ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.4

2026年4月、イタリア・ミラノで開催された「ミラノデザインウィーク2026」。DNPでは社員が実際に現地を訪れ、200を超えるブランドの視察・取材を行いました。各ブランドの新作や、ミラノデザインウィークでの展示の様子について、Vol.1~Vol.4まで4回に分けてご紹介します。このVol.4のコラムでは、日本の出展ブランドに関してカリモク家具、川島織物セルコン、DAFT about DRAFT、そしてそのほか私たちが注目したインスタレーションから、ALCOVA、Artemest、Elle Decor Italiaについてご紹介します。最後に、DNPの視点で分析したライフスタイル、インテリアコーディネート、Color Material Finish(以下、CMF)のトレンドについても言及します。

すでにリリースしているミラノデザインウィーク2026に関するコラムは各リンクからご確認ください。
ミラノデザインウィーク2026 速報ハイライト
ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.1
ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.2
ミラノデザインウィーク2026レポート Vol.3

2026年ミラノデザインウィークの様子、各ブランドの新作紹介

カリモク家具 ブランドサイト
今回で5度目のミラノサローネ出展となるKarimoku Caseは、「A Thoughtful Stay」をテーマに、おもてなしの視点から空間提案を行っていました。ブースでは、家具、光、素材が調和する空間が広がり、来場者をまるでブティックホテルへと誘うような、没入感のある展示となっています。エントランスから、レセプション、ラウンジ、書斎、スイートルームへと表情が変化していく構成で、ホテルに滞在しているかのような時間の流れを感じさせます。入口ではピュアオークを基調とした明るくパブリックな空間が、奥へ進むにつれスモークドオークによる落ち着いたくつろぎの空間へと変化していくのです。世界で活躍する建築家たちのデザインと、日本の職人技によって生み出されたコレクションは、スカンジナビアの明快さと日本の感性が融合したホスピタリティ溢れる空間の鍵となっています。そこにあるのは、過度な装飾を排した抑制の美と、素材の持つ豊かな表情、そして時間の経過とともに深まる価値です。単に家具を並べるのではなく、「訪れ、休息し、思索する」という滞在の行為そのものに寄り添う、Karimoku Caseのデザインの想いが表現されていました。

Photos by Karl Tranberg Knudsen

今回発表された新作家具を2点紹介します。まずはNorm Architectsによる「N-TC01 | Task Chair」。人間工学に基づいた機能性と彫刻的でシンプルなフォルムが融合したチェアで、丸みを帯びたクッションシートと緩やかに湾曲したバックレストが、身体を自然に支えます。高さ調整機能とキャスターを備えることで柔軟なワークスタイルにも対応しながら、その佇まいは静かで控えめ。機能性と美しさを高い次元で両立させた一脚となっていました。

Photos by Karimoku Case

続いて同じくNorm Architectsによる「N-DT01 | Dining Table(Desk)」。既存モデルの建築的な造形を踏襲しつつ、よりコンパクトに再構成されたテーブルで、プロポーションや余白を緻密に調整することで、軽やかさと重厚感を同時に感じさせる造形を実現。視点によって異なる表情が現れるそのデザインは、空間の中で静かな存在感を放ちます。シンプルな機能性と素材の質感が調和することで、日常のワークシーンに落ち着きと質の高い時間をもたらしていました。

Photos by Karimoku Case

滞在体験としての空間と、そこに寄り添う家具のあり方。その双方を一体として提示した「A Thoughtful Stay」は、Karimoku Caseのものづくりが単なるプロダクトの領域を超え、空間と時間に深く関わる提案であることを示しています。静かでありながら確かな余韻を残す展示は、これからの暮らしの質を問い直す一つの指標のように感じられました。

Text by Taisuke Watanabe

川島織物セルコン ブランドサイト
ミラノデザインウィークへの出展も5回目を迎えた川島織物セルコンは、「織の地層 ― Woven Strata ―」と題した展示をPaola Lenti Milano内にて発表しました。長い時間を経て少しずつ形成される地層や鉱石を、同じく一本の糸が幾重にも重なることで生まれる織物を通して表現しています。堆積や圧縮、隆起といった地層形成のプロセスから構成されたインスタレーションは、角度や距離、光の当たり方によって絶えず変化するテキスタイルの表情を、視覚と触感の両面から体験できるものとなっていました。

Photos by Sohei Oya(Nacasa&Partners)

一見織物には見えない、新たな織物の可能性として生まれた作品をいくつかご紹介します。まずは綴織(つづれおり)によって地層の重なりを描き出した「Strata_1」です。麻、レーヨンなど、質感も太さもさまざまな素材を組み合わせながら織り重ねられた複雑で重厚な表情は、時間の堆積を思わせる奥行きとリズムを持ち、まさに地層のような存在感を放っていました。続いて、西陣織の技法「引箔」を用いた「Onyx_4」では、光沢紙に写真印刷したものを糸状に裁断し、緯糸として織り込まれています。オニキスの断面をモチーフに、鉱石が持つ透明感や、鮮やかで艶のある色彩がリアルに再現され、光の反射によって変化する、奥行きのある織表現が魅力的な作品となっていました。

Photos by Masahiro Goto

「Soil_2」は乾いてひび割れた土壁の独特な表情を、ジャカード織物で表現しています。ポリエステルの意匠糸によって乾いた質感を生み出しつつ、異なる2種類の生地を袋状に織る風通織(ふうつうおり)を用いることで、不規則な凹凸を織り出しています。硬質な印象の中に、織物ならではの柔らかさが感じられる作品でした。最後はオニキスの吸い込まれるような透明感と静謐な美しさを表現した「Onyx_5」。タフティングによる繊細な石目調の基布に2色の染料を流し込み、グラデーションで染め上げることで、層の重なりが表現されています。凛とした静けさと大胆さが強い存在感を放っていました。

Photos by Masahiro Goto

川島織物セルコンは1843年の創業以来、伝統的な手織技術と現代の機械織を融合させながら、織物の可能性を拡張し続けてきました。本展示において提示された「織の地層」という概念は、自然の堆積と同時に、同社が積み重ねてきた技術そのもののメタファーでもあります。長い年月の中で蓄積された知見と挑戦が、新たな表現として結実している点に、この展示の本質があると感じました。自然の時間と人の技術が交差することで生まれる新たな質感。それは単なる視覚的な美しさにとどまらず、空間のあり方や素材の役割そのものを問い直す、新しい提案でもあるように感じました。

Text by Taisuke Watanabe

DAFT about DRAFT ブランドサイト
ミラノデザインウィークに4度目の参加となるDAFT about DRAFTはミラノ中心部に位置する歴史的な劇場Teatro Gerolamoにてサイト・スペシフィックなインスタレーション「LAST SAMPLE」を発表しました。本プロジェクトでは、建築家・デザイナーであり、デザイン会社DRAFTの代表を務める山下泰樹氏が手がけた「No.15」チェアを紹介しています。

コンセプトは、山下氏の愛犬であるミニチュアダックスフンドの視点から椅子を見つめた体験に端を発しています。劇場中央には巨大な「No.15」チェアのオブジェが設置され、それに対峙するように舞台上には「No.15」チェアが配置されています。来場者は劇場の各階の客席や舞台上など、さまざまな場所から作品を鑑賞でき、視点によって変化する椅子の存在感や空間との関係性を体感することができます。

Photos by DRAFT

今回の展示の中心となる「No.15」チェア。構造的な明快さと快適性のバランスを追求するプロセスを経て生まれたこの椅子は、日常環境に自然と溶け込みながら、生活の中で重要な役割を担う存在として設計されています。単なる機能的な要素にとどまらず、静かに日常を支える“主役”となる存在です。 展示では、一脚の椅子が完成に至るまでのプロセスを辿ります。リサーチ資料、スケッチ、プロトタイプ、最終モデルに至るまで、試行錯誤と検証の過程が段階的に提示され、「LAST SAMPLE」へと至るプロセスが明らかにされます。

Photos by DRAFT

Text by Fumika Yoshikura

ALCOVA ブランドサイト
2018年にスタートしたデザインプラットフォームALCOVAは、今年、ミラノ市内の2会場で展示を開催しました。一つ目は、2021年・2022年のミラノデザインウィークでも会場となった、第一次世界大戦後に建設されたバッジョ軍病院。もう一つは、イタリア合理主義建築の先駆者Franco Albiniがミラノで唯一手がけた住宅ヴィラ・ペスタリーニで、今回初めて一般公開されました。歴史的背景も建築様式も異なる2つの会場は、「保存」と「再解釈」という建築的な対話を生み出し、その舞台でALCOVAは今年も、デザイナーやスタジオ、企業、教育機関が集う実験の場となりました。
バッジョ軍病院では、やや無造作に生い茂る草木に囲まれた広大な敷地の中で、病室や調理室、教会、ランドリースペースなど既存の空間を活かした展示が展開されました。歴史的建築と現代デザインが融合したサイトスペシフィックなインスタレーションは、この場所ならではの魅力を生み出していました。

Photos by Luigi Fiano e Ardesia Coco

大型ハンガーでは、ギリシャ・アテネとニューヨークを拠点とするデザインスタジオObjects of Common Interestと、建材ブランドDooorによるコラボレーション作品「Threshold」を展示。オレンジ色に光沢を放つテキスタイル製パーティションが、空間をゆるやかに仕切る「境界」となり、最小限の要素で空間を構成しています。内部は白一色で統一され、周囲の工業的な環境から切り離された、静謐な空間が広がります。本作は、「ごく小さな行為でも建築になり得る」という考えをテーマに、空間をわずかに区切るだけで人の知覚や行動が変化することを表現しています。壁のような大きな構造物ではなく、「境界」を設けるという最小限の介入によって、新たな空間体験を生み出しています。一面を白で統一した空間と柔らかな弾力をもつ床は、視覚だけでなく身体感覚にも静かに働きかけ、「今、この瞬間」に自然と意識が向かう、印象深い体験となりました。

一方、今年初めて一般公開された教会では、ブラジル人デザイナーLeo LagueとクリエイティブコレクティブVersaによる没入型インスタレーション「Devices for Connection」が展示されました。デザインを通して現代社会が抱える精神性への欲求との再接続をテーマに、テクノロジー、音響、照明、素材を組み合わせた多層的な空間を構成。荘厳な教会建築の中で、幻想的な音響と光の演出が鑑賞者を外の喧騒から解き放ち、前述した「Threshold」とは異なるアプローチで、静かに内省へと導く空間を生み出していました。

ヴィラ・ペスタリーニでは、Patricia UrquiolaがHaworthとCassinaと協働し、キュレーションしたインスタレーションを開催しました。Franco Albiniは、ヴィラ・ペスタリーニの設計において「関係性の透明性」という建築思想を体現しました。壁で空間を細かく区切るのではなく、開放的な空間の中で光や家具、建築の要素が互いに呼応し合うことで、一つの調和のとれた空間を生み出しています。この思想を出発点とした本インスタレーションでは、新たな演出を加えるのではなく、空間や家具が本来もつ魅力を丁寧に引き出すことを試みています。余計な要素を削ぎ落とすことで、Franco Albiniの建築と現代デザインとの対話を静かに際立たせていました。

Text by Chihori Kunito

Artemest ブランドサイト
イタリアのインテリアアイテムを扱うオンラインプラットフォームArtemestは、今年も歴史ある邸宅Palazzo Donizettiを舞台に、インスタレーション「L’Appartamento by Artemest」を開催しました。第4章となる今回のテーマは、「Italian Grandeur(イタリアの壮麗さ)」。5組の著名なデザインスタジオがそれぞれ異なる空間を手がけ、Artemestが厳選したイタリアの優れた職人による家具や照明、インテリアアイテムを取り入れながら、それぞれ独自の世界観を表現しました。本記事では、その中でも筆者が特に印象に残った空間をご紹介します。

まず来場者を迎えるのは、この邸宅のシンボルともいえる優美な螺旋階段。階段の踊り場にはシャンデリアがあえて床置きされ、これから始まる第4章の物語へと誘うような、ロマンティックな演出が施されています。階段を上がると最初に現れるのが、Sasha Adler Designが手がけた「The Vestibule and The Reading Room(エントランスホールと読書室)」です。現代的なヴェネツィアの中庭をイメージしたこの空間では、彫刻作品のような巨大なメタルツリーを囲むようにソファがレイアウトされています。人々が自然と腰を下ろし、会話を交わしたくなるような、心地よいコミュニケーションの場が描かれていました。

Photos by Manfredi Gioacchini

続いて紹介するのは、MAWD(March and White Design)が手がけた「The Grand Salon」。ローマの壮麗さと豊かな芸術的遺産に着想を得たこの空間は、光と影が織りなすドラマティックな演出によって構成されています。バロック絵画に見られるキアロスクーロの表現を取り入れ、光と影の鮮やかなコントラストが、幾何学的なフォルムややわらかな曲線、重なり合う素材の質感を際立たせています。キアロスクーロとは、光と影の強いコントラストによって立体感や奥行きを生み出す表現技法のことをさします。

気品漂うバーガンディーレッドを基調とした空間の中心には、背中合わせにレイアウトされたソファを配置。窓側に腰を下ろせばやわらかな自然光を感じられ、反対側に座れば壁面を彩るアートやオブジェへと自然に視線が向かいます。座る向きによって異なる情景を楽しめるような、巧みなレイアウトが印象的でした。

Photos by Manfredi Gioacchini

最後にご紹介するのは、Urjowan Alsharif Interiorsが手がけた「The Alcove」。芸術や伝統工芸、そしてトスカーナの田園風景が醸し出すロマンティックな雰囲気に着想を得た、現代的なフィレンツェの隠れ家を思わせる空間です。心身を休め、穏やかな時間を過ごすための場所としてデザインされています。窓辺に設えられたバスルームには、やわらかな自然光が静かに差し込み、バスタブに生けられた草花が詩情豊かな情景を生み出しています。バスタブに植物をあしらうという現実離れした演出でありながら、不思議と違和感はなく、まるで映画のワンシーンを目の当たりにしているかのよう。思わず足を止め、その美しさに見入ってしまう、物語性に満ちたスタイリングが印象的でした。

Photos by Manfredi Gioacchini

Text by Chihori Kunito

Elle Decor Italia
今年のテーマは「Sensory Landscape(感覚の風景)」現代人がデジタル環境の中で失いつつある「五感による空間体験」を再び中心にとらえ、住まいを単なる機能的な空間ではなく、身体で感じる風景としてとらえ直すことをテーマにしています。キュレーションはイタリアを代表する建築家・デザイナーのPiero Lissoniが担当しました。
2026年は、ELLE Decor ItaliaがPalazzo Bovaraで展開してきた展示インスタレーションの10回目の節目にあたります。雑誌メディアとしての役割を超え、「住まいの未来を実験するラボ」として蓄積してきた活動の到達点のひとつとして位置づけられていました。

画像1枚目、入口の回廊は展示空間の導入部として機能します。来場者はここから日常的なデジタル環境から離れ、感覚に意識を向けるモードへ移行します。鏡張りの空間は音と光によって非常に没入感があり、植物の感触を直接肌で感じることができました。また光の演出はその色合いが変化し、1日の時の移ろいを表現しているかのようでした。

画像2枚目の部屋では多種多様なチェアが展示されています。対して食器やカトラリーは統一されており、展示全体を貫く設計思想とされている「装飾を極限まで削ぎ落とした空間演出」が際立ちます。家具やインテリアのスタイリングを見せるのではなく、光や素材、音、温度、植栽といった要素そのものが主役となっていました。色彩は抑制され、素材の質感や空間の余白が際立つ構成となっており、訪れる人は住空間を風景のように体験します。

Photos by DNP

本展示では自然が単に装飾として配置されるのではなく、空間体験そのものを構成する存在として扱われています。
Palazzo Bovaraの中庭は「建築と植栽が交わる場所」として構成され、自然が最も強く現れるエリアのひとつと位置付けられていました。

会場内には実際の植栽に加え、自然を想起させる人工的な要素やデジタル表現が取り入れられています。画像3枚目のデジタルアートは刻々と変化するAI生成の植物を映し出していました。自然物をモチーフにしながらもさまざまな種の植物を横断したような成長を遂げるイメージはAI生成ならではの美しさのように感じました。つまり、自然を忠実に再現するのではなく、現代のテクノロジーやデザインの視点を通して再構築することで、新たな風景として提示しているのです。来場者は自然と人工の境界を行き来しながら空間を体験していきます。

Photos by DNP

Text by Fumika Yoshikura

2026年ミラノデザインウィークから見るトレンドの方向性

DNPでは取材したブランドが提示していたコンセプト、それを表現していたインテリアコーディネート、そしてそのコーディネートを構成するCMFという順序でトレンドの分析をしています。それぞれのブランドが自信を持って発信していた新たなトレンドの“点”を、DNPの視点で“線”として解釈し、今後の方向性を予測しています。

ライフスタイルトレンド

DNPでは、今年も3つのメガトレンド(数年間は続く社会的傾向)をベースに、各ブランドの出展コンセプトを分析しました。これらの方向性は、世界的なライフスタイルのトレンドを把握する上で重要な背景になると考えています。

Mega Trend 1 – Respectful(歴史や文化に敬意を)

① 歴史・文化への敬意(アールデコ)
歴史や地域文化への敬意を表現する潮流の中で、今年は「アールデコ」が注目されました。ルイ・ヴィトンでは、アールデコを代表するデザイナー、ピエール・ルグランへのオマージュとして、1921年にデザインされた家具「Celeste」を展示。2025年はアールデコ誕生100周年にあたり、当時の未来への期待感と、現代のテクノロジー時代への希望が重なるデザインとして再評価されています。

② 建築性・彫刻性
近年の家具デザインでは、建築的・彫刻的な存在感が一つの潮流となっています。ミニマルなデザインから、構造やボリュームを感じさせる表現へと移行し、建築家出身デザイナーの影響や、イタリアに根付く彫刻文化を背景に、家具そのものを空間を構成するオブジェとして、とらえる動きが広がっています。

Photos by DNP

Mega Trend 2 – Well-being & Sustainability(人や環境にやさしい暮らし)

① 素材とウェルビーイング
今年は、素材の魅力を見つめ直し、五感を通じた体験からウェルビーイングとサステナビリティを追求する提案が目立ちました。ミラノサローネ全体のテーマ「A Matter of Salone」やCassinaの「Material Intelligence」が象徴するように、素材そのものをデザインの起点とする考え方が印象的でした。

② ホスピタリティとデザイン
ホテルをテーマにした展示も多く見られ、家具を単なる機能ではなく、滞在体験そのものをデザインする要素としてとらえる提案が広がっていました。

③空間を彩る五感のデザイン
音や香りなど五感に訴える演出も数多く見られました。没入感のある空間づくりに加え、BaxterやLAGOでは音響をインテリアに取り込む提案も登場し、「音」も空間を構成するデザイン要素として注目されていました。

Photos by DNP

Mega Trend 3 – Boundless(あらゆる境界を超える)

① 食とデザイン
食をテーマにした展示も引き続き見られました。IKEAの「Food For Thought」をはじめ、AlessiやDe‘Longhiではキッチンプロダクトを切り口に、デザインの楽しさや暮らしを豊かにするライフスタイルを提案。食を通して空間やデザインの価値を再考する動きが印象的でした。

② アウトドア空間の再定義
アウトドアはインテリアの延長ではなく、独立したライフスタイル空間として提案されていました。Molteni&C、Poliform、FLEXFORMなどイタリアを代表する家具ブランドのインスタレーションにおいて、自然との調和を重視しながら、インテリアコレクションとの一体感を持たせる展示が印象的でした。

Photos by DNP

Text by Chihori Kunito

インテリアスタイル

続いて、先ほどご紹介したコンセプトが、実際のインテリアコーディネートにどのように表現されていたのかをご紹介します。鮮やかな有彩色を用いた空間を除き、今年のイタリアンモダンのインテリアスタイルは、大きく5つの傾向に分類しました。全体としては、オフホワイトやベージュ、モカ、グレーを基調とした中間色のコーディネートが多く見られました。

① Layered White
ホワイトを基調に、さまざまな素材を重ね合わせたスタイルです。色数を抑えることで、それぞれの素材が持つ質感や表情を際立たせています。

② Soft Natural
明るい木目と豊かな素材感が特徴で、昨年から継続して見られるスタイルです。昨年はリビングを中心に展開されていましたが、今年はキッチンやバスルームにも広がり、木の自然な風合いが肩ひじ張らない心地よさを生み出していました。

③ Refined Silence
ブルーグレーのファブリックやレザーを基調に、ライトグレーでまとめられた都会的なスタイルです。洗練されたカラーリングに、有機的なフォルムの家具がやわらかさとエレガンスを添えています。木質素材の存在感は控えめです。

④ Muted Mocha Urban
昨年に引き続き、ベージュやブラウン、モカカラーを基調としたローコントラストのスタイルです。マットとグロスの異なる質感を組み合わせながらも、全体として落ち着きのある上質な空間に仕上げられています。

⑤ Cinematic Elegance
彩度が高い木質素材を取り入れた、ラグジュアリーな印象のスタイルです。大理石やメタルの艶やかな仕上げが華やかさを演出し、「Respectful」でご紹介したアールデコの要素を感じさせるコーディネートも多く見られました。

Photos by DNP

Text by Chihori Kunito

Color Material Finish(CMF)

2026年のミラノデザインウィークでは、有機的な形状の家具を多く目にしました。今、自分は何がしたいのか、どんな気分なのか、感じたままにさまざまなシチュエーションに対応できる「人に寄り添う家具」がポイントだったように思います。また魅力的な素材同士から生まれる「異素材のコントラスト」も多くの新作家具やキッチンのコーディネートで見られ、素材回帰の流れを強く感じる結果となりました。

Color

ベージュ、ブラウン、ブルーグレー
カラーは全体として、ベージュ、ブラウンといったカラーの比率がさらに高まり、空間全体が温かみのある木質や土などの素材の色に近づいている印象を受けます。ここ数年増えているブラウンは徐々に彩度が高くなる傾向で、今年は赤みの強いレンガ色のブラウンで設えることにより、空間をラグジュアリーで深みのある印象にまとめていました。また数は多くないものの、ブルーグレーをテーマカラーとして採用するブランドも見られ、全体の落ち着いたトーンの中に落ち着いた爽やかさをアクセントに加える動きも確認できます。

Photos by DNP

Material

木質:オーク/エキゾチックウッド 石質:グレー/ベージュ/ダイナミック
テーブルや箱物家具などの面材に使用されるマテリアルは、木質と石質の比率がともに増加しており、温かさと高級感を両立するタイムレスなデザインが主流となっています。木質ではオークが頻繁に登場し、続いてウォールナット、アウトドア家具にはチークが使用されています。また新たな動きとして個性的な木目が特徴のウエンジやローズなど、エキゾチックウッドの増加が見られました。

Photos by DNP

石質では、ホワイトカララの白い大理石が引き続き主流である一方、グレーやベージュ系統の大理石が存在感を増しています。さらに木質と同じく個性的な模様の大理石を使った家具がさまざまなブランドから登場しており、自然が生み出したダイナミックな模様をインテリアに取り入れることで、素材そのものが空間の主役となるような表現が見られました。

Photos by DNP

Finish

ハイグロス×マット/テクスチャー表現
複数のテーブルを組み合わせてコーディネートする際、一部をハイグロスの天板にする事で空間のアクセントとして機能させる手法が多く見られました。さらに表面のテクスチャーに注目するとコンクリートに木目調の凹凸テクスチャーが施されているなど、実際の素材とは異なる質感が付与されている仕上げ加工が、新たな動きとして見られています。

Photos by DNP

Text by Taisuke Watanabe

Editor紹介

ミラノサローネなどの海外展示会や北欧のライフスタイルをリサーチし、トレンド情報を発信するセミナーやWebでのレポート記事を執筆している。またDNP 5Stylesの企画やコーディネート提案にも携わる。
関連資格:インテリアコーディネーター、プロモーショナルマーケター

国内住宅内装分野を中心にDNPオリジナルの内装加飾シートWSシリーズの開発に携わる。
ミラノサローネ他、海外の展示会にも足を運びながら、国内インテリアの向かう先を見据え、
日々開発と発信を行っている。

国内外の外装分野を主軸として、自社製品であるアルミ加飾パネル「アートテック・Artellion」の開発に携わる。国内を中心とした商業施設調査では非住宅製品の開発に役立て、アートテック・Artellion分野では海外の販促にも関わる。

  • 2026年7月時点の情報です。

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