ホロタッチパネルが実現する未来の買い物のイメージ図

社会ニーズに応える“触れないパネル” 「DNP非接触ホロタッチパネル」

レジや券売機、ATMをはじめ、日常の至るところで利用されているタッチパネル端末。直近では、人々が新型コロナウイルスの感染防止に努めるなかで非接触型サービスの需要拡大が加速し、“端末に直接触れずに操作する技術”が注目されています。DNPはこうしたニーズに対して、これまで培ってきたホログラム技術と光学設計技術を応用し、空中に浮遊する画像を使ってパネルを操作できる「DNP非接触ホロタッチパネル」を開発。既存の設備等にも後付けで安価に設置可能で、迅速に導入できます。

  • 従来の空中タッチ型端末が抱える2つの課題
  • 製品化へのブレークスルーは、セキュリティ分野で活用してきた「リップマンホログラム」技術
  • 使いやすさと導入しやすさを両立した「DNP非接触ホロタッチパネル」

従来の空中タッチ型端末が抱える2つの課題

スマートフォンや非接触ICカードによるキャッシュレス決済が普及し、コロナ禍などをきっかけとして非接触型のサービスの需要が高まるなか、次の課題とされているのが、利用者自身の操作が必要な端末パネルの非接触化です。この課題に対して開発が進められているのが、空中を検知できるセンサーを搭載した“空中タッチ型端末”です。

この端末は、赤外線や静電容量などのセンシング技術を活用することで、直接パネルに触れることなく指の動きなどを検知して、操作することができます。また、空中に画像を投影する技術を組み合わせた端末も実用化されています。

空中タッチ型パネルの主な方式

こうした製品開発により、パネルに触れることなく操作できるようになりましたが、次なる課題が明確になりました。

そのひとつが、操作性・実用性の改善です。センサーだけを組み込んだ端末の場合、空中で、どの高さに指を置けばパネルを操作できるのかがわかりにくく、指がセンシングエリアから外れて操作できなくなることがありました。また、そもそも非接触で操作できることが利用者に伝わらず、パネルに手を触れて操作するケースもありました。

もうひとつ、端末を改修する場合のコストと時間も課題となりました。既存端末のシステム改修や大規模な設備改修には、数カ月から数年かかる場合もあり、コストも高くなるため、普及のハードルになると想定されました。
また、空中に画像を投影する既存の端末は大きいものが多く、設置場所が限定されてしまうという課題もありました。

これらの課題解決をめざしてDNPが開発したのが、「DNP非接触ホロタッチパネル」です。その背景には、国内トップレベルのホログラム技術と、光学設計技術、多彩な事業を通じて築いた端末メーカーやセンシングメーカーとのネットワーク、生活者の店頭行動に関する豊富な分析情報など、DNPならではの強みがありました。

製品化へのブレークスルーは、セキュリティ分野で活用してきた「リップマンホログラム」技術

「DNP非接触ホロタッチパネル」の開発にあたってまず検討したのが、「空間をいかに“見える化”するか」という点でした。さまざまな手法を検討するなか、解決策は意外な分野から見つかりました。それが、IDカードやクレジットカード、商品券等の偽造防止に活用してきた「リップマンホログラム」技術です。材料内部の屈折率分布を利用して画像等を表現する技術で、鮮やかな発色、上下左右の立体感、偽造の難しさが特長でした。

リップマンホログラムのサンプル画像

「リップマンホログラム」技術のサンプル画像。DNPは国内で唯一、対応製品の量産設備を保有し、多様な製品を生み出している。右のサンプルは、立体画像で見る角度を上下左右にずらすと▽、◯、□、+などの側面画像が見える特殊なセキュリティ処理を施したもの。

開発チームが着目したのは、リップマンホログラム技術の立体表示の表現力の高さでした。「立体表示ができるなら、 “空中”に平面的な画像が浮かび上がるのでは?」「画像を浮かび上がらせる空間上の高さを調節できるのでは?」という発想で、プロジェクトは加速しました。さらに、生活者の視点に立った使いやすさを少しでも向上させるため、社内の営業部門やマーケティング部門を通じて生活者のニーズを収集し、店頭端末やセンサーのメーカーとも綿密に意見交換を行いながら、開発を進めました。

こうして生み出した「DNP非接触ホロタッチパネル」が市場にデビューしたのは、2021年8月のこと。コロナ禍で実用化が急がれるなか、プロジェクト開始から1年未満で開発しました。

使いやすさと導入しやすさを両立した「DNP非接触ホロタッチパネル」

本製品の特長は、①空中に浮かび上がるホログラム像(※)と指の動きを検知するセンサー検知面が同じ高さであるため、利用者はホログラム像に触れることで端末を操作できること、②既存端末のディスプレイ画面をそのまま用いることにより既存端末のシステムを変更することなく後付け可能なことです。また、ホログラム画像がディスプレイ画面の視認性を損なわないようにドット柄のシンプルな表示にしたり、タッチ処理ができたことがわかるように「ピッ」と音が出るようにしたりするなど、利用者の操作性を向上するさまざまな工夫が施されました。

  • ホログラムフィルムに特定方向から照明(市販のLED照明なども利用可能)を当てることでホログラム像が浮かびあがる

「DNP非接触ホロタッチパネル」の仕組み

正確に検知するためには、センサーが反応する正しい高さのエリアに指を当てることと、検知後には指をそのエリアから引き抜いて次の操作に移ることの2点が必要。そのため、空中に浮かび上がるホログラム画像と、「ピッ」という認識音を併用して、操作性を高めている。

また、既存の端末を使用し、その画面にホログラムフィルムを貼付して、空間検知センサーを接続する簡易的な構成を実現しました。端末の設置はわずか1時間程度で完了し、導入費用も従来製品と比較して約5分の1から10分の1程度に抑えることが可能です(当社製品との比較)。既存端末のシステムを変更することがない簡便な設置による負荷軽減とコスト削減に加え、利用者による誤操作回避をともに実現する製品です。

“触れないパネル”があたりまえになる社会をめざして

生活者の非接触ニーズに応えたいという想いを起点に、社会実装をめざして開発が始まった「DNP非接触ホロタッチパネル」。それだけに、最後の関門となったのが「それは、本当に使われる製品になっているか」という視点でした。

そこでまず実施したのが、DNP社内での実証実験です。2021年7月、社内にある売店の無人決済端末に本製品を設置し、利用動向を観察・分析。途中で行ったアンケートでは、約85%の社員が画面に触らず操作することができ、同じく約85%の社員が「今後も使いたい」と回答しました。また、汎用LED照明での利用に問題がないことなど、さまざまな知見が得られました。実験結果が良好だったことを受け、現在も売店での利用は継続されています。

さらに翌8月には、一般生活者を対象に東京・池袋にあるジュンク堂書店 池袋本店にて実証実験を実施。書籍検索端末と、全9フロアの会計を処理する1Fの集中レジに本製品を設置したところ、「すぐに操作に慣れることができて、使いやすい」「操作した感じはタッチパネルと変わりがなかった」という感想が寄せられました。SNS上でも、「コロナ禍に非接触で使える製品はありがたい」「未来感がある」といったコメントもいただき、社会実装に向けての大きな手応えを得られました。

「DNP非接触ホロタッチパネル」を導入した池袋のジュンク堂書店の書籍検索端末(左)とセルフレジ(右)

DNPは、「非接触」に関するニーズの高まりを受けて、「非接触端末」を活用する事業を広げていく考えです。衛生管理の徹底が求められる飲食関連や医療関連の業界をはじめ、IoT(モノのインターネット)の普及によるデジタルサイネージや家電・情報機器など、より多くの利用者に対して、より幅広い事業を展開していきます。今後も、センサー部の小型化やより多様な端末への対応といった改善・強化を通じて、利用者の言語やIT機器への親和度などを問わず、誰もが直感的に操作できる機器の研究・開発を継続していきます。

かつては物理的なボタンによる操作が“あたりまえ”でしたが、現在はタッチパネルでの操作が普及しています。そう遠くない未来、触れないパネルが“あたりまえ”になる日をDNP自身がつくりだすことをめざし、これからも生活者目線に立った新たなイノベーションに挑戦していきます。

未来活用イメージイラスト

デジタルサイネージとの融合など、非接触タッチパネルは生活のさまざまなシーンに浸透すると見られています。

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