてはカードによる入退出管理だけでなく、生体要素も使った多要素認証、監視カメラ、有人監視も組み合わせた統制をとっており、オペレーターが扱うすべての入力用PCは外部メディアが接続できないようになっています。

特に重要な情報の保管・アクセスは、暗号化に加えてデュアルコントロール(必ず特定の2人での作業)を行うなど、ハイレベルなセキュリティ管理を行っています。

8.まとめ

顔認証をしている人のイメージ

顔認証は高セキュアで利便性も高い認証技術で、入退室管理からスマートフォンのロック解除まで、さまざまなシーンに活用が広がっています。検温機能や虹彩認証と組み合わせるなど、新しい顔認証システムも開発・社会実装が進んでいる状況です。

DNPは「認証DX」の一環として、2019年より「オンライン本人確認(eKYC)総合サービス」を提供しています。インターネットでの銀行口座開設やシェアリングサービス利用時の本人確認など、さまざまなシーンで本人確認機能を導入できるサービスです。

顔認証システムの活用をお考えなら、セキュアで安心なサービス提供をサポートするDNPにご相談ください。

顔認証マルチチャネルプラットフォームは、DNP大日本印刷の登録商標です。

未来のあたりまえをつくる。®