ヤマトホールディングス株式会社 様 | 100周年記念事業

同じ目標に向かって走った共創型プロジェクト

【事例紹介インタビュー「優秀会社史賞」受賞企業に聞く】2019年11月29日に創業100周年を迎えた、ヤマトホールディングス株式会社(以下、ヤマトホールディングス)様。DNPは、ヤマトホールディングス様の100周年記念事業で、アーカイブシステム構築、社史編纂(正史、記念誌)、歴史館設立のお手伝いをさせていただきました。

2023年4月10日 公開

「優秀会社史賞」受賞企業に聞く!
ヤマトホールディングス様、100周年記念事業ご担当者インタビュー

ヤマトホールディングス様が2020年11月に刊行された「ヤマトグループ100年史」が、一般財団法人日本経営史研究所による「第23回(2022年)優秀会社史賞※」を受賞しました。

  • 優秀会社史賞:
    会社史の水準向上の一助とすべく、日本経営史研究所が1978年から隔年で優れた会社史の選考を実施、表彰を行っており、2022年で第23回を迎えた。第23回は、2020年4月から2022年3月までに刊行された75社の会社史を対象に、専門研究者による厳正な選考の結果、「ヤマトグループ100年史」を含む5社が「優秀会社史賞」に選ばれました。

今回は、「ヤマトホールディングス100周年記念事業」当時のご担当者で、現在「ヤマトグループ歴史館」に勤務されている白鳥美紀様に、受賞の感想に加え、100周年記念事業や社史編纂の意義、DNPの支援などについてお伺いしました。

ヤマト運輸株式会社
コーポレートコミュニケーション部 マネージャー 
ヤマトグループ歴史館 クロネコヤマトミュージアム 館長

※所属・肩書などは、2023年3月(本記事制作時)のものです。

「優秀会社史賞」受賞に思うこと

—「優秀会社史賞」受賞、おめでとうございます。
 今日は、周年事業や社史編纂への思いなどいろいろお伺いしたいのですが、まずは、受賞の感想をお聞かせください。

共創型プロジェクト、チーム全員での受賞

白鳥様: おかげさまでありがとうございます。2022年11月に、日本経営史研究所から受賞のお知らせが届きました。発刊してから2年近く経っていたので驚いたというのが正直な気持ちです。

選考報告書の中で、情報公開度の高さや、正史だけでなく、一般のステークホルダーに向けた記念誌、アーカイブとしての歴史館設立など、社史の活用についても大変評価していただきました。もちろん、受賞を意図して作ったわけではなく、一生懸命編纂して、納得いくまでこだわって作ってきた結果が評価されたのは、やってきたことに間違いはなかったと言っていただいたようで、うれしい限りです。

この優秀会社史賞以外でも、評価いただくポイントで共通しているのは、会社として隠しておきたいような負の部分であっても、史実を正確に記録・公開している点です。隠さないのは当然と思っていて、逆にそこを記さないと、例えば、宅急便がなぜ誕生し発展したのか、本当の姿が描けなくなってしまいます。100年の歴史の中には山もあれば谷もありますから。役員にも原稿を読んでいただいていますし、編纂委員会で反対も何も出なかったのは、うちの社風なのだと思います。

そしてなによりも今回はヤマトグループの賞というよりも、共創型プロジェクト全体がいただいた賞だと思っていますし、みなさんと喜びを分かち合いたいと思います。

ヤマトホールディングス100周年記念事業

—続けて、白鳥様が周年事業に関わることになったきっかけや、
 「ヤマトホールディングス100周年記念事業」の意義や方針を教えていただけますか?

ミッション:経営戦略の一環として、レガシーを残す

白鳥様: 2012年の4月1日に100周年記念事業を担当する辞令をいただきました。そこから、私と100周年記念事業の関わりがスタートします。長く広報を担当していた経験もあり、「私にできるならやらせていただきたい」という思いでお受けしました。

辞令を受けた時、当時の社長から100周年記念事業は、一過性のお祭りのように「終わったら何も残らないというのでなく、経営戦略の一環として、レガシーを残してほしい」と言われました。その時はレガシーとしてなにか形に残るものとすれば、社史と、歴史館を作りたいと漠然と考えていました。

基本方針:立案~実行

白鳥様: まず、ベンチマークの設定に着手しました。広報の時代からのつながりで、多くの企業や、社史の収集に力を入れている図書館に行きました。社史や周年事業に関するセミナーにも参加しました。もちろんDNPさんでも勉強させていただきました。周年事業に関わるのは初めてでしたが、基本方針からアクションプランまでを企画する際には、DNPさんからいただいた周年事業の全体構想がわかる冊子などを、かなり参考にさせていただきました。

それから自分なりに事業の概要をまとめて何度か役員ミーティングにかけ、100周年記念事業の基本方針と事業領域、目的にあわせて18のアクションプランが決定しました。事業領域は、100周年を迎えたときを「過去からの到達点」、「現在の通過点」、「未来への出発点」としてとらえた3つに設定しています。3つの事業領域の中で、総計18のアクションプランが進行するという、事業計画がスタートしました。

DNPさんに支援いただいた企業アーカイブの構築、社史の編纂、歴史館の設立は、歴史を検証することが目的の、「過去からの到達点」領域で行った3つのアクションプランです。

体制:スタート時の担当は1人、最終的にはコアメンバーが10人

白鳥様: 100周年記念事業は、私が着手してから正史を発刊するまで約9年間。最初は私1人で、すぐに2人が加わり、社史編纂(正史と記念誌を制作)に向けて年表作成作業が始まりました。その後、周年事業として制服の改定があったり歴史館の設立があったり、アーカイブの作業などもありますので、延べでいうとかなりの人数になりますが、社史編纂の担当は同じメンバーで3〜4人。最終的には歴史館のアテンダントの方も含め、コアメンバー10人での体制になりました。

2種類の社史を制作、それぞれの役割

—100年の歴史を伝える2種類の社史、
 「ヤマトグループ100年史」と「100年のあゆみ」は、それぞれどんな意図で制作されたのでしょうか?

経営史としての正史と、ヤマトグループの物語をまとめた記念誌

白鳥様: 経営史としての正史「ヤマトグループ100年史」と、記念誌「100年のあゆみ」を制作しました。
正史は、正しい史実をきちんとした史料にもとづいて制作する、いわゆる会社の経営史という位置づけです。
一方、記念誌は、正史の簡易版という位置づけでありながら、単なるダイジェスト版ではなく、エピソードを中心とした読み物、テーマごとに物語をまとめて、幅広くいろいろな方に身近に感じていただき、気軽に読めるものにしたいと、まったく違った趣旨で制作しました。社員を含めてお世話になってきたすべてのステークホルダーに読んでいただきたいという思いがあったのです。正史では取り上げられないような内容、例えば大量の「お客様からのメッセージ」を独立した章として作れたのは記念誌だからこそだと思っています。記念誌は、海外向けに英語版・中国語版も制作しました。

制作の進め方や構成などは、DNPさんからいろいろなアドバイスをいただきました。アドバイスに沿って、正史より先に記念誌を作ったことで、正史に記載する内容についての事実関係や年表の確認が、効率的にできたと思います。

正史「ヤマトグループ100年史」
(2020年11月29日刊)
本文・年表・資料編含め690ページ
A4変型、オールカラー、上製本
創業から2019年度までの100年間を記録する正史

記念誌「100年のあゆみ」
(2019年11月29日刊)
80ページ A4判 並製本
※英語版、中国語版(簡体字・繁体字) 各48ページ
100年間の歴史を象徴する史実をテーマごとに物語として編集

共創型プロジェクトのチーム力を実感

—今回のように、DNPの周年事業支援は「共創型プロジェクト」として進めさせていただくことが多いのですが、
 よかったと思われた点があれば、ぜひお聞かせください。

クライアントと業者ではなく、同じ目標に向かう同志

白鳥様: 100周年記念事業でのDNPさんとのお付き合いは、弊社の歴史的な資料・記録を保存し活用する「アーカイブ構築」のパートナーを選ぶところからスタートしました。前述した「過去からの到達点」の事業領域には3つのアクションプランがあり、それぞれ5~6社によるコンペを実施した結果、アーカイブからはじまり、社史編纂、歴史館設立を、DNPさんに支援いただくことが決定しました。

今でも忘れないのは、プレゼンの時に「今回ご提案するのは、ヤマトさんとDNPとスタッフによる共創型プロジェクトです」とDNPさんがおっしゃったこと。「共創型」を一番強調して提案してくださったのがDNPさんでした。最初はピンとこなかったのですが、時間が経つにつれて、その意味を肌で感じるようになりました。

最初にアーカイブ構築がスタート。その後、社史編纂、歴史館設立と順に動き出しました。最盛期はこの3つが同時並行で動いていたので、相当、繁忙だったことを覚えています。DNPさんはこれらに対して、アーカイブチーム、社史チーム(正史班・記念誌班)、歴史館チームとしっかりと専門の担当をたて、また、その担当の下に、サブ担当や制作スタッフをアサインし、さらに担当営業も加わって、プロジェクトを遂行してくれました。アーカイブ⇔社史⇔歴史館の情報や素材は密接で、その連携、共有は当たり前に対応していただきました。私たちとの意見交換やアイデア出しなど、良いものを作っていこうという意気込みがお互いに伝わってきた感じです。複数のプロジェクトを同時に動かすのは難しいですが、結果的に100周年記念日当日に何十万部もの記念誌が配布できたというのも、ひとつの成果かもしれません。

「ヤマトホールディングス 100周年記念事業」の意義を理解くださり、常にこちらが悩んでこだわっていることが伝わっていて、ゴールまで伴走してくださったことで、各人がそれぞれの持ち場でしっかり仕事ができていました。本当に社外でも社内でもスタッフに恵まれ楽しかったし、みんなで力を重ね合わせていい仕事ができたと思っています。
DNPさんもそのパートナーである制作会社さん(編集者、ライター)も、気づいたらクライアントと、言葉は悪いですが業者という立場ではなく、100周年記念事業を一緒に推進してくださり、同じ土俵に立ってくださる同志。フラットで対等に言いたいことを言えるチームであったと思います。

これから周年事業を担当される方へ

—最後に、これから周年事業や社史編纂を担当される方へのメッセージをお願いします。

社史編纂を効率的に進めるカギは、日々の年表作成/アーカイブ業務

白鳥様: 私が100周年記念事業の担当になって、最初に始めた仕事が資料集めと年表作成でした。70年史を作ってから30年間何もしていなかったので、記録がバラバラだったのです。とにかく年表がすべてのベースになると思い、社内報やニュースリリースなどからできるだけ細かい年表項目を拾い出して、分野別かつ時系列にまとめた素年表を作成しました。100周年記念事業として最初に作業を始めた年表ですが、実際には最後の最後まで確認が続く大変な作業でかなり苦労しました。

これを踏まえて、これから社史編纂を考えている方にお伝えするとしたら、「すべての基礎になる年表作成作業は明日からでも今日からでもなく、今、このときから始めた方が良い」ということでしょうか。

弊社では、100周年記念事業以来、現在もアーカイブ業務を継続しています。アーカイブには、DNPさんのデータベース「デュアルシーブ®※」を当初から導入し、活用しています。昨日起こったこともアーカイブとして、年表に付け加えていきます。これをやっておけば30年後に30年分の年表を作る苦労がないわけです。「今日から始めましょう」などというタイミングがなくても、今までやってきた仕事の延長として社史制作チームと連携する、というような流れができたらいいですね。

周年事業の担当に選ばれたことを誇りに思って、仕事を楽しむ

白鳥様: 私は、周年事業の担当に任命されたとき、「なんて素晴らしい仕事を与えてもらったのだろう、担当になったことを誇りに思って最大の力を発揮しよう」、「担当者だけでなく、みんながそれぞれの立場で100周年を迎えるような事業をやりたい」と思いました。その気持ちは最後まで変わりなく、思ったことを100%実行できたわけではありませんが、担当としての任務が終了した際には、大きな達成感を得ることができました。私のヤマト人生の集大成ともいえる仕事です。任せてくれた会社に心から感謝しています。

100周年が終わった今は、当部署に「こんなこと調べているのですが、わかりますか」とか、「こんな資料ありますか」「データが欲しい」など、結構いろいろな部署から問合わせが来るようになっています。歴史館に職場単位で見学に来てくれたり、歴史情報を発信したことによって、社内の認知度も高まってきたと思います。
そして、歴史は会社にとって重要な知的財産だという認識がもっと多くの社員に深まることを期待しつつ、そうなることに意味があると思っています。

最後に、「周年事業の担当になったら、わずかな人しかなれない担当に選ばれたことを誇りに思ってください。そして、自社の歴史に関心をもって、学び、知り、伝え、自分の仕事として楽しむことを心がけてください。」をみなさんへのメッセージとします。

<了>

(左)DNP担当者 (中)白鳥様 (右)DNP担当者

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DNPでは長年の経験や実績で培った社史編纂(へんさん)ノウハウをはじめとする企業情報資産の編集力を核に、社内の一体感の醸成と外部へのブランド発信を軸としたさまざまな周年事業を支援しています。


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「お客さまの生活や世の中の変化とともに成長してきたことを伝えたい」というヤマトホールディングス様の思いを表現するため、世の中の移り変わりや、生活と物流のつながりを感じられる施設をめざしました。「道」を歩むように、100年の歴史を追体験できる企業ミュージアムです。

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