【第5回】雑誌のWebメディア化におけるSTP分析
~My ゴルフダイジェスト事例編~

第4回コラムでは、誰に向けてどのようなWebメディアとするか、を設計するためにSTP分析についてご紹介ました。今回は、Myゴルフダイジェストの事例をもとに、具体的なサービス設計の流れをご紹介します。

【目次】

STP分析のおさらい

実際にSTP分析に基づくサービス設計の事例を見る前に、簡単にSTP分析のおさらいをしましょう。
・セグメンテーション
市場を構成する顧客の共通点にフォーカスし、属性ごとにグループ(セグメント)として分類することです。
・ターゲティング
セグメンテーションにより顧客を分類した後は、狙うべき顧客の絞り込み=ターゲティングです。
・ポジショニング
狙うべき顧客を絞り込んだあとは、顧客に「○○といえば××だよね」と認識される状態を目指します。

いかがでしょうか?STP分析について思い出して頂けましたでしょうか?
詳細の内容は第4回コラムからご確認ください。

STP分析に基づくサービス設計 ~Myゴルフダイジェスト編~

では、ここからSTP分析に基づくサービス設計の事例として、Myゴルフダイジェストをご紹介いたします。第3回では同事例の3C分析をご紹介いたしました。

市場・顧客:ゴルファーは増加傾向にあり、30~50歳代が中心、情報はデジタルメディアから入手しているが情報があふれて取捨選択に迷っている。
競合:レッスン系のコンテンツを提供している競合は少ない。レッスン系のコンテンツを配信している動画プラットフォームは、情報の精度に課題が残る。
自社:ブランド力、取材力・編集力、質の高いレッスン記事、バラエティに富んだコンテンツが強みである。

という考察をしました。

本コラムでは、上記3C分析の結果を踏まえたサービス構築について詳しく見ていきます。

セグメンテーション

530万人のゴルファー(レジャー白書2021参照)をセグメントするため、居住エリア、ゴルフのスコア、ゴルフへの年間出費額など、多様なゴルフの楽しみ方など多くの仮説を検討しました。
Myゴルフダイジェストの場合はサブスクリプションサービスのため、有料会員を獲得できないと収益が得られません。そこで

①ゴルフへの関心が高い(=課金を厭わない)を表す心理的な条件
②ゴルフへの可処分所得(実際にゴルフに使えるお金)が影響する年齢層

の2つの観点でセグメンテーションをしました。特に心理的な条件では、

コア層:月に3回以上ゴルフ(ラウンドまたは練習)をする人
ミドル層:月に1回程度ゴルフ(ラウンドまたは練習)をする人
ライト層:ゴルフへの意欲が減衰している人。6か月に1回程度

と設定しました。

セグメンテーションイメージ

セグメンテーションイメージ

ターゲティング

ターゲティングのフェーズにおいては、既存の紙雑誌との差別化に非常に悩みました。
紙雑誌の読者はブランドへの親和性は高いですが、サービスを提供するWebメディアへの親和性が課題でした。一方、Webメディアに親和性がある若年層は、ブランドの親和性が低く、情報収集に対する課金意欲が課題でした。
・Webメディアへの親和性が高い
・ブランドに対する認知もある
・市場規模としても相当の余地がある
という観点から、絞り込みを行い【40~50代のコア層】をターゲットに据えました。

ターゲティングイメージ

ターゲティング

ポジショニング

【30~50歳代のコア・ミドル層】をターゲットとした後はポジショニングの設計です。
ポジショニング設計においては、以下2つの観点から「Myゴルフダイジェストは、質の高いレッスン記事を、自分の悩みに合わせておススメしてくれる」というポジショニングを設定しました。
①自社の強み=ブランド力、取材力・編集力、質の高いレッスン記事、バラエティに富んだコンテンツが強みである。
②情報はデジタルメディアから入手しているが情報があふれて取捨選択に迷っている。ユーザーの悩みに基づく記事のレコメンド(=パーソナライズ)し、紙雑誌との差別化を図る。

ポジショニングイメージ

ポジショニングイメージ

以上、STP分析をMyゴルフダイジェストの事例をもとに深掘りしました。
第3回では市場分析、第4回、そして今回のコラムで実際のサービス設計(STP分析)をご紹介しました。残すは“どのようにマネタイズするか”です。どんなに良いサービスでも収益を上げられない事には、サービスを継続することはできません。
次回はWebメディアのマネタイズについてご紹介します。

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