顔認証のユースシーンは?メリットやシステムを導入するポイントを解説

顔認証は、近年さまざまなシーンで活用されるようになってきています。その顔認証システムがどのように使われているのか、具体的なユースシーンの例やメリットを知りたい方もいるのではないでしょうか。 そこでこの記事では、顔認証のユースシーンを7つご紹介します。顔認証の仕組みや有用性、導入する際のコツを知り、疑問点をクリアにしておきましょう。いくつかの注意点もあるため、あわせてご覧ください。

2022年11月28日公開

1.顔認証におけるユースシーン

顔認証しているイメージ

顔認証は、その利便性や安全性の高さから、さまざまな事業において導入されています。例えばホテルやマンション、空港や医療機関、イベントや自動販売機などです。まずは顔認証がどのようなシーンで活用されているか見ていきましょう。

1-1.ホテルでの活用

宿泊者の予約情報や顔データを登録しておくことで、非対面チェックインも実現可能となります。フロントに設置したセルフチェックイン端末のカメラで顔認識(説明は後述)を行えば、事前登録済みの顔データと照合して非接触でのチェックインが可能です。これにより、従業員は対面での確認作業が不要になり受付業務の削減といった業務効率化につながります。利用者は非接触で受付ができ、待ち時間の短縮も期待できる点がメリットです。

他にも部屋の入室管理と組み合わせることで、宿泊者はカードキー不要で部屋への入退室ができます。カードキーなど持ち物が不要になり、鍵を管理する必要がなくなります。

1-2.マンションでの活用

顔認証は、マンションでの解錠・入館記録に活用できます。買い物帰りの住人の手がふさがっていても「顔パス」で共用玄関に入館でき、各室のドア前にも顔認証端末を設置すれば鍵を所持せずともドアの解錠が可能です。近年では、郵便受けや宅配ボックスの解錠に顔認証が採用されるケースも増えてきました。

また、顔認証を導入すると、入館記録のデータを自動的に管理できるため、管理人にとってはセキュリティの面で効果的です。「いつ・誰が・どの部屋に入退室したのか」を画像付きで管理することもできます。

1-3.テーマパークやイベントでの活用

テーマパークへの入場時やアトラクション乗車時に必要なチケットの代替として、顔認証システムが活用されています。顔認証のみでアトラクションを楽しむことができるため、入園者のストレス軽減や利便性向上につながります。他にも、施設内の設備予約や優先搭乗券といったサービスに活用できると考えられます。

また、大々的なイベント会場に顔認証を取り入れることで、人員配置の最適化や管理の省力化が可能です。例えば、入場ゲートに顔認証を導入することで、入場ゲートのチケット確認する人員を削減でき、結果的に人員の管理の省力化にもつながります。

1-4.空港や航空会社での活用

空港や航空会社では、顔認証での搭乗手続きが増えてきました。また、出入国審査での採用も普及しつつあります。無人化ゲートや自動チェックイン機に顔データを登録し、そのデータと搭乗券・パスポートの情報をひもづけることで、手荷物預け入れ・保安検査場・搭乗口を顔パスで通過できるという仕組みです。

長蛇の列ができる出入国手続きも、顔認証ならスピーディーです。コロナ禍によって注目されることになった非接触・3密防止という衛生管理の面でも役立っています。

1-5.医療機関での活用

厚生労働省が推進する「オンライン資格確認」の実施方法のひとつとして、医療機関や薬局でも顔認証が活用されています。導入済みの医療機関・薬局では「顔認証付きカードリーダー」が設置されており、マイナンバーカードのみで本人認証が可能です。

顔認証付きカードリーダーにはカメラが内蔵されており、マイナンバーカード券面の顔写真とそのときに撮影した顔写真を照合することで本人認証が完了するため、個人番号を取り扱うことはありません。

なお、厚生労働省ではオンライン資格確認を推進するための一環として、病院は3台まで・診療所などは1台まで顔認証付きカードリーダーの無償提供を行っており、その他にかかるネットワーク環境の整備費用なども、定められた上限の範囲で補助を受けることが可能です(2022年9月末時点)。

1-6.オフィスでの活用

オフィスの入館ゲートや各部屋の入り口に顔認証端末を導入することで、顔データがICカード代わりになります。これまで必要だったICカードの代わりになることで、従業員は両手がふさがっていても入退室が可能です。さらに社員証やICカードなどを紛失するリスクもないため、紛失や盗難による不正入室を抑止し、第三者による「なりすまし」も防ぐことができます。

他にも顔データと従業員データをひもづけることで、勤怠管理が可能です。出勤・欠勤・遅刻・早退などを自動的に取得することにより、打刻漏れや報告忘れを抑制できます。この結果、従業員の業務効率化が期待できるでしょう。

また、現金やクレジットカードなどが必要な場面においても、顔認証による決済が導入されはじめています。従来の社員証決済を顔認証にすることで、オフィスで手ぶらでの買い物を可能にします。

1-7.自動販売機や家電量販店での活用

顔認証は、自動販売機や家電量販店でも活用されています。事前に顔データと決済情報を 登録することで、顔認証のみでスピーディーに商品が購入できる仕組みです。これにより、利用者は現金やクレジットカードを持たずに買い物が可能となり、店舗側はレジ担当者の負担軽減や人件費削減につながります。自動販売機は現金の取り扱いが減る点がメリットです。

さらに、顔情報にクーポンをひもづけることで、店舗での顔認証でクーポンが使えたり、顔認証を導入している店舗が提供するアプリでは、顔認証による決済も可能にしたりと、 応用されています。

2.顔認証とはどんなシステム?

顔認証をしているイメージ

身体情報を用いた生体認証には、顔認証の他にも「指紋認証」や「虹彩(こうさい)認証」などがあります。その中でも、急速に普及しているのが顔認証です。ここでは、顔認証システムの仕組みや普及が進んでいる背景、顔認識システムとの違いを見ていきましょう。

2-1.顔認証システムとは

顔認証システムとは、目・鼻・口などの形状や顔領域の広さなどで本人を識別する生体認証システムの一種です。あらかじめサービス事業者側のサーバーに顔データを登録し、カメラが読み取った顔とサーバーの顔データを照合して本人認証を行います。 ディープラーニングによる人間に近い判断ができるAIが用いられるようになり、認証精度も飛躍的に向上しています。

2-2.顔認証が一般的になっている理由

人間の記憶に依存するIDやパスワードによる認証は、「知識認証」と呼ばれます。これは情報窃取やなりすましが比較的容易であるため、高度なセキュリティが求められる場では他の認証方式と組みあわせて用いられることが多い傾向があります。

一方、生体認証は指紋・顔・虹彩・静脈パターンなど、生体情報を使って本人を識別する技術です。特に顔認証は専用機器を必ずしも必要としない点で優れており、汎用的なタブレットに搭載されているカメラでも利用できます。利便性の高さや開発コストが低いなどの理由をはじめ、カメラ性能や認証精度の向上と、登録が比較的容易であることが普及率向上に寄与しています。

2-3.顔認識システムとの違い

「顔認証」と「顔認識」には明確な違いがあります。顔認証システムは認証のための仕組みで、IDやパスワードの入力の代わりに顔データを用いて本人認証をします。

これに対し、顔認識システムはより広い概念です。画像で検出した顔から年齢・性別・気分などを分析します。例えば、監視カメラで特定の人物を探し当てたり、来客の性別や感情などを分析したりする際に活用されています。

このように、「顔認証」と「顔認識」はシステムに違いがあるため、目的に応じて使い分けることが大切です。

3.顔認証システムを導入するメリット

顔認証をしているイメージ

顔認証システムの普及が進んでいるのは、他の認証技術を上回るメリットがあるためです。中でも安全性や利便性の高さが注目されています。ここでは、顔認証システムを導入するメリットを5つご紹介します。

3-1.なりすましを防止できるセキュリティの高さ

顔認証システムは他の認証技術に比べると、セキュリティが高いといわれています。例えば、指紋認証であれば複製されるリスクがありますが、顔は簡単に複製することはできません。顔写真を用いても認証させない高い生体検知機能も備わっているサービスもあり、対象が人間であるかどうかの判別や大人数の中から個人を特定することも可能です。

AIを活用した顔認証システムであれば100%に近い精度で識別できるため、なりすましによる被害を抑えることができます。これは利用者にとっても同様にメリットとなります。

3-2.管理の手間を省ける

オフィスではICカードによる認証、マンションではICカード・物理的な鍵・ICタグが一般的に使用されています。しかし、この方法では入退室する場所が増えるほど、物理的な認証鍵も増えてしまいます。

一方、顔認証であれば認証に必要なものは本人の顔のみです。生活者がICカードや鍵を管理する必要はありません。管理者側としても媒体管理が不要になるため、管理コストの削減につながります。

3-3.鍵を紛失するリスクを解消

万が一鍵を紛失してしまうと、第三者に悪用される可能性があります。部屋とエントランスを同じ鍵で解錠する「重合キー式」の場合、鍵の紛失によって別の住人にも被害が及ぶかもしれません。顔認証システムを導入すれば、このような物理鍵に依存するリスクを解消できます。これは、事業者と利用者の双方にとってのメリットです。

3-4.パスワード管理が不要になる

パスワードで入退室やログインをする場合、パスワードを覚えること、または定期的にパスワードを変更することが求められます。顔認証システムならこのような手間はかからず、パスワードを忘れるといったリスクもありません。

3-5.非接触で本人認証できる

顔だけで認証できる顔認証システムは非接触認証です。認証デバイスに触る必要がないため、衛生的です。近年では、マスクを着けたままでも認証可能な顔認証システムも登場しています。認証がスピーディーになることで、エントランスやレジ前などの3密防止に役立ちます。

4.顔認証システムを導入する際の注意点

顔認証システムはすべてが同じ精度ではなく、使用するシステムによって認証結果に差が生じることがあります。例えば、マスクやサングラス、撮影環境、複数人いる場合、表情によって認証精度は変わってきます。そのため、ユースシーンにあわせて顔認証システムや機器構成を検討することが大切です。

また、顔データは重要な個人情報であるため、システム導入後のトラブルを防ぐ必要があります。個人情報保護法にも「顔データは個人情報」と定義されており、利用目的を本人に通知・公表した上で運用することがポイントです。利用目的を超えた顔データの乱用を避けるためにも、事前にポリシーを策定しておきましょう。

5.顔認証システムを導入するポイント

導入を検討しているイメージ

顔認証システムは、ユースシーンに適したタイプを選ぶことが大切です。認証精度やシステム構成、運用中のサポート体制などもチェックしておきましょう。ここでは、実際に顔認証システムを導入する際のポイントを解説します。

5-1.顔認証が適したユースシーンなのか

先述したとおりで、少なからず精度が落ちるシステムが存在するのも事実です。そのため、環境による精度の変化を考慮した上で、最適なシステムを選ぶ必要があります。

また、顔認証システムはカメラで常時撮影することが求められます。カメラを設置する場所が撮影に適した場所か、常時カメラを稼働させて良いかどうかも含め、実際に利用するシーンを想定しながら検討しましょう。

5-2.顔認証の精度

生体認証システムの精度を表す指標として、「本人拒否率」や「他人受入率」がよく使われます。前者は本人を認証できない割合、後者は他人を本人だと誤認証してしまう割合です。認証精度はサービスの安全性・信頼性を左右するため、導入前に精度を確認しておきましょう。

5-3.システム構成が自社に適しているか

顔認証システムは、クラウド型とオンプレミス型に大別できます。これはAIによる顔認証エンジンや顔データのデータベースが、「サービス事業者側にあるか」「自社サーバー内にあるか」の違いです。

またシステムによっては、カメラで撮影した顔データを「エッジデバイスで分析してからサーバーに送信するか」「サーバーに送信してから分析するか」という違いもあります。このようなシステム構成の違いを確かめ、自社の運用イメージに合ったものを導入しましょう。

5-4.管理のしやすさやサポート体制

顔認証システムには、生活者のスマートフォンなどに専用アプリをインストールするものや、利用場所に専用端末を設置するものがあります。アプリのアップデートや端末のメンテナンスが必要になるため、導入後の管理のしやすさを考慮することも大切です。

また認証に使われる顔データに不備があった場合、高性能な顔認証システムでも精度を発揮できない場合があります。認証精度が低い利用者への対応は、事業者側で行うことがほとんどです。再登録の依頼が手間になるケースも考えられるため、サポート体制についても事前に把握しておきましょう。

6.まとめ

スマートフォンを使う日常のイメージ

顔認証は日常生活のさまざまシーンで活用されており、その利便性や安全性の高さが注目されています。利用者・企業双方にとってメリットがあるため、今後も普及が進むと予測されます。ただ、認証精度の不安定さや運用中のトラブルがないとは限りません。導入に当たっては信頼できるサービスを選択することが大切です。

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