ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.2
2026年4月、イタリア・ミラノで開催された「ミラノデザインウィーク2026」。DNPでは社員が実際に現地を訪れ、200を超えるブランドの視察・取材を行いました。各ブランドの新作や、ミラノデザインウィークでの展示の様子について、Vol.1~Vol.4まで4回に分けてご紹介します。このVol.2のコラムでは、Baxter、Flou、Living Divani、Minotti、Poliform、Poltrona Frauについてご紹介します。
すでにリリースしているミラノデザインウィーク2026に関するコラムは各リンクからご確認ください。
ミラノデザインウィーク2026 速報ハイライト
ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.1
ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.3(6月以降に公開予定です)
ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.4(6月以降に公開予定です)
2026年ミラノデザインウィークの様子、各ブランドの新作紹介
Baxter
ブランドサイト
旧映画館の空間を活かしたミラノ市内の「Baxter Cinema」にて、新作がお披露目されました。ソファ「VIKTOR SOFT」はDraga & AurelによってBaxterのアイコニックなソファが再解釈されたもので、1970年代のヴィンテージ的な着想と現代的な快適性が融合しています。Baxter Cinemaでは、ブルーグレーのコーディネートによって都会の静寂を感じさせる空間が演出されていました。また、ファブリックの張地展開は今年が初めてとのことです。
イギリスのミュージシャンSyd Barrettへのオマージュとして発表されたサイドボード「SYD」は、単なるオーディオシステムにとどまらず、収納性とユニークなデザインによって空間全体の体験を高めます。精密な木工技術により、無垢材にリズミカルなスリットが施されており、心地よい音を響かせる構造となっています。
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Photos by Baxter Srl |
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テーブル「ZAHO」とアームチェア「AIMÉE」のコーディネートは、豊かな質感のコントラストが、ぬくもりと居心地の良さを感じさせる空間に仕上がっていました。アラビア語で華やかさを意味する「ZAHO」は、脚部の彫刻的なデザインが特徴で、木の力強さと存在感を際立たせています。昨年発表されたChristophe Delcourtによるデザインの「AIMÉE」は、新たに座面を高く設計したバージョンが披露されました。ゆるやかな曲線が身体をやさしく支え、包み込むような座り心地を生み出しています。
Baxterを代表するソファ「CHESTER MOON」には、今年の新色としてマスタードイエローの張地が採用されていました。キルティングの技巧によって生まれる陰影が、空間に豊かな奥行きをもたらしています。
Draga & Aurelによるソファ「NADIR」は、単なる寝具家具にとどまらず、さまざまな過ごし方を生み出す存在です。休息という行為を現代的なランドスケープとして再定義し、側面には収納機能も備えています。横たわるだけでなく、座る、寄りかかるといった多様な使い方が可能で、寝室におけるウェルビーイングを高めるデザインだと感じました。
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Photos by Baxter Srl |
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Text by Chihori Kunito
Flou
ブランドサイト
Matteo Nunziatiはサルヴィオーニ・ミラノ・ドゥリーニ店のウィンドウに、Flouのためのインスタレーションを発表しました。自然の造形に着想を得た「Gaudí」コレクションを主軸に、木材の有機的な質感とLED照明により、没入感のある建築的な空間に仕上げています。本展示では、新作「Gaudí Le Grand」ベッドと「Gaudí」モジュールソファを中心に、家具と建築の境界を越えた連続的な空間を演出。美しさと機能性、日常と非日常が調和する、感覚的かつ詩的な環境を提案します。
「Gaudí Le Grand」は、既存の人気モデル「Gaudíベッド」を再解釈したデザインです。オリジナルの特徴や個性を受け継ぎながら、存在感やボリューム感を見直し、新たな魅力を生み出しています。単なるバリエーションではなく、独立したデザインとして再構築されており、フォルムやバランス、プロポーションを刷新。ヘッドボードやベースの流れるようなラインはオリジナルを踏襲しつつ、より構築的で、堂々とした印象へと昇華されています。
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Photos by Flou |
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2026コレクションは、素材への細やかなこだわりと、構成力のある豊かなデザインによって、リビング空間と寝室空間の質を高めることをテーマとしています。これらのアイテムは、「唯一無二」であることを大切にし、控えめで現代的なラグジュアリーを表現する特別な空間のためにデザインされています。ここでいうラグジュアリーとは、単なる美しさにとどまらず、優れた品質と高い快適性によっても定義されるものです。暮らすことそのものが喜びとなり、日常がひとつのアートとなるような空間を創り出すことを重要視しています。
画像2枚目の「Arkena」は、体だけでなく心まで受けとめるように設計されたアームチェアです。無垢材で構成された彫刻的なアームレストが特徴で、包み込むような形をつくっています。これは単なる支えではなく、空間の印象やこの椅子の個性そのものを形づくる重要な要素です。木の力強さとクッションの柔らかさが調和し、見た目と座り心地の両面で上質なバランスを実現します。
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Photos by Flou |
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Text by Fumika Yoshikura
Living Divani
ブランドサイト
2026年のコレクションは、単なる新作発表の場ではなく、一貫性と多層性を備えた「住まいのあり方」として構成されています。Piero Lissoniによる新作ソファ「The Edge」は、家具が空間を占有するのではなく、空間の境界を定義する存在として設計されています。その前に配されたコーヒーテーブル「PAGODA」は、David Lopez Quincocesによるデザインです。塔(パゴダ)の建築をイメージし、複数の平面が重なり、ずれながら配置される構成によって成り立っています。用途に応じて天板を動かすことが可能で、機能性も高いデザインです。
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Photos by Living Divani |
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Piero Lissoniによるデザインの新作ソファが、もう1点リリースされています。「Neera」は、厳格さと軽やかさのバランスから生まれたデザインで、ふっくらとした背面とアームレストが45度で切り替わることで、スタイリッシュな印象も兼ね備えています。シンプルでありながらダイナミックな造形が特徴です。
また、前述した「PAGODA」のように天板が動くコーヒーテーブルとして、もう1点、Studio Adoliniによるデザインの「Orbi」にも注目です。建築的なベースの上に回転する大理石の天板が載せられ、360度回転する動きによって円と正方形の間にダイナミックな対話を生み出します。二つの幾何学形態が交差する、日食のような関係性が表現されています。
これらの家具は、空間の中で単なる家具として存在するにとどまらず、そこに住まう人々の動きに寄り添いながら可変する、ユニークな提案となっていました。
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Photos by Living Divani |
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Text by Chihori Kunito
Minotti
ブランドサイト
今年もフィエラ会場に出展したMinottiは4500㎡の広大なスペースにて、1970 年代の「感性の豊かさ」と1990 年代の「抑制された知性」を現代の視点で融合させたコレクションを発表しました。Giampiero Tagliaferriデザインの新作ソファ「ORION」は、アメリカ人建築家のJohn Lautnerの建築にオマージュをささげ、自律的なマイクロアーキテクチャーとして従来の枠組みにとらわれない自由な構成を生み出します。その名の通り、星座を彷彿とさせる抽象的なパターンを描き出し、長方形、正方形、台形など多角的なモジュールの幅広いラインナップが展開されています。そしてこのソファとの対話で生まれた「Orion Coffee Table」は、長方形、台形、正方形のバリエーションで展開され、流動的で多様なレイアウトの創出を促します。薄い台座と厚めの天板により、ラインとボリュームのバランスが際立つデザインです。
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Photos by Minotti |
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続いてご紹介するのは、同じくGiampiero Tagliaferriによるダイニングテーブル「Brutalist」です。不規則な「星形」に形づくられた、彫刻的なコンクリートベースが特徴です。イタリアの建築家Pier Luigi Nerviの代表作である、トリノのパラッツォ・デル・ラヴォーロに着想を得た構造を有しています。サローネ会場では、「Brutalist」に合わせて、Inoda+Svejeデザインの新作アームチェア「Giulietta」がコーディネートされていました。逆U字型の脚部とアームレストが特徴で、流れるように連続するフォルムを形づくっています。
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Photos by Minotti |
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Text by Chihori Kunito
Poliform
ブランドサイト
PoliformはPalazzo Clericiの中庭にて、studioutteによるインスタレーション「Multitude」を発表しました。都市の中にひっそりと息づく庭園のようなこの空間には、高さ5メートルのアルミポールが心地よいリズムで並び、竹林を思わせる穏やかな雰囲気を醸し出しています。その中に置かれたアウトドアコレクションは、主張しすぎることなく、静かに佇みながら見る人の心にそっと入り込んできます。ランタンの灯りや、スモークの演出が加わることで、東洋的な祈りにも似た幻想的な空気が漂い、時間の流れがゆるやかに感じるのです。暗い空間の中で、明るいトーンの家具がやわらかく浮かび上がる対比も印象的で、空間とプロダクトが自然に調和しています。体験としてのデザインの魅力を、静かに語りかけてくれるような展示となっていました。
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Photo by Poliform |
海辺で過ごすひとときの穏やかさを、そのまま形にしたようなソファ「SHORE」。Jean‑Marie Massaudによる新作は、アウトドア空間を静かに楽しむためのソファです。貝殻を思わせるやわらかなフォルムは、周囲の風景に自然に溶け込みながら、光や風をやさしく取り込みます。背もたれやアームレストに用いられた手仕事の編み込みロープは、波のような動きを感じ、どこか海を想起させます。その表情は軽やかでありながら温もりがあり、肩の力を抜いて過ごせるリラックスした時間へと導いてくれるのです。また、構造にはアルミニウムやチーク無垢材が用いられ、クッションにはリサイクルポリエステルを採用するなど、屋外での快適性と環境への配慮も両立しています。 シンプルでありながら奥行きのある佇まいは、庭やテラスを単なる屋外空間から、心を整えるための特別な場所へと変えてくれるのです。
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Photos by Poliform |
続いてインテリアコレクションの新作をご紹介します。コンパクトな空間にも美しく寄り添うテーブル「VORTICE」は、彫刻のような存在感と軽やかさをあわせ持つプロダクトです。Jean‑Marie Massaudによってデザインされたこの新作は、現代のダイニングにふさわしいエレガントな要素と実用性を、見事に両立させています。印象的な中央のメタルベースから、そこに組み合わされる大理石やウッドのさまざまなマテリアルの天板まで、いずれも職人が丁寧な手仕事で仕上げることで素材本来の魅力を引き出しています。造形による美しさと素材の美しさが調和した「VORTICE」は日々の食事を優雅に彩る存在となっていました。
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Photos by Poliform |
Text by Taisuke Watanabe
Poltrona Frau
ブランドサイト
Poltrona Frauは新コレクション「True Over Time」を発表しました。テーマは「時間を超えて本質を保ち続けるデザイン」であり、世代を超えて使われ、意味や価値を伝える家具を提案しています。 Poltrona Frauにとって「耐久性」とは、単なる素材の強度や職人技にとどまらず、時間の中で意味を保ち、伝え続けるデザインの力を意味します。
Jean-Marie Massaud デザインの「Archibald Sofa System」はブランドを象徴するアームチェアをモジュール式ソファへ進化させたコレクションです。ゆったりとした大きめの座面と柔らかな曲線、クッションを使わない一体型の背もたれが特徴です。各エレメントは単体でも機能し、直線型やコーナー型など自由な組み合わせが可能で、時間とともに生活に合わせて配置を変えられる柔軟な設計となっています。現代のライフスタイルに寄り添い、長く愛され続けるデザインを体現するソファシステムです。張地はPelle Frau®レザーまたは取り外し可能なファブリックから選べます。
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Photos by Poltrona Frau |
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「Abigail」はRoberto Lazzeroniによる新作ダイニングテーブルで、素材本来の美しさを際立たせるミニマルなデザインが特徴です。丸みを帯びた長方形の大理石天板と、テーパーを施した無垢アッシュ材の脚を組み合わせることで、軽やかさと安定感を兼ね備えたフォルムを実現しています。装飾を削ぎ落としたクリーンなラインと有機的なバランスにより、さまざまなダイニングシーンに自然に調和します。3サイズ、複数の素材と仕上げバリエーションを備え、高い汎用性を持つ製品です。画像2枚目はブランドの今年の新素材として加わった大理石「Ombra di Caravaggio」です。セルビア産の本素材は、温かみのあるグレーの地色に、豊かで深みのある赤褐色の脈が美しく映えることが特徴です。「Abigail」は、時を経ても価値を保ち続けるデザインというブランドの理念を体現するプロダクトです。
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Photos by Poltrona Frau |
Text by Fumika Yoshikura
編集後記
2026年のミラノデザインウィークも、昨年に引き続き世界中から多くの人々が訪れ、街全体が活気にあふれていました。フィエラ会場の熱気はもちろんのこと、市内各所で展開されるフォーリサローネの盛り上がりも年を重ねるたびに存在感を増しており、今年も目が離せないものとなっています。ブランドやデザイナーにとどまらず、多様なプレイヤーが加わることで、ミラノという都市そのものが一つの表現の舞台になっているようです。
中でも、マクドナルドやコカ・コーラといった企業の参加は象徴的で、ミラノデザインウィークがすでに「国際家具見本市」という枠を大きく超えていることを印象づけています。プロダクトや空間に限らず、人々の暮らし全体に関わる視点からデザインが提示される、まさにライフスタイルにおけるデザインの祭典へと進化しているように思いました。
一方で、インテリアそのものに目を向けると、全体の潮流はより静かで本質的な方向へと進んでいる印象を受けます。木材や大理石、コンクリート、ガラス、タイル、金属といったさまざまな素材が用いられ、それぞれの持つ色や質感を最大限に引き出す仕上げが丁寧に施されています。そこには過度な色のコントロールや演出を加えるのではなく、素材そのものの魅力が素直に表現されていました。一見すると統一感のない組み合わせであっても、素材が素材らしくあることで、空間には自然と調和が生まれています。それは人為的につくられたものではなく、素材の持つ力によって導かれるような心地よさでした。
人の暮らし方も、空間のあり方も、より「ありのまま」であることへと向かっている、そのような気配を今年のミラノで強く感じました。デザインの領域が広がり続ける一方で、その根底には静かに本質へと立ち返ろうとする意識があるように思います。
Text by Taisuke Watanabe
Editor紹介
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- Chihori Kunito(大日本印刷 モビリティ&リビング事業部)
ミラノサローネなどの海外展示会や北欧のライフスタイルをリサーチし、トレンド情報を発信するセミナーやWebでのレポート記事を執筆している。またDNP 5Stylesの企画やコーディネート提案にも携わる。
関連資格:インテリアコーディネーター、プロモーショナルマーケター
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- Taisuke Watanabe(大日本印刷 モビリティ&リビング事業部)
国内住宅内装分野を中心にDNPオリジナルの内装加飾シートWSシリーズの開発に携わる。
ミラノサローネ他、海外の展示会にも足を運びながら、国内インテリアの向かう先を見据え、
日々開発と発信を行っている。
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- Fumika Yoshikura (大日本印刷 モビリティ&リビング事業部)
国内外の外装分野を主軸として、自社製品であるアルミ加飾パネル「アートテック・Artellion」の開発に携わる。国内を中心とした商業施設調査では非住宅製品の開発に役立て、アートテック・Artellion分野では海外の販促にも関わる。
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- 2026年6月時点の情報です。

