実は超小型&高性能のコンピューターだった!? 身近な存在だけれど、意外と知らないICカードの仕組み

今から20年前の2001年に交通系ICカードが登場した当時、ピッとかざすだけで改札を通れる便利さに驚いた人も多いのではないでしょうか? 現在、ICカードは、交通系カードやキャッシュカード、クレジットカード、スマートフォンのSIMカード、そのほか運転免許証やマイナンバーカードなど行政の発行するカードなどにも幅広く活用され、私たちの生活に欠かせない存在になっています。今回はICカードの構造や仕組み、最新の機能などを紹介します。

  • ICカードは小さな頭脳!
  • 用途に応じて通信の方法を決める
  • 指紋認証も、さらには“抗ウイルス”も!

トンボちゃん&活じいの四コマ漫画。ICカードを使って買い物ができることを紹介。

登場人物

活じいのアイコン

活じい…金属活字じいさん。活字としてのキャリアは144年。長い経験で培われてきたDNPグループに関する豊富な知識で、いろいろなことを教えてくれる生き字引的な存在。

トンボちゃんのアイコン

トンボちゃん…印刷物の見当合わせトンボから生まれたキャラクター。きっちりした性格で、曲がったことが大嫌い。細かな気遣いで活じいをサポートします。

  • 【印刷用語:見当合わせ】見当とは、多色印刷において各色版の重ね合せる際の位置精度のこと。版面にトンボといわれるレジスターマークを入れて、見当を合わせるようにしている。

ICカードは小さな頭脳!
― スマートな“超ミニパソコン”として、カードリーダーと認証し合って不正を防止 ―

ICカードとは、その名の通り、ICチップが搭載されたカードのこと。ICチップは、コンピューターの頭脳といわれるCPU(中央演算処理装置)とメモリで構成されており、基本的な構造はパソコンとほとんど同じ。ただし、ICカードには電源がないため、使用するにはカードリーダーなど外部から電力を加える必要があります。

ICカード以前に普及した、黒い帯がある磁気カードは、単純に「磁気に記録された情報をカードリーダーが読み込む」ものですが、ICカードは「カードリーダーからの問い合わせを受け、ICチップ自らが考えて回答する」もの。もう少し具体的にいえば、ICカードはカードリーダーと通信を行い、ICチップ内のプログラムにより、カードリーダーが偽物でないかどうか確認する“認証”や、“機能のロック”といった情報のやり取りも行えるのです。

「2枚以上重ねて使うのはNG」と言われることがありますが、これは後で触れる非接触ICカードの通信の方法に理由があります。ICカードとカードリーダーが通信する際に、「カードリーダーがどちらのカードと情報をやり取りすべきかわからなくなる」ことが理由のひとつ。また、先ほど紹介したようにICカードはカードリーダーからの電力で動作するため、複数枚のカードと同時に通信しようとすると、動作に必要な電力が足りなくなってしまうという理由もあるのです。でも、実は、一部の交通系カードでは、複数枚のICカードを重ねて使えるような工夫が施されているのです。

用途に応じて通信の方法を決める。
― 接触型に非接触型、デュアルインターフェース型という代表的な3タイプ ―

ICカードにはさまざまな分類方法がありますが、ここでは通信方法で分類して、「接触型」「非接触型」「デュアルインターフェース型」というICカードの代表的な3つのタイプを見てみましょう。

接触型ICカード

接触型ICカードのイメージイラスト

カード表面でよく目にする、ICチップが組み込まれた“金色”の部品とカードリーダーが直接接触するため、より安定した通信が可能です。金銭のやり取りなど、確実な通信が必要なキャッシュカード、クレジットカードなどに活用。

非接触型ICカード

非接触型ICカードのイメージイラスト

ICカードは基本的に複数の層を貼り合わせて製造されています。そのカードの内部にICチップとともに搭載されたアンテナで電波を送受信し、直接カードリーダーに触れなくても通信ができます。交通系ICカード、成人識別ICカード、運転免許証などで使われており、最近はカードでの少額の支払いも増えているため、クレジットカードやプリペイドカードでも活用されています。

デュアルインターフェースICカード

デュアルインターフェースICカードのイメージイラスト

接触型の端子と非接触型のアンテナという2つを備え、両方の通信方式の特徴を併せ持っています。接触型のクレジットカードに非接触型のクレジットカードの機能を付加するなど、カードの機能を追加していくことが可能です。

非接触型ICカードとカードリーダーの間では、一体何が起こっている!?

代表的な非接触型ICカードである交通系ICカードと、カードリーダーの間で行われる通信の流れを見てみましょう。

交通系ICカードを読み取りの仕組みについてのイメージ

<交通系ICカードと改札機の入場時の通信>
1.改札機は常に、ICカードのタッチパネルの半径10cm程度の半球の範囲に、「交通系ICカードはありませんか?」という電波を発している。

2.交通系ICカードがこの電波の範囲に入った瞬間に、電力の供給を受けてICカードが作動。

3.交通系ICカードと改札機は、それぞれ「自分は本物である!」という証明になる情報を送信し、お互いが本物であることを確認する。

4.改札機は、ICカードに「○○駅から乗車」などの情報を書き込み、入場を許可する。

本来、非接触型の交通系ICカードは、タッチする必要はなく、かざすだけで通信が可能です。しかし、わざとタッチという動作を促すことで、「改札機の電波を受け取った瞬間」から「タッチするまで」の間にわずかな時間を発生させ、そのスキに上記のようなやり取りを行っているのです。

指紋認証も、さらには“抗ウイルス”も!
― DNPの強みによって、ますます進化する未来のICカード ―

さまざまなタイプがあるICカードですが、現在、さらなる進化を遂げたカードが登場しています。例えば、「指紋認証機能付きICカード」や「抗ウイルス機能付きICカード」です。

2021年にDNPが開発した「指紋認証機能付きICカード」は、非接触型として普及している「FeliCa(フェリカ)」方式のICカードに、指紋センサーを内蔵したもの。事前に登録したカードの持ち主の指紋情報が内部に格納されており、使用時にセンサーで読み取った指紋と格納された指紋情報を照合して、一致しない限りカードリーダーと通信できない仕組みです。
これまでもICカードは、カードキーのようにセキュリティ用途で使われていますが、「カードを使う人」までは識別できず、別人でも使える可能性がありました。しかし、「指紋認証機能付きICカード」なら本人しか使えないため、非常に高度なセキュリティ性能を実現できます。高額な電子マネーをチャージするICカードや、社員ごとに社内の入場可能な区画を制限できる社員証などへの活用が期待されています。

「抗ウイルス機能付きICカード」は、付着したウイルスを減らす機能を持つ素材で作るICカード。DNPはこれまでも抗菌機能付きICカードを作ってきましたが、ウイルスの感染防止対策の一環として、細菌より小さいウイルスまで対応可能なICカードを開発しました。
カードリーダー側にウイルスがあり、ICカード利用時にそのウイルスが付着したとしても、時間とともに自然にウイルスを減らしていくことができます。例えば、貸し出し用のICカードなど、複数名が触れる場合でも、抗ウイルス性能を維持したまま使用することができます。

こうした「指紋認証」や「抗ウイルス」といった新たな機能を追加しても、カードの厚みは国際規格で決められた約0.8mm以内に収める必要があります。非接触型ICカードは、ICチップやアンテナなど複数の層で構成されていますが、ICカードの国内トップシェアを持つDNPだからこそ、長年培ってきた設計技術を用いて、厚みを変えることなく指紋認証機能を追加することに成功しました。

ICカードが複数の層で構成されていることを示すイメージ画像。

ICチップに必要なソフトウエアを一から組み上げていく“技術開発力”や、どんな素材でもICカードとしての形状や耐久性などの条件を満たせる“モノづくりのノウハウ”など、DNP独自の強みを活かして、多種多様なICカードを生み出しているのです。

最近は、政府がキャッシュレス決済を推進していることもあり、スマートフォンを利用した決済なども増えていますが、「カードリーダーに入れる」「タッチする」といった単純な動作で利用できて、高いセキュリティ性能を備えたICカードは、私たちの日常に最も身近なツールといえるでしょう。高齢者や年少者なども含めて、多くの人に使いやすい「あたりまえ」の価値になっています。さらに、決済や本人確認、会員証など、さまざまな用途の広がりに合わせて、DNPは今後もさらなる機能の進化を実現し、「未来のあたりまえ」をつくり出していきます。

活じいのアイコン

今やICカードさえあれば、買い物から役所の手続きまでなんでもできる時代じゃ。便利になったのう……。

トンボちゃんのアイコン

そうね、ICカードは生活を支える縁の下の力持ちといえるわ。見た目はただのカードでも、その内部には最先端の技術がギュッと詰め込まれているのね。