バイオマスプラスチックとは|普及における問題点やデメリットを解説

1940年代に大量生産が始まったプラスチックは、家電製品や食品用包装フィルムといった日用品から、建築資材などいろいろな用途に広がり、現在ではほとんどあらゆる製品に使用されています。そのような状況で、「内分泌かく乱化学物質による環境ホルモン問題」、「海洋プラスチックによるごみ汚染」など、プラスチックが環境に与える悪影響が世界的に大きな課題となっており、各国が厳しい規制を実施する方向で立法化が進められています。

プラスチック汚染問題は、生物の生息環境や自然の循環プロセスを変化させ、何百万人もの人々の生活・健康や食料生産能力、海洋環境などに多大な影響を与えています。

この問題には、世界各国で対策が進められていますが、本コラムではその解決手段のひとつである「バイオマスプラスチック」について詳しく解説します。

※2023年10月時点の情報です

目次

バイオマスプラスチックとは

日本バイオプラスチック協会(JBPA)の定義によれば、バイオマスプラスチックは「原料として再生可能な有機資源由来の物質を含み、化学的または生物学的に合成することにより得られる高分子材料」と定められています。バイオベースプラスチックと呼ばれることもあります。(化学的に未修飾な天然有機高分子材料は除く)

もう少し簡単にすると「原料として植物などの再生可能な有機資源を使用したプラスチック素材」と定義されます。バイオマスプラスチックは今後の環境問題を解決できると期待され、いろいろな用途で使用されています。なお、必ずしも生分解性は備えていません。

植物由来の原料としてはサトウキビ、トウモロコシ、ジャガイモのデンプンなどが主に使用されています。バイオベースプラスチックには、化石燃料ベースの材料を混ぜることもあり、75%が化石燃料ベース材料の場合もあります。

またこれらを混合した材料、または純粋なバイオベースのポリマーは、従来のプラスチックと化学的・機能的にほぼ同一の性能を発揮します。

バイオマスプラスチックの種類

バイオマスプラスチックは、以下の2つに分類されます。

・生分解性バイオマスプラスチック
・非生分解性バイオマスプラスチック

「生分解性」とは、自然環境に存在する微生物によって最終的に水とCO2に分解される性質のことです。バイオマスプラスチックの原料は植物などの有機資源を含みますから、分解されて出てくる水とCO2は、部分的には植物などが自然界から取り込んだものと考えられます。

生分解性バイオマスプラスチックは、埋め立てなどの処理によって水とCO2になるバイオマスプラスチックです。埋め立てだけでなく、河川や海洋に流出した場合もいずれ水とCO2に分解されるため、環境への負荷を小さくできます。生分解性プラスチックはバイオデグラダブルプラスチックとも呼ばれることもあります。

非生分解性バイオマスプラスチックは、微生物によって分解されることはありません。しかし、化石燃料由来のプラスチックと比べると、焼却処分をした場合に化石原料由来のCO2の排出を抑制できます。

生分解性/非生分解性バイオマスプラスチックは、現在のところ化石燃料由来のプラスチックよりも高価格という課題はありますが、今後普及していくと期待されています。

生分解性バイオマスプラスチック物質群の代表例

・PHA(ポリヒドロキシアルカン酸)
・PLA(ポリ乳酸)
・バイオPBAT(植物などの再生可能な有機資源を使用するポリブチレンアジペートテレフタレート)
・バイオPBS(植物などの再生可能な有機資源を使用するポリブチレンサクシネート)
・デンプンポリエステル樹脂

非生分解性バイオマスプラスチック物質群の代表例

・バイオPA(植物などの再生可能な有機資源を使用するポリアミド)
・バイオPC(植物などの再生可能な有機資源を使用するポリカーボネート)
・バイオPE(植物などの再生可能な有機資源を使用するポリエチレン)
・バイオPET(植物などの再生可能な有機資源を使用するポリエチレンテレフタレート)
・バイオPP(植物などの再生可能な有機資源を使用するポリプロピレン)

バイオマスプラスチックが活用されている分野

プラスチックごみになる消耗品

バイオマスプラスチックを使用した消耗品としては、スーパーマーケットやコンビニで使用されるレジ袋があります。また、各種の容器包装用品(ボトル等)への利用も行われています。

農業

農業分野では、農業用マルチフィルムなどが広く使用されています。その他、バイオマスプラスチックの使用例としては、農業機械で使用したレバーグリップを再生した再生ポリ乳酸(PLA)を使ったリサイクル苗ポットがあります。

自動車

バイオマスプラスチックを使用した自動車部品としては、ドアトリム、スペアタイヤカバー、フロアマットなどがあります。
その他、インスツルメントパネル用アンダーカバー、センターコンソールへの適用が進められています。

医療

医療でのバイオマスプラスチックの使用例として医療用縫合糸が知られています。これは、PLAを使用した糸ですが、生物吸収性や生分解性の性質を利用しています。

テキスタイル

バイオマスプラスチックを使用したテキスタイル(衣料繊維)の例としては、「バイオマスプラスチック糸(100%)を使用したジャガードプリーツ」が知られています。このプリーツは『ジャパン・テキスタイル・コンテスト2021』でエコロジー賞を受賞しています。

また、ある消費財メーカーは、植物由来の「カーボンニュートラル」に貢献するバイオマスプラスチック(PLA)を使用した製品を、国際テキスタイル見本市で発表しました。

バイオマスプラスチックの問題点・デメリット

原料生産における問題

バイオマスプラスチック用原料の生産を増加させると、食料品価格が上昇するのではないかという懸念があります。トウモロコシやサトウキビなどの食用作物由来の原料の大量使用によって、食料不足を招くというものです。

なお、欧州バイオプラスチック協会の推計によれば、2022年のバイオマスプラスチック(食用作物などの原料から作るプラスチック)の世界生産能力は220万トンです。これは土地面積で80万ヘクタールに相当します。現在のバイオマスプラスチック原料生産に必要な面積は、世界農業面積(50億ヘクタール)の0.01%強となります。

バイオマスプラスチック市場の力強い成長が続くとすれば、2027年までに630万トンに拡大すると予測されています。その場合、世界農地面積の0.06%弱の面積(約290万ヘクタール)がバイオマスプラスチック用になります。

現在、バイオマスプラスチック業界では食用作物を原料とするだけでなく、セルロースや藻類などの非食用作物、麦わらやトウモロコシ茎葉などの非食用副産物を原料にできないかという研究も行われています。

また、バイオマス用プラスチック原料の生産を増やすため、生産国での森林伐採による環境破壊が指摘されています。すでに米国/東南アジアなどでは伐採により土地が荒地に変わった例があり、問題になっています。

【参考資料】日本が調達している生分解性プラスチックの原料の生産/製造国
表1.代表的な生分解性プラスチックの原料生産及び樹脂製造国
(下表の緑色背景部が、植物由来となる)
引用元:バイオマスプラスチック導入ロードマップ(環境省、経済産業省など)

樹脂 原料 主な原料
生産国
主な樹脂
製造国
PLA 米国、タイ 米国、タイ
PLA
(PHB含む)
糖、油脂 米国、中国、東南アジア 米国、中国、日本
PBAT 石油 ドイツ、中国
バイオPBAT 糖(モノマーのうち1,4-ブタンジオール) イタリア イタリア
石油(モノマーのうち、アジピン酸、テレフタル酸) 各国
PBS 石油 中国
バイオPBS 糖(モノマーのうちコハク酸) タイ タイ
石油(モノマーのうち1,4-ブタンジオール) 各国
澱粉 ポリエステル樹脂 イタリア、中国 イタリア、中国
石油(ポリエステル) 各国

素材製造時のエネルギーの問題

バイオマスプラスチックは、主に2つの方法で製造されます。そのひとつが発酵法です。サトウキビやトウモロコシなどの植物由来の原料を発酵させ、エタノールなどの中間原料から樹脂を合成する方法です。もうひとつは化学合成法と呼ばれます。糖や油脂から化学的に合成する方法です。なお、バイオマスプラスチック(非分解性)の製造には石油などの化石原料を一部使用する場合があり、その際はエネルギー消費が増える恐れがあります。(表2参照)

【参考資料】日本が調達しているバイオマスプラスチックの原料の生産/製造国
表2.代表的なバイオマスプラスチック(非生分解性)の原料生産及び樹脂製造国・地域
(下表の黄色背景部が、石油由来となる)
引用元:バイオマスプラスチック導入ロードマップ(環境省、経済産業省など)

樹脂 原料 主な原料
生産国
主な樹脂
製造国・地域
バイオPE 糖(糖発酵により前駆体となるエタノールを合成する製法) ブラジル ブラジル
油脂(改質した油脂を石油由来ナフサと混合 しクラッキングする製法) 各国 欧州等
バイオPET 糖(モノマーのうちモノエチレングリコール) インド 各国
石油(モノマーのうちテレフタル酸) 各国
バイオPP 油脂(改質した油脂を石油由来ナフサと混合しクラッキングする製法) 各国 欧州
バイオPA 油脂(一部モノマー(セバシン酸等)) 中国、インド 中国、米国、日本、フランス
石油(一部モノマー(ヘキサメチレンジアミン等)) 各国
バイオPC 糖(モノマーのうちイソソルバイド) フランス 日本
石油(共重合成分) 各国

分解条件

バイオマスプラスチックの生分解性は、微生物の働きに依存するものであるため、プラスチックが微生物によって分解できる状態になるまでの期間や、微生物が活動しやすい環境条件か否かによって、水とCO2に分解されるまでの速度は大きく変わります。

生分解性バイオマスプラスチックのひとつであるPLAを例に取ります。PLAの分解プロセスは2段階あり、まず環境中の水分でPLA(ポリ乳酸)が加水分解によって乳酸になり、次に乳酸が生分解(微生物の働き)によって水とCO2になります。

PLAの加水分解は、温度と湿度に大きく依存します。通常の自然環境でも加水分解は起こりますが、その速度は遅く、土壌中では数年単位の時間がかかるとされています。しかし、コンポスト(堆肥)中のような60℃以上で高湿度の環境では、急速に加水分解が進むと共に活発な微生物の活動によって数カ月ほどで水とCO2まで分解されます。

リサイクルシステムに支障が出る可能性がある

このように、バイオマスプラスチックは、分解条件(温度などの環境条件や微生物の活動)に依存するため、周囲の環境次第で分解されずに残るケースが存在します。

分解されないプラスチックの処分は埋め立てや焼却する方法しかなく、その総量が大きくなるとリサイクルシステム全体を見直す必要があります。

プラスチックごみにおける環境問題に対する打ち手

バイオマスプラスチックの普及

バイオマスプラスチックは、本来「原料として植物などの再生可能な有機資源を使用したプラスチック素材」と定義されるため、カーボンニュートラルのメリットがあります。しかし、実際のバイオマスプラスチックは、石油由来の原料を混ぜた製品もあるため、カーボンニュートラルと一概には断言できません。

また、バイオマス用原料を採取後、生産・加工・輸送のために化石燃料を使用すると、その過程で温室効果ガスが排出されることになります。

さらに、バイオマス原料を得るためにトウモロコシやサトウキビの可食部が使用されると、食料が不足する事態ともなりかねません。

このようなメリットとデメリットがあることを考慮した上で、社会全体のバランスを考えて開発を進める必要があるのです。

DNPのバイオマスプラスチック技術

DNPではパッケージ向け材料として、プラスチック原料の一部をサトウキビ由来の原料に置き換えた「DNP植物由来包材バイオマテック® 」を提供しています。サトウキビから砂糖を精製する際に得られる廃糖蜜を使ったもので、石油由来原料の使用量を削減するほか、サトウキビは生育する際にCO2を吸収するため、製品ライフサイクルの全体でカーボンニュートラルに貢献します。

【バイオマスプラ識別表示制度】
バイオマスプラスチックの普及促進を目的として、日本バイオプラスチック協会は以下のような識別マーク表示を実施しています。

バイオマスプラスチックの識別マークの表示基準には、3つの条件があります。

1) 指定のバイオマス由来の合成高分子化合物、または指定のバイオマス由来の熱硬化性プラスチックのバイオマス由来成分を、25.0重量%以上含むこと。
2) 全ての構成材料(成分)が、協会指定の使用禁止物質に該当しないこと。
3) 特定有害物質を使用しないこと。また意図しない使用でも指定の最大許容濃度を超えないこと。

さらに、バイオマスプラスチックが生分解性を持つ場合は、以下の識別マークを付けることができます。

生分解性プラスチックの普及

現在、一般的に普及しているプラスチックは、まだまだ生分解性が低いため、使用後に全部は分解せず地球上に残り続けます。そして、長い時間をかけて水や熱、紫外線などにより細かく粉砕されて微細化だけが進行します。この微細化したプラスチックがまさに「マイクロプラスチック問題」として注目されているのです。

マイクロプラスチックは、目視で確認できるミリメートルサイズのものから、目視では確認できない数十マイクロメートル(μm)以下のものまで存在します。そしてこの数十μm以下の微細なプラスチックが、魚貝類の体内に蓄積し、人間などに悪影響を与えることを懸念されています。

その課題を解決するために、高い生分解性を持つプラスチックの開発が進められています。

ただし、生分解性プラスチックへの置き換えは、全てのプラスチックに対してではなく、非耐久消費財(農業用マルチフィルム、漁網など)に適用されるものです。これらは使用後の回収が難しいため、回収の労力削減のためにも置き換えるメリットがあります。

逆に、耐久消費材(PC,家電など)は従来通り回収を進め、処分を実施することとなります。

モノマテリアル化によるマテリアルリサイクルの推進

プラスチック材料をモノマテリアル(単一素材)に変更すると、使用する製品のリサイクル性が向上します。マルチマテリアル(複合素材)の製品をモノマテリアル化した場合、製品使用後に素材別分離をする手間がなくなります。

また、アルミ箔を使用したマルチマテリアル製品では、モノマテリアル化によりアルミ製造時のCO2の削減も期待できます。

モノマテリアル化のためには、従来のマルチマテリアル素材が備えていた機能を置き換え得る素材の開発が必要となります。

包装パッケージのモノマテリアル化に貢献するDNP

DNP モノマテリアル包材のラインアップ

DNPのモノマテリアル包材には、PE(ポリエチレン)仕様とPP(ポリプロピレン)仕様の2タイプがあります。使用用途に応じて、パウチやチューブ容器などの製品に利用できます。

DNP モノマテリアル包材のラインアップ

DNPのモノマテリアル技術

DNPのモノマテリアル技術には2つの特長があります。そのひとつはリサイクルしやすい素材になることです。モノマテリアルを使用することで再生プロセスの負荷を下げ、リサイクル材としての品質も向上させます。

もうひとつは、製品パッケージ内の中身をしっかりと守ることです。DNPモノマテリアル包材は、独自のコンバーティング技術で従来の複合素材を置き換えられる機能と性能を備えています。

「DNP植物由来包材 バイオマテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。」

その他のコラム