【シリーズコラム】DNPのデジタルアーカイブ 第5回 文化財を未来へつなぐ「文化財防災」

本コラムでは「DNPのデジタルアーカイブ」というシリーズで、近年注目されるデジタルアーカイブについてDNPの視点から解説を行ってまいります。第5回は、「文化財防災とデジタルアーカイブ」というテーマについて、その関わりを考察します。

作成日:2026年10月28日

目次

背景

近年、地震や豪雨などの自然災害が頻発し、文化財を災害から守る取組の重要性が高まっています。
デジタルアーカイブ戦略懇談会・デジタルアーカイブ推進に関する検討会「デジタルアーカイブ戦略2026-2030」では、デジタルアーカイブが教育や学術研究だけでなく、防災にも資する社会基盤であることが示されています。*1 文化財防災センターでは、「事前の準備」「減災」「救援」「復旧」を一連の循環としてとらえ、これら全体を文化財防災と位置づけています。*2 デジタルアーカイブは、この循環を支える基盤として、災害時の被害把握や復旧・復元の重要な手掛かりとなります。
また、文化財は守るべき対象であるだけでなく、過去の災害や復興の経験を伝える貴重な記録でもあります。文化庁「文化財を防災教育に活かすための視点―災害の記憶を伝える文化財―」では、文化財そのものが過去の災害や復興の歴史を伝える存在であり、防災教育に活用できることが示されています。*3実際に近年では、災害に関するデジタル資料や地域の記録を活用した防災教材・学習の取組も進められており、デジタルアーカイブを通じて災害の記憶を次世代へ継承する活動が広がっています。*4
文化財を未来へ継承するためには、被災後の復旧だけでなく平時から写真、映像、3Dデータ、調査成果などとして記録し、その情報を蓄積・共有していくことが重要です。記録は文化財の価値を伝えるだけでなく、将来の災害への備えとなり文化財防災の基盤となります。

デジタルアーカイブと文化財防災

文化財防災の観点では、文化財そのものの物理的な保護に加え、情報を失わないための備えも欠かせません。デジタルアーカイブは、文化財の姿や価値を記録・共有し、災害時の復旧や将来への継承を支える重要な手段です。本コラムでは、デジタルアーカイブの「保存・公開」「活用」「デジタルアーカイブ推進体制構築」の各テーマについて、具体的な技術、取組をご紹介します。

保存・公開

文化財をデジタルデータとして高精度に記録・蓄積することは、文化財防災においても重要です。デジタルアーカイブによるバックアップ、複製品の制作により、保存と公開を両立することも可能です。

フォトグラメトリやガウシアンスプラッティングによって取得した高精度な3Dデータは、災害等で文化財が損傷した際のバックアップとして、また復旧・修復のための基礎資料として活用することが可能です。

高精細複製「伝匠美」「プリモアート」は、DNPの印刷技術により文化財を忠実に再現するソリューションです。複製品を展示・貸出に活用することで原本保存を図りながら公開機会を拡大でき、災害リスクの分散にもつながります。

活用

デジタルアーカイブは保存だけでなく、学校教育や地域学習など幅広い活用が可能です。学校等で子どもが文化財に触れる機会を創出することで、地域の歴史や防災への理解を深めることが期待されます。

「みどころキューブ」は、収蔵品等のデジタルアーカイブを立方体(キューブ)状の3Dビューアで直感的に学べる鑑賞システムです。
地域の文化財等のデータを、災害等を題材とした授業に教材として活用することで、次世代の防災意識や文化財保護意識の醸成に貢献します。

デジタルアーカイブ推進体制構築支援

文化財を地域全体で支えていくために、市民参加も見据えながら、地域内・博物館内で日常的にデジタル化~公開を行う体制づくりが重要です。

博物館職員を対象に、撮影研修から公開まで一括支援をすることで、デジタルアーカイブ推進に向けた体制構築支援を行います。ノウハウを共有し、日常的な記録活動として定着させることで、災害時にも文化財情報を活用できる持続的な防災基盤の形成を支援します。文化財を地域全体で支えていくために、市民参加も見据えながら、日常的にデジタル化~公開を行う体制づくりに貢献します。

おわりに

デジタルアーカイブは、文化財の情報を記録・保存し、被災時の復旧・復元を支えるだけでなく、研究や教育、防災学習にも活用されています。近年では高精細画像や3D計測技術の発展により、文化財をより正確かつ詳細に記録できるようになり、文化財防災における有効性に注目が集まっています。
文化庁が発表した「令和9年度概算要求の概要」においても、文化財のデジタル化やデータベースの拡充の推進に対する予算要求がなされており、デジタルアーカイブに対する機運が高まっていることがうかがえます。*5
防災・復旧の基盤として、平時から継続的に文化財の記録を蓄積するデジタルアーカイブの役割は今後さらに大きくなっていくと考えられます。

*1 「デジタルアーカイブ戦略2026-2030」(PDF)
*2 文化財防災とは?-文化財防災スパイラル-
*3 文化財 文化財を防災教育に 活かすための視点―災害の記憶を伝える文化―(PDF)
*4 デジタル資料を活用した防災教材・学習コンクール
*5 文化庁「令和9年度概算要求の概要」(PDF)

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