2015年2月16日

世界最速レベルの高速ブックスキャナーによる書籍のデジタル化を開始

東京大学附属図書館蔵書のデジタル化作業で試験運用

大日本印刷株式会社(本社:東京 社長:北島義俊 資本金:1,144億円 以下:DNP)は、東京大学附属図書館の蔵書のデジタル化において、東京大学 石川正俊教授・渡辺義浩講師の研究チームと共同で開発した世界最速レベルの高速ブックスキャナーの試験運用を開始します。当スキャナーの利用により、貴重な蔵書や資料を傷つけることなく、効率的にデジタル化する手法を確立します。

【試験運用の概要】

当ブックスキャナーは、1分間に250ページという世界最速レベルで、書籍などを冊子体のまま1ページずつめくりながら撮影し、画像データとして保存します。この画像データの文字を光学文字認識(OCR)処理によってテキスト化し、検索可能なデータとして活用します。

東京大学附属図書館は、本郷キャンパスの総合図書館を大幅に拡充する「新図書館計画」の一環として、貴重な学術資料を次世代に継承し、膨大な蔵書を広く学内外の人々に活用してもらうため、デジタルデータとしての保存とその活用に取り組んでいます。

今回、DNPは、同図書館の書籍や学術資料などのデジタル化だけでなく、タイトル毎の書誌データの作成を行います。デジタル化する蔵書は、著作権が切れており、東京大学に過去所属した教員の著作物を主な対象としています。

【世界最速レベルの高速ブックスキャナー開発の背景】

電子書籍の利用が広がるなか、大学図書館では、主に特殊コレクションなどの貴重資料のデジタル化とWebサイトでの公開は行われていますが、所蔵する書籍のデジタル化については、作業や処理の時間がかかることなどから、なかなか進まないのが現状です。具体的な作業としては、書籍を分解・裁断せず冊子体のままデジタル化する必要がありますが、従来のブックスキャナーでは、文字や絵がゆがまないように、1ページずつ手でめくって平らにしてから撮影するため、読み取りに時間がかかるだけでなく、資料を破損させる可能性が高いことが課題となっていました。

紙の本から電子書籍を制作するノウハウを持つDNPは、2010年から東京大学の研究チームと共同で、この課題を解決する高速ブックスキャナーの開発を進めています。2012年には、機械による高速ページめくりの機能と、リアルタイムで書籍の3次元状態を認識する技術、高速でゆがんだ画像を補正するアルゴリズムを導入し、冊子体のまま、電子書籍の要求解像度での高速スキャンを実現しました。

 
<参考>ニュースリリース 「DNP 東京大学 世界最速レベルのブックスキャナーを開発」
http://www.dnp.co.jp/news/10061081_2482.html

 

(左) 開発した高速ブックスキャナー
(右) 高速ブックスキャナー(拡大)

【今後の展開】

世界最速レベルの高速ブックスキャナーの運用ノウハウを蓄積し、書籍のデジタル化から電子書籍等の制作まで一貫したサービスを提供して、2017年度までに10億円の売上を目指します。

また、DNPは、学術書など世の中にニーズがあるにもかかわらず重版されない本(重版未定本)について、DNPグループである丸善や図書館流通センターと連携して、大学や図書館向けに、オンデマンド印刷による必要部数での提供や、電子版の配信を行っていきます。同時に、電子書籍と紙の書籍を販売するハイブリッド書店サービス「honto(ホント)」を展開するとともに、DNPグループのリアル書店(丸善、ジュンク堂書店、文教堂)とも連携して、さまざまな場面で「読みたい本に必ず出会える」「読みたい本を読みたい形で読める」サービスの実現を目指します。

なお、本発表に関連したプレスリリースが、東京大学附属図書館から発表されています。

東京大学新図書館計画公式ウェブサイト http://new.lib.u-tokyo.ac.jp/

 
<補足> 「東京大学新図書館計画・『知の森』プロジェクト」について
東京大学では、附属図書館を中心に学内の知識基盤を再整備する「新図書館計画」を推進しています。これは、本郷キャンパス総合図書館の全面改修や新館建設によって、蔵書の収蔵能力を飛躍的に拡大させるとともに、学内のあらゆる学術情報を横断的に収集・活用・保存・提示する「知のポータル」として、図書館の役割を生まれ変わらせようという計画です。この計画の柱のひとつとなっているのが、電子図書館と伝統的図書館とを融合させ、ヴァーチャルとリアルの双方の利点を最大限に活用できる環境を構築する構想で、「知の森(デジタル・フォレスト)」をキーワードに蔵書の電子化とその活用を進めるための取り組みを行っています。

 

※ニュースリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容などは発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承下さい。

 

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