今回のテーマ「開けやすい仕掛けが隠されたフィルムパッケージ」をトンボちゃんと活じいが紹介

使いやすさを追求した フィルムパッケージの“開けやすさ”の秘密

多くの人が日常的に行う、レトルト食品や洗剤、サプリメントなどのフィルムパッケージ。「昔よりも開けやすくなった気がする」と感じることはありませんか? 実はこうした“開けやすさ”の裏側には、専門家たちが研究を重ねた、数々の仕掛けが隠されているのです。

目次

トンボちゃん&活じいのイントロ漫画:レンジで温めるスープのフィルムパッケージ。ハサミがなくてもまっすぐ切れるのには、袋の加工がされていることを紹介しています。

※すべてのフィルムパッケージに加工が施されているわけではありません。

登場人物

活じい

活じい…金属活字じいさん。活字としてのキャリアは144年。長い経験で培われてきたDNPグループに関する豊富な知識で、いろいろなことを教えてくれる生き字引的な存在。

トンボちゃん

トンボちゃん…印刷物の見当合わせ※トンボから生まれたキャラクター。きっちりした性格で、曲がったことが大嫌い。細かな気遣いで活じいをサポートします。

  • 【印刷用語:見当合わせ】見当とは、多色印刷において各色版の重ね合せる際の位置精度のこと。版面にトンボといわれるレジスターマークを入れて、見当を合わせるようにしている。

まずは基本から。
フィルムパッケージは、主に役割の異なる3つのフィルムでできている!?

フィルムパッケージの開けやすさの仕掛けについて知る前に、まずはその構造を簡単に紹介しましょう(図1)。
あまり知られていませんが、レトルト食品や洗剤などの詰め替えパウチに使われているフィルムパッケージは、主に「印刷用フィルム」「機能性フィルム」「ヒートシール性フィルム」の3つのフィルムを重ね合わせた構造になっています。

図1:フィルムパッケージの構造

フィルムパッケージのイメージ

多層なフィルム構成

外側は、デザインを施す“印刷用フィルム”。よく見ると、フィルム表面はつるつるで、内側に印刷されているのがわかります。これは、商品同士が運搬時に接触し、インキが擦れて消えてしまわないための工夫です。そして真ん中の“機能性フィルム”には、「酸素や光を通さない」「強度を高める」など、内容物を保護する機能がついています。いちばん内側の“ヒートシール性フィルム”は、袋を形成する際にフィルム同士が熱で圧着する素材が使われています。 

  • 内容物や用途によって。フィルムを重ね合わせる枚数や構成は異なる場合があります。

さまざまなニーズに対応! “開けやすさ”を追求した数々の仕掛け

ここから、パッケージを開けやすくするための仕掛けを見ていきましょう。大きく分けると、「開封のきっかけとなる仕掛け」と「開封時の切れ方をコントロールする仕掛け」の 2つがあります。

皆さんが目にする切れ込み(ノッチ)は、「開封のきっかけとなる仕掛け」のひとつ。「I」字型に切れ込みを入れたIノッチや、「UとV」字型を組み合わせた形にすることで、見た目にも触覚にもノッチの位置をわかりやすくしたUVノッチ、輸送の際にノッチが引っかからないよう、フィルムに微細な傷をつけたMPノッチなど、いくつかの種類があります。

Iノッチ(Iの字型に切れ込みがある)

UVノッチ(UとV字型を組み合わせた形のノッチで、視認性に優れ、触覚でもその位置が分かりやすい)

MPノッチ(輸送時に引っ掛からないよう、フィルムに微細な傷をつけたもの)

開封のきっかけとなる仕掛け:
スティックコーヒーなどに使われる「サーフェイスカット」

ハサミを使わずに切れて、開封口も丸く開きたいというニーズに応えた「サーフェイスカット」のイメージ画像

スティックコーヒーなど、ハサミを使わずに切れて、開封口も丸く開きたいというニーズに応えたのが、「サーフェイスカット」という仕掛け。

「サーフェイスカット」はフィルムパッケージの3層のうち、外側(サーフェイス)のフィルムのみに微細な傷をつけることで、バリア性を損なうことなく“開封のきっかけとなる仕掛け”をつくります。 シール部ではなく袋の折部分に開封のきっかけをつくることができるため、スティックコーヒーのような筒状の包材に使用すると、側面から開封でき、開封口から中身を注ぎやすいパッケージが出来上がります。


図2:サーフェイスカットの構造

サーフェイスカットの構造

開封時の切れ方をコントロールする仕掛け①:
中身がこぼれないよう、真っ直ぐ開封!「ストレートカット」

汁物などが入ったパッケージは、開封の切り口が斜めになると、中身がこぼれてしまうことも。そんな問題を防ぐのに使われるのが「ストレートカット」。

冒頭の4コマ漫画で活じいが「まっすぐ切れる工夫」と言っていたのはこのことです。「ストレートカット」は、フィルムパッケージの中間層“機能性フィルム”に線状の切れ目(ガイド)を付けることで、「開封時の切れ方をコントロールする仕掛け」を施しています。開口部の・端から端までに切れ目(ガイド)を付けることで、まっすぐ開けられます。

図3:ストレートカットの構造

サーフェイスカットの構造

開封時の切れ方をコントロールする仕掛け②:
もっと自由に、いろんな形の切れ口をつくれる!「レーザーティアガイド」

「レーザーティアガイド」開封前

「レーザーティアガイド」開封後

まっすぐはもちろん、曲線の切り口もつくれるのが「レーザーティアガイド」です。名前の通りレーザーを使って外側の層に切れ目を入れています。切れ目の形を細かく変えられるのも特徴の一つで、意匠性や利便性を高めることができます。

例えば、サプリメントなどのチャック付きのパッケージは、開封後、繰り返し開け閉めされます。「レーザーティアガイド」で、開封口の表と裏の切り口を、わざとずらして段差をつくることで、開ける際に「指でつまみやすくする」ことができます。


図4:レーザーティアガイドの構造

レーザーティアガイドの構造

開けやすさを観察・評価し、徹底的に分析! さらなる改良・改善へ

開けやすさを観察・評価し、徹底的に分析している様子

DNPは、人がパッケージを「直感的に」「間違えることなく」「ストレスなく」使えるよう、生活者自身も気づいていないニーズや課題を探りながら、「より使いやすいパッケージ」の開発に取り組んでいます。今回ご紹介している「開けやすくする」仕掛けもそのひとつです。

DNPの「開けやすさ」の追求には、2つのアプローチがあります。

「人の動きの数値化」
そのひとつが「人間の動きの数値化」です。特殊なセンサーを使って、パッケージを開ける際の指の力の入れ具合や勢い、開けるまでの時間など、人間の動きを数値化して「開けやすさ」を評価・検証しています。

「多様な人々の視点」
もうひとつが「多様な人々の視点」を大切にすることで、近年、インクルーシブデザインと呼ばれているデザイン手法です。子どもや高齢者、弱視の方、手の不自由な方、その国の文字が読むことができない海外の方など、日常的にパッケージを開けることに不便を感じることの多い人々を巻き込み、一緒に「開けやすさ」を追及していきます。

具体的には、日常的に行っているパッケージの開封方法を見せてもらいながら、その人なりの感覚や、不便、不満の声を聴き、その意見を開発に取り入れていきます。

DNPの包装事業部門では、「誰もが可能な限り快適に使用できるように配慮したパッケージ」をめざし、当初からユニバーサルデザインによる製品開発を進めてきました。現在、さらなる進化を図るために、インクルーシブデザインをはじめとした新たな評価手法に取り組んでいます。

DNPは、世の中のあらゆる人が「使いやすい」パッケージを、作り続けていきます。

活じい

普段何気なく開けているパッケージじゃが、「何気なく」を実現するためには、こんなにたくさんの工夫があるんじゃよ。

トンボちゃん

知らなかったわ! 使う人のことが、とても考えられているのね。

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