企業のSDGs取り組み事例集|企業価値につなげるには?
SDGsへの対応を求められているものの、「何から手をつければよいかわからない」「他社はどんなことをしているのか」と感じている担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、SDGsの基本整理から企業が取り組む理由・メリット・具体的な事例まで、実務に役立つ視点でご紹介します。当社(大日本印刷株式会社、以下DNP)が自社で実践している取り組みも交えながら、SDGsを企業価値につなげるヒントをお伝えします。(2026年5月公開)
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目次
1. SDGsとは?
2. 企業がSDGsに取り組まなければならない理由
3. 企業がSDGsに取り組む5つのメリット
4. 大日本印刷のSDGs取り組み事例
5. 企業がSDGsに取り組む際の注意点
6. 企業がSDGsを始めるには?
7. SDGsはサプライチェーン全体で取り組む時代へ
8. まとめ
SDGsとは?
SDGsとは、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略称です。
2015年の国連サミットで採択された国際目標で、地球上のあらゆる課題(環境破壊、貧困、格差、人権問題など)に対して、世界が力を合わせて解決していこうという取り組みです。
「誰一人取り残さない」を基本理念に掲げています。
SDGsの17の目標と達成期限
SDGsは17のゴールと169のターゲットで構成されています。達成の期限は2030年です。世界はすでに後半戦に入っており、目標達成に向けた対応の加速が求められています。
17の目標は以下のとおりです。
- 1.貧困をなくそう
- 2.飢餓をゼロに
- 3.すべての人に健康と福祉を
- 4.質の高い教育をみんなに
- 5.ジェンダー平等を実現しよう
- 6.安全な水とトイレを世界中に
- 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 8.働きがいも経済成長も
- 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
- 10.人や国の不平等をなくそう
- 11.住み続けられるまちづくりを
- 12.つくる責任つかう責任
- 13.気候変動に具体的な対策を
- 14.海の豊かさを守ろう
- 15.陸の豊かさも守ろう
- 16.平和と公正をすべての人に
- 17.パートナーシップで目標を達成しよう
企業としてSDGsに取り組む場合、17の目標すべてに対応する必要はありません。
自社の事業・強みと関連の深い目標を選び、そこに集中することが現実的な進め方です。
SDGsとCSR・ESGの違い
SDGsとCSR・ESGは、似た文脈で使われることが多いため、それぞれの違いを整理しておきます。
CSRは、「企業の社会的責任」を意味し、企業が社会や環境に対して責任ある行動をとるという考え方です。
SDGsと方向性は近いものの、CSRは企業側の姿勢・行動を指し、SDGsは世界共通の「目標」を指します。
ESGは、環境・社会・企業統治(ガバナンス)の頭文字を取った言葉で、もともと投資家が企業を評価する際の基準として広まりました。
企業が長期的に持続できるかどうかを、この3つの観点から判断するための指標です。
- SDGs
- 「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略称。地球上のあらゆる課題(環境破壊、貧困、格差、人権問題など)に対して、世界が力を合わせて解決していこうという取り組み
- CSR
- 「企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)」を意味し、企業が社会や環境に対して責任ある行動をとるという考え方
- ESG
- 「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」の頭文字を取った言葉で、もともと投資家が企業を評価する際の基準
SDGsはゴール、CSRはその実践姿勢、ESGは評価軸という関係に整理すると、それぞれの役割が見えやすくなります。
詳細は下記コラムもご参照ください。
企業がSDGsに取り組まなければならない理由
SDGsは社会貢献の文脈で語られることが多いですが、今やビジネスの現場にも深く関わるものになっています。
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DNPが実施した「企業におけるSDGsへの取り組み実態と課題に関する調査」では、取引先からSDGs・ESGの開示を求められた経験がある担当者は45.5%にのぼりました。
また、取引先によるサプライヤー審査・評価を受けた担当者は40.6%、投資家・金融機関からESG対応を求められた担当者は37.6%と、取引・調達・資金調達のあらゆる場面でSDGsやESGの対応が問われていることがわかります。
法律・ルールの変化が取引条件に直結している
企業を取り巻くルールは、着実に変わっています。
たとえばEUでは、企業が自社だけでなく取引先の人権・環境への影響まで調査・対処することを義務づける規制の整備が進んでいます。
日本でも、企業が毎年提出する有価証券報告書に、人的資本や気候変動リスクといった財務以外の情報を記載することが求められるようになりました。
こうしたルールの変化に対応できる体制を整えておくことが、今後の取引競争力に関わってくるでしょう。
投資家や銀行がSDGs・ESGへの対応を重視している
投資家や銀行が企業にお金を出す際に、環境・社会・企業統治への取り組みを重視する「ESG投資」が世界的に広がっています。
環境問題や人権問題への対応が不十分な企業は長期的なリスクが高く、安定した成長が見込みにくいと判断されるためです。
こうした評価の中で、企業のSDGsへの取り組みも重要な要素のひとつとして見られるようになっています。
今回の調査でも、37.6%の担当者が投資家・金融機関からESG対応を求められた経験があると答えています。
SDGsへの取り組みを条件にした融資メニューを用意する金融機関も出てきており、対応の有無が資金調達の条件に影響するケースも生まれています。
求職者・社員が「SDGsへの姿勢」で会社を選んでいる
採用の場面でもSDGsへの姿勢が問われるようになっています。
同じくDNPの調査では、採用活動の中でSDGsについて候補者から質問を受けたことがある担当者が26.7%、社員からSDGsへの取り組みについて意見・要望が上がったことがある担当者が25.7%いました。
社会課題への関心が高い若い世代が増えるにつれ、SDGsへの取り組みは採用ブランドの重要な要素となっています。
企業がSDGsに取り組む5つのメリット
SDGsは対応が求められる一方で、しっかりと取り組むことで企業にとっての恩恵にもなります。
5つのポイントをご紹介します。
①会社の信頼やブランドイメージが上がる
SDGsへの取り組みを社内外に発信することで、顧客・取引先・地域社会から信頼が積み上がっていきます。
消費者庁の「令和7年度第2回消費生活意識調査結果について」
では、エシカル消費に取り組む理由として「同じようなものを購入するなら環境や社会に貢献できるものを選びたい」と回答した人が57.5%にのぼりました。
また、10〜30代では「環境や社会に貢献した満足感・心理的充足感が得られる」「ストーリー性に共感する」といった理由を挙げる割合が高く、若い世代ほど企業の姿勢や背景にあるストーリーを重視する傾向がうかがえます。
SDGsへの取り組みを丁寧に発信することが、幅広い層からの共感やブランドへの信頼につながるでしょう。
②投資や融資を受けやすくなる
SDGsへの取り組みは、環境・社会・企業統治への対応として評価され、投資判断や融資条件に影響します。
その結果、評価の高い企業ほど投資先として選ばれやすく、資金調達の面で有利に働く可能性があります。
③新しいビジネスチャンスが生まれる
社会課題を「解決すべき対象」として捉えると、新たな製品・サービス・市場が見えてきます。
フードロス削減を目的に開発された断熱ボックスや、コミュニケーションに障害のある方を支援するシステムなど、SDGsを起点にした製品開発が新しい顧客層や市場を切り開く事例も生まれています。
④優秀な人材を採用・定着させやすくなる
SDGsへの取り組みは採用ブランドとして機能し、社会貢献意識の高い人材を引きつけます。
自分の仕事が社会課題の解決につながっていると感じられると、日々の業務に意味や目的を見出しやすくなります。
こうした「仕事の意義感」は社員のモチベーションや会社への愛着を支える重要な要素であり、離職率の低下にも寄与すると言われています。
⑤事業リスクに強くなる
気候変動リスクや人権問題、材料の調達ルートの混乱は、どの業種の企業にも影響を及ぼす可能性があります。
自然災害による原材料の調達や工場の操業に支障、取引先での人権問題発覚による取引停止など、リスクの形は様々です。
SDGsの視点で自社の事業活動を定期的に点検し、こうしたリスクをあらかじめ把握・対処しておくことが、長期的な経営の安定につながります。
大日本印刷のSDGs取り組み事例
SDGsへの取り組みをどう実践するかについて、DNPの事例を通じて具体的な姿をご紹介します。
DNPは印刷技術を核に多岐にわたる事業を展開しており、自社の強みと社会課題を結びつけたSDGsへの取り組みを継続しています。
事業所内の緑地づくり
DNPは、工場や事業所の敷地内に緑地を整備し、生き物が暮らしやすい環境づくりに取り組んでいます。
単に木を植えるだけでなく、もともとその地域に生えている植物を活用したり、生き物の生息環境を維持したりするなど、地域の自然と調和することを意識した取り組みです。
フェアトレード活動
DNPは、フェアトレードの普及・啓発にも取り組んでいます。
フェアトレードとは、途上国の生産者が安い賃金で働かされることなく、適正な対価を受け取れるようにする仕組みのことです。
DNPはフェアトレード認証製品の積極的な活用が評価され、「フェアトレード・ワークプレイス ゴールド」に登録されています。
学びの場をつくる教育支援
DNPは、小中学生向けの出張授業・ワークショップに加え、ゲームを活用した体験型の教育コンテンツ開発にも取り組んでいます。
関西電力と協力し、Minecraftを通じてダムや水力発電の仕組みを学べる教育ワールド「HYDROCRAFT」を開発しました。
ゲームの中でダム操作や発電ミッションに挑戦しながら、再生可能エネルギーへの理解を深められる点が特徴です。
開発途上国教育支援
DNPは、社員が参加する形で途上国への支援活動を続けています。
社員がボランティアでシールを手貼りした翻訳絵本をカンボジア・ミャンマー・アフガニスタンなどに寄付する活動は2017年から続き、累計699冊を届けています。
また、社員から集めた書き損じはがきを国際協力NGOジョイセフに寄付し、アフリカなどでの安全な出産支援にも役立てられています。
チャリティーイベントへの協賛
DNPは、2018年からサンタクロースに扮して楽しみながら国内外の子どもたちを支援するチャリティーイベントに継続して協賛しています。
収益金の一部は、病気で入院中の子どもたちへのクリスマスプレゼントや、貧困により満足な医療を受けられないアフリカ地域の子どもたちへの医療支援に役立てられます。
DNP対話支援システムの開発
DNPが開発した対話支援システムは、窓口での会話をリアルタイムで文字化し、感情や話題に合わせたフォントで透明スクリーンに表示するツールです。
アイシンの音声認識技術と連携し、23言語のリアルタイム翻訳にも対応しています。
耳が聞こえにくい方や高齢者、日本語がわからない外国人との円滑なコミュニケーションを支援しています。
DNP多機能断熱ボックスの開発
DNP多機能断熱ボックスは、電源を使わずに冷蔵車に匹敵する保冷性能を発揮する梱包資材です。
DNP独自の真空断熱パネルと熱設計技術により、長距離輸送でも庫内温度を安定して維持します。
輸送中の温度管理が適切に保たれることで食品ロスや医薬品廃棄の削減につながります。
第28回地球環境大賞の大賞を受賞した商品です。
デザインとサステナビリティを両立するパッケージの提供
DNPは、デザイン性を損なわないサステナブルパッケージを提供しています。
PETボトルと機能性フィルムを一体成形した「コンプレックスボトル」はガラスびんの代替として輸送時のCO2削減に貢献します。
紙素材を使用した「DNPラミネートチューブ 紙仕様」は、石油由来プラスチックの使用量を削減できる環境配慮型の容器です。
顧客企業のSDGs対応を支援できる点でも意義があります。
企業がSDGsに取り組む際の注意点
SDGsへの取り組みを始める際には、いくつか気をつけたい点があります。
形だけ整えて中身が伴わない状態では、信頼につながりにくいだけでなく、かえってリスクになることもあります。
「やっているふり」にならないために
「SDGsウォッシュ」という言葉があります。
実態を伴わないまま、SDGsへの取り組みを過剰にアピールする行為のことです。
たとえば、環境配慮をうたったパッケージに切り替えただけで、製造工程の改善は何もしていない、というケースがSDGsウォッシュに当たります。
発信内容と実態がかけ離れていると消費者や取引先から疑問を持たれやすく、ブランドへの影響が生じる可能性があります。
本業とつながった取り組みが評価される
SDGsへの取り組みとして評価されやすいのは、自社の事業・強みと結びついたものです。
印刷・情報加工を本業とするDNPが対話支援システムや断熱パッケージを開発することは、その一例といえます。
本業とかけ離れた社会貢献活動も意義がないわけではありませんが、事業の中核とつながった取り組みほど継続性があり、関係各所にも伝わりやすいものです。
企業がSDGsを始めるには?
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企業の担当者に勤める会社のSDGsへの取り組み状況を伺ったところ、取り組みを始めているものの目標設定まで至っていない企業が21.8%、現在検討中の企業が5.9%と、合わせて約28%の担当者がまだ具体的な方針が定まっていない状況です。
まず何から始めるかが整理できれば、取り組みは前に進みやすくなります。
3つのステップでご紹介します。
①SDGsを理解し、自社の優先課題を絞る
17の目標すべてに取り組む必要はありません。
まず自社の事業・製品・サービスが17の目標のどれと関連しているかを洗い出し、優先して取り組む目標を2〜3に絞るところから始めるのが現実的です。
自社が社会に与える影響という視点で課題を探すと、本業と重なる課題が見えてきます。
②目標を決めて、経営計画に落とし込む
取り組む目標が決まったら、数値目標と進捗を測るための指標を設定します。
「CO2排出量を2030年までに30%削減」のように、測定できる形にすることで、進み具合を確認しながら取り組みを続けやすくなります。
担当部署・予算・スケジュールまで決め、経営計画の一部として位置づけることで、形だけになることを防げるでしょう。
③取り組みを実行し、結果を社内外に発信する
計画を実行しながら定期的に見直しを行い、その成果をWebサイトやサステナビリティレポートで発信することが大切です。
取り組みを公開することで外部からの意見も得られ、取り組みがより充実したものになっていきます。
社外に向けて発信できる状態にすることを意識すると、実態を伴った取り組みへとつながっていきます。
SDGsはサプライチェーン全体で取り組む時代へ
SDGsへの対応は自社内にとどまらず、サプライチェーン全体へと広がっています。
投資家や取引先は、自社の取り組みに加え、取引先・調達先を含めたサプライチェーン全体の対応状況も評価する傾向があります。
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しかしながら、企業の担当者にSDGsへの取り組みを進める上での課題について伺ったところ、サプライヤーまで巻き込む対応が難しいという課題を挙げた担当者が47.5%と、回答選択肢の中で最多でした。
多くの企業がこの点に難しさを感じていることがわかります。
取引先からSDGs対応を求められる企業が増えている
前述のとおり、DNPの調査では45.5%の担当者が「取引先からSDGs・ESGの開示を求められた経験がある」と回答しました。
サプライヤー審査・評価を受けた経験がある担当者も40.6%にのぼっています。
SDGs・ESGの対応は自社の問題であると同時に、取引先からの評価基準にもなっているという実態があります。
サプライヤーの対応まで含めて評価される
温室効果ガスの排出量についても、国際的な基準であるScope3では、自社の操業由来の排出だけでなく、調達先や物流、廃棄段階における排出まで含めたて把握・開示することが求められます。
人権面でも取引先への調査・確認が必要な場面が増えており、自社だけでなくサプライチェーン全体での対応が重要です。自社は対応できていても取引先の状況を把握できていないと、投資家や取引先からの評価を得にくくなる恐れがあります。
サプライヤーを巻き込むことでSDGs対応が完成する
自社だけでSDGsを進めても、取引先・仕入れ先を含むサプライチェーン全体の課題が解決されなければ、外部からの評価には限界があります。
取引先とSDGsの目標を共有し、継続的に情報交換・改善できる体制を整えることが、本当の意味でのSDGs対応です。
ただし、多数のサプライヤーを抱える企業にとって、決して簡単なことではありません。
前述の調査によると、課題として「社内での理解・共有が進んでいない」を挙げた担当者が40.6%、「効果が見えにくく継続が難しい」が29.7%と、社内の壁も高い状況です。
サプライヤーとの連携を仕組みとして整える方法
取引先への対応を担当者の個別のやりとりだけで進めようとすると、業務負担が増え続け、継続的な取り組みが難しくなります。そのため、サプライヤーとの連携を仕組みとして整えることが大切です。
こうした課題に対応するため、近年ではサプライヤーとの情報連携や排出量管理を効率化する支援サービスも登場しています。
DNPと株式会社zeveroの協業により、企業のサプライチェーン全体における温室効果ガス(GHG)排出量の削減を支援しております。
まとめ
SDGsへの対応は、大企業だけの話でも、理念だけの話でもなくなっています。
取引条件や投資・融資の判断基準、採用の場面など、企業のSDGsへの姿勢が問われる機会は広がっています。
まずは自社の事業や強みと結びついた課題を選び、スモールスタートすることが大切です。
DNPは自社での取り組みを通じて得た知見をもとに、企業のSDGs推進をサポートしています。
対応の進め方や仕組みづくりについて、お気軽にご相談ください。
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