「地面師詐欺」は他人事ではない
土地取引に求められる本人確認とその補助システムとは?

不動産取引を経験された方、あるいは不動産事業者として関わる方の中には、契約時の本人確認の厳しさに驚かれたことがあるかもしれません。運転免許証だけでなく、印鑑証明書や住民票など複数の公的書類の提出が求められ、司法書士など専門家との直接面談も必須とされています。
では、なぜこれほどまでに本人確認が厳格化されているのでしょうか?本コラムでは、不動産取引において本人確認が徹底される背景にある深刻な脅威と、それに対抗する手段として導入が進む最新の「本人確認補助システム」について詳しく解説します。
(2025年10月時点の情報)

第1章:本人確認徹底の背景にある深刻な脅威「地面師詐欺」

不動産取引の安全を脅かす存在の代表格が「地面師」と呼ばれる詐欺集団です。彼らの手口は巧妙を極め、その被害額は甚大です。

1. 不正取引の事例とリスクの高さ

地面師詐欺とは、他人の不動産を自分のものと偽り、不正に売却代金を騙し取る行為です。近年では、数十億円規模の被害が発生した事件も報道されており、社会的な注目を集めています。
その影響は、ニュース報道だけでなく、Netflixのドラマ『地面師たち』や、NHKのドキュメンタリー番組『未解決事件』シリーズなどでも取り上げられるほどで、地面師の手口の巧妙さと被害の深刻さが広く知られるようになっています。
こうした事例が示すように、不動産のプロである事業者や専門家でさえ被害に遭うほど、地面師の手口は年々巧妙化しています。特に、所有者不明の土地や長期間空き家・空き地として管理されていない物件がターゲットにされやすく、その被害は売主・買主の双方にとって計り知れません。

2. 地面師の巧妙な手口

地面師グループの犯行は単独ではなく、組織的かつ役割分担されたものです。

●偽造書類の精巧さ: 運転免許証やマイナンバーカード、パスポートといった公的な身分証明書を、専門家による目視でも見破れないほど精巧に偽造します。また、登記識別情報(権利証)や印鑑証明書などの重要書類も偽造の対象となります。

●組織的ななりすまし: 登記簿上の所有者と同姓同名の人物を用意したり、入念な演技指導を受けた「なりすまし役」を使って、面談をすり抜けようとします。

●心理的な誘導: 「他にも買い手がいる」「この条件は今だけだ」などと取引を急かし、高額な現金の早期決済を求めてくる傾向があります。これは、確認のための時間を与えないことで、偽装が露見するリスクを減らす目的があります。

第2章:本人確認が「法律で義務付けられている」理由

本人確認の徹底は、上記の地面師対策という実務的な必要性だけでなく、国の法律によっても強く義務付けられています。

1. 宅地建物取引業法による義務

不動産の売買や賃貸を仲介する宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法にもとづき、取引の相手方が本当に契約をおこなう本人であるかを確認する義務を負っています。これは、取引の公正と、契約当事者の保護を目的としています。

2. 犯罪収益移転防止法(犯収法)による義務

多額の資金が動く不動産取引は、「特定事業」に該当します。このため、不動産業者は、マネーロンダリング(資金洗浄)などの犯罪収益の移転を防ぐ観点から、犯罪収益移転防止法(犯収法)にもとづく厳格な本人確認(顧客等の確認義務)を負っています。

法律は、運転免許証やパスポートなど顔写真付きの公的書類の提示を求め、その記録を保存することを義務付けています。法律による義務付けがあるからこそ、本人確認は不動産取引における必須のプロセスとなっているのです。

第3章:従来の本人確認と限界、そして最新の対策

地面師の巧妙な手口に対抗するため、不動産取引の安全の要を担う司法書士などの専門家は、従来から多角的な確認を行ってきました。

1. 専門家による多角的な従来の確認方法

不動産登記の申請にあたり、司法書士は売主の「本人確認情報」を作成します。この際、以下の複数の手法で本人性を担保しています。

●複数書類の照合: 運転免許証などの顔写真付き身分証明書に加え、印鑑証明書や住民票、戸籍謄本など、複数の公的書類を提示させ、記載事項に矛盾がないかを厳密に照合します。

●本人との直接面談・意思確認: 決済の場などで本人と直接面談し、会話の内容や言動に不審な点がないか、質問にスムーズに答えられるかなどを確認します。これは、売却の意思を慎重に確認するだけでなく、登記簿上の所有者本人であるかどうかを見極めるための重要な工程です。

2. 従来の確認方法の限界

しかし、地面師が用意する偽造書類が極めて精巧であるため、専門家による目視や口頭での確認だけでは、限界があることも事実です。たとえICチップが搭載された運転免許証やマイナンバーカードであっても、券面自体を偽造して作られた「偽造カード」が流通している現状があり、外見だけでは真贋の判定が困難です。ICチップ内の情報を読み取らない限り、偽造を見抜くことは非常に難しくなっています。

3. 地面師対策を強化する最新技術の活用

従来の専門家の知見と経験に頼る確認を補完し、セキュリティを飛躍的に向上させるのが、デジタル技術を活用した本人確認補助ツールです。特に、偽造防止機能を持つ公的身分証明書のICチップを活用するシステムが、地面師対策の決め手として注目されています。

第4章:地面師対策の決め手!本人確認補助システムの力

偽造された書類に「だまされない」ためには、人の目ではなく、機械による客観的かつデータレベルでの真贋判定が不可欠です。

偽造身分証対策に有効な「ID確認システムPRO」をご紹介
ID確認システムPROは、マイナンバーカードなどのICチップ読み取りと、券面記載情報のOCRをこのシステム一つで実現します。その他、運転免許証、運転経歴証明書、在留カード、特別永住者証明書、パスポートの全6種類の顔写真付き本人確認書類の偽造対策が可能です。これにより、偽造身分証の検出と正確な本人確認が可能となり、地面師による不正行為を未然に防ぐことができます。

1. ICチップ活用システムの優位性

最新の本人確認補助システムは、運転免許証やマイナンバーカードに搭載されたICチップを専用のリーダーで読み取る機能を持っています。

●データレベルの真贋判定: ICチップ内の情報を読み取り、アプリケーション上で券面に記載された情報と照合することで、偽造書類の検出精度が飛躍的に向上します。券面自体が精巧に偽造されていても、ICチップ内のデータまでは偽造できないため、より客観的かつ信頼性の高い確認が行えるようになります。

2. 導入によるメリット

これらの補助ツールは、不動産取引に携わるすべての人に大きなメリットをもたらします。

●安全性の劇的向上:厳格かつ効率的に偽造カードを見破ることで、地面師詐欺による被害を未然に防ぎます。これにより、本人確認情報を作成する司法書士や、取引を仲介する不動産業者が負う損害賠償リスクも大幅に軽減されます。

●業務の効率化(DX): 複雑で時間のかかっていた本人確認プロセスがデジタル化・自動化され、確認作業が迅速化します。確認記録の作成・保管も自動で行えるため、ペーパーレス化と業務効率化が同時に実現します。

3. 不審な取引への警戒の重要性

ただし、デジタルツールを導入したからといって油断は禁物です。地面師は常に新しい手口を開発しています。

最新技術による真贋判定と並行して、「取引を急ぐ姿勢」「相場と著しくかけ離れた価格」「所有者との接触が不自然に制限されている状況」など、取引の流れや条件に違和感がある場合には注意が必要です。こうした不審な兆候を見逃さないためには、不動産取引に精通した専門家による、経験にもとづいた観察力と判断力が不可欠です。書類や会話の内容に潜む違和感を察知し、必要に応じて追加の確認をおこなうといった、実務的な警戒心と柔軟な対応力が、ツールと並ぶ重要な防御手段となります。
ツールはあくまで「盾」であり、その使い方と、現場での冷静な対応力が重要です。

4. 地面師詐欺対策製品の導入事例

ID確認システムを導入した司法書士事務所では、「本人確認業務の標準化」「担当者の心理的負担の軽減」「取引相手への安心感の提供」といった効果が報告されています。

「ID確認システムPRO」を赤羽司法事務所が導入し、不動産取引における劇場型犯罪のリスク軽減を図りました。目視による真偽判定が難しい現代において、高精度なシステム判定は、司法書士が業務を安全かつ効率的に進めるための最大のリスクヘッジとなります。
特に、ICチップ情報を読み取るという『機械による客観的な判定』が、目視確認の限界を超える確実な本人確認を実現し、司法書士としての説明責任を果たす上でも重要であると評価されています。

まとめ:「急がず、疑い、厳格に確認」とデジタルの盾

不動産取引における本人確認の徹底は、単なる手続きではなく、「地面師対策」という脅威への防御策であると同時に、すべての取引の信頼性と安全性を担保するものです。

高額な資産と権利が動く取引だからこそ、「急がず、疑い、厳格に確認」の原則を徹底することが、地面師詐欺の最大の対策となります。

そして今、従来の専門家の知見と経験に加え、ICチップ読み取りなどの本人確認補助システムという「二重の盾」が、不動産取引の安全を支えようとしています。本人確認の精度と効率を高めるために、こうした技術を適切に活用することが、安心・安全な不動産取引の実現につながります。

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