日経Webセミナーレポート
「セキュアな仕組みを融合する『認証DX®』」

2023年9月14日(木)に開催された日本経済新聞社主催のWebセミナーにて、DNPは「セキュアな仕組みを融合する『認証DX』」と題した講演を行いました。DNPはさまざまな場面で、最適な認証の仕組みを組み合わせ、セキュアで安心なサービスとして総合的に提供する『認証DX』を推進しています。顔認証やデジタルキーを活用した取組み事例紹介のほか、最適な認証の仕組みを導入するためのポイントを解説しました。

2023年9月15日公開

◆セミナー概要

<プレミアム・カンファレンス・シリーズ>
認証テクノロジーのビジネス活用最前線
~デジタル時代のセキュリティ強化と新たな価値創出に向けた認証技術とは~
2023年9月14日(木)開催
 

児島 勇介写真

大日本印刷株式会社
情報イノベーション事業部PFサービスセンター
デジタルトラストプラットフォーム本部
部長 児島 勇介

1.DNPのセキュリティ事業の取組み

DNPは、祖業の出版印刷からさまざまな印刷領域へ多角化してきました。通帳・各種ビジネスフォームやICカード製造など多種多様な印刷物をつくっていく中で、企業からお預かりした膨大な情報を大切に取り扱うためのセキュリティ技術やノウハウを蓄積してきました。近年では、認証・決済・IoT(Internet of Things)といったセキュリティが重要視される領域の取組みを強化しています。

セミナー講演資料:DNPが取り組むセキュリティビジネス

私たちDNPは、「信頼」の起点を担うことで認証・セキュリティの利用シーンを拡げ、誰もが快適で安全な生活ができる社会の実現をめざしています。顔認証を使った決済・入退室管理やマイナンバーカードを使った本人確認などの「ヒト」の認証だけでなく、各種IoTセンサーやデジタルキーを活用した「モノ」の認証にも積極的に取り組んでいます。

2.DNPが考えるセキュアな仕組みを融合する「認証DX」とは?

今回の講演タイトルにも入れている「認証DX」とは、本人確認や本人認証が必要となるさまざまな場面で“最適な認証の仕組みを組み合わせてDXを実現していこう”という考えにもとづいています。先ほどお話しした「ヒト」の認証と「モノ」の認証を掛け合わせて、最適な認証の仕組みを提供することがDNPの強みであり提供価値であると思っています。

DXを実現するためには、顧客体験価値=CX(カスタマー・エクスペリエンス)が重要となります。DNPは“DX for CX”というコンセプトを掲げています。「DXはあくまでも手段・方法であり、最終的に実現するべきものはCXである」という考え方です。CXを向上させるには、企業側の課題・要望だけでなく、サービス利用者となる生活者視点でサービスを設計していくことが重要となります。利用者は、いつ・どんな状況でそのサービスを利用するのか、また利用者の年齢・ITリテラシーはどういった方たちなのか、などの生活者視点を意識することが必要です。

セミナー講演資料:DNPが考える「認証DX®」とは?

3.「認証DX」の取組み事例

DNPの「認証DX」の取組み事例をいくつか紹介していきます。

◆顔認証マルチチャネルプラットフォーム®

ひとつめは、顔情報をキーにしてさまざまなサービスを顔認証で利用できるようにする「顔認証マルチチャネルプラットフォーム」です。本人の同意を得て登録した顔画像を、さまざまな業界で横断的にオープンに活用することで、「手ぶらで」「スピーディな」本人確認を実現させるサービスです。

セミナー講演資料:オフィスにおける「顔認証マルチチャネルプラットフォーム」活用例

オフィスでの活用例を挙げると、オフィスビルの入退館に社員証を使っている方は多くいらっしゃると思います。DNP社内でいうと、ビルの入退館だけでなく居室の入退室・社員食堂の決済・複合コピー機の利用など社内のあらゆるシーンで社員証をかざしています。その社員証の代わりに顔認証を活用することで、社員証の紛失・携帯忘れ・なりすましなどを防ぎ、利便性やセキュリティを向上させることが期待できると考えています。現在DNPでは、社内コンビニエンスストアにて顔認証決済の実証実験を実施し、その認証精度の向上・利便性の向上に取り組んでいます。
【ニュースリリース】DNP本社ビル内のコンビニで顔認証決済の実証実験を開始

また最近では、工場やオフィスの入退出管理システムにおいて、虹彩認証や非接触指紋認証などの生体認証の導入ニーズも増えてきています。DNPはマルチベンダーとしてどの認証の仕組みが最も適しているかを考え、最適な認証DXの実現をサポートしています。

◆オンライン本人確認(eKYC)とBPO連携

eKYCとは、オンライン上で安全に本人確認が完結する仕組みのことです。DNPでは、BPOと組み合わせることでより厳密な審査業務を実現しています。

  • BPO=Business Process Outsourcing。業務プロセスの一部を一括して専門業者に委託すること。

2023年3月に実施したJR西日本様の顔認証改札機の実証実験を紹介します。DNPは、顔情報登録アプリの開発とBPO審査業務を行いました。顔認証改札機を実現するには、利用者が事前登録する顔情報と定期券情報の関連付けに加えて、登録された情報が正しいかどうかの審査業務が必要不可欠でした。特に、利用者の入力情報と定期券の一致の確認・定期券の対象区間の確認を行う必要があり、DNPは自社のBPO部門でこれらの審査業務を請け負いました。

このようにシステムだけですべて担うことができない場合は多くあります。DNPは必要に応じてBPOによる目視確認を組み合わせることで、認証の正確性・ユーザビリティの向上を行っています。
【ニュースリリース】大阪駅(うめきたエリア)での顔認証改札機の実証実験で、顔情報登録アプリを提供

セミナー講演資料:JR西日本様 顔認証改札機の実証実験

◆デジタルキーを使った利用者認証

次は、デジタルキーを活用した取組みの紹介となります。デジタルキーとは、スマートフォンを使って鍵の施錠・解錠を行うサービスのことです。自動車のキーロック/解除だけでなく、宅配ボックスやモバイルオーダーの受取り時や賃貸不動産の内見時などに活用される例も増えてきています。

DNPは、デジタルキーを活用した社用車管理サービスを提供しています。社用車の予約管理・デジタルキーによる施錠/解錠だけでなく、2023年12月から使用義務化が検討されているアルコールチェック機能も付いています。顔写真撮影機能によりデータ改ざんやなりすましを防止するとともに、アルコール濃度が閾値を超えた場合には解錠操作を不可とし管理者に通知する仕組みを採用しています。

セミナー講演資料:デジタルキーを活用した社用車管理サービス

◆NFCタグを使った正規品証明

キャッシュレス決済で利用されることの多いNFCタグの取組み事例となります。NFCタグとは、スマートフォンやカードをかざすだけで通信できる非接触ICチップが埋め込まれたタグのことです。

  • NFC=Near Field Communication。非接触型のICタグで、スマートフォンをかざすだけで情報を読み取ることができる。

DNPは現在、NFCタグを使ってデジタル作品の正規品証明を行うシステムを開発しています。デジタルアートのブランドGASHO2.0を運営する株式会社Raptorsとともに、2023年7月に開催された「Web3カンファレンスWebX」に当サービスを出展しました。巧妙化する偽造品の流通対策として、誰でもスマートフォンを使用して即座に真贋判定を行うことをめざしています。

セミナー講演資料:NFCタグを活用した正規品証明

【ニュースリリース】デジタル作品の高精細出力とNFCタグ×NFTによる正規品証明・所有証明システムの参考展示

◆メタバースにおける利用者認証

最後の取組み事例は、インターネット上の仮想空間・メタバース上で『あなたは誰?』を証明するサービスとなります。

DNPは、あらゆる人々が互いに分け隔てられることなく、リアルとバーチャルの双方を行き来できる「XRコミュニケーション」に取り組んでいます。メタバースライブ・メタバース会議・メタバースゲームなどその用途はさまざまですが、メタバース上のアカウントの信頼性やプライバシーの問題がとても重要になってくるのではないかと考えています。

これらの課題を解決する個人のアイデンティティを証明・管理するサービスが「PARALLEL ME®」というサービスです。医者・弁護士・ツアーコンダクターなどの資格保有者や著名人など、本当に本人であるのか・資格を持っているのかをメタバース上で確認する必要がある場合、このサービスを利用することで、自身のアバターと本人認証情報や資格情報を連携することができます。匿名性を保つのか本人認証を行うのか、メタバース上で実現したいこと・利用者ニーズを鑑みながら、最適な認証の仕組みを考えていきたいと思っています。

セミナー講演資料:XRアイデンティティシステム「PARALLEL ME®」

4.まとめ

さまざまなDNPの「認証DX」取組み事例を紹介しましたが、まとめとして、最適な認証の仕組みを導入するためのポイントを3つ説明します。

【1】何を実現したいのか“目的”を明確にする。

何を実現したいのか目的を明確にすることは、認証に求める精度やセキュリティ要件を具体化することにつながります。認証サービス・認証テクノロジーといっても実にさまざまなものがあります。どのサービス・テクノロジーが最も自社に適しているのか考えるため、まずは「何を実現したいのか“目的”を明確にする。」ことが重要となります。

【2】“利用者や利用シーン”をイメージする。

利用者や利用シーンによってどの認証方法が適しているかは異なってきます。お話ししてきたようにDNPは、顧客体験価値=CX(カスタマー・エクスペリエンス)を意識したサービス設計をしています。導入する認証サービスを利用する人はどのような人なのか、どのような状況で認証サービスを利用するのか、「“利用者や利用シーン”をイメージする。」ことも忘れずに行ってください。

【3】さまざまな“組合せ”も検討する。

ひとつの認証サービス・テクノロジーで、企業の課題や要望のすべてが実現できないこともあります。お話しした事例のように、システムですべて対応できない場合はBPOサービスと組み合わせることによって解決できないか検討してみるのもいいかもしれません。DNPは「ヒト」と「モノ」の認証や、「リアル」と「バーチャル」の認証など、マルチベンダーだからこそできる最適な認証の組合せをご提案しております。ぜひ、「さまざまな“組合せ”も検討する。」視点を持っていただけたらと思います。



認証・セキュリティに関するお問合わせ(URL別ウィンドウで開く)

  • 認証DXは、DNP大日本印刷の登録商標です。
  • 顔認証マルチチャネルプラットフォームは、DNP大日本印刷の登録商標です。
  • PARALLEL MEは、DNP大日本印刷の登録商標です。

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