外貨両替における本人確認リスクとは?2027年犯収法改正への対応策を紹介

訪日外国人旅行者の増加に伴い、外貨両替窓口では本人確認の重要性が高まっています。短時間の対面取引では、パスポートや在留カードの真贋確認が難しく、不正利用やマネーロンダリング対策が課題となります。さらに2027年4月施行予定の「犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下、犯収法)」改正では、従来の目視や画像送信による確認方法の見直しが予定されており、ICチップ読取など、より確実な本人確認への対応が求められます。本コラムでは、外貨両替事業者が押さえるべきリスクと法規制のポイントを整理し、実務に役立つ対策を紹介します。
(2026年8月時点の情報)

1.訪日外国人旅行者の増加と外貨両替窓口を取り巻く環境

訪日外国人旅行者の増加と本人確認業務

日本国内における訪日外国人旅行者数は圧倒的な勢いで拡大を続けています。日本政府観光局(JNTO)等の発表によると、2025年の年間訪日外客数は推計4,268万3,600人に達し、過去最高であった2024年(3,687万148人)から15.8%増という大幅な伸びを記録しました。この急激なインバウンド需要の拡大は、観光地や商業施設、金融機関に絶大な経済効果をもたらす一方で、店頭や窓口における「本人確認実務」に極めて深刻な負荷を強いています。特に外貨両替窓口においては、多国籍な顧客がひっきりなしに訪れる環境下で、短時間の対面取引のなかで外国人の旅券(パスポート)や在留カードを迅速かつ正確に取り扱う必要があります。

出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」(PDF)

外貨両替業務がマネーロンダリング対策の対象となる背景

外貨両替ビジネスは、不特定多数の顧客と即座に現金(紙幣)を交換するという取引特性を持っています。この「即時性」と「現金の流動性」は、犯罪収益の清浄化(マネーロンダリング)やテロ資金供与を目論む不法組織にとって、極めて格好の標的となります。両替窓口の現場では、日常的に多額の現金が動いており、悪意のある利用者は精巧に偽造されたパスポートや在留カードを悪用して不法資金を持ち込もうと画策します。繁忙を極める窓口スタッフに対して肉眼のみに頼った真贋判定を求めることには限界があり、うっかり不備を見過ごしてしまえば、犯罪組織の手助けをしてしまうばかりか、事業者自身が厳しい追徴課税や行政処分を受け、社会的信用を失墜させる決定的なリスクを抱え込むことになります。

2.外貨両替業務に関連する法規制と本人確認義務

犯罪収益移転防止法と外国為替及び外国貿易法の概要

犯罪資金の流入を防ぐため、日本の法令体系においては主に「犯収法」および「外国為替及び外国貿易法(外為法)」により、一定の金額を超える取引を行う事業者に対して厳格な本人確認(取引時確認)が義務付けられています。両替窓口においては、1件あたり「200万円相当額超」の現金両替取引を行う場合に、顧客の氏名、住居、生年月日などの基本事項(本人特定事項)に加え、取引目的や職業などの厳密な確認が必須とされています。非居住者である外国人旅行者の場合は、パスポート番号や国籍の確認が法的要件となります。

取引分類・形態 適用法令 本人確認の閾値・条件 主な確認事項および実務対応
外貨両替(現金取引) 犯収法・外為法 1件あたり200万円相当額超 氏名・住所・生年月日(旅券等による確認)、取引目的、職業等
為替取引・国外送金等 犯収法・外為法・調書提出法 10万円相当額超 所定の方法による取引時確認、国外送金等調書の提出(100万円超)
ハイリスク大口現金取引 犯収法 200万円相当額超の資産移転 再度の本人確認に加え、源泉徴収票等の資料による資産・収入の状況確認
非居住者(旅行者等)の取引 犯収法・外為法 200万円相当額超 国籍および旅券(パスポート)番号が記載された旅券等の提示と確認

巧妙化する「スマーフィング」の手法

このような法的規制を潜り抜けるため、犯罪組織が好んで用いる悪質な手法が「スマーフィング(分割取引)」です。スマーフィングとは、犯収法上で本人確認義務が課される「200万円」という閾値未満の金額(例えば1回あたり10万〜50万円程度)に資金を細かく小分けし、連続して両替を行う行為を指します。同一人物やそのグループが時間を置き、あるいは複数の窓口や「無人自動外貨両替機」を網羅して連続的に取引を行うことで、1回あたりの規制閾値を回避しようとします。特に近年設置が進む無人自動外貨両替機は、対面窓口に比べて心理的警戒感が薄いことから標的になりやすく、当局のガイドラインでも連続取引の制限や高額取引監視機能の搭載が強く要求されています。現場のスタッフがスマーフィングの違和感に気づけず、あるいは確認を怠って連続取引を容認してしまった場合、当局の立入検査や税務調査において「取引時確認義務違反」と判断され、営業停止処分や罰則を科される重大な経営リスクへと直結します。

3.2027年4月施行予定の犯収法改正のポイント

本人確認を取り巻く環境変化と従来手法の課題

近年、偽造手口の高度化により、パスポートや在留カードの偽造はより精巧になっています。そのため、本人確認の現場では、人の目による確認や券面画像のみを用いた確認だけでは真贋判定が難しいケースがあることが指摘されています。実際に、在留カードなどの偽造文書を利用した不法就労や不正取引の事例も報告されており、事業者にはこれまで以上に適切な本人確認が求められています。こうした状況を踏まえ、従来の「目視確認」や「券面画像の送信」に依存した本人確認手法については、偽造リスクへの対応という観点から見直しが進められています。

犯収法改正で求められる本人確認方法の見直し

こうした偽造リスクの高まりと金融犯罪の防止を目的として、2027年4月に「犯収法」の施行令・省令改正が予定されています。この改正における最大のポイントは、「偽造リスクの高い本人確認手法の原則廃止」と「ICチップ読み取り等の高度で信頼性の高い手法への厳格な移行」です。

主な変更点と事業者へ求められる対応
①目視や券面画像(コピー)のみによる確認の廃止・制限 従来の紙面コピーや目視のみ、あるいは送付された画像データのみに依存する本人確認手続きは原則として認められなくなります。
②IC チップ読取機能の標準化 パスポートやマイナンバーカード、在留カードなどに内蔵されている公的な「ICチップ」から直接データを取得・検証することが必須となります。
③偽造防止テクノロジーの導入義務化 偽造身分証明書を機械的に判定・シャットアウトできるITシステムの整備が強く求められます。

2027年4月の犯収法改正は、外貨両替事業者、証券会社、クレジットカード会社など、本人確認を伴うすべての事業者にとって「システム対応の移行期」を意味します。施行直前になってからの対応では間に合わないため、今から最先端のICチップ読取ソリューションの導入を進めることが不可欠となっています。

参考:警察庁ホームページ「犯罪収益移転防止法の解説、パブリックコメント」

4.本人確認ソリューション「ID確認システムPRO」

DNPアイディーシステムが提供するID確認システムPROは、マイナンバーカードや運転免許証のICチップ読み取りに対応し、券面情報が改ざんされていないかといった「真正性」の確認を技術的にサポートします。さらに、券面スキャンによる画像データの解析機能も備えており、目視では困難な精巧な偽造の判定を補助します。マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書、在留カード、特別永住者証明書、パスポートの全6種類の顔写真付き本人確認書類に対応可能です。ICチップの読み取りと高精度の券面チェックをひとつのシステムで行うことで、偽造身分証による不正な外貨両替を未然に防ぎ、窓口業務の法令遵守と安全性向上を実現します。

運転免許証・運転経歴証明書の真贋判定フロー動画

動画:ID確認システム PRO 運転免許証編 偽造運転免許証をICの暗証番号を入力しないで見破れることが特徴(1:23)

5.まとめ

訪日外国人旅行者の増加は、外貨両替事業にとって事業機会の拡大につながる一方で、偽造身分証明書への対応やスマーフィング、マネーロンダリング対策など、本人確認に関する課題への対応も求められています。また、2027年4月に施行予定の犯収法改正により、本人確認の方法について見直しが進められ、ICチップを活用した電子的な確認手法への対応が重要になると考えられています。コンプライアンス対応は法令遵守のためだけでなく、企業の信用維持や安定的な事業運営を支える重要な取り組みの一つです。DNPアイディーシステムの本人確認ソリューションは、本人確認業務の効率化と確認精度の向上を支援し、外貨両替窓口における運用負荷の軽減にも貢献します。2027年の法改正を見据えた本人確認体制の整備を検討する際の選択肢として、ぜひ参考にしてください。

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