【第3回】雑誌のWebメディア化に向けたプロセス~市場分析~

第1回のコラムでは出版市場の振り返り・展望、第2回のコラムでは市場概況を踏まえ雑誌がWebメディア化することの意義についてご紹介しました。本コラムからWebメディア化に向けたプロセスをステップを踏んで整理していきます。

【目次】

Webメディア化に向けたプロセスの整理

雑誌をWebメディア化するには、以下のステップがあります。

【1】市場分析:顧客特性、競合、自社の強みなどの調査を経て把握・整理

【2】STP分析:セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの選定=「顧客(誰)に」、「何を」

【3】コンテンツ・サービスの設計=どのように提供するか

【4】マネタイズ・課金管理の設計=どのように儲けるか

【5】実施

【6】振り返り・改善

本コラムでは、Webメディア化の6つのステップの第一歩である【1】にフォーカスをあてます。

市場分析の必要性

Webメディア化を進めるにあたり、なぜ調査が必要なのでしょうか?例えば企業が新たに店舗を構える際にブランド価値が上がるから、という理由でいきなり銀座に店舗を出したりはしません。立地・品揃え・デザイン・従業員教育等々、最適なものは何かについて市場調査を行って把握・整理し、その分析を行い、「在り方」を決めてから新形態の店舗を構えるわけです。
Webメディア化も同じです。いきなりTwitterを始めるのではなく、最も成功の可能性が高い「在り方」を見きわめてから導入し、運用することが重要です。そのための第一のステップが市場分析となります。

市場分析は大きく、外部環境分析と内部環境分析の2つに分類されます。
外部環境分析では、市場の機会と脅威を把握することが目的です。経済動向や法改正といったマクロ環境、ターゲットとなる顧客の趣味嗜好、競合となる企業の動向を知ることで、自社にとっての機会と脅威を把握します。
一方の内部環境分析では、自社でコントロール可能な経営資源について分析を行うことが目的です。ヒト、モノ、カネ、情報の他、企業文化や業界内での地位といった自社の強みや弱みを明らかにしていきます。
出版業界・雑誌ビジネスの環境を知り、どんな競合がどんな価値を提供しているか、自社にはどんな強みがあるかを知ることは、生活者のニーズにあった製品・サービスを提供するためには欠かせない第一歩です。

市場分析分類

実施方法:3C分析

では、ここから具体的な実施方法として、市場分析における要ともいえる3C分析をご紹介します。
3C分析とは、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から市場を把握・整理する手法です。提供価値に対価を払ってくれる顧客から始め、次にシェアを奪い合う競合、最後に自社の強みについて分析します。

分析分類

顧客分析では、顧客のニーズや年齢層、サービス利用までのプロセス、消費傾向、可処分所得や時間を分析します。分析した結果を基に重要購買決定要因(KBF=Key Buying Factor)を導き出します。
競合分析ではまず競合相手の整理をします。ここで注意すべきことは、市場の捉え方によって競合相手が変わることです。そういう意味では実は真っ先に「戦いの場」を決める必要があります。Webメディア化においては、他社の媒体のみが競合ではなく、SNSやオウンドメディア、動画閲覧サイトも競合相手になり得ます。その上で、競合の戦略や強み・弱み、売上、顧客数を分析します。
自社分析については、前回のコラムでもさわりをご紹介いたしました。高い編集能力とコンテンツという武器、またコアなファン読者という強みです。自社については力を入れて調査を行うことができるはずです。ことに編集部の話だけではなく、自社の経営方針、経営資源等を含めて全般的に強み・弱み、を定量的、定性的に整理します。なお競合分析と同様、市場によって捉え方が変化することは要注意です。例えば新しい分野に拡げようとする場合、コアなファンは味方になる場合も敵となる場合もある点は注意が必要です。

以上の3点から分析を行うことで、「規模は小さくとも、コンテンツを活かせる市場」などWebメディア化をすすめる上での大きなヒントが得られることでしょう。

市場分析事例 Myゴルフダイジェスト

上記3C分析の事例として、DNPと株式会社ゴルフダイジェスト社が協業して立ち上げた、会員制サービス「Myゴルフダイジェスト」を基にしてご紹介します。

Myゴルフダイジェストのサービス 構築に際しても、入念な市場分析を行っています。

【市場・顧客分析】

調査・把握:アンケートや専門機関への委託、デモグラフィックデータを基にしたゴルファー総人口や年齢層、プレイヤーの消費動向、情報入手経路を調査。
分析:ゴルファーは増加傾向にあり、30~50歳代が中心、情報はデジタルメディアから入手しているが情報があふれて取捨選択に迷っている。

分析例

市場・顧客分析例

【競合分析】

調査・把握:ゴルフ市場をギア・レッスン・トーナメント・プレーに分類し、Webメディアや雑誌媒体の特性を調査。
分析:雑誌記事を中心とした優良なゴルフコンテンツを提供する定額課金制モデルはチャンスがある。

競合分析例

競合分析例

【自社分析】

調査・把握:プロジェクトメンバーや編集部員といった社内メンバーの他、第三者目線としてDNPも加わり、自社の強み・弱みを整理。また会社の中で最もリソースを割いている業務を整理し、定量的な分析も実施。
分析:ブランド力、取材力・編集力、質の高いレッスン記事、バラエティに富んだコンテンツが強みである。

自社分析例

自社分析例

以上、Webメディアを始める第一歩となる市場分析について3C分析をもとに考えてきました。しかし、調査はあくまで実態の把握でしかありません。
次回コラムでは、改めて「顧客」にフォーカスをあて、Webメディア化するにあたっての6つのステップ【2】STP分析、【3】サービスの設計を、今一度上記ゴルフダイジェスト社の取組みも交えつつ見ていきます。

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