DNPと薬!?

メディカルヘルスケア本部 大城玲美 Remi Ohshiro

フツーを叶えるメディカルヘルスケア

濱田岳さん

国内では少子高齢化が進行する中で、がんの罹患率の増大、感染症の大規模な流行など、多くの課題に直面している。医療業界では、健康な暮らしを支えるため、新薬の迅速な開発やICTを活用したヘルスケアサービスなど多様な課題の解決が求められている。
そのような中でDNPでも医療分野への取り組みに注力している。印刷で培ってきた技術は、この分野でもあらゆる場面で応用されている。世の中の健康に対する意識の高まりとともに、ますます注目されている医療分野で、DNPがめざす「健康な暮らしを、本当の普通にすること」とは何か。メディカルヘルスケア本部の大城玲美に話を聞いた。

医療分野でも活かされる“印刷”の技術

現在、メディカルヘルスケア本部でグループリーダーを務める大城。
医薬品に関わる事業を推進する業務に従事している。

“一見、印刷と医薬品はまったく関係ないように思われるかもしれませんが、実は医薬品関係のさまざまな取り組みで、印刷で培った技術を応用・発展させて、活用しているんです(大城)”

DNPはこれまで、医薬品に関わる分野で、主に三つの事業を展開してきた。

一つ目は、医薬品向けの包装材料の開発・提供を行う「医療パッケージ事業」だ。これは食品や飲料のパッケージ事業から派生したもの。パッケージ製造の過程で培った「中身の品質を損なわず長期間保存できる技術」や「使用する際にストレスなく取り扱える工夫」などを医薬品のパッケージにも活かしている。

二つ目は、再生医療分野で、細胞医薬品を培養する容器や培養状況等をAIで検査する「次世代医薬品サポート事業」。印刷用のハンコをつくる技術から発展した「微細加工技術」や「シミュレーション・解析技術」を応用して、次世代の医薬品製造をサポートしている。2017年にはヒトの腸に近い特性を持つ人工臓器「ミニ腸」の創生に成功。現在は研究用に試験販売を行っている。

三つ目が、原薬を製造する「原薬事業」。「原薬」とは医薬品の有効成分のこと。印刷用のインキ等の取り扱いを通じて培った「材料技術」や「化学合成技術」を発展させ、高品質な原薬を製造・提供している。

大城
大城

こうした医薬品に関わる事業をさらに発展させていくため、2023年4月には、医薬品開発支援事業で長年の実績を持つシミックグループとの戦略的事業提携を実現。この提携によって、DNPの「原薬事業」と「医療パッケージ事業」の間に「製剤事業」が加わった。「製剤」とは、医薬品を服用しやすい形状(剤形)に加工すること。錠剤やカプセル剤、粉剤、液剤、クリーム剤など用途に応じてさまざまな形状を使い分ける。シミックグループとの提携によって、「原薬」から「製剤」まで、DNPで一貫して医薬品製造を行えるようになった。さらには、そこに「医療パッケージ事業」を掛け合わせることによって、新たな「付加価値型の医薬品開発」も期待されている。

医薬品の開発から製造前のすべてをカバーするワンストップ製薬サービスで新たな価値を提供
シミックグループとの事業連携内容

技術の掛け合わせで医薬品に付加価値を

医薬品が製造されてから、医療現場に届け、そして患者に処方されるまでの間にも、DNPとして取り組む課題がある。

“付加価値として一番提供したいことは、医療現場で働く医療従事者の方の手間や危険性を少しでも減らしたい、ということです。それが、間接的には患者さんの負担の軽減にもつながると思います。”

これまでも医薬品に関わる各社は同様の取り組みを行ってきているが、ここにDNPの強みであるパッケージの技術を取り入れることで、新しい視点で検討が進んでいる。それぞれに培ってきた「製剤」と「パッケージ」の技術の掛け合わせが、製薬に新たな価値を生み出していく。

“コロナのワクチン接種の時にも話題になりましたが、医薬品の流通や保管は、多くの方が想像される以上に難しいものなんです。患者さんごとに最適な医薬品を処方するためには、流通や保管の課題を解決することはとても大事だと思っています。DNPで培ってきた技術をこうした課題解決に役立てていきたい。そうすることが患者さんの健康な暮らしにつながっていくはずです。こうした取り組みを通じて、生活の質(QOL=Quality of Life)の向上に貢献したいです。”

DNPが提供する医薬品向けパッケージのイメージ

健康な暮らしを本当の意味で「普通なこと」にしたい

現在メディカルヘルスケア本部に所属する大城は、DNPの事業の幅広さに興味を持ち、入社を希望したという。最初の配属先では、液晶ディスプレイ用のカラーフィルターに使うインキの開発を担当。その後、現所属本部の前身となる部署に異動し、歯周病に関する事業の立ち上げや不妊治療をサポートする事業の推進などを経て、今は付加価値型医薬品の事業に携わっている。

“少人数でいろいろなことを考えて進めなくてはいけないので、これまでさまざまな経験をさせてもらえたことが今の仕事に生きていると感じます。医療分野の取り組みはDNPとしても大きな挑戦だと思うので、今までの経験をさらに活かしていきたいです。”

医療分野は、私たちの日常と密接に関係している。大城は、自身がめざす「未来のあたりまえ」を、「健康な暮らしが普通になる未来」だと語った。

“普段の生活の中で、医療を受けることって少なからずストレスはあると思うんです。でも健康な暮らしを続けていくためには絶対に必要なこと。DNPの取り組みで、少しでもそのストレスを和らげることができれば、心と身体の健康につながると思っています。特別である必要はないんです。多くの方が生活していく中で、なかったら困ることや、あると少しだけハッピーな気持ちになれるもの、そういったものを世の中に送り出す橋渡しをしていきたいです。”

医療分野での事業は、大城自身にとっても、DNPにとっても、前例のない取り組みが多くある。そういった事業に対して、日々どのような想いをもって活動しているのか、最後に大城が語った。

大城

“どんな仕事にも難しいことがあると思いますが、DNPにとって新規事業である医療分野でも、本当にたくさんの困難があることを日々感じています。そこで前向きな気持ちで仕事に取り組むことができるのは、身近に自分よりも創意工夫をしながら果敢に挑戦している仲間の存在があるからです。時には励まし合いながら一緒に頑張っていける仲間がいるからこそ、私もなんとか形にしたいと、強い想いで取り組むことができています。”

大城

「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントを掲げるDNP。健康な暮らしを支える医療の分野で、今日も強みを掛け合わせ、新しい“あたりまえ”を生み出すべく挑戦を続けている。

2023年11月公開